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戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
44/76

第43話 闘志

         <戦いの技式>


         第43話 闘志

帆野さんのあまりにも大規模過ぎる作戦を聞いた私は、魂が抜けた様にぽか~んっとしていた。何故なら私の想像を遥かに超えていたからです…。


だって前の説明の時は確か…「広い場所におびき出そうと思う」位の説明しかしてなかったもん帆野さん…。余程適当な説明だったなあれ…。


しかもまだオープンしないって事は…このチラシも自作なの…!?なんかやたらこだわってるし、どうなってんの第二支部の行動力と技術力…。


「宝石を何個も用意する事は出来ねえし…そこもなんとか手作りでいくつもりだが…、流石にエキストラに一般人を使う訳にはいかないから…そこは縮っちにお願いするよ」


「私…ですか…?──…あー…なるほど…そういう事か…」


恐らく縮さんの幻覚で存在しない客を見せるって事かな…?そう考えると縮さんの能力便利だなぁ…いいなぁ…。


「〝夢幻〟の効果範囲がどれくらいなのかは忘れたけど、いずれにせよある程度敵に近づかないといけない以上…縮っちの危険は大きい…、いける?」


「うぇっ…うーん…まぁ必要とあらばやりますよ…?いけますいけます」


一瞬戸惑った素振りを見せたが、その割に軽いノリで縮さんは許諾した。


「頼みますよ帆野さん…縮くんは第三支部の部下なんですから。それはそれとして…作戦決行はいつになるんです?その部分もハッキリしてるのでしょう?」


その言葉を聞いた瞬間ドキッと心臓が跳ねた…。作戦決行日時…それはつまり私の作戦参加のタイムリミットと同じ…。


一体どれくらいの猶予が残っているのか…


「決行は五日後…アジトに仕掛けた監視カメラの映像で、奴等がその日に行動を起こす事は間違いない。よって決行日の変更もない…、きっちり五日後だ」


五日後…もう一週間もないのか…。修行を開始して今日までで五日目、ここから更に五日間で可能な限り強くならなきゃか…。


永気コントロールは出来る様になったけど…まだ意識しないと綻びが生まれる程度の出来だ…、まだまだ足りてない…。


「ここからが大事な部分っ!今回の作戦に参加するメンバーの件だが…」


ここでまた私の心臓がさっきよりも大きくドキッと跳ねた…。


落ち着いて考えてみれば…そんな重要な決定を作戦直後に決める筈がない…。つまりもう…タイムリミットを過ぎていたって事だ…。


「ひとまず決定してるのが、私に縮っちに桃っち…そんで白っちに天っちの五人だが…、伊敷…朝っちはどうだ…?」


もうこうなっては祈る以外に方法はなし…っ!お願い伊敷さん…私が参加出来る様なフォローを…っ!なんかそんなフォローを…っ!!


「そうですネェ…明確にレベルアップはしてますし、哀薔薇の集の一員を倒してはいますが…、まだ不安材料も残ってるって感じですかネェ」


ああ…あ…ああ…?これは…どっちなんだ…?成長してるからオッケーなのか…まだ修行が足りてないからダメなのか…?


「──結局どっちなんだよ…?」


「まぁ…はっきりどっちかとは言えませんので、本人の意思次第じゃないですか?ネェ、朝凪くん…?」


「是非っ!是非作戦に参加したいですお願いしますゥ!!」


私は猛烈な勢いで挙手し、参加の意思を全力で帆野さんに訴えかけた。この機会を逃してはもう二度とチャンスは来ないだろうと思ったからだ。


帆野さんは腕を組み、難しい顔で悩んでいる…。頼む…お願い神様…っ!お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いおねg──


「──はぁ…、しゃあねえな、オッケーだ朝っち。力合わせて哀薔薇の集(アイツ等)を完膚なきまでぶっ潰そうじゃねえかっ!」


「いよっしゃあァ!!」


良かった…昨日頑張って異能犯を捕えた甲斐があった…。これで私も戦える…!私の手で…絶対沙月ちゃんを止める…!


