第24話 戦いの技式(2)
<戦いの技式>
第24話 戦いの技式(2)
「それでは次は…探知式の適性を調べてみましょうか」
確か伊敷さんの言うところによると、私は探知式か感知式の適性が高いって話だったような。感知式の適性はあるから、もしかして探知式の方は…嫌な予感がする…
私は伊敷さんの指示に従って準備を始めた。座布団の上で正座をして、帯で目元を隠す。どうでもいいけど外で座布団に座るのって変じゃない?
「今から朝凪くんには私の永気を探ってもらいます。ただ普通にやると朝凪くんは素で永気を感じ取ってしまうので…こうします」
そう言って伊敷さんは何かを唱え始めた。目隠ししているので何をしてるのかは分からないが、伊敷さんがどこに居るのかは確かに永気で何となく分かる。
なんて思っていると、突然ブレーカーが落ちたように永気を感じ取れなくなった。今まで出来てた事が急に出来なくなると逆に落ち着かなくなる…
「今朝凪くんには“遮蔽式”をかけました。遮蔽式については後で詳しく説明しますが、今朝凪くんの永気は限りなく無に近い状態になっています」
無…それはなんとまあ表現のしにくいことよ…。要するに永気を感じる術を絶ったって事で間違いないのかな?
伊敷さんの永気はおろか、自分の永気すらほとんど感じられない。今どれくらい放出してるのかも感覚では分からない。
「これから朝凪くんには、その状態で私がどこに居るかを探ってもらいます。私は少しずつ永気を増幅させていき、それに合わせて朝凪くんに近付いていきます。朝凪くんは私の場所が分かった時点で手を挙げて、どこに居るかを答えてください」
なるほど…人間レーダーになれと言うわけか…。この感じも漫画の主人公がよくやるやつみたいでテンションが上がりますなぁ。
「それでは早速始めますよ。私はまず大体数十メートル離れてから永気を増幅させていきますので、何もしてないのに手を挙げると恥ずかしいですよ?ふふふっ…」
さっきそれで少し不安な気持ちに陥ったから更に怖い…。ちゃんと分かってから手を挙げるように心掛けよう。全ては自分のメンタルの為に!
あれからどれくらい経っただろうか…?体感では十五分程の時間が過ぎていったように感じるが、一向に伊敷さんの居場所がつかめない…
永気はおろか呼吸の音すら聞こえない…。私を放置して支部に帰っちゃったんじゃないかと思ってしまう程に静かだ…。
より一層集中力を高めて周囲を探っていくと、私の後方から微かに伊敷さんの永気を感じ取れた。私は勢い良く手を挙げて居場所を答える。
「感じました!伊敷さんの居場所は…えっと…私から三メートル後方…だと思いました…」
私は目隠しを外して後ろを振り返ると、何かが顔にぶつかった。ぶつけた箇所を手でさすりながら確認すると、それは伊敷さんの脚だった。
「ありゃ…?思ったよりも全然…ってどうしたんですか伊敷さん!?目が、目がすごい事になってますよ!?死んだ魚の目!光のない目!!」
「いえいえお構いなく…こんなに永気を放出したのは久し振りで…少し疲れてしまっただけです…」
遮蔽式でせいで微量にしか永気を感じ取れないでいるが、一体どれだけ永気を増幅させたらこんな目になるんだろう…怖ぁ…
「今私がどれだけ永気を発しているか確かめてみますか…?」
気になった私は伊敷さんにお願いをして遮蔽式を解いてもらった…
その瞬間に肌を駆け抜ける悪寒に近い何か…。全身に鳥肌が立ってしまう程の圧倒的な永気量は、奄仙島でのあの光景を思い出させる…
伊敷さんの永気は禍々しくはなかったものの、言葉では表せない威圧感がその場を支配している。あの恐怖が蘇る…
無意識に体が小刻みに震え始め、少しずつ伊敷さんの姿があの少女と重なって見えてきた。
伊敷さんは私の状態に気付いてくれたのか、徐々に永気を収めてくれた。それに合わせて私の恐怖も静まっていった。
「す…すごい永気量でしたね…。気付けなかった私のせいなんですけど…あんなに永気を放出して大丈夫だったんですか…?」
「恐らく大丈夫ではないでしょう…。さっきも鍛錬場に居た縮と桃乃が不安そうに覗き込んでましたよ」
すみません鈍感な私で…。本当に全然分からなかったんです…本当に…
「…一応聞きますけど、私の適応はどうですか!」
「適性・ナシ☆」
でしょうねぇ!誰でも分かるわこの惨状なら!時代劇だったらとっくに背後からバッサリ☆いかれてるわボケがぁ!! ※自暴自棄
くそぉ…個人的に探知式の適性が欲しかったのになぁ…。こればっかりはしょうがないか…くそぉ…………ボケがぁ!! ※自暴自棄
一旦落ち着くのさ☆
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「さてさて…朝凪くんの探知式の適性が壊滅的なことを確認したところで、次は妨害式の適性判断にいきましょう」
きたな…まだ私が見たことのない未知の幡式…。でも名前の感じからして絶対ろくな幡式じゃない…!悪役が好んで使うようなタイプ…!
