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戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
60/76

おまけ話 定食屋〝HARUKA〟の悩み

         <戦いの技式>


         おまけ話 定食屋〝HARUKA〟の悩み

「──最近お客さんが減ってる気がする…ですか?」


「そうなんだよぉ…、どうすればいいかなぁ…?」


-定食屋〝HARUKA〟- <〔Perspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


パトロールのお昼休み、英気を養う為に寄ったこの場所は、私の行きつけのお店「定食屋〝HARUKA〟」。


カウンター席に座ってポークソテー定食を注文し、出来上がるのを楽しみに待っていると、大将のAMANA(あまな)さんの様子がどこかおかしい。


気になった私があまなさんに質問すると、スススッ…っと近くまで寄って来て、私にとある相談を持ちかけてきた。


どうやら最近お店に来てくれるお客さんの数が減っている…ような気がしているらしい…。なんだかあやふやな悩みだなぁ…。


「そもそもなんでそう思ったんですか? 私が見た感じ…別に普段と変わってなくないですか? 入った時も特に何も思いませんでしたし」


ここはカウンター6席とテーブル8席が設けられているが、今はカウンター席に私1人、テーブル席は7席が埋まっている。しかも半分は家族連れのお客さんだ。


あんまり大きいお店じゃないし、十分お客さんは入ってる気がするけど…。


「うーん…そう言われればそんな気もしてくるけど…、やっぱりちょっと減ってる気がするんだよね…。──多分()()が原因なんだと思う…」


そう言うとあまなさんはおもむろに入口を指差した。私は席を立って入口の戸を開けると、道路を挟んだ向こう側のとあるお店が目に入った。


「あれは…──「立ち食いそば〝うメーン〟」…? すげえ名前だ…、あれにお客さんがとられてると?」


「そうそう…! いや~…勘違いじゃないと思うんだけどなぁ…」


うーむぅ…、見るからに最近建ったばかりの新しいお店…しかも立ち食いそば…! 確かにサラリーマンとかは好んで足を運びそうだ…。


それにただ〝新しい〟ってだけで多くの人は寄っていくもんだし…、ひょっとしたらあまなさんの言う通り…考え過ぎじゃないのかもしれない…。


「どうすればいいかなぁ…? ポスターとか作っちゃう? 6年目にして初めてのまともなお店の宣伝しちゃう?」


逆にしてこなかったのかとツッコミたくなったが…まあいい案なのではないだろうか。でかでかと店先に貼っておけば目に留まるでしょ。


「てなわけで、はいこれ紙とペンね」


「えっ私が描くんですかっ!? そこは普通あまなさんでしょ!?」


「いいからいいから♪ 一回描いてみて、ほらほら」


私は半ば強引にペンを握らされた。絵かぁ…私あんまり上手じゃないんだよなぁ…、最後にまともに絵描いたのいつだっけ…? 中…? 小…? 幼…?


…まあとりあえずなんか描くか…。──ここをこうして…ここはこうして…、チャームポイントは的確に…できたっ!!


「おお~! 独特だけどかわいいじゃんかっ! ──これはイヌかな?」


「えっ…これウサギ…」


「──…二択を外しっちゃったかー…アハハッ…」


むぅ…やっぱりあんま上手くないかぁ…。──しかしなんで私が動物描くと皆して「イヌ」って答えるんだろうか…、顔四角いからかな…?


前にキリンをイヌって言われた記憶もあるぞ…? 確かお母さんに…。


「まあポスターは後でウチの若いモンにでも描かせるとして…、他に何か方法あるかなぁ? 一応アレはあるけど、スプレー」


「何に使うのかは聞かないであげますね。だから絶対にやらないでくださいよ、お客さんが減る以前にお店が無くなっちゃいますから」


たまーに過激なんだよなあまなさんって…。前にも目標聞いた時に「料理で日本を支配~」みたいなことを言ってた気がするし…。


ってかなんで定食屋にスプレーあるのさ? やる気満々だった? もしかして?


“ガラガラガラッ”


「大将っ! 唐揚げ定食1つ!」

「俺はサバの味噌煮定食ね!」


「はいよー! 唐揚げ1、サバ味噌1ー!」


「「はーいっ!」」


勢い良く戸を開けて入って来たのは2人組のサラリーマン。外回りで疲れていたのか、カウンター席に座った2人は水を美味しそうに飲んでいる。


ちゃんとサラリーマンも食べに来てるし…やっぱり杞憂なんじゃないのかなぁ…。


「──ねえねえ朝凪ちゃん、ちょうどいいしさ…今入って来たサラリーマンにちょっとリサーチしてくれない?」


「えっ…私がですか…」


あまなさんは私の耳元でぼそぼそとそうお願いしてきた。リサーチ…「なんで立ち食いそば屋の方に行かなかったんですか?」っとか…?


