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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
137/213

閑話 伝記 Ⅹ

「はっ!呆けている場合ではありません!」


ソフィアは自分自身に発破をかけ、意識を戻した。そして、聖王に儀式の結果報告と、同行を願い出た。


「あっああ。儀式のことであったな。うむ。もちろん忘れてなどおらぬぞ。では地下に参ろうか。2人とも着いてきてくだされ」

「良いのですか父上?いえ。陛下」

「2人にも会っていただいた方が良いだろう」


そう聖王に促され、アルフレッドとプレーノも同行する。


儀式場に近づくにつれ、次第に声が聞こえてきた。聞き慣れない言葉が聞こえる・・・。そう感じたアルフレッドはボソリと言語魔法を唱え、自身に施す。


「殿下。法衣帽を下げられた方が良いかと。場内には、聖王陛下の家臣団がおります故」

「うん」


後ろからプレーノに促され、法衣帽を下ろすアルフレッド。王女が扉を開け聖王が入っていく。2人も促されるが、プレーノが扉を支えソフィアも中に入るよう促し、自身は最期に室内へと入った。


「これは一体どういうことなのであるか!」

「某も急に辺りが光ったと思ったら、ここに連れてこられていた」

「困りました・・・朝議の最中であったのに・・・」


魔方陣の上に立つ3人の男性が口々に困惑の弁を述べる。大臣たちも扱いに困りながら、必死に状況を説明しようと試みるが、如何せん言葉が全く通じていない。


「陛下。ずっとこの調子なのです。言葉が一方通行で・・・3人呼ぶことに成功はしたのですが、全員言語が異なり・・・」

「そうか・・・。それで失敗・・・と」

「はい」


ソフィアは、言葉が通じないことを憂慮して、半分失敗したと聖王に伝えたようだ。


「あの・・・僕で宜しければ、話を聞いてきますよ」


2人が項垂れている様子に、通訳を買って出ると宣言するアルフレッド。


「いやっ・・・しかし・・・」

「聖王様があの家臣団をどうにかできれば・・・ですが。どうします?このままいくと・・・」


そう言って目を向けると、今にも掴みかかりそうな財務卿を必死に内務卿が抑えている・・・。聖王はやれやれといった様子で、アルフレッドに通訳を頼み事の成り行きを見守ることにした。


「失礼致します。私の名はアルフレッド。急にお呼びだてして申し訳ありません。私の話す言葉はおわかりいただけますでしょうか」


アルフレッドが言葉を紡ぐと、今まで喧々囂々としていた3人が話すことを止めた。


「言葉が・・・」

「わかる」

「ここはどこなのだっ!?どうしてここに居るのだっ?」

「一度に話されてしまうと私も混乱してしまうので・・・言葉が通じたのは、魔法を使ったからですよ」

「「呪術・・・」」

「ほう!魔法が使えるのであるか!我も使えるのであるか?」

「いえ・・・適正を図らなければなんとも言えないのですが・・・」

「そう・・・であるか」

「この呪術は、私たちに対して何か悪影響は?」

「悪影響?そのようなものはないですよ。言葉がわかり、意思疎通が可能になっただけですから」

「わかりました」

「某たちはなぜここに?」

「今、我々は未曾有の危機に瀕しております。それ故にあなた方、異界の勇者様に御助力を願うべくお呼びいたしました」

「危機・・・であるか」


3人に呼んだ概要を伝えるアルフレッド。若干1名、魔法にとても感動している人物はいたが、概ね予想通りの反応が返ってきた。


話している内容はわからずとも、1人の小柄な人物が3人の大人と会話している。その奇妙な光景に、唖然とする家臣団。聖王は、アルフレッドが話を終えてから同皆に説明をするか頭を回転させていた。


