閑話 伝記 Ⅷ
監視塔から階段を降っていく。話し声はせず。ただ靴が石造りの階段を打ち鳴らす音だけが響く。前を行くアルフレッドとしては、自身が考えていた実験の結果に満足いった様子。後ろを行くプレーノは、アルフレッドから命じられた残党の有無を精霊に頼んで調査。今のところ生き残りはいないらしい。そういう意味でも少し柔らかな表情を浮かべている。しかし、間に挟まれた聖王はそうもいかなかった。
「あのっ!アルフレッド殿下」
聖王が歩きながら訪ねる。
「はい。何でしょう」
アルフレッドは、歩みを止めて後ろを振り返る。聖王も同時に歩みを止めて話を聞く体制をとる。プレーノは精霊の話を聞いていたため、前が止まったことに気づくのが遅れ、聖王の背中に衝突しそうになる・・・。
「(あっ・・・危なかった・・・)」
プレーノが衝突していたら、3人纏めて階段を転げ落ちていたところだ。・・・危ない危ない。
そんな危機的状況を全く知らないでいる聖王は、改めて口を開き、自身の疑問を投げかけた。
「あの魔法は一体・・・」
「あれは、実験中の魔法です。あれだけ規模が大きいと、我らの国で使うと迷惑がかかるので・・・申し訳ありませんでした。勝手に使って」
「いやいや。あの魔法が実用段階ではないことに驚きを隠せないが・・・よくあの場で実践できましたな。とても初陣とは思えない・・・」
「敵が遠くにいたからこそ・・・ですよ。じい。生き残りはいそう?」
「いえ。今の所は全滅したと」
「今の所は・・・ね。と言う事みたいです聖王様」
「あれだけの威力・・・生き残る方が難しいのではないか・・・」
聖王が自身の思考の渦に飲み込まれ始めたところで、アルフレッドは再び歩みを進めた。
「あの魔法が試作・・・いやしかし・・・矢は?だが・・・殿下は・・・」
「聖王様!」
「おっおぉ・・・」
「殿下は先に行かれてしまいました。私たちも降りましょう。お足下に気を付けて」
「う・・・うむぅ!」
半ば強制的に思考の渦から呼び戻された聖王。プレーノから先に進むよう促され、右足を出し、次の段に足をつけようとした時に滑らせた・・・尻餅をつくような形で階段を滑り落ちていく聖王様。咄嗟に彼の背を掴もうとしたプレーノの左手が虚しく宙を切る。
急ぎ階段を降っていくと、アルフレッドに腰の辺りを治癒魔法で治されている聖王がいた。彼は苦笑いをしながら「階段での考え事はイカンな。今後は、階下に降りて歩かずに座りながら考えるように心がける・・・」とプレーノとアルフレッドに語った。
やれやれと言った様子のアルフレッド。幸い降る段数は少なく、聖王も軽い打ち身程度で済んだようだ。数分で治療を終えると、聖王はアルフレッドに頭を下げ自身の部屋へと向かおうとした──────。




