第10話 能力解明!
<戦いの技式>
第10話 能力解明!
穣門での暴動事件から二日、激しい訓練を避けて療養に集中した結果…
「まさかほぼ完治してしまうとは…。もしかしてこれが私の能力…なんですかね…?」
直ぐに怪我が治ったのはとても良いことだが、急に怪我の治りが早くなると少し不安で…、せめて理由だけでもはっきりとして欲しいのだ。
「それは能力ではなく永気によるものです。永気には攻撃力や防御力はありませんが、傷の進行を遅らせたり怪我の治りを早めたり出来るんですよ。まあ人によっては、そういう能力を持っている方もいるでしょうけど」
火傷がそこまで重症化していなかったのも、私が永気を多く出しながら戦っていたかららしい。だとしても慣れないものだ…、通常なら全治にかなりの時間が掛かると言うのに…
それでもこの調子なら十分試験にも間に合うだろう。問題は私の能力だ…
「この前の戦いの中で、巨大な火の球を永刃で斬ることが出来たんですけど…、もしかしてそれが私の能力だったりしますかね…?」
「火の球を?…なるほど、可能性は十分にありますね。後で色々仮定しながら能力を本質を探ってみましょうか」
自分の能力で他にどんな事が出来るのか想像を膨らませていると、インターホンが鳴り響いた。ガチャッとドアを開けて入って来たのは、眼鏡を掛けた強面の人物。永刃を所持していることから、三下さんの様な本部の人ではないのだろう。
「おう伊敷、調子はどうだ?相変わらずむかつく顔しやがって」
「おやおや誰かと思えば司さんでしたか。酷いこと言いますねぇ、昔からの付き合いじゃないですか」
昔からの付き合い…、その割にはそんなに仲が良さそうに見えないのは何故だろう…
「それで今日はどうしたんです?第一支部からわざわざ…、それも支部長自ら脚を運ぶなんて」
この人が…、東京第三支部の支部長…。とても支部長らしい威厳のある人だ。すごく顔が怖い…
「俺だって好き好んで問題支部に来たくはねえが、仕事に私情を挟むわけにはいかねえからな。それに、お前の意見も一応聞いておきたくてな」
そう云えば前に縮さんも、ここは問題支部だって言っていた。何があったのか分からないけど、人が来たがらないレベルなのだろうか…
「お前んとこの隊員が任務にあたった二日前の暴動事件、そこで捕まえた数十人に聴取を行ったが、全員の口から同じ単語が出た。【死を招く厄】、聞き覚えはあるか?」
私は何のことかよく分からなかったが、伊敷さんは何か思い当たる節があるようで、口元に手を当てて何かを考えている。
「大半が金と引き換えに暴動を起こすように言われていたが、捕らえた異能犯の内三名の人物は全員、≪自分は【死を招く厄】に認められた存在≫等の発言をしていた。
もしこれが組織だとしても、俺は一度も聞いたことが無い。だから一応お前の意見も聞いておきたい…、俺が来た理由はそれだ」
伊敷さんは少しの間考え、ようやく口を開いた。
「私も少し前に耳にした程度でしたが…、恐らく目的は宣伝でしょう」
宣伝…?何を…何の為に…?伊敷さんは話を続ける。
「以前別件で捕らえた人たちも、その組織の名を出していました…。大抵の犯罪組織は、L-gstを嫌って目立とうとはしませんが、奴らは違う…。わざと教えて、そこからの拡散を狙っている」
「仮にそうだとしても、やはり疑問がある。確かに名を広めて有名になろうとしているのは分かった、そこに間違いはないだろう。だったら何故目立つような事をさせる?わざわざこんな大事にしなくとも、裏の世界でいくらでも出来ることだろう」
そこまで頭の良くない私は、もうそろそろ容量がいっぱいになってしまう。必死に話について行こうと耳を傾ける。
「目的が組織拡大ならそれが最もですが、L-gstに名を知らせようとしているのなら話は別です。その場合奴らはいずれ何か大きな行動に出るでしょう。一般市民に危害が出ようともお構いなしにね…」
「…今回のあの暴動事件で、もし宣伝行為が終わったなら…、これからが奴らの本番ってわけか…。分かった、俺は支部に戻って早急に対策を考える。時間を割いて済まなかったな」
司さんは伊敷さんに背を向けて帰ろうとした。その途中で私と目が合い、司さんが話しかけてきた。
「お前が例の特別処置待遇の新人だな…?色々大変だろうが強くなれよ。若くして死にたくなければな…」
不安になる言葉を残して司さんは帰って行った。そりゃ頑張って強くなりますけども、死にたくないので…
「ああは言っていますが、朝凪くんの入隊直後は意外と気に掛けていたんですよ?≪お前の所じゃ直ぐに命を落とすから、俺の所に連れてこい!≫って」
強面の割にすごく優しい人なのかもしれない。顔怖いけど…
「まあそれはともかく、そろそろ永気修行を始めますよ」
「はい!」
私はいつも通り永気修行を行った。前は永気を抑えるのに一時間掛かっていたが、今では二十分程で出来るようになった。人って成長するもんだね。
その後は全員で昼食をとり、いよいよ能力の本質を確かめる修行が始まった。
「さあ早速始めよう!朝凪ちゃんの能力がどんなものなのかワクワクするね!」
「しますします!興味津々です!」
今日は縮さんと桃乃さんも立ち会ってくれるみたいだ。期待されているせいか少し緊張してしまう。庭で待っていると、伊敷さんはマッチやホースなどを持ってやってきた。
「まずは朝凪くんが言っていた事がもう一度出来るかを確かめてみましょう」
指示に従って乾いた木の枝を集め、まあまあの大きさの焚火を作った。途中縮さんたちがサツマイモをアルミに包んで焼いていたので、後で私も頂くとしよう。
まずは本当に斬れるかどうかを確かめるため、燃え上がる炎に永刃を振ってみる。永気を放出し、力一杯横に振った永刃は、少し炎を揺らしただけで普通に通り抜けた。
「…特に変化は…ないですね…」
「何か能力を発動させる条件があるんじゃない?」
条件…、何か心当たりはないかとあの戦いを思い返してみる。だが特に変わった事をした覚えはないし、そもそもあの時はかなり切羽詰まった状況だったこともあってよく覚えてない…
考えても分からないなら仕方がない…。とりあえず炎が斬れるまで永刃を振ろうと、若干やけくそな考えで振りかぶった。
もう一度横に永刃を振ると、ゆらゆらと揺れる炎の上部だけが上へと昇っていき、火元は不自然な動きをしながら元の状態に戻った。
「…斬れましたね…、二回目は…」
「…初めて見たけど…、多分斬れてた…のかな…?」
疑問のまま数回炎に斬りかかってみたが、その後の結果は二回目と変わらなかった。
私も縮さんも桃乃さんも、一回目とそれ以降の結果に何の違いがあったのか全く分からない状態だった。
「支部長は何か分かった~…?」
「支部長、助けてくださ~い…!」
「伊敷さん、もう何が何やら…」
「一斉に助けを求めないで下さいよ。ですがまあ大体の仕組みは予想が付きますので、今からそれが合っているかを確かめましょう」
伊敷さんは縮さんにホースを持たせ、蛇口を捻って水を出した。炎の次は水を斬れってことだろうか?
