表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
45/76

第44話 下見

         <戦いの技式>


         第44話 下見

「あら朝凪おはよう。どうしたの?いつもより早いじゃない?」


「うん…なんか目が覚めちゃって…」


<桧凪宅〔Perspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


普段は目覚ましのアラームが三回鳴るまでは一度も目覚めない眠りの深い私ですが、何か楽しい事や緊張する事が控えていると不思議と目が冴えてしまう…のはなんでだろうね?人間って不思議な生き物だね、ポ〇モンみたいだね。 ※やめて


何故私の目が冴えているのかと言うと、それは今日が…例の作戦決行日だからです。何を隠そう…哀薔薇の集との決戦が控えているからです。


それ故に緊張が凄まじいことになっていまして…昨日中々寝れなかった癖にやたら目覚めが早いときた…、アレ?今日大丈夫かな私?


「今日は忙しいんでしょ?朝ご飯出来てるからさっさと食べちゃいなさい?朝凪の好きなハムエッグあるわよ」


「えっホント!やったー私コレ大好きっ!」


そうだそうだ…ちゃんと寝なくても朝ご飯さえ食べれば一日のサイクルは良くなるって論文を青森の大学が発表してた筈。 ※噓です


味噌汁で口の中を潤して大好きなハムエッグをひと口頬張ると、その流れのままご飯もひと口、これが至高の幸せ…。


これだけで今日を生き抜ける力が湧いてくる様な──


「今日は“なんちゃらかんたらの集い”って人たちと戦うんでしょ?頑張る為にも沢山食べなさい、ご飯いっぱい炊いてあるから」


「ブゥーーーーッ!!ゴホッガハッ!あれなんで…!?なんでお母さん今日の事知ってるの!?私…言ってなかったと思うんだけど…、エホッエホッ…!」


伝えてなかったのには理由がある…、それはお母さんにストップをかけられる可能性が高いという事…。


数日前に病院で生死の淵を彷徨っていた娘が、その原因となった敵にまた挑もうとしているなんて伝えたら…、絶対お母さんは止めるだろうと思っていた…。


だから特に何も伝えてはいなかったのに…


「少し前にね?三下さんが連絡くれたのよ~。朝凪がいっぱい努力して、なんたらかんちゃらの集いと戦う作戦に参加する事になったって」


何ィ~っ!?おのれ三下さん…っ!普段からお世話になっているから強く言えないけど、やってくれたな三下さん…っ!


「──えっとー…お母さん…?その…黙ってたのは…そのぉ…」


「あらあら縮こまっちゃって、別に気にしてないわよ。むしろ応援してるから張り切って朝ご飯作ったのに~、ほらほら冷めない内に食べちゃいなさい」


食器洗いをしているお母さんの表情からは、確かに悪い感情が一つも読み取れなかった。私は申し訳なさを抱きながらハムエッグをもうひと口頬張った。



          -朝凪 朝食中-

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



朝食を食べ終えて髪を整えた私は、小さく深呼吸をして玄関のドアを開けた。外には車の中で待機している三下さんが、誰かと電話しているのが窓越しに見える。


もう一回深呼吸をして車に向かうと、ドアを開けてお母さんが出て来た。


「朝凪…、どうか無理はしないでね…。これ以上あんな姿の朝凪を見たら、お母さんの気が狂っちゃうから…。あとお父さんもショック死しちゃうから」


そうだね…心配性のお父さんは軽くショック死しちゃうだろうね…。


「うん…絶対無事に帰って来るから心配しないで…っ!絶対…いやきっと…いや多分…可能なら…?」


「大丈夫なのよね?信じてもいいのよね朝凪?」


お母さんにギュッと抱きついて私は車に乗り込んだ。少しずつ遠ざかっていく優しく微笑むお母さんに手を振って、私は永刃を握る手に力を入れた──






「着きました朝凪さん、ここが例の場所です」


「おおーっ!ここが…戦いの舞台…、でっか!!」


本来なら三下さんには支部まで送ってもらうのだが、今回は作戦が行われる大型ショッピングモールに集合という事になっていた。


車から降り、改めて全貌を見て実感するその大きさ…。スゲー…言葉で表せない位にデケー…、しかもタケー…。


1、2…、全部で5階建なのかな…?中に何店舗入るんだコレ…?


「おーいっ!朝凪ちゃん、こっちこっち!」


声のする方に顔を向けると、正面入口と思しき場所に縮さんと桃乃さんの姿があった。帆野さんたちの姿はないのは…まだ来てないからかな…?


