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戦いの技式  作者: 叢月
哀薔薇の集編
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第25話 戦いの技式(3)

         <戦いの技式>


         第25話 戦いの技式(3)

「何て言うか…結構落差がすごい…大変だね朝凪ちゃん…」


強化式・治癒式を除いた五つの幡式適性を終えたところで午前中は終了し、縮さんが作ったトルティージャを食べながら私の現状を伝えていた。


ちなみに“トルティージャ”っていうのはスペイン風オムレツの事を指すそうで、普通のオムレツと違って平たく丸い形をしている。美味しい♪


「そうなんですよぉ…このままじゃ個性の薄い凡人になっちゃいますぅ…」


「永気を感じ取れるだけでも、十分個性的な気がしますけど~…」


そうは言っても、やはり周りと比べると少し劣っている気がする…。主力となりえるのは今のところ“感知式”のみなのだから…。


「皆さんの最適性って何なんですか?あと…私の結果って普通なんですか…?」


「確か…縮くんが“遮蔽式”で桃乃くんが“感知式”、そして私が“探知式”です。あと朝凪くんの結果は普通ではないですねぇ、全体的に()()()()()です」


すごいズバッとくる…!自分で聞いておいてだけど結構ガッカリする…!伊国が言ってた「異分子」って発言も、あながち間違いではなかったのかな?


それはさておき、第三支部メンバーの最適性を知れたぞ!とは言っても伊敷さんと桃乃さんは何となく分かってはいた、気配とか視線を感じ取れるって言ったし。


縮さんは遮蔽式だったんだ。てことはその気になれば誰にも気付かれずに背後に回って、そのまま刃物で一突きってことも…怖ぁ…


「それで支部長、()のはやっぱりやるんですか~?今の朝凪ちゃんには少し危険が大きい様な気がします~」


不穏な発言をキャッチ!お昼前にも伊敷さんがそんなことを言ってたよ…「最悪死んじゃう」とか何とか…


「そう言われてもねぇ…幡式を習いと言ったのは朝凪くん自身ですし、()()が何より大事な幡式(もの)ってこともご存知でしょう?」


「そりゃそうだけど…せめてもう少し永気を鍛えてからでも…」


ますます不安が大きくなっていく…嫌な予感が広がってく…。本当に死ぬのかもしれない…遺書書こうかな…


「まあいざとなったら治癒式で治しから問題ないでしょう。それに、結局全ては朝凪くんの適性次第ですし、やってみないことには分かりませんよ」


トルティージャをひと口頬張りながら不安を胸の奥に押し込めた。一体何を始めようとしているのか…無事じゃ済まないんだろうなぁ…




食事を済ませた私は二時間の休息を貰った。伊敷さんはこの時間で「心身を全快にしておくように」っと言って奥の方に行ってしまった。


しかもその間は一切「永気を練ったり、増幅させてはいけない」らしい…。要は「限界まで心身を休めて、永気も出来るだけ消費しない」ことを指示されている。


縮さんと桃乃さんは再び鍛錬をしに行ってしまったし、今私は完全に独りだ。私は目を閉じてソファーに横になった。


真っ暗なまぶたの裏側を眺めながらぼんやりと今までの道のりを思い返す…。


あの日巧刃器に触れてL-gst(エルジスタ)に入隊した。そこで伊敷さんと縮さんと桃乃さんに出会って、初めて異能戦を目の当たりにした。


御ノ諏(みのす)タワー周辺で川嶺に殺されかけて、永気の修行をして能力を得て、穣門(じょうもん)で異能犯に勝利した。


昇格試験で優美ちゃんに出会って、伊国と戦って仲良く(?)なって、三人で共闘して異能犯を捕らえた。そして…


…………………………………………………………。


何となく考えない様にしてはしたけど…そう自覚せざるを得ない程、あの一瞬の出来事が鮮明に浮かび上がる。


私はあの異能犯が…あの禍々しい少女のことが…ぬぐい切れないトラウマになってしまっているんだ…。


伊敷さんの増幅した永気に触れた時、伊敷さんにあの少女の姿が重なったのがそれを物語っている…。


あの時感じた死の恐怖が…埋まらない絶対的な実力差が…今もべったり背後にしがみついて離れない…。


このままじゃ…ダメなのに……………。




「起きてください朝凪くん、そろそろ時間ですよ」


はっ!あれ…いつの間にガチ寝してたんだろ…私…。ちょっと目を閉じて考え事するだけのつもりだったのに…


とは言え二時間眠れたおかげで気持ちスッキリ体スッキリ!めっちゃ危険らしいけど気合いと勇気で乗り越えちゃうよ!



