国の象徴
「さて・・・どこに行こうか」
プルーナの回復を待って、観光に戻った一行。お腹も満たして準備も万端と言ったところだ。
「アル様。王都に初めて来たのならば、あそこに案内するのが宜しいかと」
「うん!わたしもそう思うよ」
「初めてだもんね!しかも僕がいる。あっ・・・この姿じゃ流石に無理があるから、近づいたら戻れば良いか」
「なになに?なんの話?」
「ん?ふっふっふ。それは着いてからのお楽しみ」
「?」
何やら3人でこそこそと話している様子。疑問に思ったプルーナが質問をしても、暖簾に腕押し。案内してくれるならと自分を納得させて、着いていくプルーナであった。
「ん?なんか少しずつ暗くなってない?でも・・・所々がキラキラして綺麗・・・」
「足下が悪いから、下をよく見て歩いてね」
「うん。そうする。うわっとっとっと」
「大丈夫ですか?」
「プルーナはそそっかしいからね。倒れた次は、怪我しないようにね?」
「たはは・・・」
目的の場所に近づくにつれ、何やら足下が覚束なくなる。整備されていた道から外れ、凸凹とした土の上を歩く形となった。辺りも少しずつ暗くなってきているが、アルフレッドから下を見て歩くよう言われ、それを守りながら歩くプルーナ。エレンに言われたことも流石に洒落にならないと考えているため、足取りも慎重である。
「おや?アル様ではありませぬか」
「あっ!ガイ隊長!どうして此処に?」
「いやぁなんとなしにこちらに赴いたのですよ。またあの頃のアル様を見ることができ、嬉しい限りですな!」
「・・・この人は?」
「王国近衛騎士団団長のガイアス殿です」
「うえぇぇ!こっこれは失礼を・・・」
「あぁ・・・大丈夫ですぞプルーナ殿今は非番ですからな」
「名乗らずもうし・・・へ?なぜ名前を・・・」
「謁見の間に控えてたよ?まぁプルーナさんは本当に緊張していたからね」
「・・・気づくことができず申し訳ありません」
「なんのなんの!して殿下。何用でこちらまで」
「ん?プルーナさんに見せようと思ってさ」
「ほうほう!その格好で行かれますかな?」
「元の姿に戻ろうかとは思っているよ」
「ふむ・・・それが宜しいかと。警備の者も奮い立つと思いますので」
「うん。それじゃぁ」
ガイアスの一声で、アルフレッドとカレン、エレンは魔法を解き元の姿に戻った。一瞬で姿形が変わったのでプルーナは目を見張ったが、今度は倒れることなく平静を装えた。内心は驚きが勝っていたが、いつも見ている姿であったので、そこまでの刺激は無かったようだ。
「これでよし」
「うむうむ!凛々しくなられた!どうですこの後手合わせでも・・・」
「いやぁ・・・怪我をしたら困るから・・・」
「そうですか?まぁ追々と言うことで」
「あはは・・・それより、ここからの案内を頼めるかい?」
「承知!」
「ガイアス殿ってとてもお元気で若々しいよね」
「んあ。あれで齢8000を超えておるというのだから驚きじゃよ」
「8っ!!ええっ」
「ええ。今の国王陛下の父君からこの国に仕えていらっしゃるとか・・・。飽くなき探究心は人を若返らせるものなのですよ」
「ほえぇ」
前をゆくアルフレッドとガイアス。時折見えるガイアスの顔を見ると、およそ年寄りには見えず。年の離れた兄弟のように若々しい。やはり、何か目標がある、常に上を目指すことが若さの秘訣なのだろうか・・・。そんなことを考えながら歩くプルーナであるが、時折躓く彼女をカレンとエレンが、やれやれと言った様子で支えながら歩みを進めていく。歩き進めて半刻。足下の影と光が一層濃くなってきたと感じたとき、前をゆく2人が立ち止まった。
「さぁついた!もう歩かないから顔を上げて言いよ。私は少しガイアスと外すから、たっぷり見ていってね」
「さっ殿下」
「うん。カレン。エレン。プルーナさんを宜しくね」
「はい」「うむ!」
そう言って、ガイアスと2人でその場を離れていくアルフレッド。もう進まないと言われ安堵して顔を上げると、何やら茶色い壁が目に映った。
「ん・・・壁?」
「プルーナよ、見上げてみよ」
「見上げ・・・うわぁぁ!」
目線を上に移してみると、人が100人は乗れるであろう大きさの青くみずみずしい葉が規則正しく生い茂っていた。
「こっ・・・これって!」
「そうです。この国の象徴である世界樹です。今は、葉の剪定の時期にあたりますので、日が当たりにくく、暗い道も多かったのはそのためです」
「えっ?でも、葉っぱって自然に落ちるものじゃ・・・」
「ええまぁ。落ちることは落ちるのですが、あれだけの大きさです。落ちてきたら危ないので、国で管理をしています」
「それに、常緑照葉樹であるからな。滅多に落ちぬ。じゃからこそ、人の手による剪定でも手を加え、地表に光が届くようにしておるのじゃ。枝を放っておくと、王都を覆ってしまうからの。まぁやつにしてみれば、散髪のようなものじゃな」
「やつ?散髪?」
「エレン」
「たはは・・・そうそう!この時期に摘まれた葉は、煎じて茶として飲まれる。新茶が出回るのはこの王都と近郊のみじゃ。花は初夏に咲き、秋口に果実が実る」
「ん?でもなんで王都とその周辺だけなの?」
「王都および、世界樹の影響範囲から外れると急速に鮮度が落ちるのです」
「さよう。じゃからこそ実も新芽も盗難に遭うことはないのじゃ。まっあれだけ厳重な警備もしているからの」
エレンが目線を向けた先では、話にあった警備兵とアルフレッドが話し込んでいた。笑顔で会話するその様子を見て、改めてこの国で慕われている王子なのだと再認識したプルーナであった。