「おはようございますっ!いやー…予想よりずっと大きくないですかモール(コレ)…?」


「ね…、今の今まで桃乃ちゃんとも同じ会話してたよ…」


「目眩がしそうな大きさですー…」


私の住んでる場所、共に第三支部のある場所は東京の中でもそこまで大都会な場所ではない為、高いビルなども周囲には存在しない。


だからこそあまり見慣れない大きな建物を前にして、私たちは若干戸惑いが隠せないでいる…。駐車場だけでもアホみたいに広い…。


「あっそうだ、帆野さんたちってまだ来てないんですか?」


「うんそうなの…、もうそろ帆野さんが言ってた集合時刻なんだけど…なんか全然来る気配ないよね…」


これは…何かしらのハプニングがあったのかも…、寝坊とか…帆野さんの…。


「先に中入っちゃおっか、許可も取ってあるし」


「さんせ~い!」

「さんせーい!」


なんでこんな大きく造ったのか分からない入口を越えて中に入ると、清潔感に溢れた品のあるホールが出迎えてくれた。


左右奥に進める通路にエスカレーター、中央には大きな観葉植物とベンチが置かれていた。天井に貼られたステンドグラスがキラキラとしていて美しい…。


通路の奥はずっと続いていて、様々な店舗の看板が貼り出されている様は圧巻の一言…。しばらく声も出さずに私たちはその光景を眺めていた。


「よーしっ!じゃあちょっと練習しちゃおっかなっ!」


縮さんは目を閉じると、ゆっくり永気を増幅させていった。その姿をただ見つめていると、不意に前を知らない人が横切って行った。


それを皮切りに、辺りに大勢の人たちが見えるようになった。高校生たちや子供連れの家族、店員らしき人も確認出来る。


レジ袋を持つ主婦にクレープを頬張る女子高生に…、うわっ…奥の方には通路に座り込んで駄々をこねる子供までいる…。


行き交う人々の声や足跡が、静寂だった広間に賑やかで活気ある印象をもたらせてくれている。──うん?