    死んだらここの地縛霊になろう by朝凪

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



<第三支部 空き部屋>


「さてさて、十分体を休められたと思いますし、早速適性判断を始めましょうか。今からやるのは強化式のテストです」


待ってました強化式!何としても強化式の適性だけは欲しい、絶対欲しい!たとえ命の危機に陥ろうとも!


「“強化式”はその名の通り、自身の筋力や身体能力などを強化できる幡式です。全ての幡式の中で最も汎用性が高い幡式(しき)だけあって、ここの適性は大事ですよォ?」


やめてください不安を煽るのは!ただでさえもう自分の才能は信じられないんだからねこっちは!!やられちゃうよメンタルがぁ!!


「強化式の適性判断は他に比べて簡単なので、サクサクッと終わらせちゃいましょうか」


簡単…って事は危険が伴うのは治癒式の方なのかな?ちょっとだけ気持ちに余裕が生まれた、なんかいけそうな気がする。


「それでは朝凪くんは、出来るだけ永気を増幅、放出していてください。いいですか、()()にその状態を()()()()()()ですよ?でないと死んじゃいますからねぇ…」


やっぱりこれなんかい!ひと時の安堵を返してほしいものです!


永気を練ったり増幅しちゃダメってこの時の為だったのか。私は指示された通りに全力で永気を増幅させた。


「いいですよ、その調子で何が起きてもその状態を維持してください。それでは始めます…心の準備をお願いしますね」


伊敷さんは十分に念を押して何かを始めた。片手を顔の高さまで上げて印を結び、何かを唱え始めた。


探知式の時みたいに、幡式の何かを私に使うつもりなのかな?この全力永気の状態に一体何をするつもりなん…


伊敷さんが何かを唱え終えた瞬間、私は予想だにしていなかった激痛に襲われた。目の前が一瞬真っ暗になり、気付けば膝を付いて四つん這いになっていた。


床に広がるおびただしい鮮血が、より一層理解できない状況に私を追い込んだ。


全身の筋肉がつった様な痛みに、全ての内臓が握りつぶされている様な激痛が合わさって、もやは立つことすら出来なくなってしまった。


全身を蝕む激痛、口に広がる血の味、今体を横にしたら確実に意識を失ってしまうだろう…。未だに何が起きたのか分からない…。


「伊…敷さん…これ…は…?一体何…が…起き…」


「朝凪くんに強化式を掛けたんですよ。今朝凪くんには二つの強化式が掛けられていて、この技を“強化重ね”と呼びます。強化式を二種類使うと、体がその負荷に耐えられずに今みたいなことが起きるんです」


説明してくれているみたいだけど、痛みのせいでいまいち頭に入ってこない…。痛みが部分的じゃないから集中もできない…。


「強化式の適性はその状態をどれだけ耐えていられるかで判断出来ます。ここからが辛いですよ、気合い入れて頑張ってください」


そうだ…気合いだ…!耐えるんだ…耐えるんだ私…!どれだけこの痛みに耐えられるか見当もつかないけど…やれるだけやってやる…!!




