第48話 衝突する正義と悪(2)
<戦いの技式>
第48話 衝突する正義と悪(2)
-3階-
「“爆裂散光弾”」
“ドカーンッ! ドカーンッ! ボォーーンッ!!”
「クッソォ…!攻撃の勢いが激しすぎて柱の後ろから出られねえ…!どうするよリンドウ、Maximumにヤベえぞこりゃあ…っ!」
「そんな事は分かっております…!とは言え…無策で飛び出たところでやられるのがオチでしょう…!無謀…無駄死…!」
<〔Perspective:リンドウ〕>
白唯を追ってきたはいいものの…まさか突然撃ってくるとは…。
しかもさっき見たものとは違って、威力や爆発力はそこまでですが…発射速度はまるで弾幕の様…。
──そうは言いましたが…全く良い策が浮かびません…。私もクロユリも…ガンガン能力で戦えるわけではないのが特に辛いですね…。
カラシナ様の茨なら容易に突破して下さるものを…力の無い自分が嫌になりますわね…。相手が女性でなければこんな事には…
それにしても白唯…数分にわたって光弾を撃ちっ放し…。クロユリの言う通り全く勢いが衰えない…、そろそろ止まってほしいものですが…。
──っ?止ま…った…?
「おっ!攻撃が止んだんじゃねえかっ?なら今が攻め時だなっ!」
「お待ちなさい…!?そんな不用心に動いては──」
「“爆砕光弾”」
“ボォーーーーーーンッ!!!”
「おわーーーーーーっ!?」
「──────っ!?」
弾幕の様な光弾が一瞬止んだと思った矢先…今度は大爆発…。白唯…本当にL-gstの隊員なのかしら…。
床も捲れて柱粉々、なのにずっと澄ました表情のまま…。どっちが異能犯かも分かりません…何なのですかこの者は…。
「皆さん…大丈夫ですか…?」
「キブシとユウガオ…他多数が今ので負傷しました…!」
「オイオイマジでどうすんだ…!?このままだとただただやられてお終いだぞ…!?どうするリンドウ…どうすりゃいい…?」
元々の部下の数が20人程…今の攻撃で6人が戦闘不能に…。正直なんの能力も持たない部下たちでは…白唯の相手は務まらないでしょう…。
──いざとなればやるしかないですが…気が乗りませんね…。せめてクロユリが…──んっ?そういえば…
「クロユリ…貴方の能力なら隙を生み出す事も可能でしょう…?何故やらないのですか…!?何を警戒しているのですか…!?」
「あァ…っ!?お前こそ何言ってんだ…!知ってんだろお前も…!私の能力は女相手にはほとんど何の意味もない…!」
うぅ~…!こんな時頭の足りないクロユリが少し煩わしく感じてしまいます…!少し考えれば分かるでしょうに…!
「直接当てるのではなくて、間接的に攻撃をするのですよ…!ほらあれです、白唯の頭上…!注視…注目…!」
「あん…?頭上だぁ…?──おっなるほど!」
なんとか気付いてくれたクロユリは、永気を増幅させてバッと顔を瓦礫の陰から出した。そして光弾を放たれるより速くクロユリが動いた。
「“空気砲”!!」
空気砲──【息】の能力を持つクロユリの才式…。吐いた息を塊にして飛ばすという何とも単純な攻撃。
ですがその分…威力は見かけに寄らず強力ですよ…!
“ドコォーーーーンッ!!”
「──っ!?」
私たちの狙いは、白唯の真上に掛かった渡り通路。クロユリの空気砲なら…床を落とすくらいわけがありません…!
その予想通り、渡り通路の床は音を立てて勢い良く崩れ落ちていった。
「“爆裂散光弾”」
思いも寄らない攻撃だった筈なのに、顔色一つ変えずに瞬時に才式を展開して対応に当たるとは…敵ながら天晴れですわね…。
ですが…──
「ハハハッ!隙アリアリだぞォっ!いくぜMaximum!!」
何も考えていない特攻…本来なら愚かで恥ずべき行為ですが、今だけはその脳筋具合がありがたいですね。
クロユリを追って私と部下も後に続く。ここを逃しては…あれをせざるを得なくなってしまう…。
可能ならばここで決め込みたいところですわね…。
先陣を切ったクロユリの大振りな攻撃は防がれたものの、素の腕力で優っている分、澄ました顔は少し苦しそうな表情に変わった。
クロユリの永刃を払って後ろへと素早く距離を取ると、再び複数の光弾を周囲に生み出し始めた。攻撃の予感に一瞬私たちは足を止めたが、クロユリだけが突っ込んで攻撃を振るった。
残念ながらその攻撃も防がれてしまったが、クロユリは何かに気付いた様にニッと笑みを浮かべたのが見えた。
「お前…さては自分も光弾のダメージ受けるんじゃねえかァ…?さっきだってわざわざ爆裂散光弾使わないで、爆砕光弾で十分対処できた筈だ…。そうしなかったのは…爆裂散光弾とダメだったからだろォ…?自分も爆発に巻き込まれて負傷しちまうからなァ…!」
白唯の表情は一切変わらないので真相がどうなのかはハッキリしませんが…、恐らくあっている…クロユリにしては名推理ですね…。
となれば…白唯の弱点は接近戦…、光弾を撃たれるよりも速く距離を詰めて攻撃し続けるが吉…。私たちはサポートに徹した方が良いかもしれませんね…。
「オラオラっ!どんどん攻めるぜMaximum!!」
クロユリの一切休みなく繰り出される猛攻撃は続き、このまま続けば勝負は決しますが…どうでますかL-gst…?