「縮さんの幻覚って音まで再現出来るんですか?それとも私の幻聴…」


「えっ?…あっうん!心配ないよ、この音…正確には幻聴だけど…、これも私が出してるの。才式の効果だね」


そっか才式か、それならまあ納得だね。良かったぁ…持病とかじゃなくて…。


縮さんが増幅させていた永気を鎮めると、同時に辺りの幻覚もスーッと透けていって見えなくり、元の静寂なホールに戻った。


「これなら幻覚だってバレなさそうですねー」


「そうだね…、実体があるわけじゃないから、接触しちゃうとバレるかもだけど…そこは上手く幻覚を操作すれば問題ないかな…?」


あのクオリティなら余程じゃなければ気付かれる事はなさそう…、縮さんの方は問題なく作戦通りに進みそうだ。


「それじゃ、例の宝石展示会場の方も下見しに行こっか」



    あれ…?ここどこ…? by縮・桃乃・朝凪

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



「あったァ…っ!あそこだあそこォ…っ!」


「ようやく着きましたぁー…」


「まさか三回も現在地が分からなくなるとは…」


あっち行ってこっち行って四回マップを確認してなんとか目的の場所に到着した…。大型ショッピングモールの洗礼を受けた…。


場所は四階中央の大ホール、キラキラしていて遠目でも十分に目立つ。なんで今の今まで辿り着けなかったのかが不思議に思える程に…。


そこに置かれているショーケースの中に入れられた幾つものきらびやかな宝石は、照明の光を反射してより一層の輝きを生んでいる。


「綺麗…っ!とても偽物だとは思えないクオリティですね…っ!」


「本当…ずっと眺めていられるよ…」


またしばらくの間、私たちは声も出さずに宝石の美しさに魅了された。どんな時でも…女の人はキラキラが大好き…♡


時間がゆっくり過ぎていく様な多幸感に包まれていき、何か大切な事を忘れている様な気すら輝きの前に薄れていく…


「──ぉ—ぃ…おーい三人共ー!そこに居るのかー?」


突然反響しながら耳に入ってきたのは聞き慣れた声…帆野さんの声だった。


やがて白唯さんと胡桃さんと…なんか三つくらいたんこぶが出来てる帆野さんが下の階から姿を現した。


「皆様…この度は大幅に遅刻してしまい、本当に申し訳ありませんでした…」


深々と頭を下げて謝罪する白唯さんの顔は、この前あった時に比べて顔色が悪く見えた。もしかして体調を崩してしまったのかな…。


「今日は大事な日だから寝坊はするなよとあれだけ言ったのに、ガッツリ寝坊しやがったんだ!まったくどうしようもない奴だな私は!」


「──支部長…いい加減にしないと本気で頭かち割りますよ…?」


「ごめんなさい…」


違うや、不必要な労力で疲れてるだけだこれ…。帆野さんにたんこぶ付けたのは白唯さんって事だな…。


──っていうか結局遅れた原因帆野さんかいっ!今日本番だと言うのにこの緊張感の無さ…なんかもうすごいわこの人…。


「まあ遅れちまったのすまんかったが、敵さんにもまだ動きはないらしいからセーフだな。今の内に各々の待機場所と行動をおさらいしよう」


帆野さんは内ポケットから取り出したミニマップをショーケースの上で広げると、ペンで印を付け始めた。


「まず二階…正確には二階と三階の間で待機してもらうのが縮&胡桃ペア。奴等が車で来ると考えた場合、三つある駐車場と付かず離れずの位置がここだからだ」


この大型ショッピングモールには、地上駐車場に地下駐車場、そして五階部分も駐車場で構成されている。


奴等がどこに車を停めるかで縮さんの動きも変わってくる為、確かにこの位置で待機するのは理にかなっている。


「後で縮っちには個別にエレベーターの場所とかも教えるから、なんとか頭に入れてくれ。もしばらけて車を停めでもしたら…そん時はまた作戦が変わるけどな…」


そうならない様に神にお願いするしかないのか…、お願いね神様…?


「そんで次、三階の宝石展示エリア周辺で桃乃&白唯ペア。奴等が宝石に手を伸ばし次第、白っちの先制攻撃をもってして開戦になる。そこからは各自移動するなりして敵を捕えてくれ」


要するに…縮さんと胡桃さんが幻覚に紛れながら敵と共に宝石展示エリアに移動し、そこで桃乃さんと白唯さんと合流したのち、一斉に畳みかけると…。


初撃でどれくらいダメージを与えられるかが重要になりそうだ…。


「そして最後、私と朝っちは四階で待機だ。恐らく全力で教祖を逃がそう逃がそうとするだろうから、そこを私らで奇襲するっ!完璧だなっ!」


完璧…カァ…?他のペアの動きはなんか大丈夫そうだけど…あの帆野さんだからなぁ…。ま~た奇想天外な自分勝手に進んでしまいそうな予感がする…。


「基本的な動きはこんなもんだ、皆オッケー?そんじゃ支部の監視チームから連絡あるまでは自由時間とするから、ハイっ!解散かいさ~んっ!」


説明を終えると、帆野さんは縮さんを連れて行ってしまった。さっき行ってたエレベーターの場所の確認だろうか。


桃乃さんと白唯さんも現場の下見に行っちゃったし、胡桃さんは偽宝石に見惚れてるし…、いやー…私どうしようかなこれから…。


どこか行き止まりにぶち当たるまで…意味もなく歩き続けようかな…?ハチャメチャに時間を無駄遣いしちゃおうかな?


“♪♪♪~♪、♪♪♪~♪、♪♪♪~♪”


スマホに届いたのは知らない番号からの着信…、大体の知り合いの番号なら登録してある筈なんだけどなぁ、誰だろ?


「はい桧凪ですが、どなた様でしょうか?」


[やあやあ朝凪くん、調子はどうです…?帆野さんの自由気ままさに振り回されて、戦いの前に疲れちゃったりしてませんよネェ…?]


伊敷さん…!そういえば電話番号の登録してなかったかも…、そうですね、ちょっと疲れちゃった程度デスネ…。


「どうしたんですか突然?まさか私の心配とか…?」


[ハハハッ、まっさか~☆冗談きついですヨォ、誰が心配しますか誰がw」


おのれ伊敷さん…ちょっとは心配せえちょっとはっ!何笑てんねんっ!


[──とは言いましたが、まだまだ朝凪くんは不安材料の塊ですからネェ…一応君の身を預かる者としては、手放しで安心とはいきません…]


不安材料の塊か…割と伊敷さんからの評価低いなぁ…、「本人の意思次第」って言ってたのはこの為か…。


[そこでです朝凪くん、急で申し訳ないですが…戦い前の君に私からささやかな()()()()()をと思いましてネェ。君がずっと欲しがっていたものを…]


「──っ?」




【第44話 下見 完】

迫る決戦の時…! 次回に続く!

[宜しければ、感想やブックマーク等をよろしくお願い致します!]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