懐かしき顔
「っと。到着!」
「───ここは・・・地下?ですか」
「正解。宮殿内の使われていない倉庫の1つさ」
「・・・勝手に使っていらっしゃるのですね」
「いやいや。父上と母上には確りと許可を取っているさ。他の者達は知らないけれどね」
「はぁ・・・。それで?今日は」
「多分ここに着いたことは、2人にはもう伝わっているはずだから、挨拶には行かないとね」
「───畏まりました。お供いたします」
「そんな大仰な」
「いえ。必要なことですので」
「?それじゃぁ頼むね」
カレンと少し話た後、正面ではなく陣の後ろにある岩壁を叩く。すると、一瞬揺らいだと思うと目の前に階段が現れる。
「アルフレッド様?これは?」
「ん?あぁ。これを登ると私の衣装部屋へと通じているんだ」
暗く少し湿った石造りの階段を上がっていく。窓は勿論明かりもないため、光魔法で足下を照らしている。
「───だからお部屋にいらっしゃらない時があったのですね」
「あはは・・・。ただ、注意してね。ここは私がいないと通れないから。普段は本当に石の壁だし、この陣も私にしか反応しないように制限しているから」
「───はぁ・・・宮殿から外に。外から宮殿に。宮殿内の誰にも露見せずに出ていたのはこういうことだったのですね」
「まぁね!カレンにも今まで露見しなかったし。その答え合わせみたいなものでもあるかな」
「まったく・・・どれほど宮殿内の特に近衛たちが心配したか」
「まぁまぁ。こうして無事なのだから。ね?」
「はぁ」
カレンに何回も溜息を吐かれている・・・が、今後も止める気はしないっ!とそんなことを考えているうちに、衣装部屋前の壁に着いた。
「ここも石造りの壁ですが」
「ここは一方通行なんだ。階段側からしか入れない。行くよ」
カレンに手を差し伸べ、手を繋いだ状態で壁をすり抜ける。若干彼女の顔が赤かったのは、多分・・・。
「っと。着いたよ」
「あの・・・アルフレッド様。そろそろ」
「あぁごめん。手を繋いだままだったね。さてと。部屋から出る前に・・・こらっ!私の布団で寝てるのは誰だっ!」
「ぴっ!なっなんで兄様がここに・・・」
「アンナ・・・。また私の寝台に潜り込んで」
「いやっこれは・・・。そう!そうです!干して暖かくなっていた布団に倒れ込んだだけなのです!」
「干すのは明日の予定かと。全ての側仕えは、決まった計画で動いておりますので」
「ぐぎぎ・・・。そッ!そう言えば何故、兄様たちはここへ?」
「ああ。城に見習たちがいるだろう」
「ええ。最近入ってきた、年端もいかぬ者達がおりますが」
「その子たちが集めた資材を受け取りに来たんだ。それと、父上と母上に挨拶しようと思ってね」
「なるほど・・・。お2人は今私室に居られますよ」
「わかった。ありがとう。また、儀式の時には帰ってくるからさ」
「───!はい!お待ちしておりますね兄様!」
「うん。でも、もうこの部屋からは出るように。人が居ない間に寝台に寝転ぶなんて、淑女として恥ずかしいからね」
「・・・はい」
私に注意されて、すごすごと部屋を出て行くアンナ。私達は彼女と別れ、父上の私室へと向かった。
「それにしてもなぜ、アンナ様は驚かれなかったのです?」
「───一緒に何度か城下に行っているからね」
「・・・兄馬鹿ですね」
「あはは・・・今後は控えないとね」
「そうしてください」
「それにしても・・・やっぱり遠い」
無駄に長い廊下を歩き、父上の私室の扉を叩く。勿論、扉の両脇には近衛がいるけれど、そこは顔なじみなので。でも、変装上手な者がきたらどうするのか・・・。一度話し合わないといけないな。
『入りなさい』
「失礼致します。国王陛下並びに王妃殿下。一時的にでは有りますが、アルフレッド。ただいま戻りましてございます」
「うむ」「お帰りなさいアル」
「───おや?」
挨拶を終え、顔をあげるとそこには懐かしい顔が。
「大変お久しぶりにございます。アルフレッド殿下。いやっ王太子殿下ですかな。ふぉっふぉっ」
「グラノ元農務卿!まだ王太子ではありませんよ。ご体調の方はもう大丈夫なので?」
「ええ。ええ。この通り。外に出歩けるまでになりましたよ。ふぉっふぉっ」
「それは良かった。でも何故。父上のもとに?」
「それはですな」
「グラノ。それは余から説明する。2人とも席に着きなさい。誰か茶を」
「はっ」
「───なにかあるのですね」
「実は────」




