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戦いの技式  作者: 叢月
修学旅行編
62/76

第60話 学校復帰

         <戦いの技式>


         第60話 学校復帰

〝死ネ…! 何もできない非力な羽虫メ…!!〟




「…うわあああああっ!!? ──ハァ…ハァ…、また…か…」


‐6:35‐ <〔Perspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


学校復帰当日の朝、私は悪夢にうなされて勢い良く飛び起きた。カーテンの隙間から入る優しい光が、冷や汗をかいている私の顔を照らす。


目覚まし時計が鳴るよりも前に目覚めた私は、呼吸を整えてから部屋を出た。普段よりも早い目覚めだが、もう眠気は残ってなかった。


「あらおはよう朝凪。いつもより早いけど…大丈夫…? また今日も…?」


「うん…ちょっとだけ…、おはよう…」


キッチンで朝ご飯を作ってるお母さんに挨拶をして、私は風呂場へと向かった。シャワーで汗を流し、洗面台で髪を整える。


さっきまでの嫌なものを汗と一緒に流した私は、スッキリサッパリ全回復! 激しく脈打つ心臓も落ち着いた。


「朝ご飯できてるけど…本当に大丈夫…? キツいなら無理しなくてもいいのよ…? 学校に電話して…──」


「ううんっ、ほんとに大丈夫っ! だって今日は久し振りの学校だもんっ! あんな悪夢へっちゃらだよっ! 朝ご飯いただきまーすっ!」






‐8:25‐


「──ちゃんと持ち物の確認はした? 忘れ物しちゃダメよ?」


「大丈夫だってばお母さん…、もう5回目だし…」


朝ご飯を美味しく胃にぶち込み、カバンに教科書やら色々なものを詰め込み、いつでも出発できる準備ができた。


私とお母さんは家を出て車に乗り込み、学校に向かって走り出した。


さてさて、私は普段学校には自転車で登校しているのだが、今日はお母さんに送ってもらっている。その理由を説明しよう。


それは昨日、家のポストに送られてきた学校からの封筒。その中には三つ折りにされた数枚の用紙が入れられていた。


それは今日の持ち物などが書かれた用紙と、学校で配られるお便りが数枚。お便りとかなんか懐かしい…前は何も感じなかったのに…。


そして問題は1枚の手紙。どうやら穂岬先生が書いたものらしく、色々書いてある中で私に向けて3つの指示があった。


1つは、登校時間を他の生徒より遅らせること。2つ目は、学校に到着したら教室に行く前に職員室に寄れってこと。


ここまではまあ分かる…、だがもう1つの指示に気になる点があった。


3つ目、学校に()()を持ってこいってこと…。そして出来ればあまり目立たないように、可能なら車で登校するようにとも書かれていた。


車での登校はまあ分かるけど…なんで永刃…? ただ単に見たいからとかじゃない…よね…? むぅ…なんでだろ…?


そんな疑問を頭で巡らせていると、あっという間に学校に到着した。学校は家から車で10分、徒歩で30分位の距離にある。


「じゃあ行ってくるねお母さんっ! 送ってくれてありがとうっ!」


「はいはい、久し振りの学校楽しんでね。帰りは十分気を付けるのよ」


お母さんの車を見送って、私は校門をくぐった。目立たないようにって言われると…どうしてもコソコソしてしまうのは本能なのだろうか…?


