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戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
28/76

第27話 旧友と強敵

         <戦いの技式>


         第27話 旧友と強敵

[次のニュースです。昨夜未明、〇×街の路地裏で男性の遺体が見つかりました。犯人はまだ捕まっておらず、警察が引き続き調査を… ]


私は今行きつけの「定食屋HARUKA」で一人でお昼ご飯を食べています。実は今パトロールの最中なのです。


昨日伊敷さんに異能犯と戦ったことを報告したら、「じゃあ明日は一人でパトロールに行ってみましょうか」っと言われ、午前中から一人で見回ってました。


現在はお昼休み、美味しいご飯を食べて午後のために英気を養っています。


「物騒な事件だよね。朝からずっとこのニュースばっかりだよほんと…。はい、ご飯のおかわり」


「あまなさん、ありがとうございます!」


全くもって物騒なニュースだなぁ…。確か複数の外傷が体から見つかって、恨みや復讐による犯行だとかなんとか…。


昨日のパトロール中に犯人を捕まえられてたら…助けられたのかな…。


「そういえば朝凪ちゃん知ってる?最近世間を騒がせてる()()()()()の話」


味噌汁を啜っていると、あまなさんがカウンターから身を乗り出してきた。


「窃盗団ですか?そういえば…そんなニュースもやってたような気が…するようなしないような…気もしなくもないような…」


簡単に言えばほとんど覚えていないのだ!フハハッ!


「宝石店を狙っては、中の宝石を根こそぎ盗んでいっちゃうらしくてね?中には数億円相当の被害が出た店もあるんだってさ」


どひゃーっ!!?数億!?えっ数億!?凄まじい額の被害だ…!?くれぇ…


宝石店を襲う窃盗団か…。もしそれが異能犯の仕業なら、流石にL-gst(エルジスタ)が黙ってない筈…。でもその話を全く聞かないってことは一般犯罪者か…。


数億か…くれぇ…。


「殺人事件に窃盗事件…ここんところ物騒で嫌だね本当…。現役女子高生の朝凪ちゃんは帰り道気を付けないとダメだよ?」


「私なら大丈夫です!怪しい奴は素早くパパッと片付けちゃいますよ!」


なんて会話しながら食事を済ませ、私は午後のパトロールに戻った。とはいってもやることはほとんど変わらない、歩いて見回るだけだ。


心地よい満腹感に包まれながら歩道を歩いて怪しい人がいないかをチェックする。この時間は人が多くて見るものが多い。


お昼ご飯を食べ終えたサラリーマンに犬を散歩させる女性、子供連れの親子にはしゃぐ女子高生たち。ん…?あの制服…どこか見覚えが…。


はっ!?あれは私が通っている学校の制服!?しかも同学年で隣のクラスの生徒!?こ…これはまずい!!?


私は後方へ全速力で走った。気付かれるより速く、人目を気にせず速く走ってすぐにその場所を後にした。


はぁっ…はぁっ…はぁっ…。なんであんなところに…普段は全く見かけないのに…なんでどうして…?だって平日だよ今日…。


はっ…!そうか、今はテスト期間なのか…!だからこんな時間帯に高校生がいるのか…!寄り道してんじゃねーぞマジで!! ※君は言えない


はぁっ…はぁっ…は…吐きそう…。さっき食べた物全部リバースしてしまいそうだ…。道が地獄絵図になってしまう…。


しゃがみながら胸をさすって落ち着かせていると、近くを数台のパトカーがけたたましいサイレンを鳴らしながら通り過ぎていった。


何か事件があったのだろうか…?現場に向かっているパトカーの数が、明らかにただ事ではないことを物語っている。


もう少し落ち着いたら…私も行ってみようかな…?うっぷ…


「ん?もしかして朝凪か?何してんだこんなとこでしゃがみこんで?」


「うわあああああァ!?オエエエエエエェ!!」


「うおおお!?おいおいどうした朝凪!?大丈夫か!?」



     うえぇぇ…気持ち悪いィ…。 by朝凪

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



「ほらよ水。これ飲んでちょっと落ち着けよ…」


「ありがと…なんかごめんねほんと…」


高校の同級生に見つかっちゃったのかと焦って勢い余って吐いてしまった…。なんか食べた記憶の無い紫色の何かも出てきた…。


私の醜態を目撃し、更に水まで買って来てくださったこの方は“築野浦 翔真(つのうら しょうま)”、私の中学時代の同級生である。


「それで?何してたんだあんな道の真ん中で?しかもその腰に差してる日本刀…まさか()()じゃねえだろ?」


…っ!?なんで翔真が永刃のことを…!?見たことはあっても正式名称まではL-gst(エルジスタ)の人間しか知らない筈じゃ…!?


