第23話 戦いの技式(1)
<戦いの技式>
第23話 戦いの技式(1)
昇格試験に合格(?)し、無事(?)に香位になる事が出来た私。その日は急遽予定を変更し、三人で(伊国は強制的に…)お祝いに美味しいものを食べて騒いだ。
その結果支部に顔を出すのが次の日になってしまった。流石に今日はちゃんと報告しなければ…というかまず報告するのが筋ってものだろうし…
いつもより早く支部に到着し、送ってくれた三下さんにお礼を言って中に入った。誰か居るかな?伊敷さんなら居ると思うんだけど…
「おはようございます朝凪ちゃん。いつもより来るの早いですけど、何かありました?というかてっきりもう今日から学校に復帰すると思ってましたけど…」
今の桃乃さんの発言からすると、どうやら私の香位昇格の件は既に伝えられているのだろう。私のせいだけど私の口から報告したかったなぁ…
「えっとその事なんですけど…また少し事情がありまして…」
それは本部長から言われた事なのだが、どうやら香位になるには講習を受けなければならないらしい。
香位からは本格的に任務へと参加する機会が増える為、隊員としての心得などを講習で学ばないといけないそうです。
ただ問題はそこにありまして…。どうやら先の事件の調査でかなり忙しいらしく、直ぐには講習を始められないとのこと。
「なるほど…それはまたしばらく学校に戻れなさそうだね~」
ついでに香位である事を証明する「証明書」の発行にもまだ時間が掛かるという。要は本部の方もごたごたしているって事だ。
「なので学校に復帰するまでは、いつも通りここで鍛錬をする事にしました!私ももっと強くなりたいですし!」
その為に今日は一つ習いたい事があるのだ。今より格段に強くなる為に必要な技術を…!
「桃乃さんにお願いがあるんですけど、“式”ってやつを私に伝授してくれませんか?私も“才式”とか“幡式”とか使いたいです!」
そう、それこそが強くなる為に欠かせない技術“式”である。いくら能力があるとはいえそれだけでは全然足りないのだ。
最低でも【不屑師団】とか呼ばれてる奴らを一人で倒せる位にならないと、この先必ずどこかでつまずいてしまうから。
「う~ん…私が教えてもいいんですけど…。そういう永気系の技術は支部長の方が向いてると思いますよ~?私も縮さんも支部長から習ったので~」
むぅ…なるほど…。でも肝心の伊敷さんの姿がどこにも見当たらないんだよね…。来た時から若干気になってはいたけれど…
縮さんはよく一人で任務に赴いたりしてるから居なくても不思議じゃないけど、伊敷さんのそういうとこはまだ一度も見たことがない。
大体いつもソファーに座ってお茶を飲んでいるか、本部から送られて来た資料に目を通しているのに…一体何処へ…?
「伊敷さんと縮さんなら今ちょうど実戦訓練の最中だから、今はお邪魔しない方が良いですよ~」
実戦訓練…!み、見たい…!縮さんの戦いも見たいけど、何より伊敷さんの戦ってると所が見てみたい…!強いのかな…伊敷さんって…
どんな戦い方をするのかを想像していると奥の方で「ガチャッ」というドアの開く音が聞こえ、タイミング良く伊敷さんが現れた。
「おやおや朝凪くん、今日はいつもより早いですねぇ?聞きましたよ、香位昇格おめでとうございます」
姿を見せた伊敷さんは何事もなかったかのように振る舞っている。実戦訓練って聞いたけどそこまで激しい訓練じゃないみたいだ。
って思ってたけどやっぱ違うっぽいぞ!?後ろからめちゃくちゃ痛ましい姿の縮さんが…。何この伊敷さんとの温度差…?
「あ…朝凪ちゃん…試験合格…おめでとーう…」
そう言って縮さんは静かにソファーへ倒れ込んだ。え…どゆこと?伊敷さんって無傷で縮さんに勝てる位強いの?
「色々話したい事もありますけど、まずは実戦訓練を終わらせますね。さあ次は桃乃くんの番です、さっさと行きますよ」
「うぅ~…毎月この時間が一番不幸せです~…」
桃乃さんはすごく重だるそうな足運びで奥へと姿を消した。あの毎日汗だくで剣術の修行をしている桃乃さんがあんなに嫌そうにするなんて…
伊敷さん…普段そんなに強そうな雰囲気じゃないのに…。もしやあれが俗に言う「隠れ強キャラ」ってやつなのかな…?
「あれ…?そういえばどうして朝凪ちゃん居るの…?てっきり学校に戻っちゃったと思ってたけど…」
身をよじって私の方に顔を向けた縮さんだったが、上手く話しが頭に入ってこない…。ちょっと頭の中がショートしてるみたいです…
とりあえず一旦考えるのを止めて桃乃さんの時と同じ説明をした。昇格の件は伝わっているのにそこだけは伝わってないみたい。
「なるほど分かった…もう少し一緒に居れて嬉しいよ…」
やっぱ考えない様にしてもダメだ!横たわる縮さんが目に映る限りずっと気になってしまう!