「某たちは元に戻ることはできるのか?」


縷々説明をしていると、2本の武器を脇に備えた人物が訪ねてきた。


「ええ。必ず元いた場所にお戻しいたします。ただし」

「「「ただし?」」」

「元いた場所を必ず覚えていてください。思いの強さでは、別の場所に戻る可能性がありますので」

「「「わかった・・・」」」

「それで・・・お名前をお伺いしても?」

「おお・・・」

「これは失礼を」

「申し遅れてしまったのだ」


3人が一同に口を開こうとしたため、再び待ったをかけて1人ずつ話してもらった。


最初は、黒い衣服に身を包んだ偉丈夫であった。


「手短に名乗ろう。我は、オットー・フォン・ビスマルク。プロイセン帝国宰相である。ビスマルクと呼んでほしいのだ」

「ビスマルク殿ですね。よろしくお願いします」

「うむ。小さき魔術師殿・・・いや。アルフレッド殿よろしく頼むのだ」


次に名乗ったのは、白いしかし、金刺繍が施された衣服を身にまとい、2本の剣のような武器を脇に刺した鋭い双眸の人物だ。


「某は、徳川吉宗と申す。征夷大将軍として日本の建て直を行っておる。気軽に吉宗と呼んでくれ。アルフレッド殿」

「吉宗殿・・・と」


最期に口を開いたのは、藍色に染められた衣服をまとった優しげな雰囲気の人物であった。


「私は、姓は荀。名は彧。字を文若と申します。気軽に文若とお呼びください。アルフレッド殿」

「・・・文若殿と」


3人の名前を聞き、改めて話をしようとしたその時・・・。


「なんと!あの高名な荀文若殿か!いやぁ!お目にかかれて光栄!」

「はて?私は存じ上げませんが・・・」

「そうですな。某と貴殿では生きていた時代が違います故・・・いやぁしかし、魏王の覇業を支えた方をこうして目の前にできるとは・・・」

「・・・この辺りには卵はないのであるか?我は卵が食べたいのだが・・・」

「魏王・・・そうですか・・・。曹丞相は王位を・・・」


なぜだか勝手に話をする3人。言葉が通じることが余程嬉しいのか。この3人と自分にだけ魔法をかけておいて良かった・・・と安堵するアルフレッド。ふと、背後に目を向けると怪訝な表情で此方を見る面々が見て取れた。このままではと思い咳払いを一つ。


「んんっ!」

それに気づき一斉に顔を向ける3人。


「「「ん?」」」

「あぁ・・・皆様。向こうにいる方々とも話ができるようにしますので・・・」

「おぉ!」

「勝手に話をしてしまい申し訳なかった」

「気を遣わせてしまい申し訳ないです」

「では────」


アルフレッドは彼ら3人に翻訳魔法をかけるとともに、場内にいた面々にも翻訳魔法を施した。一瞬何が起きたのか・・・魔力の流れがわかる面々は目を見開いたが、各々が話を始めたために、疑問を解消するには至らなかった。


「聖王様戻りました」

「ありがとう。アルフレッド殿。してあの方たちは?」

「黒き衣の方は、ビスマルク殿。白き衣の方は吉宗殿。青き衣の方は文若殿と仰るようです」

「いやぁ・・・名前が判ったのは重畳。しかし、急に彼らの話す言葉が解るようになったのだが・・・」

「翻訳魔法を皆さんにおかけしたので」

「なっ!」

「ご迷惑でしたか?」

「いっいやっ・・・」


この小さい身体でこの人数に魔法をかけ、余裕の表情・・・驚きを隠せない聖王であったが、召喚された3人が近付いてきたので、アルフレッドに何ら声をかけることなく、話を聞くことになった。


当のアルフレッドは、どこ吹く風。プレーノに一声かけて部屋を後にした。


「殿下は・・・いとも簡単に。まぁ彼の方は、皆が喜ぶ姿が好きだからな・・・」


アルフレッドと3人の勇者が邂逅した最初の出来事である。この後、4人を中心に魔族征伐。俗に言われる{人魔大戦}が始まる。が、詳しい話はまた次の機会に─────』




「あっあれ?次の頁を捲れない・・・なんで?」


「おっ!プルーナよ。読み終わったのじゃな」

「エレンちゃん!」

「なっなんじゃ!近い近い!一体どうしたのじゃ」

「どうしたって・・・次の頁が捲れないの!」

「あぁ。今はまだ知るべきではないと言ったところかの。時が来ればまた読めるようになろうて」

「うぅぅぅ」


読み進めていた伝記の続きが読めない。集中して読んでいたのだから殊の外続きが気になる。お預け状態のプルーナであったが、2人からのお腹空いた!の声に負け、渋々図書室を後にした。



「殿下。この先はご自分でお伝えなさるのが宜しいかと。爺は愚考いたしますのじゃ」


図書室を後にする3人に向けて階上から見送るプレーノ。彼の後ろには、エレンが散らかした無数の書籍が・・・。

ため息をつき、軽く手を振ると自ら棚に戻る本たち。もうすぐ図書室での仕事は終業の時刻だ。後片付けに日報にと仕事は沢山有る。これもこの国の歴史を護るため。

彼は笑みを浮かべながら仕事を始めた。この後、愛すべき殿下に話をするために─────。

やっと出せました!


一先ず閑話 伝記はこの話でお休みとなります。次話から現実に戻ります。


賛否両論(否の方が多いかなぁ・・・)あると思います。私自身も出そうか辞めようか悩みながら書いています。


もし、ご意見・ごかんそうがありましたらお気軽にフォームまでお願い致します。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


                  さかずみ

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