「──…っ!“高速化光弾”…!」
突然自分とクロユリの間に小さな光弾が現れ、その直後爆発した。かなり小さな爆発ではあったものの、その隙をついて白唯は距離を取ろうとする。
私はそれを先読みし、進行方向で待ち構えて永刃を振るった。
“ガキンッ!”
今のも防ぎますか…、ですが…──
「背後がら空きィ!!死ねやァ!!」
直後私は白唯の永刃を握って振り返ろうとするのを邪魔した。これでお終い…まず1人…!
「“降罠光弾”…!」
「──っ!?お避けなさいクロユリ…っ!」
永刃を振り下ろそうと近付くクロユリの進行方向に、まるで待ち構えているかの様な2つの光弾が上空にあった。
やがて物凄い速度で落下してきた光弾は、タイミングよく下を通り掛かったクロユリに被弾した。
爆発の威力はそこまで大きくなさそうですが、直撃したクロユリは吐血して足を止めた。恐らく何が起きたのかも分からない様子…──っ!!
一瞬気を逸らしたその隙に…腹部に蹴りを入れられてしまった…。それと同時に永刃を握っていた手が緩み、距離を取られた。
私たちが直ぐには動けないと判断してか、白唯は一際大きな光弾を生み出してクロユリに向けた。
「“爆砕光弾”…!」
“ボォーーーーーーンッ!!!”
「がはァ…!──って、うおおおおおおっ!!?」
「クロユリ…!!」
大きな爆発に巻き込まれたクロユリは、爆煙を纏ったまま手すりを飛び越えて下の階に姿を消してしまった…。
あの直撃を受けては…無事であっても直ぐにここに戻って来るのは不可能…。どれだけタフいかにもよりますが…期待しない方が良いでしょう…。
──むしろ好都合かもしれませんね…、これで思う存分…全力を出すことが出来る…。クロユリにだけは見せたくなかった…私の全力を…!
「次は貴方の番です、ご覚悟を」
「──あまり調子に乗らないで下さいまし…!」
『白唯 ⅤS リンドウ』
-1階-
<〔Perspective:胡桃〕>
「うむむぅ~、キリがないよ~…」
縮角位と二手に別れて…幹部クラスっぽい人が両方縮角位に行っちゃったから、パパっと片付けて加勢に行こうと思ってたけど…
こうも人数がいると思ったように時間が掛かってしまう…、いや~参った…。
斬っても斬ってもどんどん立ち上がってくるし…なんかゾンビを相手にしてるみたいだよ…。うむむぅ~、本当に参った…。
能力を使えばサクッと終わりそうだけど…白唯さんがなぁ…
“能力を持たぬ相手に能力を使って勝っても、それには何の意味もありません。己を鍛えたいのなら、能力や才式は異能犯以外には使わぬ事です。よいですね…?”
──って言ってたし…使いづらいなぁ…。白唯さんの圧が怖いんだよなぁ…。どうしようかどうしようか…──んあっ?
「──ぅぉぉぁああああああああっ!!」
「うわああああああああっ!?なんだあああああっ!?」
上の方から何やら声が聞こえてきた気がして顔を向けると、何故かちょっと焦げてる女の人が勢い良くこっちに向かって落下してきた。さながら流れ星の様に…。
このままだと真っ直ぐ私に突っ込んでくる、そう感じた私はスススッ…っとその場から離れて事後を見守る事にした。
やがて大きな音を立てて床に落ちてきたその人は、漫画みたいに上半身がめり込み、ぴくぴくと足を動かしている。
しばらくその光景を眺めていると、女の人はめり込んだ上半身を起こして、勢い良く私に向けて指を指してきた。
「オイコラテメェっ!普通今のは避けねえだろうがっ!あんな分かり易く落っこちてんだから、ちょっとは受け止めようとしろやっ!!」
「いやいや無理でしょ!?死ぬわこっちがっ!比べてみろ対格差をっ!明らかに私のが死にそうでしょうがっ!!」
とんでもない言いがかりについ反応してしまった…。ってかあの勢いで落下してぴんぴんしてるんならやっぱ助けいらないじゃん…!
