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五十六話 なんか転校生みたいな扱い

 

 その後、魚住先生は俺の反応に苦笑いしながらも自身の机の中を漁り、ある物を手渡してきた。

 黒くて四角くて、ポッケに入りそうなぐらい小さい物。


「これは君の生徒手帳だよ。他の皆は入学式の時にもらっているんだ」

「ほほぅ」

「中には君の学生証も入っているから、無くさないようにね」

「ほほぅ...?」


 学生証ってなに?

 生徒手帳を開けると中には一枚のカードが入っていた。

 カードには制服合わせの時に撮られた写真が載っている。

 まだ黒髪の時の純粋そうな俺である。なんか恥ずかしい。

 他には何かの番号や俺の名前、後は生年月日や住所などの個人情報が載っていた。

 確かにこれは無くしたらアカンやつやな。


「因みにこのカードは校内のメディアトリュウムの利用時や試験や資格の取得時にも必要だし、校外施設での学割時にも必要だね。他にも電子決済にも対応してて、校内の自販機や売店、食堂は勿論のこと。更には県内の交通機関や公共施設、商店等でも使えるところがあるから、詳しくは生徒手帳をよく読んで有効活用してね」


 は、ハイテクやぁ!これは凄いコンビニエンスやでぇ!!


 俺がこの凄いカードに感動している間に、魚住先生は更に他のものを用意していた。

 机の上にちょこんと置かれた物。


 折り線がついた紙と、プラスチックの透明な容器である。

 これ、な~んだ?


「後、これは検尿セットね。皆には昨日渡して今日提出してもらってるんだけど、アオノ君には渡しそびれてたんだ。この後提出してもらいたいんだけど、おしっこでそう?」


 け、検尿である。

 なんか恥ずかしいから嫌なイベントの一つだ。

 つか、好きな人はいないはず。え、いないよね?


「えっと、は、はい。出ると思います」


「んじゃ、頼むね」


 ──職員室を出て直ぐにある職員用男子トイレに案内され、そこでチョロロロロ......んで出来たてホカホカを直ぐにプラスチック容器に入れ、更に袋に入れて提出である。


 ホカホカのブツを他人に渡すって、なんかちょっと嫌だよね。

 まぁ受け取る方がもっと嫌なんだろうけど、魚住先生はそんな事微塵も表情に出さずに対応してくれた。

 ほんと出来たお人ですわ、魚住先生が担任でよかったよ。



 その後は聖駿高校についての細かな説明や、午後に部活動紹介の催しがある事を聞いた。


「因みにだけど、今日は採血もあるんだよ。アオノ君は昼飯を食べずに放課後に診断と纏めて済ませるのと、昼休みに採血だけ済ませて昼飯は食べれるって方と、どっちがいい?」


「後者でお願いしゃす!!」


「了解、先生には僕の方から伝えておくから。アオノ君は昼休みが始まったら直ぐに保健室に向かうように。因みに保健室の場所はわかるかな?」


「はい、問題ないです」


 昼飯が食べれないとか、健全な男子高校生には苦行でしかな........ん?あ!?やべ、弁当もってくんの忘れた!?

 .....まぁいっか、昼は聖駿自慢の食堂にでも行こう、うん。


 しかし俺が遅刻したせいでこんなにもお手数お掛けして、ほんと申し訳ない気持ちだわ、反省反省。


「さてと、大分端折ったけどこれで昨日今日の分の伝達事項は以上かな。後はお昼ご飯前の採血と放課後の健康診断は忘れないようにね」


「ありがとうございました。色々とお手数お掛けしました」


「いいよいいよ、これも僕達教師の役目だからね」


 どうやらこれで用件は済んだようで、これから改めて教室に行くこととなった。

 三組前の廊下に着くと、ここで待つように言われ、先に魚住先生が一人で教室へと入っていく。

 え、何も説明受けてないけど、これはどういう流れ?

 俺はしれっと後ろから入って何食わぬ顔で合流するつもりだったんやが...。


 緊張しながら待つこと少し、中から自分を呼ぶ声が聞こえてくる。


「アオノ君、入ってきて」

「は、はい」


 言われるままガラガラと扉を開けて中に入ると、先ずは笑顔の魚住先生が目に入り、そして辺りを見渡せばクラスメイトの好機の視線が突き刺さる。


「はい、先程も説明した通り。一身上の都合により今日から登校してきたアオノ君です。皆さん、仲良くして上げてください。アオノ君、簡単でいいので自己紹介をお願いします」


 な、なんだこの転校生のような紹介の仕方は!?

 え?自己紹介!?ここで?聞いてないんですけど!!

 教壇の前に誘われ、空気に逆らえずそこに立つ。

 前を向けば、皆が何かを期待するように一心にこちらに視線を向けている。

 知らない人ばかりの教室、顔見知りなんて、あの九頭龍ぐらいだ。

 気になってチラッと視線を向ければ、当の九頭龍本人はなんかニヤニヤしながら楽しむようにこちらを見てきている。

 あいつ、やっぱムカつくわ。

 だが幸か不幸か、アイツのあのムカつく顔を見たら少し緊張が吹っ飛んでいた。

 今回ばかりは感謝しとくぜクズ野郎!

 よっし、いっちょ決めてやる!

 なんせ、ここからが俺の青春無双の始まりなんだからよ!!



 そう覚悟を決めた俺は勢いのまま教壇に手を付き、前のめりになりながら、声高々に言い放った!



「俺はアオノハー───ぶぇックション!!あー.............失敬」


 何か知らんが、急に鼻がムズムズしてクシャミが出た。

 いやいや、なんてタイミングだよこれ。

 皆ポカンとしちゃってるよ。

 花粉?それとも先程のチョークの粉が髪に残ってたのか?

 取り敢えず原因が何であれ教室は何とも居た堪れない空気となっていた。ズビ


 へるぷみー。


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