豊作の悩み
「最近、小麦の収量が上がってきておるのだ」
「それは・・・。喜ばしいことですね。食糧を消費する民にとっては」
「うむ。そうなのだ。消費する側にとってみれば、日々消費する小麦の値が下がることは喜ばしい。しかし・・・」
「───生産側にとっては苦しい。と」
「その通りだ。それに・・・」
「それに?」
「エルフ麦の収量も上がってきている」
「そう・・・ですか。であれば、国外に販路を求めるのが良いのでは?」
「そうなのだ。しかし」
「陛下。ここからは、このグラノが話しても?」
「うむ」
「殿下。最近農民たちは、新しく開発された肥料を用いて、小麦やエルフ麦の生産を行っておりまする」
「うん」
「そのお陰で、先程陛下が仰った通り、国内ではその在庫が溢れております。故に、値崩れを起こし、都市部に住む民には恩恵が。農村部の民にとっては損害が生まれております」
「であれば、尚更国外に」
「・・・この国周辺地域でも豊作であったとの報せが来ておるのです」
「・・・なるほど。国内での消費にも限界はあるし備蓄の買い上げも限度がある。外に販路を求めることもできない」
「その通りですじゃ」
「・・・であれば、ライラック島で引き取ると言うことも可能ですが・・・問題は金銭的な面。まだまだ商品化できるものを生産しているわけではないし・・・」
「殿下。1つお伺いしたいのですがのぅ」
「ん?」
「外向きには緊急援助として。内々に小麦とエルフ麦を島に持っていっていただくことは可能ですかな?」
「勿論。それは可能ですが・・・何処から捻出するので?」
「国庫の備蓄・・・3年前から昨年度までに保管されているものを放出する」
「えっ!大丈夫ですか父上!?」
「それを補って余るほどに穫れているのだ」
「・・・わかりました。今回の輸送で、いただいていきます」
「助かる」
「殿下。儂からもありがとうございますじゃ」
「陛下。少し宜しいですか」
「うむ。カレン殿」
「酒を造ることはしないのですか?」
「勿論、酒造も行っているし、製粉も行っている。が、それを上回る程の収量なのだよ」
「なるほど・・・。であれば、家畜の飼料には?」
「それも勿論実行済みなのだ」
「畏まりました。申し訳ありません、私の質問にお答えいただいて」
「なんのなんの!また、何か思いついたら何でも話してくれ」
カレンはカレンで、消費について考えてくれているらしく、父上に質問をし終わると、軽く礼をしてまた考え込んでいた。
「陛下。ライラック島では、未だに馬鈴薯生活なので、エルフ麦は磨かれたものを。小麦は粉にしたものをいただけると助かります」
「うむ。手配しよう。あとは何かあるか?」
「そうですね・・・」
「コカトリス・・・家畜化された毒鶏を数羽いただけませんか」
「ふむ・・・カレン殿。生き物を持ち込むというのは・・・」
「確かに、生き物を島に持ち込むのは、生態系を狂わせる一番の原因。ですが、アルフレッド様の異空間で飼育できれば」
「・・・できるのか?アル」
「可能不可能で述べるなら、可能です。だけど、管理をする人員がいないよ?」
「島にいる手の空いた土人形たちに仕事を与えれば宜しいのでは」
「なるほど。そうすれば・・・」
「あの鳥はすぐに増える。肉も卵も旨い。よし!話を終えたらすぐに手配しよう」
「ありがとうございます」
「陛下。飼料用にもう少し小麦をつけましょう。そうすれば、値崩れを防ぐことが可能になるかと。ふぉっふぉっ」
「そうだな。アル。カレン殿。助かった」
「いえ」「とんでもありません」
「では、準備が整うまで自由にしていてくれ」
「はい。それでは、失礼します」
父上の部屋から退室し、自分の部屋に戻る道中、カレンに毒鶏の事を聞くと、いい加減、魚生活に飽きてきたので。となんとも食いしん坊な返答が帰ってきた。たしかに、肉がなかったのは寂しかったから・・・。これで食卓に彩りも出るだろう。