逆に目立ってそうな動きで誰かいないか見渡し、私は不自然に身を低くしながらコソコソ中に入った。


誰も居ない物静かな玄関で靴を下駄箱にしまい、忍者の様に隠れながら2階にある職員室を目指した。


でも冷静に考えると今の時間って他の生徒は教室にいるから…こんなコソコソする必要ないな…、普通に行くか…。


私は普通に階段を登って普通に職員室へと向かった。戸の前に立って一息つき、私はゆっくり戸を横に引いた。


「失礼しまーす…、桧凪朝凪ですけどぉ…」


久し振りに顔を出すとなるとやはりちょっと緊張してしまう…。それも先生がたくさん居る職員室ともなれば尚更だ…。


元気に入ろうと思っていたのに、戸に手を掛けた瞬間に萎縮してしまった…。


「──うんっ? おおっ! 来たか桧凪っ! 良かった良かった、先生たちみーんなお前のことを心配していたぞっ!」


元気一杯に出迎えてくれたのは社会の担当教師、言前田(いいまえだ)先生。相も変わらずちょっと声が大きい。


「その件はご迷惑をお掛けしましたが…なんとか無事に戻って来られました…」


私はお辞儀をしながら頭をポリポリ掻いた。そんな私に他の先生方も優しい言葉を掛けて学校復帰を喜んでくれた。


そのおかげで萎縮していた私の元気も、次第に元に戻っていった。


「まだ色々話したいが、先にあっちだな。ほら、あっちで穂岬先生が待ってるぞ」


先生方の横を通り抜けて中央付近まで進むと、2年生を担当する教師のエリアがある。その奥の窓際の席、そこに火の付いていないタバコをくわている人影が──


「──病院(あの日)以来だな。色々言いたいが…とりあえずちゃんとまたここで会えて嬉しいぞ。──おはよう朝凪」


「はいっ! おはようございます、先生っ!」


私は元気に挨拶をして先生と手を交わした。それが済むと先生は近くのイスに座るように指示を出し、言われるままに従って腰を下ろした。


「さーてェ…まずはそれを渡せ、ほれとっとと」


そう言って先生は手を前に突き出した。それ…? それ…それ…、えっ永刃!? 別にいいけれど…危なくないかなぁ…。


そう思いながら私はゆっくり永刃を先生に手渡した。そもそもなんで学校に永刃を持ってこさせたんだろうか…? それも謎のままである…。


「──おぉ…まあまあ重いな…、まあいい…。これは私が預かっておく、失くしたりしないから安心しろ」


「ええっ!? せ…先生が預かっちゃうんですかっ!?」


先生の口から出てきたのはまさかの発言。なんとこの瞬間私の永刃は先生に没収されてしまったのだ…、これには流石に驚きが隠せない…。


「預かるって…いつまでですか…っ!?」


「あ? そりゃお前…卒業までが定番だろ…。自由に持たせちまうとお前のことだ、どうせまた異能犯と戦って大怪我する未来が容易く思い浮かぶからな」


それは──ごもっとも…。なんとなく私もそんな未来が思い浮かぶ…、また入院して学校から姿消しちゃう気がする…。


「──いいか朝凪、三下さんからお前がなんちゃらかんちゃらを継続したって話は聞いてる…。だがお前がウチの生徒である以上、卒業までは私の言うことを聞いてもらうっ! お前が在学中は、隊員として活動することは許さん! 良いな!?」


「うっ…──はい…分かりました…」


先生に面と向かってこう言われては首を横に振れない…。だってイジワルで言ってるわけじゃないって分かるから…。


でもほんとは自分で持っていたい…、今やそれが私の日常になってしまっているからだ…。腰が淋しい…。


少しシュンッ…としていると、パタパタと足音をさせながらこちらに向かって来る誰かの気配を感じた。


「ああっー! 桧凪さんっ! 久し振り~!」


木実(このみ)先生っ! 今日も元気そうですねっ!」


木実(このみ) (のどか)先生──我らが2年B組の副担任を務めている先生で、男子人気NO.1のめちゃかわいい先生なのだ! あと若い! ※25歳


「おうおう、和気あいあいとするのは構わんがそろそろHR(ホームルーム)の時間だ、朝凪(お前)は先に教室に行ってろ。挨拶もしときたいだろ?」


「そうですね、分かりましたっ! じゃあ私は一足お先に──」


「──っとその前に、だ…」


穂岬先生は背を向けて職員室を後にしようとした私を呼び止め、念を押す様に指を立てて私にとあることを告げた。


「いいか…? 他の生徒には…お前がこの2ヶ月間学校に来なかった本当の理由は伏せてある…っと言うより噓の口実を伝えてる…。だからお前もちゃんとその口実に合わせるんだ、いいな…? 間違っても本当のことは言うなよ…絶対だからな…!」


私はゴクンッと唾をのみ込んでゆっくり頷き、職員室を後にした。渡り廊下を通って教室棟に移動し、真っ直ぐ教室へと向かう。


にしても噓の口実か…、そういえば先生内容教えてくれなかったな…。えっ…何の情報もナシで口裏合わせろと…!? キツくね…!?


なんて考えてる間に教室の前に到着した。クラスの皆に久し振りに会う…そう思うと心臓がまたドクンッドクンッと脈打ち始める…。


むぅ…変に緊張する…。変な目で見られたりしたらどうしようとか考えちゃう…、なんか色々不安になってきた…。


──ううんっ! 考えても仕方なしっ! ええいままよっ!


“ガラガラガラ…”


「皆~…おはよ~…?」


また萎縮してしまった…、皆の反応は…──


「おおっ!? オイ皆っ! 朝凪が帰ってきたぞォ!!」


「「「ワアアアアアアッ!!!」」」


なんか予想の斜め135度いく反応が返ってきて逆に焦る…!? 沸いてる沸いてる…!? 軽くフェスみたいなノリ…!?


「よっしゃお前等っ! 担げええええっ!」

「「よっこいしょおっ!!」」


「ヒイイイ…ッ!? 理解追いつかないよ皆ァ…!? あとなんでウ〇トラマンみたいに仰向けなのォ…!? 胴上げより怖いんですけど…!?」


仰向けで担がれた私は、訳も分からぬまま優しく机の上に置かれた。そのまま少し放置され…、その間も何故か皆の視線を凄く感じる…。


必死に状況を理解しようと頭を働かせていると、クラスの女子が数人で私の後頭部をいじりだした。髪をかき分けて何かを探っている様なそんな感じ…。


「──おお…全然分かんないや…、流石って感じ…」


流石って感じ…? 何が…? 全然話についていけない私は、先生の忠告を意識しながら恐る恐る聞いてみた…。


「おいおい…自分の事なのに知らないのか…? 先生からは帰り道に不審者にクワで頭かち割られて、海外の病院で大規模な手術を施されたって聞いたけど…」


引くほど話が大きくなってる…!? ちょっと先生…!? 最初の部分だけでよかったんじゃないですかねェ…!?


