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戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
56/76

第55話 NEXT_STAGE

         <戦いの技式>


         第55話 NEXT_STAGE

<〔Perspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


「強化重ねだって…!?バカを言うんじゃないよ…っ!アタシだって一度使った経験があるから分かる…、アレは気合や根性で耐えられるものじゃない…!」


私の発言を理解出来ないグレナは、大きな声で私を責め立てる。まああの苦しみを知っている人からすれば…到底叶いっこない戯言に聞こえるだろうし…。


使えばその場で動かなく技なんて…実際さっきまでの私ですらそんな考えは一切浮かばなかった…。 さっきまでは…──


「何をしたんだい…!言いなァ…!!」


「──別に特別な事はしてないよ…。むしろやっと追いついたんだよ私は…、ようやくお前と同じステージに立ったんだ…!」






‐少し前‐


グレナの渾身の攻撃を受けた私は、沢山の壁を突き破って遠くまでぶっ飛ばされた…。うつ伏せになって床に倒れた私は、中々起き上がれなかった…。


──頭が痛い…脳が揺れてるせいなのかくらくらして気持ちが悪い…。全身の痛みと、口に広がる血の味しか感じれなかった…。


立ち上がらないといけないのに…そう自分に言い聞かせているのに…体が全然言う事を聞かない…。本当にヤバいかもしれない…。


負けられないのに…、勝たなくちゃダメなのに…。帆野さんに託して貰ったんだ…、縮さんたちに信じて貰ったんだ…。


それに何より…私が沙月ちゃんを止めなくちゃいけないんだ…!こんなところで…いつまでも寝ていられない…!


そう心を奮起させて闘志を燃やすも…まるで無関係の様に体は動かない…。恐らくまだ脳が落ち着いていないのかもしれない…。


回復さえしてしまえばまだ戦える…、戦え…る…?


私の闘志に一瞬雲がかかった。頭の中で戦えるといくら思っても…それが必ず良い結果には繋がらない…。正直今の私のままで…本当にグレナに勝てるのか…?


いくら強化式の性能で勝れていても…、多彩な攻撃手段があるグレナと私には…明確に差がある…。それには私も気付いていた…。


だから周囲の環境を上手く使って戦ったりしてみたけど…それでもまだ頭一つ差がある…。このままじゃ…きっとまた同じ結末を辿る…。


いや…次倒れたらきっと…もう確実に動けなくなる…。


立ち上がれたらそれが最後…もう二度と先に倒れられない…。──いよいよ後がないな…こうなりゃ賭けだ…。


まだハッキリとイメージは固まってないけど…やってみるしかない…。


組むしかない…勝つための才式を──



────────────────────

‐数時間前‐


[そこでです朝凪くん、急で申し訳ないですが…戦い前の君に私からささやかな()()()()()をと思いましてネェ。君がずっと欲しがっていたものを…]


「──っ? 私がずっと欲しがってたもの…ですか…?」


縮さんと桃乃さんには結構甘えちゃう事は多いけど…伊敷さんにそんなおねだりした事ってあったっけ…?せいぜいお茶くださいとかじゃなかったっけ…?


[忘れちゃいましたか…?()()ですよ()()


「──っ!えっ教えてくれるんですか…!?やったー!ありがとうございますっ!──してその方法は…?」


というか前に「才式は教えられない」的な事言われた気がするけど…、どうして急に今になって…というか何故今…!?


こう言っちゃ失礼だけどタイミングがクソ悪くないだろうか…?出来れば才式習得とその練習とかもしたかったのに…。


[まあまあそう焦らずに…、教えるといっても才式の組み方だけですから。内容とかはご自分で勝手に考えてくださいネェ]


「…まあそんな事だとは思いましたよ…」


結局どんな才式にするかは自分で考えなきゃか…。──う~ん…いよいよなんで今なの…!?ゆっくり考える時間もないじゃない…!?


