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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
107/213

報告

「───失礼いたします」


「入って」


「殿下。ご不在の間のご報告に参りました」

「うん。ありがとう。カレン。彼にお茶を」


「畏まりました」


「座って座って」


「失礼いたします」

「・・・それで。報告内容は何かな?」


「まず一つ、灯台の件ですが、滞りなく完成いたしました」

「早いね・・・」


「はい。カンネ殿が張り切って工事を取り仕切り、何と3刻半で完成いたしました」

「・・・強度に問題はないのかなぁ」


「そこは問題ないかと存じます。白狼石に希白金の棒鋼を用いての建設でしたので。いやぁ・・・足場の組み上げから、白狼石と棒鋼による建設。同時に内部工事を進め、内部の灯の部分の工事。強度を増すための敲き土の上塗り。細部の彫刻に至るまで全てが丁寧な仕事でした」

「・・・君がそこまで言うのであれば、確かなのだろうね。君はたしか・・・」


「はい!学術都市で建物について学び、現在は工兵隊に所属しております」

「うん。以前学園の視察に行った時に、熱心に王都の1/200の大きさの全域模型を製作しようとていたよね」


「覚えておいででしたか!」

「うん・・・。あれ、相当細部にまでこだわっていたから・・・崩させたんだよね・・・。その節はごめんね」


「いえ。軍属になって痛感いたしました。都市全域がわかる、俯瞰することができるということがどれだけ危険だということが。あの時の殿下のご英断。感服いたします」

「まぁ・・・あの時も商業用の港と市場。それに船や人なんかが主で、建物は未完成だったのに・・・。よくできていたと思うよ」


「ありがとうございます!」

「──話をそらせてしまってごめんね。続けて」


「はっ。商業区に関してですが、プレズモ殿のご要望により、煉瓦と石材にて建屋の建設を行うこととなりました」

「へぇ。それまたなんで」


「街の顔になる場所だから、白で統一よりかは見知った煉瓦で造られている方が来訪者も安心するだろう。と申しておりました」

「なるほどね。確かに、全てを白狼石で造ると街に統一感は出るけれど、観光地としては味気ないか。真夏でも日差しが強いわけでもないしね。白くする必要もないか」


「はい。それと、鉄や鋼材に関してですが、ストルネ殿の指揮のもと昼夜交代制での鍛造を開始いたしました。曰く、食料も潤沢にある今が好機。と申されておりました」

「食料は?」


「全ての方に配給は完了しております。流石にあの量でしたので、残ったものは館の冷蔵保管庫に移管しております。また一部に関しては、種籾として保存しております」

「魔核の方は?」


「はい。鍛造に用いる熱源として使用を開始しております。また、殿下からお話があった見極めに関してなのですが・・・」

「何かあった?」


「はい・・・。魔核と普通の石を見分けられたのは、ストルネ殿とカンネ殿それとプルーナ殿と────」







「────そうか。うん。報告ありがとう。もう一つ君たちにお願いをしてもいいかな」


「何なりとお申し付けください。殿下の手足となって働きます」

「明日にはまた王都に戻り、儀式の準備に入るんだ。そうすると、この島を空けることになるから・・・」


「畏まりました。治安維持活動に入ります」

「うん。なんか、任務の上に任務を言い渡してしまってすまないね。ただ、あんまり露骨にやると、露見してしまう可能性が高いから」


「いえ。我々は殿下のお役に立てる事こそが至上の喜び。活動には細心の注意を払い、目立たぬように心がけます。我々の人数が少ないので、そこまで目立つことにはならないとは思います。しかし、念には念をいれて行わせていただきます」

「よろしく頼むよ」





「あれぇ・・・」

「どうしたプルーナ」

「あっ!提督。・・・いやね、さっきまでここに魔核と鉄鉱石、鉄材と鋼材を置いておいたんだけど・・・」

「ん?言っているものはここに置いてあるが・・・」

「数が足りないんだよ。あたしさ、砲撃手だからさ。弾の数を数えているうちに、自然と置いてあるものの数の把握ができるようになったんだ」

「・・・ほう。それは初耳だ」

「あれ!?そうだったっけ。ごめんなさい。報告していなくて」

「今はよい。今後は気を付けてくれ。個人の能力の把握も儂の務めだからな」

「はぁい!」

「うむ。それで、何がいくつ足りない」

「えっと・・・鉄鉱石の塊が5個と魔核が────」





「・・・・・・・」





「はぁ・・・」

「いかがいたしました?」

「いやっ。どこも一枚岩な組織ってないんだなぁって」

「なんじゃなんじゃ?何かあったのか?」

「さっき、報告に来てくれていたでしょ?その報告の中に気になる点があってね────」

「───ほう」

「───それは・・・由々しき事態ですね」

「うん。しかも私たちは、明日からまたしばらくの間この島を留守にしなければならない」

「そうか・・・。もうそんな時期か」

「この島に来てひと月が経ちましたか」

「うん。早かったね。私ももうすぐこの国の後継者になる。といってもまだまだ父上には頑張ってもらわないとだけど」

「しかしアルよ。王太子ともなると他国には漸う指図できないのではないか」

「まぁ・・・そこはストルネ殿の力次第だし・・・。それに・・・直接手を下すことなく、都市建設が行えるであろう人材の確保にも目途が立ってきたしね」

「それは確かにのぅ。じゃが、育てるのに時間がかかるのではないか?」

「そこは、さんちゃんにも手伝ってもらうから心配いらないよ」

「ほむ・・・」

「私としましては、護身術も身につけさせたいと思っております」

「うん。常に安全な場所にいるってわけにもいかないからね。それは必要かもしれない」

「ワシは、見どころのあるものに精霊魔法でも教授するかの」

「うん。全員普人族ってわけでもなさそうだから、多分教えられる子はいると思う」

「うむ!」

「場所は・・・」

「私が教える場合は、館の講堂を使うとして・・・」

「では、護身術に関しては庭で行いますね」

「それでは、きれいな庭が崩れてしまうではないか!」

「エレン・・・。不壊の結界を張ってはいただけませんか」

「・・・今日の夕食の甘味一つ増量で手を打とう」

「ありがとうございます」

「・・・それでいいんだ。ところで、エレンはどこで教えるつもりなの?」

「そこまで人数がいるとは思わんのでな、ワシの作業場で教えるとする」

「わかった。・・・じゃぁ明日からの英気を養おうか!カレン。今日の夕食は?」

「本日は、小麦が手に入りましたので、白麺麭に白蒸煮肉になります」

「ほう」

「牛乳と牛酪は・・・?」

「王都に行った際に手の者に買ってきていただきました」

「なんとまぁ・・・。職権乱用じゃな」

「───エレンはいらないということで・・・」

「だあぁ!そのようなことは言うてはおらん!」

「ははは・・・。エレンもカレンも程ほどにね。カレン、いつも食事の準備をしてくれてありがとう」

「いえ。滅相もございません。さぁ、食堂の方へ。甘味も良いものをご用意しておりますので」

「おっほう!なんじゃなんじゃ今日の甘味は!?」

「内緒です」

「むぅ・・・」

「楽しみは・・・取っておくものでしょう?」

「・・・それもそうじゃな!」




〇〇〇




「・・・まさか・・・まさか・・・。いやっ。しかし・・・こんなことで立ち止まるわけには・・・」

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