父への報告と連絡②
前話の続きです。
コンコンコン
「「「──────。」」」
「入りなさい」
ノックと伴に解除された防音魔法を確認した二人が王の執務室へと入る。
「お取り込み中申し訳ありません。陛下。アングリア宰相。それと・・・あぁ。貴方でしたか。ルンゴ枢機卿。」
(アミュレットの魔力で枢機卿が居るのは分かったんだけど・・・ルンゴさんだったのか。)
「それでは陛下。本日ご提出いたしました書類の確認をお願い致しますわ。それでは失礼致します」
(アングリアさんは私のことを嫌っているからなぁ・・・しかし露骨な態度だ・・・そんなに嫌われるようなことをしたかなぁ・・・)
少々神経質そうなキリッとした目つきにスラッとした体躯の宰相は、部屋に入ってきた二人に目もくれず、王に要件を告げてさっさと退室していってしまった。
「ご無沙汰しております殿下。久しく聖堂にいらしていただけておりませんので、少々寂しく思いますよ。お時間ありましたら是非!いらしてください!歓迎いたしますぞ!」
室内に残た、誰しもが警戒心を解く柔らかい笑みを浮かべた白髪の老人である、ルンゴ枢機卿はアルフレッドに声をかけた。
「ありがとう。ルンゴ枢機卿。聖堂へは─────考えておくよ・・・」
(聖堂に行くとなぁ・・・横断幕掲げられて歓迎されるからなぁ・・・あまり行きたくないんだよな・・・)
「あぁ!カレン殿もお久しゅう御座います。貴女様も是非!是非に殿下と伴にいらしてください」
「───考えておきますね」
強い押しの枢機卿に、引きつった笑みを浮かべながらも返事をするアルフレッドとカレン。見かねた国王がルンゴ枢機卿に声をかける。
「枢機卿。もう遅いぞ。今晩は何時もより冷える。老体には酷であろう一部屋もうける故、宮殿に滞在したら如何か」
「なんの!陛下!老いてもこの通り頑丈な身体ですのでな。帰ることは造作も無い事ですよ。しかしこれ以上遅くなってしまうと心配させてしまうこともまた道理。殿下もカレン殿もあまり無理をなさいませぬよう。それでは御前を失礼させていただきます。」
「うむ。供の者を一人付ける故、気をつけて帰られよ」
「ありがとう枢機卿。足下に気を付けて」
「お気を付けて」
退室する枢機卿に声をかける三名。
部屋に居た二人が離れたことをカレンが耳で確認し、アルフレッドに伝えると、国王に対し今日一日の報告と明日からの予定を告げる。
国王はアルフレッドからの報告に対し、時折頷きながら、相槌を打ち、小さな声で「そうか・・・」と呟きながらも二人を労う。
「報告ご苦労であった。よく休み明日の出立に備えよ。アルフレッドの申し出の通り、盛大な送り出しはせぬが、見送りには行く。ライラック島の件、頑張りなさい」
「はい。私の持てる力を尽くしたく思います。それでは陛下。失礼(クゥ───)」
部屋から出ようとした際に鳴るお腹。そう言えば食べたのは串焼き一本だけだったなぁと思い出すアルフレッド。
「はっはっは。カレン殿。相当空腹な様だな。此奴ほ集中すると寝食を忘れる悪癖があるからな」
お腹を鳴らしてしまったカレンは顔を真っ赤にしながら、蚊の鳴くような声で、「申し訳ありません」と早口で告げる。
「余も先の二人と話しておって、夕餉はまだだ。二人とも軽く食事をしようではないか。誰か」
失礼致します。と言う声と伴に、侍従が執務室内に入り、私室に軽食を用意する旨を伝えて退室していく。国王は笑みを浮かべながら二人を誘い、私室にて一緒に食事を摂った。
尚、カレンは二人の倍ほどの量を食べ、国王はその食欲に驚きつつ、しっかり食事を摂るようアルフレッドに釘を刺した────。
王国を出る最後の夜。父と二人で話したい旨を伝えてカレンを退室させたアルフレッド。宰相と枢機卿が執務室にいたことをそれとなく王に聞くも、はぐらかされてしまう。
王は「今はまだ不確定要素が多すぎる」とだけ伝え、アルフレッドに対して定期的に報告書を送るよう話す。
アルフレッドは面倒だなぁ・・・と零しつつも「わかりました。一月ごとに送ります」と答えた。元来真面目な性格であるため、心配こそ国王はしていないが、進捗状況が気になるのは為政者として当然のことではある。しかし毎週を毎月にと条件を巧みに誘導されてしまい、国王は苦笑いした。
「明日から身体に気をつけて頑張りなさい。着いたら必ず連絡をしなさい」
最早心配の度が過ぎている感のある国王であるが、アルフレッドも馴れた様子で取り合い、翌日の準備があるのでと部屋を出て行った。
「頼むぞアル・・・。森人族の未来は其方にかかっておるのだ・・・。────魔王と勇者の件は余がなんとかする───」
閉じた扉に向かって王は自分の思いを口にする。
アルフレッドが齎す明るい未来を信じて─────。
この話で本章は終了です。次話より章がかわり、話が前に進みます。
今後もよろしくお願いいたします。