一旦水を飲んで冷静に考えてみよう…。まずはなぜ翔真が永刃を知っているのか…そこには何か繋がりがある筈…。


ん…?そういえば…翔真の進学先って確か…。


はっ…!“L-gst(エルジスタ)専門訓練学校”…!それでかー、通りで知ってる筈ですわ。隊員の卵なんですもんそりゃ。


そして同時にピーンチ…!!隊員になるために日々努力している人の前で、「私流れで隊員になっちゃった☆」なんて言えない…!


多分だけど特別処置(とくべつしょち)待遇(たいぐう)に関しても知っている筈…。もし知られたら…最悪めっちゃ嫌われる…!それは嫌…!


「えーっと…これはねぇ…、そう文化祭!文化祭の演劇で使う小道具なの!だからそんなに怪しい物じゃないの!」


苦しいかこの言い訳は…?でも他に方法なくない…?腰に日本刀差してる未成年女子なんて怪しいに決まってんだろが…!


「ああ文化祭か、悪いな変に疑っちまって」


良かったー!なんとか切り抜けたっぽい!翔真(コイツ)がめちゃめちゃいい奴で助かった!流石は元学級委員長!


「私この後用事があるからもう行くね!助けてくれてありがと!学校頑張ってねバイバーイ!」


私は速足でその場を去った。まさかパトロールでこんなに疲れる羽目になるとは…、訓練よりも疲れたかも…主に精神が…。


今日はのんびり地面を歩きながらのパトロールは危険なようだ。なので今日は違う()を使おうと思う。


その為にはまず人目につかない場所へ行かないといけない。私は近くの路地裏に入り込み、階段を上ったり狭い通路を通ったりして奥に進んだ。


この街の路地裏は迷路の様になっていて、何の為に存在しているのか分からない開けた場所も多い。中にはそこに秘密基地を作る小学生もいる程だ。


私はもう一度周囲に人が居ないかを確認し、左手で印を結んだ。


突然だが私は昨日の内に、実はもう()()強化式を習得することに成功しているのである!今からそれをお見せしよう!


まずはこれだ。今までにも何度か見たことがある強化式で、昨日桃乃さんも使っていたあの強化式!


「“幡 強化式(はん きょうかしき) 【脚】(きゃく)”!」


私は膝を曲げて上へ向かって跳んだ。本気でジャンプしたわけじゃないのに、三階建ての屋上に軽々と着地出来た。



          ≪強化式【脚】≫

全身に働いていた身体能力の強化を下半身に集中させることで、脚力を飛躍的に向上させることが出来る。ただし上半身には適用されない。



今日は知り合いが多く街にいるので、午後は(うえ)を通って街を見回ることに決めた。習得したもう一つの強化式は機会があれば見せましょう。



     流石に空は見ない…よね…? by朝凪

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



建物から建物へ、まるで忍者の様に跳び移っていく。そこで気付きました、このパトロール方法すごく効率が良いことに…!


上からだと一度に多くを見渡せるし、人とすれ違う事もないから移動も楽…!これはきっと桃乃さんもやってるよ絶対…!


路地裏の間を跳びながら事件が起きていないことを確認し、私は勢いよくジャンプして大通りを跳び越えた。


この先の別の大通りを目指して進んでいると、チラッと何かが目の端に映った。見返すと狭い路地裏を走る数人の人影が見て取れた。


ひどく慌てているのか、かなりのスピードで走っている。いや少し違う…ちょくちょく背後を確認しながらの走り…()()()()…?


そういえばさっき数台のパトカーが走っていたし、もしや悪者に追われてる…?もしそうなら助けなきゃ…!


人数は…三人。周囲に他の人影は…なし!


まずは今逃げている人たちの保護に向かうべく、建物の上を駆けて先回りをした。進行方向の少し先の位置に降りて事情を伺う。


L-gst(エルジスタ)の者です…!どうしましたか…?とても慌てているようですが…」


「ヒィィィ…!!?そ…空から…人が…!!?」


驚かせてしまった…。まあそりゃ全力で走ってる途中で、人が突然空から降ってきたらそりゃ驚くよね…。ごめんなさい…。


走っていた三人組は全員が女性だった。腰を抜かして怯える女性に、言葉を失って驚く女性、そしてプロレスラーみたいに体格が良くて大きなカバンを持った女性。


「大丈夫です、安心してください…!私はL-gst(エルジスタ)の者で…」


L-gst(エルジスタ)…!!?ヒィィィ…!!?」


ま…まさかここまで驚くとは…って思ったけど…どこか様子が変だ…。


怯えている人も驚いている人も、明らかに()に怯えている…。というより…L-gst(エルジスタ)自体に怯えているような…。


「あ、あの…大丈夫でs…」


「イヤァァ!!こっち来ないでェェ!!あっち行ってェ!!」


近付いて手を差し伸べようとすると、遂には涙を浮かべながら必死に腕を振って抵抗しだした。もしかして私…悪者に思われてるのかな…?


