第56話 強さの格
<戦いの技式>
第56話 強さの格
<〔Perspective:朝凪〕>
「──…沙月…ちゃん…!?」
私の前で歩を止めた沙月ちゃんは、私の事を見下ろしたままでいた…。体勢のせいでよく見えないけど…スコップらしき物の柄が見える…。
ヤバい…このままじゃ抵抗も何も出来ない…。滅多打ちにでもされたりしたら…無抵抗のままあの世行きだ…。
むぅ…、せめてもうほんの少し永気が回復してくれれば…切り抜けられるかもしれない…。どれくらい時間が掛かるか分からないけど…。
「朝凪…あのね──」
「オイオイ貴様ァ…!!見てしまったぞォ私はァ…!!」
突然知らない大きな声が、上の階から響いてきた。全く姿は見えないが…確実に味方の誰でもない事が直感で分かる…。
嫌な予感が寒気の様に全身を襲う…、焦りで呼吸が速くなる…。無理やり体を動かそうと奮起するも…やはり体は言う事を聞かない…。
「グレナ様を倒すとは…貴様Maximum!にヤバい奴だな…!だが虫の息なのは運が良い…!ここで私が仕留めてやろう…!どいてろエリカ…っ!」
「えっクロユリ様…!? まさか三階から…!?」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ殺される…!
「食らえーい!究極我流最終奥義っ!! “フライング・Maximum・クロスチョップ”!!」
見えなくても今の私に起きようとしている危機が手に取る様に分かる…。真上から徐々に死が近付いているのを感じる…。
誰か…っ!誰か…助けて…!──縮さん…!桃乃さん…!白唯さん…!胡桃さん…!誰でもいいから助けて…!誰か…──
「やあああああああああああっ!!!」
“ゴォーーーーーンッ!!”
「か…がはァ…!?」
「──ええぇ…!?」
心の中で必死に助けを求めはしたが…助けてくれたのは思わぬ人物…、沙月ちゃんだった…。これには流石にビックリした…。
自由落下してきたであろう敵に対して、手に持っていたスコップの全力スイングが直撃した…っと思う…。実際かなーり鈍い音がしたし…。
「マ…キシ……マ………あうっ──」
「あっ…気絶した…。なんだろう…敵ながらちょっと気の毒…、わわ…っ!?」
ぶっ飛ばされて気を失ったクロユリに顔を向けていると、突然体が回ってうつ伏せにされた。
そこでようやく沙月ちゃんと目が合うと、頭の傍で沙月ちゃんは膝をついて正座で座った。スコップも床に置いて、完璧に敵意が無いのを感じた。
「──ねえ朝凪…どうしてそこまでするの…?こんな…血まみれでボロボロになってまで…なんで私を止めようとしてくれるの…?死んでたかもしれないのに…」
そうだね…実際沙月ちゃんが居なかったら確実に死んでたしね…私…。なんなら今も死にそうではあるけどね…。
「それに私…朝凪の左手刺しちゃって…、本当に…ごめんね…」
「ううん、別にいいよ…?全然気にしてないし、沙月ちゃんも心変わりしてくれたみたいだから私嬉しい…!」
あの時とは違う…私の良く知る優しい沙月ちゃんに戻っていた。上手く言葉で表せないけど…どこかホッとする。
「──ねえ沙月ちゃん…、私たち…友達でしょ…?もっと私を頼ってよ…、困ってるなら相談してよ…、もっと迷惑掛けてよ…、私力になるから…!」
私は沙月ちゃんの目を見て優しい微笑みで答えた。それをうけて沙月ちゃんも優しく微笑み返して、私の頭を撫でた。
「嬉しかったよ…あの時の言葉…──」
“ごめんね…沙月ちゃん…、友達だから…道を間違えて欲しくないんだよ…私…。嫌われてでも…それでも正しくあって欲しいんだよ…私…。ごめんね…ごめん…──”
あの時まだ意識残ってたんだ…、やっぱり漫画みたいに手刀でバタリッとはいかないか…。まあ結果オーライで良かったけど…。
「ありがと朝凪…目を覚まさせてくれて…」
「いいっていいって…!私も嬉しいし、えへへー♪」
これで個人的な悩みは解決した。沙月ちゃんも戻ってきたし、あとは哀薔薇の集との戦いだけ…。他の皆はどうなったのかな…?
