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戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
37/76

第36話 賑やか支部

         <戦いの技式>


         第36話 賑やか支部

‐AM9:20‐


[──次のニュースです。昨日正午、南雲自動車道で玉突き事故が発生しました。原因は運転手のよそ見運転との事ですが──]


<〔Perspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


「玉突き事故…よそ見運転とは…。三下さんも気を付けた方がいいですよ…?自分にその気が無くても巻き込まれちゃうケースもありますから…」


「ご忠告痛み入ります。ですがむしろ朝凪さんこそ注意が必要ですよ…?歩道に突っ込んでくる危ない車も最近増えていますし…」


病院を退院して二日目の朝、私はいつも通り三下さんの車で支部に向かっている最中です。ちなみにまだちょっと残っていた傷も怪我も治りましたっ!


ちなみに私が目覚めた事を知ったお母さんは思ったより動じず、いつも通り「あらあら~」って言ってました。


逆にお父さんは過剰な程心配していて、電話が凄く長かったです…。私は長電話が嫌いなんですけどネェっ!


「そう言えば…朝凪さんが退院した事を縮角位には伝えました…?なんとなく分かっているかもですが、縮角位が一番心配してらしたんですから」


それは勿論知っている…。だって誰よりもお母さんしてるもん縮さんは…。


「その事なんですけど…実は伊敷さんたちと相談して、縮さんが帰ってくるまで退院の事は伏せておこうって話になって…」


縮さんのことだし、潜入捜査中に退院しましたよーなんて伝えたら…絶対何かしらトラブル起きるもん絶対…っ!


「まあ確かに…縮角位は桃乃桂位と朝凪さんを溺愛してらっしゃいますから…、その判断が的確でしょうね…」






-東京第三支部-


「じゃあ行ってきますっ!また帰りお願いしますね~っ!」


支部から出ていく三下さんの車を見送って、見慣れた支部のドアの先に進んだ。


そこにはいつも通りお茶を飲んでニュースを見ている伊敷さんと、まだちょっと眠そうにしている桃乃さんの姿が。


「おはようございます朝凪くん」


「おはよう~ございまぁ~す…朝凪ちゃん…」


桃乃さん朝弱いからなぁ…。しかもいつもより眠そうだし…ちょっと剣技教えて貰おうと思ってたけど、もうちょっと待たなきゃダメかも…。


私はキッチンからカップを持って来て、ポットに入っているお茶を注いだ。コレを飲みながらゆっくり桃乃さんが目覚めるのを待とう…。


ズズズッ…、ふぅ…なんて静かで素敵なあs──



“コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンッ!!”



静かで素敵な朝が一瞬にして乱された…っ!えっ何事ォ…っ!?


「誰か居るッスか~?風耶龍位~っ!縮角位~っ!桃乃桂位~っ!」


全く聞いたことのない声の主がドアの奥で騒いでる…。伊敷さんたちの事を知っているからきっと関係者なんだとは思うけど…。


「開いてますよ、入って来てください」


「失礼しますッス~っ!」


勢い良くドアを開けられ元気な声が響き渡った。そしてバタバタと走ってくる音と共にその人物は現れた。


「呼ばれて駆けて馳せ参じっ!今日も元気なわれねッス~っ!」


通路をスーッと滑りながら現れたその人物は、私よりもちょい背が高く、クリーム色の髪をした女性だった。


この騒がしさには流石の桃乃さんも完璧に目が覚めたようだ…。


「おはようございます、われねくん。相変わらず騒がしいですネェ…」


「元気が取り柄ッスからっ!」


ドヤッ!としたけど、今褒められてたのだろうか…。まあ明るい人なのは間違いなさそうだけれども…。


「ややっ!お初目に掛かる人物を発見っ!さては前に風耶龍位から聞いていた特別処置待遇の人ッスね、初めましてっ!自分はここ第三支部の専属マネージャーの一人、“烏島鳥(うととり)われね”って言うッスっ!よろしくッスっ!」


「あっ初めまして、えっと…桧凪朝凪って言います…。どうも…」


今まで会った事のある人の中でぶっちぎって元気な人かもしれない…。ただうるさいだけかもしれないけど私は嫌いじゃないです。


なんだろう…どこか親戚の子供に似てるような…。


「それでわれねくん、今日はここに何をしに?外木(とのき)さんは一緒じゃないんですか?」


外木さん…?そう言えばさっきわれねさんも「専属マネージャーの一人」って言ってたっけ…。まさか外木さんも同じ位騒がしかったり…?


