十一話 マイスイートシスター・エンジェル春香
約束の、毎日投稿!
多分、明日も続きます。
泣く泣くきのこの帝国とカラムーチャン、うめぇ棒を諦めた俺。
レジで「あ、これとこれとこれ、キャンセルで、お願いします…」という時のあの恥ずかしさと言ったらもう。
あれは俺が求めてる羞恥とは違うわ…。
次からは衝動で買い物しないと誓うぞ、多分。
つか、あの米が一袋五千円もするとは思ってもみなかったぜ。値段見た筈なのに、全く気に止めてなかったわ。あっはっは……はは…。
という事で、いそいそと袋詰め中である。
なるべくそれぞれの袋の重さが均等になる様に…、そして重いものは下、軽いものは上に置いていく…これでよし、と。
袋・大が二つと米袋10kg…いけるのか、これ?まぁ、ここまで来たら行くしかないけども。
先ず右肩に米袋を担いでそのまま右手で抑える。
うん、いけるいける。
後は左手に袋二つ持って、いざ帰路へ!
最初はどうなる事かと思ったが、意外と順調に帰れている。
ステータスポイントの効果は抜群のようだ。
確かに俺の力が元10で現在が15。単純に1.5倍も強くなったという事だ。
まぁ本当に単純に1.5倍なのか、そうでないのかはわからないけども。そんな事はどうでもいいだろう。
ポイント振ったら強くなる。
1ポイントでは分からなくても、5ポイント振ればこうして体感出来るぐらいには変わるって事だ。
あぁ、楽しみだ。流石にレベル1で終わりじゃないだろうからな。これからどんどんクエストをこなしてレベルを上げる。そしてステータスにポイントを振っていくのだ。次は何をあげよう?ほんと夢が広がりんぐ。
あ、あとスキルも忘れたら駄目だよな。
ステータス以上に効果を発揮しそうなのがスキルだ。
ポイントも1しか貰えてないし、貴重なのはわかる。
しっかり考えて選ばないといけないわけだ。
おっと。そんな事を考えていたら、あっという間にもう家の玄関前である。
腕に疲れは溜まってるものの、まだ余裕はあるようだ。
流石平均的十五歳男子の1.5倍のパゥワーだ。
一度玄関前に袋と米を置いて、扉に手を掛ける。
ガチャガチャ
そりゃ鍵締めとりますよなぁ。
鍵鍵っと~。
───・・・
あれ?…鍵?
鍵ぃ~、持って出て来たっけ…?
───・・・
どんだけ思い返してもそんな記憶は無いわな。
だってズボンすら履かずに飛び出してきた訳だから!
何やってんだ俺ー!
うおおおおお!?
どうすんの!?かぁちゃんもとぉちゃんも帰ってくるの遅いし、後は──
「何してんの?」
背後から聞こえた抑揚のない冷たいその声に反応して振り返ると、そこにはサラサラ黒髪おかっぱの幼女──マイスイートシスター!春香!!
「天使──ぶべらっ」
「ナニ…?キモイ」
い、痛い、だが、それがいい。
あまりの神タイミングでの妹様登場に感極まって飛びつこうとしたら、見事な右カウンターを喰らっちまったってわけだぜ。
ま、これも、妹の愛情表現だと考えれば、この痛みもまた尊く感じちゃうわけである、でへへ。
「なに気持ち悪い顔してるの……」
「辛!辣!」
あれだ、一応弁解しておくが、妹は俺を嫌って言ってる訳では無いのだ、本当に。
妹は俗に言うツンデレってやつだ。
この辛辣さもまた照れ隠しであって、本当は俺に甘えたいけど素直になれないお年頃ってやつなのだ。
父親似の少し切れ長で感情を感じさせない冷たい瞳もまた、デレの前のツンだと考えれば可愛いものである。
かぁちゃん似の身長(低い)も相まって余計可愛いのだ。
「どいて」
心底嫌そうな顔をしながら俺から視線を外したマイスイートシスター・エンジェル春香は、そう冷たく呟いて横まで来ると徐に扉の鍵を開け出した。
お、俺が鍵持ってないのよく分かったな妹よ、流石妹、さすいもさすいも。
難なく扉を開けてサッサと家に入っていく妹春香。
だが玄関を通る際、ストッパーが効くまで大きく扉を開けて行ってくれている。
荷物を持った俺が入りやすいようにという細かな気配りだ。
あんな冷たくしててもこういう所で優しさと愛が伝わってくるわけである。
一瞥をくれることも無く階段を上がっていく妹の後ろ姿を見ながら俺は一層妹愛を深めるのであった。
うちの妹、マジ天使。




