取引の末
「おらぁ・・・やはり自分の命が惜しい。坊ちゃん。悪いこたぁ言わねぇ。そのガキをこっちに渡しな」
「くっ・・・」
男達が話し合った結果なのか、まとめ役の男は金よりも命を取った。命あっての物種とはよく言うが、そこまで恐ろしい組織が後ろにいるのかという確証を得る発言でもあった。ただ、1人の男は納得がいっていないようで────。
「兄貴。此処でお別れだっ!」
「っぐぅ・・・てめぇ!裏切ったな!」
「裏切ったのは兄貴っす!おれっちは金が欲しかった。直ぐにでも遊べる金が!だから仲間になったのに!直ぐに大金が貰えるって話で。なのに金より自分の命?笑わせるな!おれっちはこの金で自由になるんだっ!坊ちゃん!兄貴の言ったことは忘れてくれ!ガキはやるよ!その代わり・・・」
「うん。このお金、後ろの人と分けてね」
「ちっ・・・全部おれっちの金にはならねぇって事か・・・いやっ・・・。わかった!金を投げてくれ!」
突然仲違いを始め、兄貴と言われていた人物は横腹に深々と小刀が刺され、そして抜かれた。刃毀れしていたのであろうそれは、致命傷までは行かずとも、男に決して浅くは無い傷を与えた。大きな声で裏切りを叫んだものの、出血量が多くもう威勢の無い男は虫の息である。その男を横目に、実行に及んだ男は金を要求。受け取ると走って逃げていった。
「ふぅ・・・一安心・・・かな」
「ええ。お金は失いましたが」
「またまた。そんなことを言って、気づいていないとも思った?」
「やはりお気づきでしたか」
「カレンの部下も大概よね」
「なになに?何の話?」
「ん?うぅん・・・此処だと人目を引くから、場所を移そう。っとその前に」
アルフレッドは、虫の息である男に近寄り回復魔法を唱えると、集まってきていた野次馬に衛兵を呼ぶよう伝えた。回復魔法では傷を塞げても、失った血液は戻せない。多少は顔色が良くなったが気絶したままの男を路上に放置するわけにもいかず、衛兵が来るまでその場に留まった。
駆けつけた衛兵にカレンが事の次第を説明し、男を引き渡した。中肉中背の男は意識を無くしているので、衛兵が二人がかりで慎重に医務室のある牢へと連行していった。
「それじゃぁ・・・。ってそうだ。キミ、名前は?」
「ミュール」
「そうか。ミュールか。取りあえず・・・」
「・・・目立つことは避けるべきかと」
「うん。スコットさんの店に行こうか」
「ん?スコットさん?」
「まっ。僕の師匠的な人の店かな。あそこなら安全かと思ってね」
「うん。スコットの店なら、外部干渉は避けられると思う」
「そうですね。では参りましょう」
「それでいいかなミュールも」
「うん」
「なんかごめんね。プルーナさん」
「ううぅん!全然!ちょっとした問題に遭遇するのには慣れてるから」
「あはは!ありがとう」
観光は突発的な問題の発生により、急遽中断。スコットの店に向かうことにした一行。男達が追いかけていた子どもであるミュールの話を聞くためだ。この子どもが何か重要なことを知っているに違いない。そう確信したアルフレッドは、できる限り手厚く保護することを心に決めるのであった。
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「おいっ!待てよっ!その大金を独り占めって!そりゃぁねぇぜ!」
「あん?この金はおれっちのもんだ!鐚一文渡さねぇ!」
「ハン。そうかよ」
「おうよ!おれっちとおまえはここまでだ」
「そうかい」
金を持った男が背を向けて走り出す。もう1人の男は、静かに走る男の心臓に向けて暗器を投げる。
「ぐっ・・・かはっ・・・」
「はぁあ。俺はお調子者のお前のこと、結構好きだったぜ。裏切り者には死を。だ」
とある路地で起きたいざこざ。目撃者は誰もいない。
翌日、路地裏で1人の男の遺体が発見された。しかし目立った外傷はなく、自然死として扱われたようであった。