「私…別に悪い者じゃ…」


()()()()()()()()()()!!グレナ様ァァ!!!」


地面に座り込んだ女性に目を向けていると、突然嫌な予感に襲われた。さっきまで何も感じなかったのに…突然爆発的に永気が増幅した…!?マズい…!?


戦闘態勢をとるために永刃に手を伸ばそうとした瞬間、一番後ろに居たはずの女性が一気に距離を詰めて拳を振るってきた。


なんとか顔の前で防御できたけど…一撃がすごく重い…!骨に響くような鋭い痛みだ…!生身で受けるのは危険…!


きっとまだ攻撃は続く…どうにか攻撃を見切って永刃を抜かなきゃ…


…っ!?何だこれっ…!?後ろに…引っ張られる…!?何が起きて…、耐えられない…!地面から足が離れる…!


写真のブレみたいに視界が歪み、訳が分からないまま背中に激痛が走った。痛みのせいで視界が真っ暗になったが、誰かの悲鳴が聞こえる。


起き上がろうとした手にガラス片のような物が触れた。それに加えて空気の流れを感じる…どうやら壁をぶち破って室内に居るみたいだ…。


視界が回復していき、空いた壁の方へ目を向けると、大通りを挟んだ向こう側にさっきの女性たちが立っている。


さっき居た位置から考えると、かなりの距離ぶっ飛ばされてる…!間違いなく()()()能力だ…!異能犯…しかもかなり強い…!


「まったく…向こうはアタシらの正体に気付いてなかったってのに…、大きな声で叫びやがって…。おかげで面倒なことになったよ…」


見たところ異能犯は三人の中で“グレナ様”って呼ばれてたあの女だけ…。他の二人からは永気を感じないし、恐怖の表情が消えてない。


第三支部に助けを求めたいけど…それを黙って見過ごしてくれるとは考えにくいし…、今ここで私が戦う以外に道が無い…!






「おやおや…これは少々マズい事態ですねェ…」


<第三支部 居間〔Perspective:(‐縮視点‐)縮〕>


「何?どうかしたの?」


昼食を済ませて食器を洗っていると、読んでいた本を閉じて支部長が何かつぶやいた。何がマズいのかは分からないけど、良い事態じゃなさそうだ。


「パトロール中の朝凪くんが、どうやら異能犯と接触してしまったようですねェ。しかも永気量は朝凪くんの方が劣っています」


それは確かにマズい…!桃乃ちゃんもパトロールに出掛けているけど、今日は場所が違うから助けに入れるかが分からない…!


朝凪ちゃんは力を付けてきてはいるけど、まだまだ実力も経験も足りてない…。自分よりも相手が上の場合、それを覆すのは多分難しい…!


「支部長、私行く…!詳しい場所はスマホに送って…!」


「落ち着いてください縮くん。距離的には貴方より桃乃くんの方が近いですし、まずは桃乃くんに連絡を入れる方が先ですよ」


それもそうだ、落ち着け私…焦るな私…。桃乃ちゃんが行ってくれるなら安心できる…、とりあえず電話をかけよう。



[♪♪♪~♪ ♪♪♪~♪ ♪♪♪~♪… ]



出ない…いつもならこっちがびっくりするくらいすぐに出るのに…。まさか桃乃ちゃんも戦って…!?パトロール中になんて滅多にないのに…!


「支部長!桃乃ちゃんは今どうなってる?もしかして桃乃ちゃんも…!」


「そっちは探知していないのですがしょうがありませんねェ…。“幡 探知式(はん たんちしき) 【壱問】(いちもん)”」


支部長は朝凪ちゃんたちがパトロールに向かう前に、朝凪ちゃんに探知式を掛けていた。でもそれはかなり広範囲で動きを追える代わりに、他が探知出来ない幡式(もの)だ…。


「見つけましたよ。そしてどうやら縮さんの思った通り、桃乃くんも異能犯と接触してますねェ。これでは助けに行けない…やはり縮くんにお願いしますよ」


私は頷くよりも速く永刃も手にして支部を出た。きっと桃乃ちゃんなら大丈夫、問題は朝凪ちゃんの方…!


事態が更に悪くなる前にたどり着かなきゃ…!お願い朝凪ちゃん…無理はしないで…、すぐにそっちに向かうから…!




【第27話 旧友と強敵 完】

朝凪と桃乃、それぞれの場所で戦いの火蓋が切られる! 次回に続く!


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