起動
「それでアル坊。待っていれば、向こうから勝手に物資が送られてくるんだよな」
「ええ。確りとそのように定義づけを行った、魔法陣を描いていますから」
「それにしては・・・」
「遅い・・・よな」
「アルフレッド殿が申しあげられたことを思い出すと、陣の上に物を置くと瞬時に送る。であったと記憶しておりますが」
「それで合っていますよ。ストルネ殿」
「向こうでは、子どもたちが差配してたんだろ?あいつらに限ってこんなに時間がかかるってこたぁないと思うんだがなぁ」
「何か問題でも起こったのでしょうか。アルフレッド殿」
「うぅん・・・」
私とカレンが島に戻ってきてから早二刻が過ぎようとしている。魔法陣に欠損はない。送受信に関しても定義づけは完璧。なのに送られてこない。ストルネ殿とプレズモさんからは心配する気配が漂ってくる。私も若干心配・・・。
「あっ!!」
「どうした!?」
「いかがいたしました!?」
「忘れてた・・・」
「何をだ?」
「魔法を使う上での注意を・・・説明するのを」
「「えっ!?」」
「―――今から戻って「大丈夫ですよ」カレン?」
「大丈夫って・・・カレン嬢。一体どういうことだ?もう二刻も経っているんだぞ?」
「まぁ・・・この遅れに関しては、私も想定外の事態ですので、何とも申し上げることはできませんが、少なくとも陣の使い方については、確りと伝わっているはずです」
「えっ・・・だって・・・」
「アルフレッド様。私は、離れたところでエルさんとお話ししておりました」
「うん・・・。ってまさか!?」
「はい。エルさんに魔法陣の使い方を教えしておきました」
「ほう・・・。エルにか」
「だっ・・・大丈夫」
「問題ないかと。ですよね」
「おう。しっかし、良く見抜いたな」
「彼女・・・。年は一番若いようですが、頭の回転はお子さんの中で、光るものがありますよね」
「・・・ああ。あいつは一番賢い」
「確かに・・・知性はとても感じられたけど・・・」
カレンの言うことに若干疑問符を浮かべたが、それも受信を知らせる魔法陣の輝きによって、霧消した。
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「なぁピルス。この魔法陣どうやって使えばいいんだ?」
「わからないわ。だって・・・説明を聞いていないんですもの」
「・・・だよなぁ。とりあえず、送る物資は置いてはみたものの。一向に送られる気配がしない」
「ええ」
「───お姉ちゃん。お兄ちゃん。その魔法陣は、人が乗っていると動かないんだって」
「エル」
「エル・・・あなた、どこでそれを?」
「カレンお姉ちゃんが教えてくれたの。『この魔法陣には、安全上の観点から人が上に乗っていると発動しません。無生物が乗っているときに限ってのみ、魔法陣の上に載っているものを送受信します。物が載っている方から無い方へと。今回、ここにある魔法陣は送る側なので、送信する物資を置いた後は上に人が載らない状態を10秒間作ってください。そうすることで、自動的に物資を送ります。反対に受信する場合は、魔法陣の光が収まった後に載っているものを運び出してください。その際、必ず1人は魔法陣の上に乗っていてください。そうしないと、10秒後に送り返されてしまうので』だって」
「エル・・・お前・・・。露見したのか?その力」
「うぅん・・・アルフレッドお兄ちゃんとカレンお姉ちゃんは、さいしょから気づいていたんだと思うんだ。でも、あの2人なら・・・いいと思って」
「─────そうね。お父さんが信じたお人だもんね」
「────ああそうだな。父さんの人を見る目は確かだからな」
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『エルさん。貴女は・・・。いえ。御兄弟皆さんが特殊な力をお持ちですね』
『なんのこと?』
『隠す必要はありません。貴女は記憶能力。・・・もとい、聞いたこと、見たことの全てを完全に記憶することができますね』
