閑話 伝記 Ⅸ
「父上!」
部屋に戻ろうとする聖王を呼び止める声。彼が声が聞こえた方へ振り向くと────。
「おぉソフィア・・・成功したのだな」
「ううぅん・・・半分成功半分失敗という感じでしょうか」
「そうか。いやっしかし、この難局でよくぞ儀式を終えた!偉いぞ!」
そう言って娘に近づき頭をなでる聖王。ソフィアも満更でもない様子だったのだが、視線を感じる方へ目を向けると、プレーノと見知らぬ子どもが1人。
「ちっ父上・・・子どもが見ています!恥ずかしいのでやめてください!」
今更のような感じもするのだが、気づいてしまったのだから仕方が無い。彼女を撫でていた手は哀しいかな払いのけられ、なんとも言えない表情を浮かべる父親・・・。愛娘に邪険にされた。その一点が彼の心に衝撃を与え、払いのけられた手は未だに宙を撫でている・・・。
「ボク?ここは危ないわよ?どこから来たの?」
ソフィアが近づいてきて声をかける。困ったアルフレッドはプレーノを見遣るが、彼は苦笑いを浮かべながら首肯する。本当のことを伝えた方が良いとの判断だ。
「お初にお目にかかりますソフィア王女」
丁寧な言葉遣いに、一点の曇りもない完璧な礼。目の前の10歳に満たない年齢の子どもが、違和感だらけの行動をする。その様子に今度は王女が衝撃を受ける番であった。
「あっあっ・・・えぇっと・・・」
「申し遅れました。森人族の第一王子。アルフレッド・ディ=アルベロと申します。以後お見知りおきを」
「はっ?へっ?」
ソフィア王女は完全に頭の中が真っ白になってしまったようだ。目の前にいる子どもが長命種の森人族──。プルーノのことは知ってはいたが──しかもその王族と来たものだから大変である。だが、彼女も王族。混乱し続けていては失礼に当たると思い、立て直しを図るが、そこに追い打ちをかける者が・・・。
「ソフィアが儀式に臨んでいた際に魔物の襲撃があったのだが、殿下がその全てを退治された。遠巻きであったので、こちらの被害はほぼ零でな」
「はあぁぁぁぁっ!?」
「いやぁ凄まじかったぞ!なんせ─────」
見たことを自慢げに語る聖王。しかしソフィア王女の機能は完全に処理落ちして停止している。目を見開き固まっているのみだ。娘が微動だにしていない。それに気づかず語り続ける父。話の途中から再度、残党が生き残りがいないのか。情報必死に集め処理するプレーノ。その様子を眺め、なんとも混沌としているなぁと思うアルフレッドなのであった。