とは言えもう私は戦えないし…速く避難しないといけない…。今敵に見つかったら一気にピンチになるし…。
「あっ…ねえ沙月ちゃん、関係ないけど1ついい…?仰向けにするならせめて膝枕とかして欲しかったなぁ…。私頭が痛~い…」
「──…だって朝凪…膝枕したら寝るでしょ…?絶対…」
「──そうだね…寝るね…絶対…」
「──んしょっと…!大丈夫…?痛くない…?」
「うん大丈夫…、ごめんね…迷惑掛けてとか言った矢先に私が迷惑掛けちゃって…。なんかめちゃくちゃ恥ずかしい…」
ちょっと体を休めてから移動する事にした私たちだったが、結局全然体が動くことはなく…沙月ちゃんにおぶって貰う事になった…。
なんかもう色々と申し訳がない…。血で沙月ちゃんの服汚れちゃうし…私最近ちょっとだけ太ったし…。ちょっとだけだよちょっとだけ…3gくらい…。
「えっとそれで…どこに行けばいいの…?先輩たちのところ…?」
「うーん…多分外に出たら関係者がいる筈だから外目指そう」
縮さんたちがどこに居るかも分からない以上…確実に助けが居そうな北側の駐車場を目指す事にした。現在地がどこかあやふやだけど…とりあえず進む。
夕暮れ時までは綺麗だったモール内は、様々な所がまるで廃墟の様に荒れていた。電灯も所々消えていて、向かう先には薄暗い闇が広がっている。
「そうだ、ねえ朝凪…?これから朝凪を仲間のとこに送り届けるのはいいけど…私が行っても大丈夫かな…?斬られたり…しないかな…?」
沙月ちゃんの中にはもう悪い心は無い…。けどそれを知ってるのは私だけだし…そもそも沙月ちゃん自体を他の皆は知らない…。
捉え方によっては…私が攫われてると勘違いをする人も出てくるかもしれない…。うーん…でも流石にいきなり襲ってはこないと思うけどなぁ…。
「大丈夫だよ、もし仮にそうなりそうでも沙月ちゃんはもう敵じゃないってちゃんと説明するから。それにいきなり斬りかかってくる人なんてどこにも──」
「朝凪ちゃーん…っ!!」
突然の呼び声にビクッとしながらも声のする方に顔を向けると、桃乃さんが永刃を構えた状態で2階からこっちに向かって飛び降りていた。
あれは…明らかに沙月ちゃんを斬ろうとしている…っ!? な…なんとしてでも止まって貰わなくては…っ!!
「桃乃さんストップストップっ!沙月は敵じゃないですっ!私の友達です親友なんですゥっ!!」
「えっ!?──わわわわわっ!?」
今にも斬りかかりそうな構えを咄嗟に崩した桃乃さんは、釣られる様に空中で体勢が崩れ、そのまま床に着地した。
“グキッ…”
「はう…っ!?」
「あっ…──」
「あっ…──」
体勢が不安定なまま床に着いた右足は、薄暗くても分かる程に内側に捻った…、そして流れる様に倒れた…。あれは痛い…。
「桃乃さーん…?あの…無事じゃないのは重々承知ですけど…その上で大丈夫ですか…?足…ちゃんと息してます…?」
私の問いに桃乃さんはゆっくり頷いた。正直そうは全く見えないのだが…まあ本人がそう答えたのだからきっと大丈夫なのだろう…。
とは言えどうしたものか…。こんな状態の桃乃さんを置いて先に行くのは非常に気が引けるが…かと言ってずっと沙月ちゃんにおぶって貰うのも申し訳ない…。
本当にどうしたものか…──
「朝凪ちゃん大丈夫…っ!? それに桃乃ちゃんも…っ!? 待ってて今助けるから…っ!とーうっ!」
再び名を呼ぶ声が聞こえ、案の定今度は縮さんが2階と3階を繋ぐエスカレーターの真ん中部分から飛び降りた。
もう「助ける」とか言ってる辺り確実に沙月ちゃんを敵対視している…っ!? と…止めなくては…っ!!