『・・・』
『ここで見たことに関して、今はまだ御兄弟には内緒にしてください』
『ええぇ・・・なんでぇ?なんでしゃべっちゃダメなの?』
『・・・。聡い貴女ならおわかりでしょう』
『エル。むずかしいことわかんない!』
『はぁ・・・。いい加減信用していただきたいのですが・・・』
『えぇ・・・だってぇ『肝心なことを隠すやつを信用しちゃぁいけねぇ』ってお父さん言ってたもん!』
『・・・声までプレズモ様にそっくりとは』
『あっ・・・』
『ふふ。でも、貴女のお父上の仰っていたことは正しいですね。確かに、肝心なことを言いそびれていました。アルフレッド様は御兄姉方全員が揃った場で、お話しするとのお考えです。ですので・・・』
『見たことを話しちゃいけない・・・』
『ええ。私とエルさんだけの秘密ですね』
『わたしとカレンお姉ちゃんだけの・・・』
『ええ。秘密・・・守っていただけますか?』
『あい!秘密・・・絶対守るよ!』
『ふふ。ありがとうございます。それと、エルさん』
『なぁに?』
『貴女の体質についてなのですが』
『・・・?』
『詳しいであろう人物がいますので、次回必ず連れてきます。その人に見てもらえれば、魔法が使えるようになるかもしれません』
『本当!?』
『ええ。それまで良い子で待っていてくださいね』
『あい!』
『それでは、皆さんのところに行きましょう』
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「・・・ル!おいエル!」
「はっ!なぁにモルトお兄ちゃん」
「なぁに?じゃないよ」
「急に動きが止まったと思ったら、急ににこにこし始めて・・・」
「えっ」
「気味が悪かったぞ」
「むぅ!しゅくじょに向かってその言いかたは、いくらお兄ちゃんでもゆるせないぃ!」
「うわっ!イテテ!やっやめろよ」
「むぅ!むうぅ!」
「まったく・・・。いつも一言多いって言っているでしょう!エルもほらやめなさい―――!」
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「カレン。助かったよ。ありがとう」
「いえ。滅相もございません」
「しっかしまぁ・・・凄い量の鉄と鋼材。それに麦と・・・」
「エルフ麦ですか?」
「おぅ。すげぇなこの量。あと少なくとも1年は、問題なく過ごせるだろうな」
「ええ。正直、ここまでの穀物を送ってくるとは想定外でした」
「アルフレッド殿!この鉄と鋼材は自由に使って本当によろしいのですか!?」
「ええ。艦の修理にご自由にお使いください」
「―――本当に何から何まで・・・。忝い」
「ははは。お礼なら、プレズモさんとそのお子さんに言ってあげてください」
「───プレズモよ。感謝する。ありがとう」
「よせやい!おらぁなんにもしてねぇ。礼なら俺の子どもたちに言ってやってくれや!提督」
「うむ!必ず儂自ら礼を────」
「そうそう。エレン」
「なんじゃ。ワシを置いていったカレン」
「はぁ・・・。いい加減、根にもつのはやめてください」
「フン!・・・それで?いったいなんじゃ。声まで小さくして」
「実は、診てもらいたい子がいるのです」
「・・・先ほど話に出ていた子どもか?」
「ええ。アルフレッド様も私も、その子どもが本来持っているであろう魔力を感知できませんでした」
「ほう・・・。それで。アルはなんと?」
「魔力がない・・・と」
「ほぉ・・・。あいわかった。王都に帰った際には必ず診てみよう」
何やらカレンとエレンが話しているけど、魔法陣の上から動けないから話に入れない・・・。いくら大丈夫って言っても、誰も中に入ってくれないんだもんな・・・。確かに、急に重いものが現れたら驚くのはわかるけど・・・。上から落ちてくるわけでもないのに・・・。
皆がせっせと魔法陣の上から船渠や食料保管庫に物資を運んでいく姿を見ながら、少しつまらなそうにその様子を見つめるアルフレッドであった。




