三十話 気付けば幼女
肌寒さを覚え目を覚ますと、日も落ちかけている夕暮れ時だった。
辺りには相変わらず人影もなく、閑静としている。
「ふぁあぁ、寝ちゃってたかぁ……。うーむ、マッスル時間消化もまだ終わってないけど、手伝いに帰らないとかぁちゃん五月蠅いだろうしなぁ…」
まだ覚醒しきってないため、だらけた状態でぼーっと公園を眺めているわけだが、なんか知らんが太ももに違和感というか、物理的な重さを感じるというか。
んで視線を下げてみれば、何故だか俺の太ももを枕にすやすやと気持ちよさそうに眠る見知らぬ幼女。
野生の幼女が現れた──ってなんでやねん、なにこの幼女、誰?
俺のズボンにがんがん涎を垂らしながら、丸まって眠っている幼女、見覚えはない。
たぶん、園児、年中さんぐらい?
見た感じかなり幼い。
つか、ここ数日見知らぬ幼女と遭遇しすぎだろ、幼女キャンペーン中か?
取りあえず、この状態をこの幼女の関係者、または近所の人に見られてもあれなので状況の把握のためにも起こしてみることに。
「おい、起きろ幼女」
「すやすや…」
流石にここまで爆睡してたら言葉をかけただけじゃ起きないみたいだ。
「おい、起きろコラ」
「ぅぐぅー…」
横向きで寝ている幼女の無防備な頬を容赦なく突く、だが起きない。
しかし、柔らけーほっぺただなおい、つんつん──ガブッ
「いった!?おい、噛むな!指噛むなって!?」
こいつ、反撃なのか反射なのか知らんが寝ぼけて俺の指に噛み付いてきやがった。
何つう危険な幼女だ、スッポンか。
何とか指を離させたが、このままじゃ拉致が明かないので少々強引に起こすことに。
「起きろ起きろ起きろ起きろ…」
「うぅぅぅぅ…」
地震もかくやという勢いで揺らす揺らす揺らす──ガブッ
「あいとぅあ!?ちょ、太もも噛むな!まぢでいたい!ごめんて!ギブギブ!」
揺らしてたら歯形が残る程の勢いで俺の太ももを噛みやがった。
何こいつ、サメ?鮫ですか?
つかこいつまぢで寝てるの?実は起きてない?
危険すぎる、迂闊に起こすこともできないなんて。
途方に暮れる俺、まぢどうすればいいのこれ?
どれだけ考えててもどうしようもできないみたいので、諦めて二度寝することにした。
おやすみ!
「へっくしょん!」
あまりの寒さに目が覚めた、辺りは日が落ちていてすっかり真っ暗。
「ここはどこ……あぁ、公園か」
なぜ俺はここに……と、記憶を辿る──そして思い出す。
「幼女…」
視線を下ろせば自分の足。
「あれは夢だったのか……?」
既に幼女の姿はない、だがそこには幼女がいた確かな痕跡が残っていた。
「あのクソガキ…」
幼女の体液ででろでろに濡れたズボン、そして未だに痛みを感じる太ももとくっきり歯形のついたズボン。
まぢで許さん、あの幼女。
なんの目的で、どういう経緯で俺の太ももで寝てたのかは知らんが、この借りは必ず返す。
でも取りあえず今は……
「もう遅いし、帰るか……」
こうして俺は重い足取りで帰路へとついた。
因みに帰宅した俺は手伝いの約束をすっぽかした事により桜子にくどくどと説教を受けた。
ちゃんと状況も説明したんだが、如何せん……
「いや、だから見知らぬ幼女がだな──」
「夢をみるのも大概にしなさい!そんな状況あり得るわけないでしょ!?」
「まぁ確かにそうだが現実に……、それに証拠もほら──」
「なんの液体よこれ!?それに言い訳の為に歯形までつけて!もう!」
っと、こんな感じで信じてもらえなかったとさ。
まぁそりゃそうだわな。
俺だって信じられん展開だったし。
だがあの幼女、現実にいたなら借りは返す、絶対だ。
 