「おーっし!そんじゃメンバーも決まった事だし、次はペア決めだっ!全員で動くのは色々不都合も多いし、二人一組が丁度いいだろ」


そう言って帆野さんはメモ帳に何かを書き始めた。──しかし、そうか…帆野さんがペアを決めるのか…。なんか…不安だな…。


白唯さんと胡桃さんが心配そうに見つめてるのが一層不安を煽っている…。


「よし決めたぞっ!それぞれのペアはこんな感じだっ!」


机の上に置かれたメモ帳のページに全員が目をやった。そこには──


〝縮&胡桃 桃乃&白唯 朝凪&帆野〟っと書かれていた。おおー、全然変じゃない…!むしろかなりバランス良く別けられてるんじゃないだろうか。


「結構しっかりしてるだろっ!それぞれの階級に置き換えると…〝角位&香位 桂位&桂位 香位&龍位〟ってなもんだなっ!」


より一層ちゃんと別けられているのが分かる…。私は帆野さんと…心強いけどあんまり足を引っ張らない様にしなくちゃだ…。


なんて思っていると、白唯さんが手を挙げて異を唱えた。


「お言葉ですが、今作戦においての帆野龍位(支部長)の役割はかなり重要です。それなのに…ペアが桧凪さんなのは…些か問題が多いのではないでしょうか…?」


むぅ…、やっぱり白唯さんはまだ…私の事を認めてくれてないみたい…。心が締め付けられて苦しくなって…無意識に桃乃さんの袖を掴んだ…。


「そりゃ重要なのは分かっけどさぁ…、何もそこまで問題でもないだろ…?もうちょっと朝っちの事を信用してやれよ…事情だって教えただろ…?」


「それは…そうですが…」


白唯さんはどこか納得し切れていない様子で目を逸らした…。きっと白唯さんも昔…伊国と似た様な事があったんだろう…。


そう見られてもしょうがないのかもだけど…私だって故意じゃないし…、なんとか受け入れて欲しいなぁ…。


「あのぉ…なら私と交代はどうですか…?私も同じ香位ですし…桧凪さんよりかは帆野龍位(支部長)の事も知ってますし…」


胡桃さんが弱々しく手を挙げて意見を述べた。確かにそれならほとんど影響は出ないし、私も縮さんとの方が連携は取りやすい。


何よりこれなら…変に傷つかなくて済むしね…。


「いやっ!ペアの変更はしない!作戦は今伝えた通りのペアで行う!もう変えない、変更不可、けってーい!!」


なんなんだこの人は…、割と本気で胡桃さんと替わりたくなってきた…。先行きが不安過ぎる…大丈夫かな私…。


それでも負けじと反論を続ける白唯さんと胡桃さんだったが…断固として帆野さんは考えを変えようとはせず、結局二人が折れてしまった…。


「ハイッ!そーゆー訳なので、本番当日はこのペアで動いてもらいますっ!──つっても戦いが始まれば…どうせバラバラになるだろうけど、特に私を筆頭に…」


あー…もう不安で仕方ないね…、帆野さんの自分勝手について行ける自身がありません…。まさかこんな事になろうとは…


「誰が誰と戦うかはケースバイケースに対応してもらう事になるけど…、一番美味しい親玉は私が貰うぜ?いいよね?」


縮さんと桃乃さんは引きつった笑顔で、白唯さんと胡桃さんは呆れた様な表情で頷いた。ねえちょっと…私はどうなるんです…?


そんな疑問を抱いてる私の肩に、縮さんがポンッと手を乗せてきた。続いて桃乃さんも反対側に手を乗せてきた…、これは…諦めろって意味だろうか…?


「まあ色々話したけど、とりあえず五日後に作戦を決行するって事だけ頭に入れといてくれ。じゃあ私帰るわ、よろしくな三人共」


「当日はよろしくお願い致しますね、これで失礼します」


「よっ、よろしくお願いします…へへっ…」


「じゃあ私もこれで失礼するッス!あっそうだ…くれぐれも外木先輩に今日の事は内緒でお願いするッス!サボってるのがバレると怒られるので!それじゃっ!」


四人は雪崩の様に一斉に支部を後にして行ってしまった。ずっとわれねさんは何しに来たのか気になってたけど…まさかただのサボりとは…。


何はともあれ、無事に作戦参加の許しを得た…。後は決行までの数日間で詰め込めるだけ詰め込む…!少しでも強さを上乗せする…!


「伊敷さんっ!修行をお願いしますっ!」


「おやおや…やる気十分ですネェ、それじゃあ昼食を食べたら開始としましょうか。ついでにお二人も実戦訓練しときましょうか」


「ええっ!?」

「えーっ!?」






「──お優しいですね…帆野龍位(支部長)は…」


「…うん?何のことだ?」


<〔Perspective:(‐白唯視点‐)白唯〕>


第二支部への帰り道、前を歩く支部長の背中に私は言葉をかけた。


「作戦決行は…チラシに記載された日時次第で延長も短縮も可能…。ショッピングモールの準備だって既に終わっている以上…、本来なら今日にでも実行出来た筈…。そうしなかったのは…桧凪さんに時間を与える為ですよね…?」