「あの縮さん…伊敷さんってそんなに強いんですか?」
「そうだね…正直なところ私と桃乃ちゃんが二人で挑んでも負けると思う…。ああ見えてズルい位強いんだよね支部長って…」
こう言っちゃ悪いけど信じられない…。だって縮さん角位だよ?桃乃さんだって桂位だよ?二人掛かりで勝てないとか信じられる?
「伊敷さんってどんな能力何ですか?そんなにズルい位強いんですか…?」
「えっとね…実は私も支部長の能力知らないの…」
能力を知らない?まさか能力なしで戦ってるって事…?
「支部長…永刃を持ってないみたいなんだよね。私が入隊してから今までずっと、一度だって永刃を持ってるとこを見たことがないの」
永刃を持ってない…?持ってないのにどうやって龍位に…というかどうやってL-gstの隊員になったんだろう?
なんか伊敷さんって謎の多い人だな…。ますます伊敷さんの戦いが見たくなってきた…!いつか見られる機会あるかな?
「支部長は幡式の達人だから…能力なくても十分強いの…」
おっ!出ましたよ有力情報が!伊敷さんから幡式を習えば、きっと私は驚くほど飛躍的に強くなれるだろう!
そうすればどんな凶悪犯にも打ち勝てるし、次に伊国と戦った時に勝てるようになっておきたいしね。 ※朝凪は勝ちを譲られた事を知らない
「縮さんも伊敷さんから幡式を習ったんですか?」
「そうだよ…。っていうか私が第三支部に配属された時から支部長以外誰も居なかったから…支部長に習う以外選択肢がなかったよ」
そうだったのか。まあそれが幡式の達人だというのだから…何という運の良さ…。ラッキー♪
また遠くで「ガチャッ」と音が聞こえ、相変わらず汗一つかいていない伊敷さんと案の定ぼろぼろの桃乃さんが帰ってきた。
「あ…ああ…体痛いよぉ…。もう嫌だよぉ…支部長と戦うのはぁ…」
おおぅ…あんな廃人ギリギリな桃乃さん初めて見た…。幡式だけでどんだけ強くなれるわけ…?幡式ってあくまで補助なんじゃないの…?
「なるほど…“式”を習得したいとはいい心掛けですねぇ。教えるのは別に構いませんが、私が教えられるのは“幡式”だけですよ?」
「うぇ…?才式は無理なんですか?」
今私は伊敷さんに式習得のお願いをして庭に出ていた。だがそこで思わぬ一言「教えられるのは幡式だけ」、どゆこと?
「まあもっと具体的に言えば、才式は幡式と違って一から十まで教えられないんですよ。才式は本人の能力が大きく影響しますから」
むぅ…習いたいと言ってた手前恥ずかしいが、今考えると才式と幡式についてあんまり覚えてないぞ…?幡式は何度か見たから何となく分かるんだけど…
才式…って何だっけ?前に教えて貰った筈なんだけど、確か一ヵ月も前の事だから完璧に忘れちゃってるなあ私…
なのでここらでもう一度“式”について説明をして貰う事にしました。
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・才式… 代償を自分に課す事で自身の能力に関係する力を高めたり、能力の幅を広げる事が出来る。ただし代償が多くても少なくても式として成立する事はない。
・幡式… 自身の永気を用いて“自己強化”や“索敵”、“隠密”などの補助効果を得られる特殊な技の事。
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「つまり才式は自分の能力を基にするから具体的に教えられない…と。むぅ…自力で考えるしかないのか…」
「私が色々口を出してもいいんですが、自分で考えて才式を構築するのが最も良いんです。才式はどんな効果が必要か、何が自分に足りないかを見つけてからでも遅くはないですよ」
そうかぁ…まあ確かに伊敷さんの言う通りかも…。具体的にどんな能力効果が欲しいとかのイメージないし…才式は今はいっか。
「なのでこれから幡式の習得を目指して修行を始めましょうか。楽な修行じゃないですよ、覚悟はいいですか…?」
「はい!お願いします!」
こうして私の幡式修行が始まった。どうやらかなり厳しい修行になるらしいが…気合いで何とか乗り切ろう!そして私も強化式とか治癒式とか使えるようになろう!
