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四十三話 続緊急クエスト、そして完

 

「────はい、奥さんは多寿軽総合病院の方に搬送されるとの事です。───はい、分かりました、伝えておきます、はい、でわ………ってな事らしいですよ、奥さん、旦那さん仕事切り上げてすぐ来てくれるってさ」


「よかった……ありが、とう、ござぃます…」


「いいって事です。奥さんも旦那さんが来るまでファイトですよ!」



 まぁそういう事です──って言ってもわからんよね?

 ざっくり今の状況を説明すると、救急車到着からのお兄さんも一緒に乗ってください!で奥さんと一緒に救急車の中へ、それから旦那さんに連絡が通じて状況説明、今ココって感じ。


 今向かってる多寿軽総合病院はそんな遠くでは無いが時間的に遅刻確定している俺としてはもうどうとでもなれって感じで奥さんに付き添うことにしたわけだ。

 見ず知らずのガキでも誰かが近くにいてくれるだけで少しは安心だろうし、居ればこうして救急車や旦那に連絡したりもできるし何かと役にはたてるだろう。

 現にこうして手を握って頑張ってくださいと励ますだけでも奥さんの表情に少しの安堵が見て取れる……たぶん。


 病院には直ぐに到着し、流れるように運ばれて行く奥さんに俺も着いていく。

 向かう先は陣痛室?分娩室?まぁ既に破水が始まっているらしく、すぐに出産準備になるとのことだ。

 俺は部屋の前で看護師に呼び止められ、色々と説明を受けつつ何やらそのまま受付の流れになりそうだったのでそこは事情を説明して後から来る旦那さんに丸投げした。

 え?俺?他人です。


 部屋の前で待ちぼうけしていると、旦那さんからの着信、病院に着いたとの事だ。

 場所を説明すると、暫くしてスーツ姿の汗だくの男性が走ってくるのが見える。

 あれが旦那さんか、イケメンじゃないか、クソ、美人の旦那はやっぱりイケメンってか、世の中不公平だぜ。

 ──まぁいい、俺もチート持ち、いずれは皆が羨む未来が待っている!っていかんいかん、話が逸れた。


 現実に戻ってくると息も絶え絶え鼻水撒き散らしながらの旦那に必死に揺さぶられており、懸命に奥さんの安否を聞かれているところだった。


 俺が無言だったせいで酷く心配を煽ったようだ、すまんぬ。


 状況を説明し、なんとか旦那を落ち着かせる。

 で、安堵して崩れ落ちる旦那を後目に、後は頑張れ!俺はこれから学校なんだ!と颯爽とその場を去った。

 後ろからなにか聞こえるが、もう知らん、流石に学校に行かないと入学式が終わってしまうのだ!あばよとっつぁん!縁があったらまた会おう!


 そして病院を飛び出た俺は学校へと全速力で向かった。


 時刻は9時半ば頃、まだ急げば、なんとか入学式には──


 ──と、思っていた時期が俺にもまだありました。


 それから俺は、落ちていた財布を交番に届けたり、脱走していたボロンゴをしげじいの家に届けたり、ひったくり犯を現行犯で捕まえたりとその他諸々数々のクエストをこなしていた。


 あるぇ?なんでこうなった…?


 気付けば時刻は正午をまわっており、俺は優雅にマックでハンバーガーを食べながらクエスト報酬の確認を行っていた。

 スマホに通知されるかぁちゃんからの鬼着を無視しながら、俺は現実逃避に浸っているのだ。


 どうするべ……。


 既に入学式どころか学校すら終わっていることだろう。

 現に窓ガラスの向こうには帰宅している学生の姿がチラホラとうかがえる。


 ぽてとうまぃ…。


 既に三桁の大台に乗りそうな着歴を華麗にスルーし、最初の緊急クエストの報酬、???であったもの───自身のスマホにインストールされた謎のアプリを眺めながら、必死にサボタージュの言い訳を思案した。


 なんだろこのアプリ…へんな渦巻き…ブラックホールのようなアイコン……。


 ビッグマック美味しい…。


 言い訳どうしよ、正直に言っても絶対信じてもらえないよなぁ…。


 コーラうまし…。


 このアプリ、どこかに説明ないんかな…流石にいきなりタップするのは怖いよなぁ。


 ナゲットヤミヤミー…。


 はぁ…いい言い訳思いつかん。


 アップルパイデリシャスッ!


 とりま、ダメ元で一度学校に行ってみるかぁ。

 クラス発表ぐらい見ておかないとだしねぇ。


 ごちそうさま!マックに感謝感謝して、シャシャッとゴミを片付けたら、気が変わる前にと店の外に出る。よっこらせ。


 こういう時はもう何も考えないに限る、なるようになれだ。


 ここから学校までの近道、運動公園を突っ切ってのショートカット。


 春の陽気に照らされながら、桜舞い散る並木道を楽しげに帰宅する学生集団に逆走して歩いていく。


 だんだんと学校の校門が見えてくる。


 その前で仁王立ちしている幼女と挙動不審な大男の姿も見えてくる。


 あの人影は見覚えがある、凄くある。


 引き返そうとすると幼女からの無言の圧力が増す。

 あ、そうですか、やっぱり行かないとダメですか。


 そして、近付くほどに見えてくる幼女のものとは思えない般若の形相、その背後には某スタンドのような山姥オーラが首かっ切りポーズしているのすら見えている。



 オワタ。


 あぁ…なるほど、今日は入学式ではなく、卒業式…。


 俺の──人生からの、卒業ぉ──



 遠くを眺めながらイイ笑顔──(アンハッピースマイル)


 完。


応援よろしくおねがいしゃす!

がんばりますので!ハルトが!

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