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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
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記憶

食堂に着くと、エレンとミュールが先に食事をしていた。王宮という場所柄、王族を待たないのは如何なものかと感じたプルーナであったが、給仕していたのがカレンだったので、その疑問は直ぐに解けた。


「やあ。待たせてしまったね」

「いんや。こっちも既に食べ始めておる。お相子じゃな」

「あはは。そんなにお腹空いてた?」

「調べ物をするとどうしてものぅ────」


アルフレッドはエレンの正面にある席に着きながら、彼女と会話を始めた。


「プルーナは此方に」


カレンが椅子を引いて着席を促す。どうやらミュールの隣に席を設けてくれたようだ。


「ありがとう。でも、ここの食堂・・・王宮にしては・・・その・・・」

「─────。ん?あぁ!狭いって?ここは家族専用の場所だからね────」


そう言われてみると・・・席は6席ほど。それなりの間隔は開いているが、少し高級な食事処と言った様相である。入って直ぐエレンとミュールに目が行ったため、あまり細かくは見ていなかったが、柱には彫刻が施され調度品も洗練されていた。


「失礼致します。お料理の方を」

「ああ。ありがとう。カレンも一緒に食べよう?」

「畏まりました」


アルフレッドが促し、着席するカレン。彼女はアルフレッドの隣に座る。一瞬だけ・・・ほんの一瞬だけ場の空気が止まった。しかし、エレン、ミュール、プルーナが座っている側面には椅子はない。反対に、アルフレッド側には空席が2つ。敢えて隣を選ぶカレン・・・。


そんな空気に気づいているのかいないのか。アルフレッドはエレンに図書室での成果を聞き始めた。


「魔力発露に関して何か有用な書物はあったかい?」

「────。これと言って有用なのはなかったのじゃが・・・。解析魔法を強めにかけてみるという方法はどうかという結果に落ち着きそうじゃ」

「そっか。なら、あまり負担にならないようにね」

「もちろんじゃ!」

「ミュールは・・・図書室は楽しかったかい?」

「・・・うん!絵が動く本がたぁくさんあった!それでねそれでね─────」


あらかた食事を食べ終わっていたミュールは、身振り手振りを交えて、こんな本があった。あれはこうなっていて・・・などと、自身の読んだ本一冊一冊を自慢げに。そして、楽しげに話してくれた。彼女は読書好きであり、記憶力も良い。言葉遣いは拙いが、説明には臨場感があり、大の大人がその話に引き込まれていた。


「────で、とぉっても面白かったの!」

「そうか!楽しめたのなら良かった」

「それでね・・・一つ思い出したんだけどね」

「うん?」


そう言って、ミュールは懐から大事そうに件の薬を取り出した。ここが私的空間であったことは幸いであろう。彼女は、小瓶に入った深緑色の液体をアルフレッドに渡し、言葉を紡いだ。


「その瓶はね、お部屋掃除に入ろうとしたら怖いおじさんたちが話ながら机に置いてたの。慌てて扉を閉めたんだけど、お話が気になって・・・。その薬は、なんとか閣下?が作ったものだ。それ一つで・・・なんか木が枯れるとかって・・・。強いから試すこともできてないって」

「・・・閣下?そうか・・・。そうすると、高位高官になるかな。・・・他には何か覚えてはいるかい?」

「うぅん・・・その後、お部屋の掃除に入って綺麗だなぁって持ってみてたら、追いかけられて捕まって・・・」

「うん。ありがとう教えてくれて」


先程までの楽しげな顔が一転曇り始めたため、アルフレッドはミュールにお礼を言い、話を止めた。隣にいたプルーナが頭を撫でて気を持ち直させている。


「エレン」

「うむ。魔力発露より此方の方が重要じゃな。任せておけ」

「うん。頼むね。カレン」

「標的を絞る形で調査を続行いたします」

「うん。何か怪しげな事が解ったら、直ぐに報告を」

「はっ」


エレンとカレンは、アルフレッドに辞することを伝え、各々の仕事場へと向かっていった。


「アルくん。アタシは?」

「プルーナさんとミュールには、護衛を付けるから。まぁ彼は何に関しても一流だから・・・」


アルフレッドがその人物を紹介しようとした時、食堂の部屋の扉を叩く音がする。入るように声をかけると1人の男性が入ってきた。


「あれ?図書室のおじいちゃん?」

「プレーノさん?」

「ほっほっほ先程ぶりでございますですな」


食堂に入ってきたのは、司書長として紹介されたプレーノであった。


「あれ。じいは2人と知り合っていたの?」

「ええええ。殿下。先程、エレン殿と一緒に図書室に来ておりましたので」

「そっか。また図書室にいたんだ。彼が私の執事長のプレーノだよ」

「宜しくお願いしますですじゃ」


アルフレッドに紹介されたプレーノは、綺麗な礼で2人に相対した。高身長の男性が優雅に礼をする。洗練された一つ一つの行動が、王子付きの執事であることを裏付けた。


「えっ・・・でも・・・司書長じゃなくて?」

「・・・誰がそれを?」

「エレンちゃんが・・・」

「ほっほっほ」

「じいが司書長だったのは1000年前でしょ?戦争が終わって少しゆっくりしたいって・・・」

「ほっほっほ」

「まったく・・・。彼が司書長をやっていたのは、ほんの100年間だから・・・その外は全部私のお付きだからね」

「おぉ・・・騙された」

「ほっほっほ。プルーナ殿は人を信じすぎる。なるべく疑うことも・・・」

「じいは虚実織り交ぜるのが巧いからね・・・」

「ほっほっほ」

「カレンは、じいにも教育されてるから・・・」


なんとなく遠くを見つめるアルフレッド。そんな彼に声をかけようとしたプルーナであったが、プレーノが仕事の話をすると、いけないいけないと言って、3人に部屋を出ることを告げて出て行ってしまった。


「ゆっくり落ち着いたときに、話を振ってくだされ」


何にとは言わずに、プルーナにそう告げるプレーノ。彼は、ミュールが眠たそうにしているのを見、2人を寝室へと案内するのであった。

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