なんでわざわざ海外に行かせちゃったのさ…! 余計に話(こじ)れるじゃん…! 合わせようにも合わせづらいわ…っ!


「──うぃー…オラお前等とっとと席着けー。パパッとHR(ホームルーム)終わらせんぞー」


先生が広めた口実に戸惑っていると、当の本人が戸を開けて中に入って来た。色々言いたい事もあるけど…ひとまず自分の席に着いた。


前から二列目の窓際、数ヶ月居なかったけど席は変わらず残っていた。とてもありがたいことだが、これが皆の優しさなのか…単に不人気なのか知る余地もない…。


「さーて…まずはもう皆知っての通り、ようやく朝凪が帰ってきた。えー…まあ傷は完治したっぽいが、一応朝凪の後頭部の扱いには皆十分気を付けるようにな」


聞いたことないぞそんな言葉…、頭はどこだろうと取扱注意だろ…。


「花瓶で叩き割ろうとすんなよ?」


ないってそんな状況…っ!! 世紀末か…っ!!


「それに伴い、ようやくウチのクラスも本格的に修学旅行の話に入る。つーわけで1時間目の総合の時間はその話すっから、しおりもその時配布する」


そっか…もうあと修学旅行まで残り2ヶ月を切ったのか…。班決めとか自由行動の計画とか色々決めないといけない。


まあそもそもの行き先すら分かってないんだけどね。どこになるのかな? やっぱり京都や大阪の関西がベターだろうか? 京都行きたいなぁ、稲荷稲荷。


「そんで一旦この話は切り上げて別の話だが、最近また学校周辺で不審者の目撃情報があったらしい。なんか全身黒ずくめで鉄仮面してたそうだ、万が一見つけても絶対近付くなよ。純粋にヤベー奴だからな」


なんだそのギリギリハロウィンになら受け入れらそうな格好の不審者は…。たまにいるよね不審者であることを隠さない見せ不審者…。


「それじゃあこれでHRは終いだ。お前等授業始まる前にちゃんと席に着いとけよ、でないと教師の本気の体罰食らわすからな」


そう言って先生は教室を後にした。授業開始までは10分弱、その間に私がよく一緒にいた3人とお喋りしなくてはっ! それが楽しみだったとこあるしねっ!


私は席を立つと、まず教室の一番後ろの席に座っているピアスをした金髪の人の下に駆け寄った。


「〝ナキちゃん〟久し振り~♪ わぁ~い、嬉しダイブっ!」


「うおっバッカお前っ!? 躊躇なく飛び込んできやがってっ! 扱いに気を付けろって岬先(さきせん)が言ってたろがっ! 傷パックリ開くぞっ!?」


焦り散らかしながらも全力で私を受け止めてくれたこの人は〝不藤(ふどう) ナキ〟ちゃん、高校に入ってから一番最初に仲良くなった友達。


見た目はギャルっぽくて最初はビクついたけど…、意外と怖くなくて話も合うところからどんどん仲が深まっていった感じです。


「オーオー、あれだけ寝込んでたってのに…相も変わらず元気ダナ朝凪」

「元気は良いこと。でも無理しちゃダメよ」


「〝萌夏(もえか)ちゃん〟!〝(ともえ)ちゃん〟! 2人も久し振り~♪」


ナキちゃんに挨拶をしていると、仲の良いもう2人の友達も集まってきてくれた。久しい再会に笑みが零れる。


私と同じくらいの背丈で、紫髪をサイドテールにしているのが〝鼓橘(こきち) 萌夏(もえか)〟ちゃん。なんだかいっつも眠そうにしてる。


逆にこの4人の中で一番背が高く、長い黒髪を下しているのが〝(しろがね) (ともえ)〟ちゃん。落ち着きがあって大人の(ひと)って感じがする。


「災難だったわね、帰り道に襲われるなんて。これからは家まで付き添うわ、もうこんなことは起こさせない」


「私等の家からはまあまあ離れてるケド…仕方ネーな…。そんなポンポン同じ事が起きるとも思えんケド、朝凪なら可能性大アリだからナ…」


「お前マジで注意した方がいいぞ…? 次は死ぬぞ…マジで死ぬぞ…?」


──私の悪癖と先生の口実のせいで…物凄い罪悪感が心を染める…。方向違いの心配をさせちゃってるのが申し訳ない…、事実を言えないのも含めて…。


でも何はともあれ──ようやく…日常に帰ってきたんだ…。大好きな皆とまた会えて──嬉しい、楽しいっ!




そんな想いでいっぱいになっていた今の私は知らなかった…、後に起こる騒動と、予想だにしなかった悲劇が待ち受けていることを…──




【第60話 学校復帰 完】

朝凪、学生開始! 次回に続く!

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