[それじゃあ今から組み方を言うのでしっかり聞いててくださいネェ。まずは──っとその前に、1つ君に注意点を…」


注意点…これはちゃんと聞いてなきゃダメそう…。私はポケットから帆野さんが用意したチラシを取り出して、裏にペンで注意点を書き込んだ。


伊敷さんが言うには…まず才式自体を組むのは割と簡単なそうで、やり方を知っていれば1分も掛からないらしい。


そして伊敷さんの言う注意点はまさにそこにあるとのこと。簡単故の落とし穴…絶対にしてはならない事だと言う…。


それは──〝適当に才式を組んではダメ〟って事らしい。まあ何事においても適当はダメだろうけど…物は試し程度に一度組んでみたい…。


でもどうやらその考え方もダメで…むしろ今の私の考え方が一番危ないらしく、失敗する人の多くが同じ考えを持っているそう…。


まあ聞いても何がダメなのかいまいち想像がつかないので、こんな時はちゃんと質問しよう。シツモン、ダイジ。


[ダメな理由…?そうですネェ、簡単に言うなら〝一度組んだ才式は消せない〟って事ですかネェ。まあこれだけ聞いても分からないとは思いますけどーw]


ちょっと伊敷さんに小バカにされはしたが、何がダメなのかをちゃんと教えてくれた。もちろんペンでメモメモ。


才式というのは性質上、一度組むと自分の中に保存されるそうで、そこは幡式と一緒。なのだが…才式と幡式とでは若干異なるらしい。


戦う為に永気を増幅させると、保存された才式に自動的に永気が消費させられてしまうそう。例え使わなくとも少量の永気は勝手に消費されるらしい。


問題はこの部分で…、戦闘が長期化しやすい能力者同士の戦いでは、永気が多い方が当然有利。だがここで無駄な消費が入ると…有利不利はすぐに覆る。


特に私の様な潜在永気量が少ない人だと…それだけで敗北率が膨れ上がる。そして当然才式が多ければ多い程、消費量も増えていくって訳だ。


[別に才式を沢山組むのが悪いって訳じゃないですよ?才式(それ等)をちゃんと使うのなら別に問題はありません]


要は組んだ才式はちゃんと使えって事で、逆に言えば使い道のない才式はそもそも組むなって話だ。う~む…初めてだと何が正解か分からないなぁ…。


[だからこそ…どんな才式にするかは自分自身でよく考える必要があるんですよ。それは自分とちゃんと向き合うって事ですから]


だから前に〝自分に足りないものを見つけてからでも〟って言ったのか。むぅ…自分に足りないもの…自分と向き合うかぁ…。


頭の中で今までの戦いを思い返してみるが、やはりいまいち分からない…。自分に足りないものって…中々自分じゃ気付けない…。


[さてさてそれじゃあ、本題の才式の組み方を教えましょうか]


私は悶々とする気持ちを切り替えて、ペンを握る手に力を入れた。考えても分からないのなら考える意味はなし…!とりあえず組み方をちゃんと頭に入れよう…!


[よーく聞いててくださいネェ。まずは──]

────────────────────



まずは…──才式のイメージを思い描くこと…。より詳しく…より具体的に…、才式にどんな効果を組み入れるかを決める…。


──…私が才式に求めるのは…〝効果範囲の拡大〟…。永刃のみに適用されていた効果を…全身にまで拡げる…。


これがどこまで通用するのか正直分からないけど…最低限私が思い付いた事は実現出来る筈…。 えっと…確か…次は…──


“[才式効果を決めたのなら、次は代償を決めてください。代償は〝自分にデメリットなもの〟または〝相手のメリットになるもの〟が基本です。重過ぎず軽過ぎず…自分の首を絞め過ぎない様にネェ──]”


代償…重過ぎず軽過ぎず…、この選択が一番大事になる…。どれくらい科せば足りるのか分からないけど…やるしかないや…。


──1つ目…、〝効果の発動条件を別個にする〟…。永刃は永刃で、体は体でそれぞれ発動条件を隔てる…。


適応させる為には…適応させたいものに体を直接触れさせなければならない…。永気コントロールが一層難しくなるし…何より場合によってはそれが致命傷に繋がってしまうかもしれない…。


──2つ目…、〝才式発動中、眼の永気を赤く色付ける〟…。才式を使っている事を相手に知らせる為の…単純な視覚代償だ…。


──3つ目…、〝物理への適応不可〟…。これは元々ある弱点の1つ…、それを同様に才式にも適用させる…。


【適応】は…本来触れられないものや見えないものには有効だが、物理的な力には全く効果が働かない弱点がある…。


正確には永刃で相手の物理攻撃を防いだ際、永刃自体は適応しているのかも知れないが…永刃を持っている私には全く効果がない…。相手によっては力負けしてしまうのがその証拠…。


これで3つ…でもまだ足りてない感じがする…。もう1つなにか…先の3つよりも重めな負荷代償がいる…。どうしよう…、何を科せば…──


“[より大きな代償効果を得る方法の1つに、〝自分だけの()()を、より徹底的に落とす〟ってのがあります。例えば君なら…()()とかネェ…?]”