「そんな事を言っている場合ではありませんクロユリ様…!この女はL-gstで教祖様の敵…!即刻仕留めねばなりません…!」
「んあ…?あー…言われてみれば…、お前確かグレナ様に斬りかかった奴だな…?小柄なくせに度胸あるじゃねえか、面白れェ…!」
そう言って永刃を片手に立ち上がると、ニッと笑って私に刃先を向けた。そして互いに永気を増幅させて臨戦態勢を整えた。
「さっさとお前を片付けて、リンドウの手伝いに行かねえと…つってもアイツの事だ…、見られたくないって言ってた才式使ってるかもなぁ…」
頭をぽりぽりとかきながら何か独り言を言っている…。リンドウって人が誰か分かんないけど…多分白唯さんか楪桂位が戦ってる相手かな…?
──いやいや…今は自分の事だけを考えなきゃ…!相手も同じ能力者…即ち異能犯…!これなら何の問題もなく能力を使える…!
白唯さんの圧に怯えなくてすむ…!!
「まあいいや…!後の事はお前をぶっ殺してから決めるとするかっ!白唯の爆発でちょっとイライラしてんだ…八つ当たりに協力してもらうぜ、恨むなよ…?」
「そっちこそ…!能力を解禁した私の強さに怯えちゃわないでね…!」
『胡桃 ⅤS クロユリ』
-3階-
「ひぃひぃ…もう疲れましたよぉ…」
「弱音を吐くんじゃないよ…!仕方ないだろう…近いエレベーターが全て止まってるんだ、最初の場所に戻るしか方法がない…!」
<〔Perspective:グレナ〕>
教祖を連れて移動してから十数分…今いる場所は中央付近だろうかね…。エレベーターに無駄に時間を掛けてしまった…。
カラシナたちは既に戦闘に入ったのか、時々爆発らしき大きな音が聞こえてくる。思ったより激しいね…。
隊員共に気付かれる前に何とか車まで行って、教祖だけでもここから逃がせればそれでいい…。何人捕えられても…教祖さえ逃げ延びればアタシ等の勝ちだ…。
その為にも休んでなんていられない…、一刻も早く地下駐車場まで辿り着かねばならない…。
それだけを考えてただひたすら走り続け、ようやく最初のあの場所…上って来た階段が下に見えた。ここでエレベーターが使えたのならどれだけ楽か…。
「グレナ様…!あのエスカレーターを降りて1階まで行きましょう…!見た感じ止まってますし、階段で行くより速い筈です…!」
一緒に連れて来たカンナが指差す方向には、見慣れぬ止まったエスカレーターが見えた。渡り通路のすぐ先、確かに階段を使うよりずっといい案だった。
アタシたちは迷うことなくエスカレーターを目指して渡り通路の上を走った。そして中腹部を差し掛かったその時──左上の方から何かの音が聞こえた。
それは何かを強く蹴った様なそんな音…、アタシは見もせずに身構えた。両手を肩の高さまで上げて、あらゆる事に対応が出来る様に…。
「── “燕躰打ち”…!」
一瞬見えた人影の動きから攻撃の気配を感じ取ったアタシは、両手をクロスさせて攻撃を防いだ。
強烈な一撃に押され、体が後方に飛ばされた。小柄な割に途轍もないパワー…カンナの手に余る実力者だ…。
なんとかここでアタシが気を引いておかないと…──っ!?
後方に飛ばされた体は手すりにぶつかって止まると思った瞬間、手すりが壊れて体が外に投げ出されてしまった。
なんとか空中で体勢を整え、受け身によって落下の衝撃を和らげた。だが教祖たちと分断された事実は変わらず…かなりマズい事態になった…。
強化式を使って2階から3階に跳ぶか…それとも能力を使って2階から妨害すべきか…、いずれにせよカンナ1人には任せらない…!
──今後また不測の事態が起きた時の為に…教祖には温存しておいてもらいたいんだが、そうもいかないかもね…。
ひとまず今は3階に上がらないと──
「それじゃあ帆野さんっ!私行ってきますっ!」
誰かに話しかけた声が聞こえた後、アタシに斬りかかってきたであろう人物が渡り通路から降りてきた。
降りてきた人物は、茶髪ショートヘアの小柄の女。永刃を握って降りてきたその姿に…アタシは見覚えがあった。
数日前にアタシとの戦いで敗れ散って…トラックに勢い良く撥ねられた少女だった…。あの顔…間違いなく本人だろうね…。
「──アンタ…生きてたのかい…。運良く拾った命…大人しく生きてりゃ長生きも出来たろうに、わざわざ死ににきたのかい…?」
「止めに来た…っ!前の私と同じだと思ってると痛い目見るよ…!いんや見せてやる…っ!お前等の悪事も全て私たちが止めてやる…っ!」
『朝凪 ⅤS グレナ』
【第48話 衝突する正義と悪(2) 完]
雪辱を果たせるか...! 次回に続く!
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