「実は今日徒歩で来たんスけど、天気が良くてつい走りたくなって途中の交差点に置いて来ちゃったッスっ!」


なんて迷惑なアグレッシブさ…っ!よくマネージャー務まってるなこの人…。


「今日ここに伺った理由の物も全部外木先輩が持ってるので、到着までもうしばらく待って欲しいッスっ!」


「──仕方ありませんネェ…、お茶でも如何です…?」


「いただきますッスっ!!」



    到着まで少々お待ちくださいッス byわれね

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



[──ネフリコ王国で有名なお騒がせ家出少女が昨日昼前、五度目の大型家出をしていた事が判明しました。現在も少女の行方を地元警察が追っており──]


「またですか~?ついこの前四度目の大型家出したばかりなのに…」

「何だ…大型家出って…」

「随分と変なニュースッスねェ」


もう一人のマネージャーさんが訪れるのを待って二時間程経ったのだが、全然来ない…っ!本当に来ない…っ!


あまりにも来ないからお茶飲んでニュースばっかり眺めてる…っ!人生で一番ニュース見てるかもしれない…っ!あと大型家出って何だ…っ!?


「流石にもうそろそろ来ると思うんですけどネェ…、と言うか来て貰わないと非常に困るんですがネェ…」


「外木先輩は方向音痴ッスし…、ここ周辺の路地は迷路みたいになってるッスから、もうちょっと掛かるかもしれないッスよ?」


元はと言えばわれねさんが置いてったのが原因なんですけどね…?


「もう少し待ってみますか…」






「──そう言ってから更に二時間が経ってしまいました…」


「長いわァっ!!外木さんがどんな人なのか知らないけど流石に長いわァっ!!ただの方向音痴でも四時間は迷わんわァっ!!!」


「朝凪ちゃんが冷静を失っちゃってます~…」


「自分…今凄く罪悪感を感じてるッス…」


まさかお昼ご飯を食べて一服してもまだ来ないとは…。流石にこれ以上は待てない…私待つの嫌いだし、読者もそうだよね…? ※やめてよ


てな訳で…最終手段に出たいと思います…っ!


「──あっもしもし~三下さんですか?あの~実はですね…えっと…カクカクシカジカな事情がありまして…はい…どうか迎えに行って上げてください…。はい…お願いします…すみませんお手数をお掛けします…失礼しま~す。 “プツッ”」


三下さんならきっと何とかしてくれるだろう…。最悪なのは外木さんが今支部に到着してしまう事…流石にねェ…?



“ガチャッ”



噓だよね…?


「皆ただいま~、帰ってきたよ~」


「あっ縮さんっ!お帰りなさーい!」


良かった…外木さんじゃなくて縮さんで…。帰ってきたって事は潜入捜査が無事に終わったって事かな…?


なんか縮さんに会うの久々に感じr──っ!?


「伊敷さん…っ!私のレインコートどこに──」


「うわああああっ!!朝凪ちゃああああん…っ!!!」



  -縮号泣中- -他全員パニック中- -支部洪水中- 

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



「朝凪ちゃ~ん、着替えここに置いときますね~」


「桃乃さんありがとうございます…」


今私はシャワーを浴びています。何故なら縮さんの涙で体が冷え切ってしまったからです…。死ぬかと思った…。


あと多分レインコート着てても意味なかった気がする…、まいったね~対策のしようがないねあれね…。


十分に体を暖めてお風呂場を後にし、桃乃さんが置いてくれた服に着替えた。多分コレ桃乃さんのだ、匂いがする~。


「上がりましたーって…大丈夫ですか縮さん…?」


ソファーに腰掛ける縮さんの目にはまだちょっと涙が浮かんでいる。手に持ってるハンカチもびしょびしょだ…。


「うん、ごめんね…。本当に心配してたから…元気そうな朝凪ちゃんを見たらつい感極まっちゃって…うぅ…」


泣き止むまで一旦席外した方がいいのかな私…?一生泣き止まなくなっちゃうよ縮さんが…一生床拭く事になっちゃうよ皆が…。


「いい加減泣き止んでくださいよ縮くん…」

「腰が痛くなってきました~…」

「雑巾がけなんて年末以外で久々ッス…」


なんなんだこの意味不明な光景は…、なんなんだ…


「縮くん、帆野さんはどうしたんです?縮くんだけ置いてもう支部に?」


「あーうーんとね…実は捜査は昨日で終わっててね…?その後帆野さんの家でお疲れ会してお泊まりしてそこから帰って来たから…帆野さん居ないの」


何それいいなぁ、楽しそうだなぁ…。いくつになってもお泊まり会とかってワクワクしない…?

するよね…?


“ピンポーン!”