「ではまず幡式の種類から説明します。幡式は全部で七種あり、それは以下の通りです」
<幡式>
・強化式 ・探知式 ・感知式 ・遮蔽式
・干渉式 ・妨害式 ・治癒式
私が今までに見たことあるのは四つかな?強化式と探知式は何度も見たことあるし、治癒式は昇格試験で、遮蔽式は前に一度縮さんが使ってた。
「これから朝凪くんには今上げた七つの幡式の習得を目指してもらいますが、その前に“適正”を調べないといけません」
適正?自分に合った幡式があるってこと?何となく意味は分かるけど…そんなのどうやって判別するんだろう?
「適性は人それぞれ全く異なるものなので、一つずつ地道に幡式の適性を判別していきましょう。長くなりますよこれは…」
うわぁ…伊敷さんが今までになく気だるそうだ…。もしかして「楽じゃない」ってそういう意味だったの?
なんかこう「肉体・精神的に辛い」とかではなく、「時間が掛かって辛い」ってこと?それって伊敷さん側の考えなのでは!?
「それじゃあまずはそうですね…探知式と感知式から始めていきましょうか。隊員がよく使う幡式ランキング上位ですよ」
きましたきましたきましたよ!探知式ってあれでしょ?遠くからでもどこに人が居るのかが分かるっていうやつ!漫画でよく見るカッコいいやつ!
「私が見た感じだと…朝凪くんは探知式か感知式の適性が高い筈です。分かりやすいやつから片付けていきましょう」
「うぇ?もう私の適性が分かるんですか?まだ私…特に何もしてないんですけど…」
適性ってもしかして見ただけで分かるの?そういえば似たような話を聞いたことがあるような…。目が大きい人はモテるとかなんとか…、関係ないか。
「朝凪くんは初めて永気を感じた日の事を覚えてますか?」
初めて感じた日…確か初めて第三支部に来た時だった気がするけど…それで一体が何が分かるというんだろう? ※第2話参照
「あの時の朝凪くんは永刃を所持して僅か一日足らず…あの日の朝凪くんは実質ただの一般人と変わりありませんでした。本来一般人は永気なんて感じられるわけがないんですが…朝凪くんは感じ取れていたんじゃないですか?」
そう言われてみれば…縮さんが永気を放出した瞬間に重苦しさを感じたような記憶がある。冷や汗すらかいていたような…
「恐らく朝凪くんは先天的に感じ取る力が人より強いんでしょうねぇ。そういう人は探知式・感知式の適性が高い場合が多いんですよ。他にも人の気配を強く感じたり、霊感が強い人にも当てはまります」
私が時々感じていた嫌な予感も、もしかしたら先天的なやつだったって事かな?もしそうなら感知式の方が高そうだ。
それはさておいて先天的ってなんかカッコいいなぁ…!生まれついての才能…なんか漫画の主人公みたいでテンション上がる…!
「まずは可能性が高い感知式の方から検証してみましょうか。というわけでまずはこれを持っていてください」
そう言って伊敷さんは両手サイズの石を渡してきた。これは確か…永気修行をした時にも使われてたやつだ。ご無沙汰だね。
意識を石に向けると、永気が中に込められているのが分かる。ただ永気修行の時とは違って最初から静かな水面の様だった。
「今から私がこの石に込められた永気を揺らします。朝凪くんは目を瞑って永気に動きがあったのを感じ次第、私に教えてください」
伊敷さんは持っていた石に手を置いたので、私もそれに合わせて目を閉じた。
目を閉じて集中すると、より石に込められた永気を感じられた。波紋一つ起きていないまっさらな水面…ウユニなんとかみたい。 ※ウユニ塩湖
伊敷さんはこの静かな永気を揺らすって言ってたし、それはつまり波を起こすって意味だよね…?意外と分かりやすそうな気もするけど…
しばらく無言で永気に集中していると、ほんの僅かな永気の変化を感じた。「ポツンッ」と小さな波紋が起きた様な…
動きが小さすぎて最早勘違いのようにも思えてきたぞ…?えっどうしよう…これで「まだ何もしてないですよ?」っとか言われたら余裕で恥ずか死ねるぞぉ…?
「伊敷さん…!永気に動きを感じ…た様に…思いました…?」
「なんで疑問形なんですか?自信を持っても大丈夫ですよ朝凪くん、ちゃんと感じ取れていますから」
良かった~!感じ取れた喜びよりも恥ずかしい思いをしないで済んだ事の方が嬉しい。よくやったぞ私!
「やはり感知式の適性はかなり高いようですねぇ。これが朝凪くんの最適性の可能性すら出てくる程の適正値です。この調子でどんどんいきますよ朝凪くん」
「はい!どんどんいきましょう!」
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<朝凪データ>
・幡式適正値 強化式・・・ ???
探知式・・・ ???
感知式・・・ 90
遮蔽式・・・ ???
干渉式・・・ ???
妨害式・・・ ???
治癒式・・・ ???
・幡式最適性 <???>
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【第23話 戦いの技式(1) 完】
幡式を学んで強くなれ! 次回に続く!
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