母子の会話と新しい出会い
「そう言えば、王妃殿下はなぜ・・・」
「なになに!?カレンちゃん。私のこと気づけなかったの?」
廊下を2人で歩いていると、後ろから母上の声がした。どうやら、その存在に気付いていない?ことに満足いっている様子の声音であるが。
「いえ。アリス様。私はなぜ、給仕姿で国王様のお部屋にいらしたのか、疑問に思っただけです」
「ええぇ・・・。だって、全然気づいているそぶりを見せなかったじゃない!」
「母上。いくらお姿を変えられても、その人が持つ魔力は変えられないものです・・・。ただ、今回は気づくのが少々遅くなりました。よく体内魔力を変質させることができましたね」
「でっしょう?知り合いからね、教えてもらったの!だけど、少しの時間しか変質させられないのが玉に瑕よね。知り合いは、掛け直しはするけれど、一日持つって話していたもの。まだまだ精進しないと」
「・・・。なぜ、王妃殿下はあのような格好で?」
「新しい技術を身につけたんですもの!驚かしてみたいじゃない!まぁ・・・あまり驚いてはくれなかったから、残念ではあるけれど。そうそうアル!」
「はい」
「久々に手合わせしましょう?」
「・・・。いえ。私はやることがありますので・・・。そういうのは、士官たちと」
「だって、あの子たちだと運動にもならないんですもの。───も・し・か・し・て、負けるのが怖い?」
「はぁ・・・。母上と手合わせすると、陣を描くための力まで使ってしまうので、本日はできないと言っているのです」
「むぅ・・・。じゃじゃじゃじゃぁ!いつできる!?」
「いつと言われても・・・」
「あの・・・アリス様。アルフレッド様は、儀式も控えておりますので・・・。無理を強いるのは・・・」
「そうねぇ・・・。あっ!そうよ!代わりにカレンちゃんやりましょうよ!私、一度でいいから、神獣と闘りあってみたかったのよ!」
「あの・・・。私は、アリス様を傷つけることができませんので・・・」
「母上。カレンに無理を言わないでください。私とその家族に手合わせと言っても、手を出すことなんかできませんよ。彼女は、誇り高い神獣なのですから」
「・・・その割には、アルにべったりで、骨抜きのような感じだけど・・・」
「何か言いました?」
「いえ。別にぃ。ああぁ・・・。誰かと思いっきり手合わせをしたいわ!」
「はぁ・・・。儀式と式典が終わって、手が空きましたらいいですよ・・・」
「ほんと!?本当にいいの!?」
「はい・・・。「やった!」ただし!」
「なぁに?」
「体術と武器なしで。ですが」
「ええぇ・・・。それだったらアルの圧勝じゃない!それは嫌っ」
「なら、この話はなかったことに。行こうカレン」
「はい」
「むぅ・・・」
そう言って、母上の前から去ろうとすると、諦めきれないのか、自分のやりたい形式での手合わせの話をしてきた。しかし、私も譲る気はないので、確りと断りながら歩を進めていった。
──
───
────
「だぁかぁらぁ!体術ありの武器無しでいいってば!」
「どちらも無し!そうでなければできません!」
「本当っあの人に似て頑固なんだから!」
「母上も頑固ですよっ」
「─────似た者通しの母子ですね・・・」
「「なんか言った!?」」
「いえ。何も」
「王妃殿下!アルフレッド殿下!それにカレン様!」
「あら?」
「話している間に着いたようです。というわけで、今回のお話はここまでということで。武器と体術なし。魔法のみでない限りは手合わせしませんから」
「むぅぅぅ!」
「私たちは、仕事がありますので。母上もお早くお戻りください。執務が滞ってしまいます」
「儀式の時にまた話すわ!覚えていなさい!」
「早くいってください!・・・ほら言わんこっちゃない」
「────下!王妃殿下!どちらに!?」
「はぁ・・・わかったわよ。今行くわッ!また後日ね。身体に気をつけてね」
「母上こそ。また近日中とはなりますが、お身体に気を付けて」
そう言って、母上と挨拶を交わし、執務に戻っていった。
「・・・申し訳ありません。話の腰を折ってしまって」
「大丈夫!いつものことだから。気にしないで?それよりも君は?」
「はっ!申し訳ありません!私は、プレズモが長男。モルトにございます」
「あぁ!うん!話は聞いているよ。宜しくね!」
「はっはい!そしてこちらが」
「お初にお目にかかります。プレズモが長女。ピルスと申します。本日は、よろしくお願いいたします。アルフレッド殿下。カレン様」
「うん。宜しく」「よろしくお願いしますね。モルト様。ピルス様」
「様だなんて・・・」
「兄上。ほら、確りして!」
「ごっごめん。んんっ!殿下。カレン様。こちらへ」
そう案内されてついていくと、王宮内で空き倉庫となっていた場所に、目を見張るほどの物資が積まれていた。
「先ほどまでは、鉄と鋼材のみが積まれていたのですが、ほんの少し前に、これだけの小麦などが積まれていきました」
「さすがは父上。仕事が早い」
「アルフレッド様」
「あぁごめん。さぁ私の仕事をしないと!」
「殿下。城の衛兵の方が、こちらにお描きください。と」
ピルスに連れられてきたのは、扉一枚隔てた隣の空き倉庫だ。この辺りは、王宮でも旧倉庫という位置づけで、本当に必要であるとき以外は、使われない場所だ。緊急時の避難場所としても使えるよう頑丈なつくりにもなっているが、今のところはその理由で使われたことはない。
「ここなら十分な広さがあるし、魔法陣も描ける。さぁ書き始めるから、隣の倉庫から、運搬する準備をお願い」
「─────そちらの方は、すでに何人かの弟妹が動いております。合図一つで動き始めますので、ご安心を」
「さすがだね。よし!頑張っちゃおう!カレン。墨と筆を」
「畏まりました」
「2人は、私が合図するまで、隣の倉庫に居てね」
「「はい。畏まりました」」
2人が隣の倉庫に移ったことを確認し、カレンに閂をかけてもらう。
「よし。さんちゃんお願い」
『「カシコマリマシタ」』
そう。さんちゃんの存在は、あまり多くの人に知られたくはない。正式に後継者となったら、確りと情報を開示しては行くけれど、今はまだ・・・。
『「サギョウ カンリョウシマシタ」』
「ありがとう。さんちゃん」
『「イエ デハマタ」』
「・・・すごい!」
「───えっ!」
「―――!魔力を一切感じない!」
「すっごぉい!ばっと光って、しゅっと描いた!お兄さんすごぉい!」
「えっと・・・君はだれ?」
「ん?んとぉエルはエルだよ」
魔法陣を描いていたら、倉庫内に人がいた。しかも魔力を持っていない・・・。これは、どういうことなんだろう。私とカレンは、想像だにしない事態に頭を混乱させてしまった。どうしよう・・・この子の様子だと、確実に見られてる・・・。
「アルフレッド様・・・」
「うん・・・。エルさん。自分がどこから来たのかわかる?」
「ん?エルはねぇ。あそこから来たのっ」
そう言って指さした先にあるのは、私達が入ってきた扉。そう。通気用の小窓以外でこの倉庫に入るには、私達が通った扉か、搬入口となる大きな扉。この子は小さな通用口を指さしたのだ。たしかに、この通用口私達が入るまで開け放たれてはいたが────。