自分の幅が広がるのは嬉しいけど…こればっかりはあんまり適正あって欲しくないなぁ…。詳しくは知らないけどさ…
「“妨害式”というのはその名の通り、対象の発動している能力・才式・幡式を乱す効果を持っています。これが中々強力でしてねぇ…朝凪くんに適性があればいいんですけど」
前言撤回、あの伊敷さんが強力と言うなればぜひ身に付けておきたいですね!喜んでばんばん妨害しますよそれは!
「妨害式は簡単に言えば“相手の永気の波長を乱す”力の事、永気の流れを感じ取る才能次第で適性が分かります。なのでまずはその才能を確かめていきましょう」
そう言うと伊敷さんは私のおでこに指を二本、ピトッとくっつけた。ちょっと冷たい二本の指からは少量の永気が感じられる。
「今から一定のテンポで指先の永気を鼓動させます。朝凪くんはそれに自分の永気をぶつけて、出来る限りテンポを乱してみてください。妨害式の適性テストはそれだけです」
先の二つと同じで内容はそこまで難しく聞こえない…。なのにどれだけ自分が出来るのかが、まるで分からないのが嫌なところだ…
自分の永気をぶつける…ってなんだろう…?永気って実体がないから触れられないし、そもそも「押す力」なんて持ってないし…
なんて考えていると、伊敷さんは私を待たずにテストを始めてしまった。
心臓の様にドクンッ…!ドクンッ…!っと一秒間隔で鼓動している。どうすればいいのか分からないけど、なんとなくで頑張るしかない…!
目を閉じて鼓動だけに意識を傾ける。永気を増幅、放出して伊敷さんの指を包み込むと、より強く鼓動を感じた。
体の芯まで響きそうな衝撃…っというかうるさい!ヘッドフォンの最大音量で心臓の音を聞いているような騒がしさ!もはや騒音!!
集中しようとしても中々上手くいかない…。それどころか永気を安定させることすら出来なくなってしまった…。
永気を持ち直そうとすると鼓動に集中出来ず、逆に鼓動に意識を向けると永気がぶれる…。同時進行が出来ない…。
結局ほとんど出来ぬままテストは終了してしまった。結果は言わずもがな“適性なし”…、軽く落ち込みそうな出来の悪さであった…
「これはまた…壊滅的に才能ないですねぇ…。探知式に続いて妨害式までこの有り様とは…変な汗かいちゃいますよ…」
こなくそー-ッ!!おのれ凡骨以下の女子高生め!目的もなくただ寄り道ばっかりしてるからこうなるんじゃろがい!! ※もはや別人
「う~ん困りましたねぇ…妨害式がこうだと、似たタイプの干渉式も悲惨な結果を迎えてしまう可能性がかなり濃厚ですねぇ…」
ま~た嫌なことをおっしゃる…。もう頭の中に浮かぶもの…嫌な予感が…。頭の中をゴンゴン叩いてるよ嫌な予感が…
もうここまできたら途中で止めたりはしないけど…なんだかなぁ…
伊国はいっぱい適性あるんだろうね… by朝凪
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「えっー…それでは気を取り直して次にいきますよ朝凪くん。次は干渉式、おそらく適性はそこまでだと思いますけど一応やりましょう」
いよいよ伊敷さんも才能がないって思い始めてきてないか…?