「縮さん誤解ィっ!!沙月ちゃんは敵じゃないからァっ!お願いだから斬らないでくださーいっ!!」
「ええっ!? 先に言ってェ!?」
桃乃さんと同じ様に空中で体勢を崩した縮さんは、これまた同じ様に不安定な体勢で右足を着いた。そして…──
“グキィッ!!”
「ぴゃーーーー…っ!!?」
「うわぁ…──」
「うわぁ…──」
情けなくも悲痛な叫びが…桃乃さん以上に足を捻らせた縮さんから発せられた…。叫びは谺して遠くまで鳴り響く…。
縮さんの悲劇はここで終わらず…、その後着いた左足も捻り、体が前に傾いた勢いで壁におでこをゴンッ! ──目も当てられない…。
「縮さん…大丈夫…ですかね…?」
私の問いに縮さんはゆっくりと首を横に振った。まさかこの短時間で先輩2人が息絶えるとは…、いやまあ死んではいないけども…。
「──桧凪さん、無事でしたか」
「あっ白唯さん…それに胡桃さんも。御二人も無事で何よりです」
2階の階段を下りて小走りで白唯さんたちも近付いてきた。そんな2人の腰にジャラジャラと拘束具が沢山付いているのが見えた。
恐らくモール内で気を失っている異能犯の身柄拘束をして回っていたのだろう。
「残りは我々でやりますので、桧凪さんは駐車場で待機していてください。外に出れば烏島鳥さんが応急処置をしてくれますので」
「お言葉に甘えさせていただきます…。あっそうだ、この先に私と…沙月ちゃんがやっつけた異能犯がいますのでお願いします」
それを伝えた私たちは縮さんたちと別れて外を目指した。長い通路を抜けてやっとの思いでホールに出ると、外からの眩い光が見えた。
出口を潜って外に出ると、何人もの関係者が駐車場を埋め尽くしていて、簡易テントの様なものまで設置されていた。
「おっ!桧凪香位ーっ!!こっちッスこっちーっ!素早く手早く治療するんでこっち来てくださいッスー!」
簡易テントの前に手を振りながら大きな声を出すわれねさんの姿が見えた。私はベッドの上に寝かされ、そこで応急処置を施して貰った。
薬を塗られ絆創膏を貼られ包帯を巻かれ…完璧に処置してもらったが、それでもまだ体は自由に動かせなかった…。
ちなみに沙月ちゃんも首に湿布を貼って貰っていた。沙月ちゃんは何も言わなかったけど…あれ絶対私の手刀のせいだ…、絶対そうだ…。
心の中で謝りながらモールの方に視線を向けると、中からぞろぞろと関係者の人たちが異能犯を連れて出てきていた。
やがて同様に中から出てきた縮さんたちがこっちに向かって歩いてくる。…遠くからでも足引きつってるのが分かる…。
「朝凪ちゃん…今更だけど無事で良かったぁ…!それに…沙月ちゃんだっけ…?朝凪ちゃんを助けてくれてありがとう…!」
足を引きつったまま縮さんは沙月ちゃんの手を握ってお礼を言った。沙月ちゃんはただただそんな縮さんの足を心配していた…。
「──あとは帆野さんだけですか…。そういえば帆野さんは今どこに…?まだ異能犯の身柄拘束をしてるんですか…?」
「ここに居ないという事は…恐らく帆野はまだ戦っている最中だと思います。相手は随分手強いようですね」
白唯さんは変わらぬ落ち着いた様子でそう話した。それに対して白唯さんは、手強いと言っておきながら加勢に行く素振りを全く見せない。
しかも白唯さんだけじゃなく、縮さんたちも腰を下していて…完璧に加勢に行く気がゼロだった…。私はその様子に少し違和感を覚えた。
「あの…助太刀に行かなくても大丈夫なんですか…?龍位の帆野さんが苦戦してるんだったら…力添えしてあげた方がいいんじゃ──」
「幻中桂位…!ご要望の確認が終わりました…!帆野龍位を除く関係者及び異能犯を含め…モール内にはもう誰も居ません…!」
勢い良く走ってきた男の人に私の言葉は遮られてしまった…。
「そうですか、ご苦労様です。それでは…──」
そう言って白唯さんはポケットからスマホを取り出すと、どこかに電話を掛け始めた。だが2コールしたとこで、白唯さんはぶちっと電話を切ってしまった。
そして何事もなかった様にスマホをいじり始めた。もう私には何が何やら分からなくなってしまった…、何が正解なんだろう…。
“ドォーーーーンッ!!”
