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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
115/213

食料品街

「アルくんアルくん。1つ疑問に思ったんだけど」

「ん?」

「どうして住宅地は樹で出来ているのに、市場は石と煉瓦造りの・・・それも2階建てだけなの?」

「それはね────」


食料品街に向かう前の時計塔で、長椅子に座りながら小休止をしていると、プルーナがふと思った疑問をアルフレッドに投げかけた。時計塔から今来た日用品街を見ても、他の通りを見ても何処も石を基礎とし、煉瓦を基調とした建物ばかりであった。


「───沢山の人種が集まる場所だからだよ」

「あっ!そう言えば、露店も常設店も森人族以外の人も経営してたし、利用もしてた」

「まぁ雇いの店主も居るけどそんな感じ。外から来た人が、住宅地みたいな建築物を見たらねぇ・・・」

「アタシみたいに卒倒するか・・・」

「あはは・・・。まっ驚かせないためにも、一般的な建築様式を採り入れたんだよね」

「それって・・・」

「アル様。そろそろ出発いたしませんか?」

「うん!そうだね。行こうかプルーナさん」

「うっうん・・・」


話を聞こうとしたところで、カレンに遮られてしまい釈然としないプルーナ。何か隠したい事でもあるのだろうか。


「後で王立図書館に案内するから。ね?」

「エレンちゃん?」

「知りたいと言う気持ち。知識欲は大事にしないとネ!」

「うん」

「2人とも!置いてっちゃうよ!」

「「はぁい!今行くよー」」


エレンとプルーナ。2人の声が自然と合わさっての返事だったので、顔を見合わせ笑いながら先に行く2人のもとに走った。


「何か楽しいことあった?」

「ううぅん!何でも無い!それより、食料品街って?」

「ん?ここだよ」

「・・・アタシたちが座っていた真裏にあったんだ・・・」

「そう!この目抜き通りを通って城門を2つ潜ると、この国の穀倉地帯であり、衛星都市の1つであるチーボに着く。直送できるからこの位置にあるんだ」

「へぇ!」


時計塔の裏。人だけが通ることができる通用門をくぐり抜けると、眼前に大きな道が現れた。南方に伸びるその道は、とても広く整備されていた。人と荷物を運んだ馬車が別々の道を往く。馬車も難なくすれ違える。そんな広さだ。


「うわぁ!道が広いっ!さっきの所よりも人が多い!凄い凄い!」


日用品街とは全く趣向の異なる区画に驚きのあまり、飛び跳ねるプルーナ。その姿に笑顔を浮かべ、プルーナの前に出て街区を背に大きく手を広げてアルフレッドは自慢げに街区の紹介を始めた。


「さぁ!ここが我が国の台所であり、小売商から卸問屋。はたまた大きな取引を行う卸市場まで備えた食料品街だ!手軽に食べられるものから、穀物まで広く取り扱っているから、気になるところを見つけたら言ってね!」

「うん!」


「流石は我が国の台所!いつ来ても良い匂いがしますね・・・」

「はいはいはい。今日の主役はプルーナだから。ね?あっちフラフラこっちフラフラしちゃ駄目だよ?」

「少しくらい良いではありませんかエレン」

「だぁめ!何のためにアルが案内してるのよ」

「むぅ・・・」


「あはっ!カレンちゃん面白い!」

「彼女は鼻が利くからね。言う通りにしていると必ず美味しいものが食べられるよ」

「おぉ!それ魅力!」

「お任せください!」

「・・・」


カレンが自慢の鼻を利かせながら先頭を行く。エレンとプルーナは、軽く雑談をしながら食べ物の薬効について話している。医食同源。蒼の勇者が残したこの言葉は、広く世界に広まっている。


「ん?ちょっとごめんね。このお店に立ち寄るね」

「うん」「どうしたの?」「何かありましたか?」


口々にアルフレッドが立ち止まる理由について尋ねるも、当の本人は聞こえていないのか店の中へと入っていった。


「こんにちは!」

「らっしゃい!僕。お遣いかい?」

「お姉ちゃんたちとちょっとね!それよりも、この小麦とエルフ麦の値段・・・高くは無い?」

「ん?あぁ。最近、卸価格が上がってね・・・。いつもの4倍にまで上がったんだよ」

「「「4倍!?」」」

「それにしては・・・安くできてるね」

「ウチは穀物保管庫にまだ安い時期に卸した商品があるからな!まっ他の店もそうさ。独自所有の保管庫を持ってる。今の所大した混乱は無いが、保管庫の中身が尽きたら、値を上げるしかなくなっちまうな」

