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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
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男から聞いたこと②

「結果的に言うと、彼らは依頼主の顔も名前も知らないと言うことなんだ」


アルフレッドが仕切り直して発した言葉に、聞いていた面々は案の定。と言ったような表情だ。


「まっそんなところだよね」

「大方の予想通りじゃな」

「ただ、カレンには色々とお願いしているところがあってね」

「はい。ただまだ私のところには・・・」

「そっか。大丈夫。じゃぁ・・・私が聞いた話を言うね」





「それで、キミは誰に依頼されたのかな?」


アルフレッドは周囲への影響が出ぬよう、極めて限定的な防音結界を自分と男を包むように張り、言霊をもって男に問いかけた。


「・・・頭から足下までを隠す頭巾付きの服をまとっていたのでわかりません。また、性別も男であるような女であるような。良くわからない声でした」


「そうか(変声魔法か?)。では、質問を変えよう。その人物とはいつ知り合った」


「はい。俺が貧民街の土地をそこの奴らから騙し取っていた際に、“もっと稼げて捕まる心配のない仕事がある”と紹介されました」


「ふぅん(こいつ・・・叩けば埃がまだ出そうだな)。それで?」


「最初は手下たちの身なりを整えろと言われ、服などを揃えました」

「手下はここに居るのが全員?」

「はい。ただ、新入りはここには居ません」


「そう・・・か。それで、身なりを整えた後は?」


「言葉遣いを矯正するのに2週間あまりを費やし・・・」

「誰かに教えてもらいながら?」


「はい。頭巾付きの服をまとった人物でした。とても言葉が綺麗で驚きましたが、言うことを聞かないと・・・」

「聞かないと?」


「反発した下のやつはどこかへと連れてかれ、戻ってくることはありませんでした」

「そう。そのあとは?」


「穀物価格の暴騰の話を市場街で流せ。と指示かありました」

「直接?」


「いえ。我々が塒にしていた場所に手紙が届きました。読み上げるとその場で燃えて消えてしまいました」

「なるほどね。それで穀物価格が上昇した。と」


「はい。約1月ほどかけて徐々に噂を広げました。思いの外効果があったと言うことで、特別金と疲れによく効くと言うことで、薬を貰いました」


「───!その薬は今どこに!?」


「殆どを飲みました。ただ、部下たちがよく効く薬だと話していたのを聞いていたのでしょう。そのうちの1人が寝ている間に、1本盗まれました」

「それが、ミュールだと」


「はい。一度は捕まえ、薬のありかを聞き出そうとしましたが、誰かが縄を切ったようですぐ逃げられました」

「それで僕たちが保護して、今に至ると」


「その通りです」

「お金を受け取りに行ったとき、何かを耳にしたりとかは?」


「はい。廊下で待たされている時に、何人かの声で、“これであの樹が”“我々の時代が”などというような話し声が聞こえました。ただ、何のことかはわかりません」

「───そう。ありがとう。最後に聞いても良いかな」


「はい」


「貧民街の土地をどうするつもりだったの?」


「はい。俺は元々不動産屋を営んでいましたが、資金繰りが悪化して廃業。それでも諦めきれなかったので、汚らしい貧民街。そこに住む者たちの土地をなら構わないだろうと」

「そこに住む者たちを国として支援していたとしても?」


「私や部下たちは、国によって切り捨てられました。今思えば、手厚く支援されている奴らが羨ましく思えたのかもしれません。我々が捨てられ、なぜ流れ者が支援を受けられるのかと」

「役所に申請は?」


「しましたが、難癖をつけられてその場で破り捨てられました。そこから転落人生が始まりました。金を貰いに行ったときに聞こえたあの話。この国を壊そうとしているに違いないと思い、金を貰う際に仲間に入れて欲しいと言いました。頭巾を目深に被っていたので表情はわかりませんが、確かに喜んで居たと思います」

「───何か言われた?」


「はい。近々立太子の儀がある。世界樹の周りには各地の貴族も集まる。もちろん国の中枢も。そこを狙えと」

「・・・。続けて」


「はい。単純な武力ではなく計略で。世界樹を枯らすと。その薬ができたと」

「その薬を見たのは?」


「いえ。話に聞いただけなのでわかりません。ただ、俺もその話に一枚噛むと宣言しました」

「でもなんでそんな危ない話を?命が惜しいと常々言っているじゃないか」


「はい。命が惜しいのは人間であれば誰しもが思うこと。この国に暮らす俺のような普人賊なら尚のこと。寿命は長くしたい」

「家族は?」


「父も母も兄弟も居ません。皆俺を捨てて行きました。身寄りはなくとも生きていたい。この手で何かを成し遂げるまでは。と思い生きています」

「なるほどね。話はわかった。頭巾たちの塒はわかるかな」


「わかりません。時によって様々で、符丁も変わります」

「わかった。もう良いよありがとう。目が覚めたらこの話の記憶はなくなる。意思を強く持っていれば、やり直しも利くだろう。それじゃぁさようなら」

「はい─────」


男の尋問を終え、結界を解除したアルフレッド。エレンには衛兵への通報を。そしてスコットを呼んで次善策を対応話し合う形となった。


話し合いが一段落した頃、衛兵が到着し破落戸たちを連行していった。やってきた衛兵の1人がアルフレッドに近づき、耳元で囁いた。


「殿下。潜入成せり。調査を続行いたします」


アルフレッドは小さく首肯すると、耳元で囁いた衛兵は仲間に呼ばれて去って行った。去り際に、「よく頑張った。偉いぞ!」と言いながら頭をなでて。


その行為が、エレン経由でカレンに伝わり、彼が折檻されるのは少し後のお話────。




「まぁこんなところかな」

「そうしたら、ミュールちゃんは今回の鍵の一つを握っているってこと?」

「そうだね」

「ミュールが持つ薬が本当に傷薬かどうか・・・調べてみなければな」

「そのためにはまず、起きるのを待たなければなりませんね」

「うん」


ミュールの持つ薬が一体どのような効果があるのか。王都で起きていることなので、王宮の工房で調べるのは流石に不味い。エレンは自身が暮らしていた工房で調べると言ったが、アルフレッドが待ったをかけた。


「私の作る空間で調べてみると良いよ。思うことで好きなだけ機材が出るからね」

「なんと!そのような便利なことが!じゃがなぜ島で出さなかったのじゃ?」

「島はまだ正式に私のものになっていない。出せるのは、私の部屋。つまり所有地のみなのさ」

「なるほどのう!では、準備をしたい。頼めるか?」

「うん」


アルフレッドは、執務室に空間を開き、エレンと共に研究所の構築を始めた。

残す2人は、ミュールの様子を見るべくアルフレッドの私室に戻っていった。


王都に降りかかる悪意の炎を消すべく────。

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