その轟音は突然モールの方から鳴り響いた。その後も一定間隔で似たような音が聞こえ出した…、一体何が…─
「帆野なら心配いりませんよ。私たちが助けに行かないのも、それが何の助けにもならない事を知っているからです」
モールを見つめて戸惑っていると、スマホをいじりながら白唯さんがそう答えた。助けにならない…?角位も桂位も居るのに…?
それでいて助けにならないなんて事あるのかな…、むぅ…引っ掛かる…。なんて考えていると、それも察してくれたのか白唯さんが口を開いた。
「帆野は…その純粋な強さだけで龍位に昇りつめた御人なんです。その実力は既に〝玉位〟にも並ぶと言われている程に」
玉位…!? 玉位って確か…龍位の上だったっけ…?そんな人たちと同等の強さだなんて…そんな風には見えないや…。だってかなり自由奔放な人だし…。
「ただその反面、問題行動や自分勝手が目立つせいで…かなり手を焼かれている存在でもあるんです…。そのせいで第二支部は問題支部扱いをされてますから…」
まず思う事は…全くもってその通りって事。やっぱり普段からそう見える通りな評価を受けてた…、ちょっと笑っちゃうね。
もう1つは問題支部扱いを受けていたっていう衝撃的な事実。えっ…?東京って全3支部中…2支部が問題支部なの…? ──大丈夫なのかな東京って…。
「圧倒的な強さと手に余る自由奔放さ──。そのあまりの扱い辛さから、帆野は本部上層部の方々からこう呼ばれているんです。────」
-地下駐車場-
「 ──ウフフッ…、なんだかちょっと可哀想に思えてきたわ…。今の貴方…まるでボロ雑巾の様ですもの…、滑稽ねェ…ウフフッ…」
薄暗くだだっ広い地下駐車場、そこでは未だに戦いが続いてた。そこに居るのは、逃げる為にここへ辿り着いた教祖とカンナ…それを追ってきた帆野の3人。
朝凪を含めた5人の戦いと時を同じくしてここでも戦いは始まり…、他同様に激しい攻防が繰り広げられていた。
そして現在帆野はボロボロの状態…。それに対し教祖とカンナは無傷──かなり戦局の厳しい戦いが続いていた…。
「ハッ…、誰がボロ雑巾だって…?私はまだピンピンしてる…、あんまし私を甘く見てると痛い目見るぜ…?」
「よくもまあその状態でそんな戯言が吐けますわね…。もうお解りでしょう…?貴方じゃ私たちには勝てない…、決してね…」
そう言葉を吐くと、教祖の髪はゆらゆらと独りでに揺れ始め、まるで意思を持っている様に大きく広がった。
際限なく伸び続ける教祖の髪は天井まで容易に届き、地を這う髪はカンナを鎧の様に包み込んだ。
「チッ…またあれかよ…。──…ったく…芸がねえなァ…」
「そういう言葉は突破してから言うものではないかしら…?──さあ行きなさいカンナ…!また存分に遊んであげなさい…!」
カンナは教祖の指示で帆野に向かって走り出した。カンナは永刃を所持してはいるが、能力は発現していない。本来なら決して帆野が負ける筈のない相手である。
帆野は身を屈めて攻撃を躱すと、背後の壁を蹴って上へ跳んだ。そしてカンナに狙いを定めると、右手の永刃で反撃にでた。
「 “曲がり刃道” …!」
突き出した永刃の刃が一気に伸び、右に左に向きを変えてカンナの体の周りを取り囲む。そしてカンナの背中目掛けて刃が突き刺さった。
──のだが…刃は髪の鎧に防がれダメージを与えられない。それどころか髪の鎧は衝撃に反応して膨張し、帆野の体を壁に強く叩きつけた。
血を吐いて地面に倒れた帆野に、教祖は変わらぬ口調で語りかける。