「“干渉式”とは、相手の永気に干渉して形・色・動きなどを変えられる幡式になります。高度な式になると、一定時間相手の永気の影響を一切受けなくなったりもします」
おお~!相手の永気をジャック出来るって事かな?私の適応と合わせたら無敵になりそうな気がするなぁ。
でもそれって逆に私の適応が不利になる可能性もあるって事だ。永気操作されて永刃周りに永気纏わせられなくなったらピンチになっちゃうしね。
「さっきも言った通り干渉式は妨害式と似ていて、両方とも他者の永気に影響を及ぼす幡式です。なのでテストも若干似たものになります」
そう言うと、伊敷さんは私の前に白い永気の玉を一つ生み出した。透明な永気から急に白い玉が出現する光景ってちょっとびっくりするなぁ…
「今から私はこの玉をぐるぐる回しますので、朝凪くんは自分の永気で玉を包み込み、その動きの波長を乱して回転を逆にしてみてください。よ~く集中しないとできませんよぉ?」
さっき生き恥とも思えるレベルで上手く出来なかったし…今回はちゃんと出来たらいいなぁ…。なんか難しそうで心配だけど…
私は指示された通りに自分の永気で玉を包み込んだ。ビー玉サイズしかないのに…伊敷さんの永気は存在感の桁が違う。
私が包み込んだのを確認すると伊敷さんは玉を回し始めた。左回りにぐるぐると回る玉はまるで輪の様に見える。
むぅ…この回転を…逆にするの…?すみませんけど出来る気がしません…。初心者には速いってこの回転は…
でも一応やるだけやってみなきゃね?もしかしたらめちゃくちゃ才能があるかもしれないしね?ちょっと頑張っちゃお!
「ダメだーーッ!!逆にするどころか止めることも出来ない!ほんのちょっぴり「回転遅くなったかな?」程度の出来!!ムガー-ッ!!」
「何となく分かってはいましたが…もはや尊敬するレベルで適正がありませんね…。感知式の高適性は何だったのか…」
私も感知式がもしかしたら偶然だったのではないかって思えてきた。やればやるほどネガティブになっていくぅ…
「こういうのってコツとかないんですか?永気の波長を乱すって言われてもよく分からないですよ…」
ただでさえ永気についてまだ詳しく知らないのに、難しい扱いなんて出来るはずがない。何かヒントがなければとてもとても…
「そう言われましてもねぇ…幡式はほとんどが才能依存なので、感覚でどうにか出来ないと意味がないんですよねぇ」
才能がある人は何も知らなくても上手く出来るってことか…。なんて不平等な世界…この理不尽を憎みます…
今のところ四つの幡式の適性を確かめて、結果は一勝三敗といったところ。ほぼ惨敗…おーまいが~…ほーりーしっと…
「修行次第で習得も可能ではありますが、でたらめに修行してもただ時間を浪費するだけですからね。残りの三つに期待しましょう」
むぅ…せめて残りの内どれかは高適性であってほしいものだ…。確か残りは…“強化式”と“治癒式”と“遮蔽式”だったかな?
治癒式と遮蔽式はまだいいけど、強化式は絶対にほしい…!単純な自己強化能力は、今の私が最も必要と考えている力だ…!
私の能力は受け身の力、自分に働く力を打ち消す力。よって攻めに転じる時は、能力より剣術や身体能力が大きく影響する。
だから能力とは別に、相手と真っ正面で渡り合える力がいる…!能力に頼り過ぎないための力が…!
「それでは次にいきましょう。次は“遮蔽式”、自身の永気を他者から探られない様にする技術です。対・探知式って感じの幡式になります」
これは前に一度見たっけ…?確か参月山で一度…縮さんが使っていたような気がするなぁ…
他と比べたらなんか地味そうだけど、敵に気付かれず行動できるのは結構強いのかも…しれない…分かんない…
「遮蔽式は他と比べて適性判断が簡単です。誰かの背後から出来るだけ気付かれない様に近付いていくだけです」
急にすごく単純で簡単…!?そんなんで分かっちゃうもんなの…!?これはちょっといけそうな予感…!