「そっか・・・」

「じゃぁなんで価格むぐっ」

「アル様がお話中なので静かに」


アルフレッドと店主が話している内容に質問をしようとしたが、カレンに口を塞がれてしまった。素早く塞がれてしまったために頷くことしかできないプルーナ。アルフレッドと店主の話はなおも続く。


「まだ余裕はありそうなの?」

「いやっ・・・あと二月が限度だな。正直何処の店も徐々に値を上げてきてる」

「まぁね。次仕入れる時に購入代金が無いと困るもんね」

「そうなんだよ。毎日毎日、周りの店の様子を見て値を変えてる。値が変わる基準は、保管庫の中身が尽きた店から順に変わってきてる」

「その店は?」

「この先の5つ目の区画。丁度、卸市場の目の前の店さ」

「卸市場前の店・・・わかった!ありがとう!行こうっ皆」


「おう!毎度ありっ!・・・んぁ?俺は今誰と話してたんだ・・・?まっいっか」


呆然と立ち尽くしていた店主が、普通に行動し始めたその頃、アルフレッドは別の店でも聞き込みを行った。何処の店に聞いても、返ってくる答えは同じであったが。


「(おかしい・・・何かがおかしい。父上やグラノ卿は、今年も豊作だと。しかも余って困っている。値崩れを防ぐために・・・なんて言っていたのに。何故こんな事になってる?)」

「ねっねぇ!アルくん!さっきからどうしたの!?」

「ん?あぁ。ごめんプルーナさん。で、どうしたの?」

「どうしたの?じゃなくて、アルくんが怖い顔をしてるからさ」

「おっと・・・いけないいけない」

「それに、いろんなお店でやってたのなに?お店の人の目がちょっとおかしかったけど・・・しかも、1人しか居ないお店にばかり入って・・・」

「ごめんね。心配をかけて。ちょっと気になることができたんだけど、この格好じゃ利きたいことも聞けないから、限定的な催眠をかけて話を聞いていたんだ」

「それって・・・」

「普通は駄目だけど・・・緊急事態っぽいからね。大丈夫。迷惑をかけたから、その分王宮に持っていけば、お金に変わる札を置いてきたからね」

「まっまぁ・・・情報は大事だからね。でもなんで、質問を許してくれなかったの?」

「それはね・・・」

「とても限定的な催眠魔法を使用していたからです。あの場で術者以外が声をかけると、最悪の場合かけられた側の人格を破壊してしまう。そんな強い魔法なのです」

「えぇ!」

「カレン・・・冗談は駄目だよ」

「・・・申し訳ありません」

「なんだ・・・。一安心だよ」

「勿論、その強さの魔法もあるけどね」

「あるんだ・・・」

「今回かけてたのは凄く弱くて、術者以外が話すと催眠が解けるやつでしょ?」

「うん。負担を極力かけたくないからね」

「・・・魔法にもいっぱい種類があるんだね」

「そうだよ!例えば─────」


皆で歩きながら話していると、エレンが唐突にプルーナに魔法談義を始めた。それに確りと食いつくプルーナを確認して、アルフレッドとカレンは歩みを遅らせる。


「何かわかりましたか?」

「いやっ・・・まだ確証は何も無い。でも、確実に何かが起きている」

「・・・人を動かしますか?」

「うん。市場街区全てに人を」

「畏まりました」


カレンが常人に聞こえない音を発すると、路地裏から1人の男が歩いてきた。どこにでも居る目立たない格好をした彼は、違いざまにカレンが小声で彼にアルフレッドの話を聞き、雑踏の中へと消えていった。


これで暫くしたら情報が手元に届くかと。そう小声で言うカレンに、小さくありがとうと答えるアルフレッド。エレンとプルーナに目を向けると、エレンはこちらに向けて右目を瞑りながら合図を送った。しかし、口では魔法に関する話を止め処なくしているため、そろそろプルーナが限界を迎えつつあった。


「まったく・・・加減という物を知らないのですから・・・」

「まっそのおかげで、人を出せたから良しとしよう。それよりも、プルーナさんを救い出さないと」


2人は顔を見合わせて苦笑いし、頭から湯気が出ている。そんな幻覚が見えるほどふらふらと歩くプルーナのもとに足早に向かったのであった。


普段の雑踏の中でも、確実に変化が起きている。その小さな変化に気づくことができる人間はどれほどいるのだろうか。

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