そうでなければ…好戦的な支部長がここまで間をおく訳がありませんし…。いつも自分勝手に突き進んでいってしまいますし…。


「ないない…私はそんなに優しい人間じゃないよ。知っての通り、私は普段から難しく考えない自分勝手で周りに迷惑を掛けるタイプだからな!」


「あっ支部長…一応その意識はあるんですね」


なら改善して欲しい所ですけど…きっと不可能なんでしょうね支部長は…。


「流石によその支部に協力して貰うんだから、あんまり急かすのも申し訳ないだろう?あの猶予はそれだ!断じて朝っちの為ではない!」


何故か自信満々に答える支部長は凄くカッコ悪い…、意味わかんない眼帯も相まってより一層カッコ悪い…。


出来ればもっと威厳を持ってほしい…胡桃や他の後輩たちの為にも…。


「いやしかしビックリだよなぁ、朝っちの成長速度の速さには…。伊敷(天才)(多才)桃乃(剣才)…成長速度は教える側の質に比例すんのかねぇ…?」


「──支部長は…第三支部の方々をかなり評価していますよね…。支部員僅か四名の異質な問題支部なのに…何故です…?」


基本的に問題支部はどこの支部の者からも避けられ、時には酷く嫌悪する者まで存在する…。それはウチ(第二支部)も同じこと…


なのに第三支部(あそこ)だけはどこか特別視されている節がある…。しかもそれは支部長だけじゃなく…第一支部の司龍位や他の支部員もそう…。


他の問題支部とはどこか…どこか異なる扱いを受けている様に感じる…。本部と支部の堺の他に、別で東京第三支部が分かたれている様な…。


「私が評価してる…か…、ハハッ!それは違うぞ白っち…?私はただ面白いからアイツ等を気に入ってるだけだ!ハハハッ!」


そう言って陽気に笑った支部長は、少し進んだ先で歩を止めた。そして私たちの方を振り返る事もせずに、口を開いた…。


「──…あそこは特殊なんだ…、〝何も知らない者〟、〝多くを失った者〟、〝大切なものを斬り捨てた者〟…、そして…〝あらゆる事に巻き込まれる者〟…。まるで運命みたいにあの場所に集まってくる…」


支部長の口から出た言葉は、私が抱いていた疑問を更に大きくするものだった…。


最後が桧凪さんの事なのは何となく分かりますが、他三人にも何か複雑な過去が…?もしかしてそのどれかが…問題支部の原因なのでしょうか…?


「そんな特殊な四人だぜ?絶対何か面白い事を巻き起こしてくれそうだろ?だから私はただ期待してるだけさ、特別評価しているわけではないっ!」


ちょっと真剣なムードだったのに…、結局元の「楽しければ何でもいい自分勝手」な支部長に戻ってしまった…。


やがて支部長は再び歩き出し、私と胡桃も後を追った。さっきの影響なのか、支部長の歩行速度は少し遅くなった。


「だからさ…朝っちの事が心配なのは分かるけど、きっと大丈夫だろ…。きっと何かしら面白い事をしてくれるって」


「──そうなら良いのですが…不安材料なのは変わりませんよ…」


私は疑問と不安…沢山のモヤモヤを抱きながら支部への帰路を辿った…。今はただ…桧凪さんを信じるしかないですね…






<〔Perspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


「あうぅ…、全身が…全身の骨が砕けたみたいだ…」


さて今私はどこにいるでしょう?そうですね、ソファーの上ですねっ!伊敷さんにコテンパンにされてソファーの上に転がってますねっ!


今日も結局伊敷さんにはかすりもしませんでした…。午前中あんなに自信あったのに…本当に強くなってるのかが分からなくなってきた…。しかも…──


「痛だだだだだだだだっ!?寝返りが…っ!寝返りが出来ない…っ!」


「口の中がぁ…口の中に血の味が広がってますー…」


先輩二人も仲良くソファーの上に沈んでいる…っと言うより沈められている…。あの二人のボロボロな姿を見るのは、実戦訓練の時くらいである…。


「まったく君たちは…三人揃ってだらしないですネェ、私が座るスペースがないじゃないですか…。ほら皆さん、お茶が入りましたよ」


何なんだろうこの温度差の違い…凄く嫌だね。こっちはのんびりお茶飲む余裕もないと言うのに…体を起こすのもままならないと言うのに…。


五日後…作戦決行は五日後…、それまでにもっと強くなれるかなぁ…私…。




【第43話 闘志 完】

迫る決戦の時…! 次回に続く!

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