──そうか…、ありがとうございます…伊敷さん…。きっとそれなら届く筈…、きっとそれで…才式を組める…。


──4つ目…、〝才式発動中の、永気の消費量の増大〟…。通常の能力使用時の数倍…、永気の減りを格段に速める…。


私の永気量は一般隊員の平均を大きく下回る数値…、その弱点を更に深堀する…。相当大きなリスクだけど…今はこれしか思い付かない…。


頼む…いってくれ…!


“────ピーーーーッ”


笛の様な高い音が頭の中で響いた様な気がした。それと同時に私は直感した…、代償が十分に足りた事を…!これで…()()()()()()に移れる…!


“[さてさて、いよいよお待ちかねの最終工程です。…っとは言っても、特に難しい事は残っていません。幡式と同じ…その才式の〝()〟を呼ぶだけです──]”


才式の名…、この才式の名前は…────






「 “広域適応(プロパージ・マッチ)” …!!」


まだ完璧に使いこなせは出来ないだろうけど…付け焼き刃としては十分…!この才式と強化式があれば…この戦いを制する事が出来る…!


「今まで隠し持っていたのか…、それとも死に際で咄嗟に組んだのか…。どちらにせよ…それが強化重ねとどう関係あるって言うんだい…!」


「──私の能力【適応】は…、触れたものに適応出来るだけの単純な能力で、効果範囲も永刃のみとかなり狭い…。広域適応(プロパージ・マッチ)はその効果範囲を私の体全身に拡げられる才式…」


体に炎が触れればそれ以降炎で火傷は負わず…、水で濡れればそれ以降は一切濡れず…、毒に侵されようと感電しようと適応出来る…!そして──


「強化式は体に負荷が掛かっている状態…、広域適応(プロパージ・マッチ)を発動させている間私は…!強化式の()()にも適応出来る…!強化重ねの強烈な負荷にも負けない…っ!」


もちろんノーリスクではないけど…代償まで教える義理は無い…。…っというか知られたら最悪負けちゃうし…。


素の能力だけならあと数十分は持つかもだけど…、広域適応(プロパージ・マッチ)のままだと…もう残り時間がほとんどない…。粘られれば…今度こそ私の負け…。


発動と解除を何往復かしたとしても延びる時間はたかが知れてる…。だから…残り少ない時間と永気が切れるまで──攻め続ける…っ!


「いくぞグレナ…っ!」


私は脚に力を込めて思いっ切り床を蹴った。物凄い速度で視界が動き、あっと言う間にグレナの目の前まで接近した。


広域適応(プロパージ・マッチ)のおかげで、物凄い速度にも目と脳が反応出来るのは儲けもんだった。正直そこまで考えてなかった…。


接近した私は万が一のカウンターも頭に入れつつ、最小限の動きで蹴りを繰り出した。永刃と違って初動が速い蹴りは流石に防ぎきれなかったのか、腹のど真ん中に直撃した。


流と脚が合わさった蹴りは、私の倍近い体格のグレナを容易に遥か遠くへぶっ飛ばした。私もすぐにその後を追う。


グレナは幾つもの壁と柱をぶち抜き、やがて壁に衝突してようやく止まった。かなり効いてる…!このまま…思わぬ反撃をされる前に畳み掛ける…!


