閑話 伝記 Ⅰ
『まず始めに断りを入れておく。この書籍は、筆者である私が、実際に目にしたこと、聞いたこと。そして体現した事を書き記しているモノである。いくら荒唐無稽だと思っても批判はしないでいただきたい。私自身がそう思ってこの書を書き記しているのだから。
前述の注意事項に同意されるのであれば、次の頁を捲られたし。
ありがとう。貴方は良き理解者だ。この伝記は、人魔大戦におけるアルフレッド殿下の軌跡を書き記したモノであるが、当人に聞くのは止してほしい。とても恥ずかしがるから・・・。さぁ魅惑の書の始まりだ
時は聖王紀500年だ』
「今から1500年も前!?あっ人魔大戦だからそうなるのか・・・」
『淑女たるもの本を読むときに声を発するのは如何なものか・・・』
「!?・・・ごめんなさい」
『よろしい。今後は驚いても声を出さないように。
では続けよう。聖王紀500年頃は、普人族の国が勃興し、村々が合わさり都市国家というものが形成されつつある時代だ。形成されつつあると言えども、大きな集団はいくつかあった。それが聖ソイア王国。私たち森人族はその国内にある一都市国家であった。始め、聖王国と周辺の都市国家は封建制度によって成り立っていた。しかし、ソイア25世が崩御し代わってその息子である26世が即位した。
ここから先は、歴史書に記載が無い。それでもこの伝記を読み、内容を信じることができるのならば、次の頁を捲られたし』
「・・・」
『貴方は余程真実を追い求めたい。或いは、何か知りたい情報があるのだろう。その情熱、知識欲に応え歴史の一端をお教えしよう。』
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聖王晩1年
「陛下!魔王国から使者が謁見の許可を求めております」
「うむ。通せ」
先日崩御した父に代わり、王位に着いたが早速魔王国からの使者だそうだ。父は、魔王国とは友好に接せよとの遺言を残された。私としても異論は無い。ただ、此度の訪問理由は何であろう・・・。
「ご機嫌麗しゅう。聖王陛下にあられましては・・・」
「前置きは良い。要件は?」
「あっはっは・・・そうですね・・・。では。最近、魔獣被害が多発している地域などはございませんか?」
「む?宰相。そのような話はあったか?」
「いえ・・・。早急に確認して参ります」
「頼んだ。して?その事が何か」
「ええ。ええ。我が国で取り逃がした魔獣が何匹かこちらに渡ってしまったようでして・・・その魔獣の捕獲・討伐の許可をいただければと・・・」
「ほう・・・してその大きさと数は?」
「大きさは大小様々。数は十数匹。凶暴なモノが多く、中には飛ぶモノもおります」
「なんと!?それは誠か・・・」
「ええ!ええ!ですので、我々の尻拭いをすべく、帰国に対し討伐のための軍を派遣したく、こうして謁見を賜りました」
「そうか・・・報せてくれて助かる。が、友好国であっても他国の軍。少し協議をさせていただきたい」
「ええええ。お待ちしております」
「会議室の用意を!至急大臣たちと宰相に召集令を。それと、使者殿に部屋を」
「畏まりました」
「ゆっくりと羽を休めるといい。それではな」
「ええ。ええ。ありがとうございます」
国王が玉座から退席した後、使者は侍従に案内されて客間へと向かった。
「何事もなければ良いですねぇ」
「・・・はて?何か仰られましたか?」
「ええ。ええ。独り言です。お気になさらないでください」
「?」
「(聖王国・・・大陸進出を渋る魔王陛下に決心を促す。その橋頭堡とさせていただきます)しかし、この城はいつ来ても綺麗ですね!」
「はい。我々が隅から隅まで毎日清掃しておりますので」
「ええ。ええ。その心がけは素晴らしいです!私も掃除を頑張らなければなりませんね!」
「───?あっ!こちらが本日ご用意させて頂きました客間となります。後ほど軽食をお持ちいたしますので。失礼致します」
「ええ。ええ。ありがとうございます」
使者の男は室内に入り、怪しく目を輝かせ呟く。
「陛下・・・貴方様が貴方様が悪いのです。ご決断なさらぬので有れば、我々が────」
そして・・・地獄が始まった。