「そうですねぇ…桃乃くんを対象にしても意味がないですし…今ちょうどキッチンに縮くんが一人でいるので、縮くんをターゲットにしましょう」
桃乃さんじゃ意味がない?なんでだろ…私みたいに永気を感じ取れたりするのかな?もしそうなら私だけの特別感が薄れちゃうなぁ…
あともう一つ気になることを言ってたぞ?「今ちょうどキッチンにいる」って…ここ外だよ?特に音もしないし、それに人物までは分からない筈…
「さっき言いましたが、探知・感知式の適性が高い人は先天的に“感じ取る力”が強い傾向にあります。朝凪くんが永気を感じ取れる様に、私は“気配”を感じ取れるんです」
何それカッコいい!!漫画とかアニメとかでよく見るやつ!!大体の強キャラが使ってる原理よく分かんないやつ!!
「ちなみに桃乃くんも同じです。桃乃くんの場合“視線”を強く感じ取ってしまうらしいので、背後からこっそりってことが出来ないんですよねぇ」
だから桃乃さんじゃ意味がないのか。にしても気配に視線…どっちもカッコいいなぁ…。その二つに比べたらなんか私…ショボくない…?
「縮くんにそういった能力はないので安心してください。そっと近付いてバッ!と首筋に触れればオッケーです」
もしそれが成功したらきっと縮さん大声上げるだろうなぁ…。前にホラーとか苦手って言ってたもん縮さん…
でもそうせざるを得ないなら全力で挑もう。そしてもし縮さんがびっくりしちゃったら全力で謝ろう!
ちょっと悲鳴を聞きたくもあったり… by朝凪
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
<第三支部 キッチン>
キッチンは玄関から入ってすぐの所にある。応接間を挟んで反対側のその場所に縮さんがいるらしいが…居た…
髪を結い、エプロンを身に付けて料理をしている縮さんを発見…!卵の匂い…お昼ご飯はオムライスだろうか…?
鼻歌を歌いながら上機嫌で料理に勤しんでいる今なら、余程大きい音を立てない限りバレないだろうきっと。
身を低く屈めてそーっと近付いていく。包丁やフライパンの音に自分の音を合わせるように一歩ずつ慎重に進んでいく。
そーっとそーっと…確実に一歩ずつ一歩ずつ…。
近付けば近付く程、心音が大きくなっていく様な感覚に襲われる。心音が聞こえちゃうんじゃないかと心配になる。
現在縮さんまでの距離二メートル弱…この調子でいけば触れられる…!もう少し…もう少し…!
「フンフフ~ン♪ …んっ?あれ、どうしたの朝凪ちゃん?お腹すいちゃった?もう少しでご飯だけど…軽く何か食べる?」
「えっ…!?あーえっと…何でもないですごめんなさい!」
お昼ご飯は「トルティージャ」だってさ by朝凪
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
<第三支部 庭>
「二メートル弱ですか…先の三つに比べたら適性はある方ですが、主力になる程ではないですねぇ」
先三つが酷過ぎたせいなのか…むしろ十分だと感じている私がいる…。なんならちょっとだけホッとしている…
これは実質二勝三敗と言っても過言ではない!※過言 この調子で残り二つも全力で挑もう、勝ちで終える為に!
「さてさて、順序良く次にいきたいところですが…その為にまずは昼食を挟みましょう。そこで出来るだけ体力を回復させてください。でないと朝凪くん…最悪死んでしまいますから…☆」
不穏な発言を残して伊敷さんはニヤッと笑みを浮かべた。何をするのか分からないが、嫌な予感だけがじわじわと広がっていった…
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<朝凪データ>
・幡式適正値 強化式・・・ ???
探知式・・・ 10
感知式・・・ 90
遮蔽式・・・ 45
干渉式・・・ 10
妨害式・・・ 5
治癒式・・・ ???
・幡式最適性 <???>
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【第24話 戦いの技式(2) 完】
悲惨な結果、待ち受ける地獄! 次回に続く!
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