私は速度を保ったまま、立ち上がったばかりのグレナに近付いていく。そして攻撃の間合いに入る直前…目の前にグレナの拳が伸びてきた。


咄嗟に進行方向をずらせたおかげで、ギリギリ直撃は避けれた。速度にちゃんと体はついてこれてるけど…流石にすぐには止まれなかった…。


減速は出来るけど…無理に止まろうとすると足の腱が切れるかもしれない…。その痛みにも適応出来るかも知れないけど…流石にリスクが大きい…。


「…その速さとその馬鹿力は厄介だが…、来る場所さえ分かっていれば…攻撃を置いておくのは難しい事じゃないね…」


まさかあの速度にもう目が慣れたの…!? むぅ…どこまでいっても一筋縄ではいかない奴だなぁ…。くっそォ…どうするか…。


「さあほらどうしたんだい…っ!? もう時間があんまりないんだろう…!? 永気の減りでバレバレだよ…!」


うげ…っ!? そうじゃん…永気って増幅させてたら探知式とか使わなくても相手の永気の状態とか分かるんじゃん…。しくじったかな代償設定…。


「減りの速さからして…以てあと5分程度なんじゃないかい…?」


残念不正解…正解はもう一分の猶予もない…。状態は分かっても…永気の総量まではバレてないみたいだね…。


でもピンチなのは変わらない…。──次が最後のチャンスかもしれない…。


次で──確実に倒し切る…っ!!


私は再び全身に力を込め、グレナに向けて体を前進させた。それに合わせてグレナも完璧な位置に拳を突き出してくる。


私と拳との距離がどんどん近付いていき、やがて衝突した。結果はリーチの差で…私は攻撃を繰り出す前に拳に阻まれた。


腹に目掛けて伸ばしてきた拳は、なんとかグレナの腕を掴んで軽傷に抑えられたが…この状況はマズい…!!


「 “特攻吹砲(ヴェル・カノン)” …!!」


「が…はァ…っ!!?」


腹部に掛かる強烈な圧力が…私の内蔵を押し潰さんと容赦なく襲い掛かってくる…。目眩がする程の激痛と大量の吐血…、意識を失いそうだった…。


「──な…っ!? アンタ正気かい…っ!? そんな無謀な…!?」


グレナは私の行動に驚いた様で…その感情が表情に表れている…。私は攻撃を受けた直後に…咄嗟にとある行動を取った。


私は体が後方にぶっ飛ばされるより速く…グレナの腕を掴んでいた両腕により一層力を込めた。絶対に()()()()様に──


自ら衝撃を逃がさず抑え込み続け…やがて腹部に掛かる負荷は弱まっていった。


負ったダメージは相当なものだけど…、これで…私の攻撃の間合い…!掴んでるからもう逃げられない…!次の攻撃は…絶対に躱せない…!


「【脚】解除…、からの── “幡 強化式(はん きょうかしき) 【集】(しゅう)” …!!」


右腕に集を使い、握る手に力を込める。流と集…今の私が発揮できる最高火力…!全ての力を振り絞れ…!全部出しきれ…っ!!


「── “〝一刀(いっとう)太刀(たち)剣世(けんぜ)” …っ!!!」


「ぐああああああ…っ!!!?」


全力の一振りは、防ごうと構えた左腕を抜けて体に命中した。大きく切り裂かれたグレナの体は更に勢い良くぶっ飛んだ。


目で追うのもやっとな程の速度で次々に壁を突き破っていく。その後を追って進むが…脚がない分さっきよりも遅い…。


真っ直ぐ進むとやがて広場に出て、そこに倒れたグレナの姿があった。白目を向いて一切動かない…、つまりこれは…──私の勝ちだ…!






“──バタンッ…”


勝ちを確信して気を緩めた瞬間…、くらっと目眩がして…私は仰向けに倒れた…。才式が解けたんだ…、私の意思とは無関係に…。つまり…永気切れだ…。


ヤバい…体がほとんど動かない…。血を…流し過ぎたのかな…?本当に…ヤバい…、まだ敵が居るかもしれないのに…、せめて外に避難しなくちゃ…。


そう頭で思っても…全然体が言う事を聞かない…。首と両手の指くらいしか動かない…、どうやって外に逃げようか…。


“──ッ…コツッ…コツッ…”


その時…遠くから誰かの足音が聞こえた…、しかも真っ直ぐこっちに向って来ていた…。明らかに意思を持って…私の方に来ていた…。


やがて足音の主は私の前でピタリと歩を止めた…。ゆっくりと首を動かして顔を上げると…それは見慣れた人物だった…──


「──朝凪…」


「──…沙月…ちゃん…!?」




【第55話 NEXT_STAGE 完】

三度(みたび)顔を合わせた2人…。果たして敵か…それとも友か…。 次回に続く!

[宜しければ、感想やブックマーク等をよろしくお願い致します!]

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