あれからどれくらい経ったかな…。痛みにしか意識が向かないせいで…すごく長い時間が過ぎた様に感じる…


今だに全身の痛みは弱まることなく続いていて、断続的に吐血を繰り返している…。もうそろそろ限界が近い…


「伊敷さん…今…どれくらい…経ち…ました…?」


「開始してから大体十分弱ってとこですね。まだ続けてもいいんですが、これ以上は今の朝凪くんの永気量では危険です。ここらで切り上げましょうか」


そう言って伊敷さんは私に掛けている強化式を解いた。激痛から解放された私の体は力なくその場に倒れ、指一本動かす事も出来なくなってしまった。


ぼやける視界の中で必死に意識を保とうとしたが、停電したようにフッと目の前が暗くなり、少しずつ意識がなくなっていった…



      お疲れ様です朝凪くん by伊敷

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



<第三支部 空き部屋〔P|erspective:(‐伊敷視点‐)伊敷〕>


「よいしょっと…。三回目ともなると、お姫様抱っこも流石に上達するものですねぇ」


服と床にべったりと残った血痕…後で縮くんたちに綺麗にしてもらいましょうかね。自分でやるのは面倒くさいので。


後で着替えも用意しないといけませんね…。流石にこのまま家に帰しては、親御さんが死ぬほど心配するでしょうし。


それにしても…朝凪くんには驚かされてばかりですねぇ…。わずか数ヶ月で能力を発現させたり、昇格試験に合格したり…


何よりも朝凪くんの持つ強化式の適性の高さ…他の幡式が霞んで見えてしまいますねぇ…。


強化式の適性が高い桃乃くんでさえ、二分意識を保つので精一杯だったというのに。意識を保つだけでなく、会話まで成立するとは…本当に驚かされますねぇ…。


「支部長~、朝凪ちゃんの様子はどうって…うわあぁぁああ朝凪ちゃん!?」


まあそういう反応になりますよね。桃乃くんの時も同じ様に叫んでましたし…相変わらず異常な後輩想いですねぇ…。


「ど、どうしました縮さん…!?朝凪ちゃんに何か…うわあぁぁあああ!!血が、血が、ものすごい量の血がぁ!?」


二人になって急にうるさいですね…。弱ってる人を前にあまり叫ばないようにと注意しとくとしましょうか。


「そんなに心配する必要はありませんよ。朝凪くんは強化式の適性が高かったですし、一時間程で目覚めるでしょう」


「そんなこと言ったって…心配だなぁ…」



     この血の汚れ…落ちるかなぁ… by縮

     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼



<第三支部 応接間〔P|erspective:(‐朝凪視点‐)朝凪〕>


う~ん…疲労感と頭の痛み、そして筋肉痛によく似た痛みを全身に感じる。これは間違いなく今までで一番の目覚めの悪さだなぁ…


体を起こして最初に目に入るのが血濡れた服ってのがまた…不快感に拍車をかけている…。にしてもえげつねぇ量だ…


「…早くても四十分位で目覚めると思っていましたが、まさか()()()で目覚めるとは…朝凪くんも徐々に人間離れしてきましたねぇ…」


右に顔を向けると、伊敷さんがまるで人じゃない何かを見るような目で見つめている。縮さんと桃乃さんは…あ、これは泣くな確実に…


「良かったよ~朝凪ちゃあん!あのまま静かに息を引き取っちゃうかと思ったよ…!」


「本当に良かったです~!目覚めるの早すぎてちょっとびっくりしたです~…!」


やっぱり泣いちゃったよ…。まあこんなに血が出てたらしょうがないかも…、私もちゃんと生きてるかちょっと自信ないし…


寝たまま会話するのは失礼かもと思い、だるい体を一生懸命動かして背もたれに寄りかかった。死にそうなくらい辛いです…


「とりあえず無事で何よりですよ。ちなみに強化式の適性ですが、これが最適性で間違いない程高い適性値でしたよ、良かったですねぇ」


よかった…死にかけた甲斐があった…。もしここで適性がないって言われたら、きっと静かに息を引き取っていたことだろう…。


これで残すは治癒式のみ…欲しぃ…。でももう動けそうにないけど…もしかして今からやるのかな…?ちょっと無理そうだけど…


「ではでは、目覚めたことですし、治癒式の適性判断に移りましょうか」


やるんだ…。なんというスパルタ…これが社会か…。


「では朝凪くん、目を閉じて永気を増幅させてください。そして頭の中で傷や痛みが和らぎ、治っていくイメージを浮かべてください」


言われた通りに目を閉じて、今にも枯れかかっている永気を練って増幅させる。


イメージ…イメージ…。血の滲んだ生々しい傷口から血が止まり、薄皮が張って傷が塞がる…そんな神がかったイメージを…!


「はいオッケーです。もうやめてもらって結構ですよ」


はっやーい!?もうですかそうですかどういうことですか!?今のほんの僅かな時間で一体何が判ったと言うんだ…!?


「治癒式というのはですねぇ…便利な力である反面、他と比べてかなり特殊でしてね。今の短時間で何かしら変化が見られなかった場合、決まって適性はないです」


しかも適性なし発言…!?なんだこの圧倒的に腑に落ちない感情は…!?えっ、本当にこれでおしまい…?手抜きか? ※やめて


「これでようやく全ての幡式判断が終了しましたねぇ。これで明日から本格的な幡式修行に入れますよ、良かったですねぇ?」


確かに伊敷さんの言う通り、これでようやく力を身に付けられる…!幡式を習得して、異能犯に負けない位の強さを手に入れてみせる…!



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<朝凪データ>


・幡式適正値 ☆強化式・・・ 100

        探知式・・・ 10

        感知式・・・ 90

        遮蔽式・・・ 45

        干渉式・・・ 10

        妨害式・・・ 5

        治癒式・・・ 0


・幡式最適性       <強化式>

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【第25話 戦いの技式(3) 完】

朝凪の全幡式の才能が判明!  次回に続く!

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