「おやおや、ようやく来ましたか…。ちゃんと呼び鈴を鳴らすのは三下さんか外木さんか司さん位なもんですよ」


確かに…支部(ここ)に来るほとんどの人はドアをガンガン叩くか、勝手に開けて入って来るからね。久々に聞いたよ呼び鈴の音…。


ガチャッとドアを開けて入って来た足音は、ちゃんと二人分聞こえるので、どうやら三下さんはちゃんと外木さんを見つけれたようだ。


「長らくお待たせしてしまい大変申し訳ありませんでしたァ!!」


通路を抜けて姿を現したその人物は、顔を認識する前に深々と頭を下げて大声で謝罪した。なんか見たことある気がする…この光景…。


誰だったか…、確か…鷹蔵(たかくら)さんだったっけ…?めちゃくちゃ勢い良く謝罪してきた人って…? ※1話参照


「なんとか見つけられて良かったですよ、それでは私は戻ります。まだやるべき仕事が残っていますので…」


「ありがとうございました三下さん、助かりました」


三下さんは早足で支部を去っていった。余程急ぎの仕事があるのだろう…帰りに改めてお礼言わないと…。


なんて考えていると、謝罪を終えて頭を上げた外木さんと目が合った。


外木さんは小さく首を傾げた後、何かに気付いたようにハッとした。多分私が誰なのか分からなかったのかな…?まあ初めましてだしね…。


「これはこれは…お初目に掛かります桧凪香位。(わたくし)は東京第三支部の専属マネージャーの“外木(とのき) 陽太郎(ようたろう)”と申します、以後お見知りおきを」


陽太郎さんか…、黒メガネに燕尾服…マネージャーというよりは執事に近い格好…。カッコいい…悪くないなぁ…。


自己紹介を終えた外木さんは、机の上に持っていた資料の包みを置いた。


「さて本題に入る前にひとつ…、桧凪香位、コレをどうぞ」


外木さんがポケットから取り出して手渡してくれた物を受け取った。それは顔写真のついた免許証サイズのカードだった。


これは…まさかまさか…っ!


「香位昇格の証、“香位証明証”になります」


キターーーーーーッ!!ということは…?


「これにより、桧凪香位の学校復帰が可能となります」


ウワーーーーーイ!!ヤッターーーーーーッ!!


「近々講習も行われる予定ですのでもう少しお待ちください」


「ちなみに三下先輩はちょうど学校復帰(その事)についての説明をしに、今日学校に向かう予定だったッス!」


じゃあ私がっつりその邪魔をしてしまったなぁ…。本気(マジ)で謝ろう…。


「それじゃあ本題の方へ入ります。まずは──」


「それについては私の方から話そうじゃないかっ!!」


玄関の方から響く誰かの大声に皆がビクついた。いつの間にかドアを開けて室内(なか)に入っていた声の主は、バタバタと走って来てその姿を現した。


「帆野さんっ!?何でここに居るんスか…っ!?」


現れたのは、相変わらず理解出来ない眼帯を身に着けている帆野さんと、その後ろにもう一人女の人が立っていた。


「あっ帆野さん!昇格試験の時は助けて下さりありがとうございましたっ!推薦までして貰っちゃって…」


「んにゃあ、気にすんな。助けるのは隊員の本分だし、推薦にしたって朝っちの頑張りあってのものだしな。礼は別にいらないぜ?」


そう言って頭をぽんぽんされた。いらないとは言われたけど、ようやくお礼を言えてスッキリしたっ!


「帆野龍位…何故ここに…?たった今しがた、帆野龍位にお願いされた件をお伝えするところでしたが…」


「その事なんだけどさ、やっぱ今回の件については支部長として直に私から伝えるべきって思ってな!だから来たわっ!!」


昇格試験ぶりに会うけど…やっぱかなり自由な人だなぁ…。そういえば試験の時の密航はどうなったんだろ…後で聞いてみようかな…。


「しかも今日は私の部下も来てるぞ!ほら白っち、ご挨拶」


「初めまして、“幻中(まもなか) 白唯(はくい)”と申します。一つ訂正致しますと、帆野龍位(支部長)は別に()()()()()()という理由ではなく、単に事務作業をしたくなかったからここにわざわざ足を運んだのです」


すごい…一瞬で全部バラされてる…。ってかめちゃくちゃに自分勝手な理由で来てる…っ!自由というか自己中…っ!


部下の白唯さん相手にめっちゃおどおどしてるし…帆野さんってちゃんと人望とかあるのかな…。なさそうだなぁ…。


「──ゴホンッ…!えー話を戻すが、今日は第三支部員(お前等)に伝えたい事があってだな…陽さん資料を頼む」


そう言われて陽太郎さんは机の上に資料を広げた。どこかの地図やらどこかの建物やらが載った資料が沢山ある。


そしてその中の一枚に自然と目が止まった。資料と資料の間…一部しか見えていないが、その写真に写り込んでいる()()に嫌な予感を感じた…


恐る恐るその資料を手に取ると、そこには鎖に繋がれて苦しそうに血を流す男の人の姿があった…。


「それじゃあ話そう…謎だった窃盗団の正体を…、奴等のアジトで知れた情報の中身と、奴等の目的について…」




【第36話 賑やか支部 完】

あの場所で見た聞いた全て、朝凪は何を思う… 次回に続く!

[宜しければ、感想やブックマーク等をよろしくお願い致します!]

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