それいよいよ私がやる必要なくないか…? むしろそういうアンケートを実際に実施した方が効果的なんじゃないだろうか…?


「お願いお願い! 代金まけるから! たくあんちょっと多めにするから!」


「──しょうがないなぁ…分かりました、やってみます…」


流石にたくあん増量と聞いたらやるしかないもんね。ヨシッ! 勇気を出して聞いてみよう! 異能犯と戦うより全然楽だしね!


私は水を一杯飲み干して深呼吸をしてから、席を1つ挟んで座っている2人組に話しかけた。


「あのぉー…ちょっとお時間いいですかー…?」


「んっ? どうした嬢ちゃん? なにか用かな?」


じょ…嬢ちゃん…? 17歳の女子高生でも嬢ちゃん呼びってされるの…? それとも勘違いされてるのかな…背低いから…。


「えっと…なんでこのお店でお昼ご飯を食べようと思ったんですか…? 他にもお店はありますよね…? 例えばその…向かいの立ち食いそば屋さん…とかァ…?」


極めて不自然さが際立ってしまったが…まあ問題ないだろう…。さあどうだ…! なんて答えるサラリーマン…!


頼むから否定的な意見は出さないでくれ頼むから頼む…──マジで…。


「理由? そりゃあここの料理が上手くて安いからだよ、おかわりも無料だしね。あっちのそば屋にも行ったことあるけど、結局こっちに戻ってきちゃうんだよね~」


「何大将、客足が不安なの?」


「うぇっ!? ──あーうん…実はねぇ…あはははっ…」


一瞬で思惑が全てバレてしまった…。私のせいかなぁ…やっぱり不自然だったもんね…、「とかァ…?」って変に上がっちゃったし…。


でも結果的には良い意見が貰えたし、しかもかなりの高評価。──これ実はあまなさんの考え過ぎでしたパターンも視野に入ってきたぞォ?


「別に心配要らないよ大将! どうせあそこも長くはもたないしさ!」


「そうそう! 良くて4ヵ月が限界でしょ!」


そう言って気さくに笑う2人組。何かが引っ掛かった私はスマホを取り出して、例のあのお店の場所を調べることにした。


えー…検索…検索…、うん…? どれだ…? どこを押せば検索エンジンが出るんだろ…、これかな…? ──違うな…コンパスだこれ…。


私は普段メールと電話以外でスマホをほとんど使わない為、スマホの大体96%を使いこなせていない感じなのだ…。あと単純に機械音痴…。


サラリーマンの1人に教えて貰いながらあの場所のことを調べると、衝撃的な事実が目に飛び込んできた。


今のそば屋の前に弁当屋があって…その前がカレー店…更にその前が中華料理店で…、次がインドカレー…カフェ…グリーンカレー…マッサマンカレー…、──いやカレー店多いな…っ!? そんな要らないだろカレー!


その後も次々と潰れていったお店の数々が続いている…。──なるほど…これで全てが明らかになったわけだ──


「──ってことはやっぱりあまなさんの杞憂じゃないですかァ!! なーにが「最近お客さんが減ってるー」ですかっ! あっちのそば屋の方が大変じゃんかっ!!」


「ありゃりゃ~? おっかしいなぁ~?」


私の言葉に首を傾げておとぼけるあまなさん…。──つまり真実はこうだ…。


まず新しいお店が向かいに建つ→最初のうちは人が入る→でも結局安定のここに戻ってくる→客足が減って潰れてしまう→最初に戻る、の繰り返し。


要は今がちょうど2と3の間くらいにあって、一時的に客足がそば屋の方に傾いているだけなのだ。もう少しすればまたお客さんが戻って来る。


全てはあまなさんの考え過ぎだったということだ。


「あははっ…朝凪ちゃんごめんね巻き込んじゃって…。はい…ポークソテー定食おまちどおー、沢山食べてね?」


安心と申し訳なさの感情が入り混じったあまなさんによって、私の前に定食が置かれた。何はともあれ、これで私も安心して食事が出来る。


割り箸を手に取り、両手を合わせて──


「いただきまーすっ!!」



こうして私はようやくお昼ご飯にありつけた。そしてこの昼食の後──とある宝石窃盗団の1人と戦うことになることを、この時の私はまだ知らない──




【おまけ話 定食屋〝HARUKA〟の悩み 終】

大将と常連の平和なやりとりでした。

[宜しければ、感想やブックマーク等をよろしくお願い致します!]

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