「いい加減諦めたらどう…?さっき説明したでしょう…?私は髪に負荷代償を科しているの…、女だけを対象にする負荷代償をね…?」
それは──クロユリやリンドウなどのメンバーとは真逆の効果。男には一切能力が効かず、女には通常以上の力を発揮できるというもの。
帆野の刃が髪の鎧を貫けないのもこれが最大の原因である…。
「予想もしていなかったでしょう…?醜い男に恨みを持つ集団の中に…対女性に特化したイレギュラーが混ざってるなんてね…?──どうするの隊員さん…?」
既に勝ち誇った様な不敵な笑みを浮かべて、起き上がった帆野に問い掛ける。
「チッ…もう勝った気にやりやがって…、な~にが「どうするの?」っだ…!敵目の前にして戦う以外に何があるっつうんだよ…!」
「──立派ね…、とてもくだらないわ…。使命感だけで満たされるのは心だけ…、戦況が覆る筈もないのに…本当に貴方たちってくだらないわね…」
教祖は呆れた様に首を横に振った。再び髪がたなびき、触手みたいに蠢く髪の束の1つ1つが、槍の様に形を整えていく。
カンナも教祖の意図に気付いて永刃を向けた。
「なんだか興が冷めてきたわ…、そろそろお終いにしましょう…?どうせもう貴方に逆転の一手なんて1つも──」
“♪♪♪~♪、♪♪♪~♪──プツッ…”
教祖の言葉を遮ったのは、帆野のスマホの着信音。だだっ広く無機質な駐車場の中で着信音だけが2回鳴り響いて、すぐに止んだ…。
「あら電話…?直ぐに切れちゃったけど、なんなら掛け直してもいいわよ…?私も貴方の最期の言葉聞きたいしね…」
帆野は少しの間言葉を噤み、その後大きく息を吐いた…。
「──んな気遣いや無用だ…、私はそういうタチじゃないんでな…」
「あらそう…?じゃあいいわ…残念だけどもう死んでもらうわね…。行きなさいカンナ…!その女に…絶望的な最期を…!」
髪の鎧に身を包んだカンナは、一切の怖れを抱かずに帆野へと近付いていく。帆野はそんなカンナに目も向けずにただ俯いている。
そしてついにカンナが間合いに入った。未だに俯いたままの帆野に狙いを定めて、勢い良く永刃を振り上げる。
「死にやがれェクソ女ァ…っ!」
“────キンッ…!”
それはほんの一瞬の出来事…。何もない宙に走った…一筋の白銀の糸…。次に宙に舞ったものは…激しく噴き出したカンナの鮮血…。
そして同時に天井に入った大きな切れ込み…。モール全体が小さく揺れ…轟音が駐車場内に響き渡った──
ゆっくり前に倒れ込むカンナ…、それを見ていた教祖は静かに戦慄した…。打つ手の無かった筈の帆野の…その雰囲気の違いに…。
“帆野は…その純粋な強さだけで龍位に昇りつめた御人──”
「── “神縫” …。ふぅー…思ったより時間掛かったなぁ…、いや…経験不足な香位2人連れてこの時間なら早い方か…」
“ただその反面、問題行動や自分勝手が目立つせいで…かなり手を焼かれている存在でもある──”
「んー…!力を抑えるのはやっぱ肩が凝るねェ…、でもこれでようやく好きに暴れられるぜ…!楽しみだ…ワクワクする…!」
“圧倒的な強さと手に余る自由奔放さ──。そのあまりの扱い辛さから、帆野は本部上層部の方々からこう呼ばれているんです。──〝問題児〟と──”
「今までやられた分…たっっっぷりお返しするぜ…!最低限殺さねえように遊んでやっから、テメェは最大限死なないように努力しやがれ…!」
【第56話 強さの格 完】
解き放たれた問題児、動く…! 次回に続く!
[宜しければ、感想やブックマーク等をよろしくお願い致します!]