「それでは朝凪くん、刃の部分を水に浸けてみてください」
言われた通りに刃を水に浸ける。水が日の光を反射して心地良いまぶしさを放っていた。
「一度離して、このタオルで水滴を拭いてください。くれぐれも手を切らないように気を付けてくださいね」
渡されたタオルを受け取り、細心の注意を払って丁寧に水滴を拭きとっていく。水で洗われたからか、前よりも綺麗になった気がする。
「では朝凪くん、もう一度水に浸けてみてください」
また?っと思ったが、きっと何か考えがあるのだろう。指示された通りに水に浸けて、少ししてからまた離した。タオルで水滴を拭きとろうとした時、その違いに気付いた。
「あれ?さっきと同じく濡らしたはずなのに、水滴が全くついてないです!」
「どうやら予想通りだったみたいですね。それでは朝凪くん、今からこの水風船を斬ってみてください。斬れないとびしょ濡れになりますよぉ?」
突然そう言い、伊敷さんはポーンっと水風船を一つ投げた。急なことに心構えがまだだったが、濡れたくない一心で永刃を縦に振った。
しっかり水風船をとらえ、綺麗に真っ二つに斬れた。さながらリンゴのように斬れた水風船は、地面に落ちるまで水が零れることはなかった。
「おお!すごいよ朝凪ちゃん!水がまるで固形物のようにスパッと斬れたよ!」
「あれが朝凪ちゃんの能力…、まだ詳しく分からないですがとにかくすごいです!」
焚火を消し、ホースと水風船のゴミを片付け、腰を掛けられる場所に移動してサツマイモを頬張りながら伊敷さんの話を聞く。
「どうやら能力の発動条件は【刃の部分に触れる】で間違いないですね。刃に触れたものに【適応】する事で斬ることも可能になるのでしょう」
なるほどー、だから炎とか水とかが斬れたのかー。なるほどなるほど…、サツマイモ美味しい♪
「敵の能力である火の球も斬れたとなると、他者の永気にも適応することができるのでしょう。ただ発動条件が簡単で分かり易い分、扱いも少し難儀かもですねぇ…」
そう上手い展開にはならないか…。最初からめちゃつよだったら良かったのに…、サツマイモご馳走さまでした。
伊敷さんの話によると、気功派の能力者相手には強気に前に出られるらしいが、縮さんの様な技功派の能力には不利になってしまうそうだ。
能力にはそれぞれ有効範囲があって、自分を中心に広い範囲のものもあれば、自分自身に限定されるものもあると言う。
後に行った検証で、私の能力の有効範囲は永刃のみと極めて狭いことが判明し、縮さんの能力を受けて幻覚を見ても、それに私自身が適応することは不可能だった。
例え相手が気功派の能力者だったとしても、一度直に永刃で触れなければいけないので、私自身に危険が及ぶことも多いそう。サツマイモいただきます。
「有効範囲は才式を組めばなんとかなりますが、今の永気量では到底組めませんし、永気を増やそうにも時間が全然足りませんね。ともあれ、試験前に能力の本質がはっきりしたのはラッキーですし、試験も問題なくいけそうですね」
「念には念を入れて、試験当日前に剣術の方もバッチリ仕上げちゃうよ!私たちの力で、絶対に朝凪ちゃんを合格させるんだから!」
試験までの残り八日間、私は徹底的に永気と剣術の修行に専念した。永気修行はより高難易に、剣術修行はより激しくなっていった。
家に帰っても自主的に体力づくりや永気修行を行い、試験に向けて詰め込んでいった。修行で怪我をするたびにたちまち完治していくのは、正直人間離れしてきている様な気がして少し気が引ける…
簡単な任務もこなしながらの修業はあっという間に過ぎていき、私は試験を明日に控えていた。
「いよいよ試験本番…!緊張する~、お腹がぐるぐるするぅ…」
「大丈夫だよ朝凪ちゃん!今までの特訓の成果を発揮すれば、余裕で合格出来るよ!」
「胃薬要りますか?ホットミルクを飲めば落ち着きますよ?」
「至れり尽くせりですね…。ですが縮くんの言う通り、今の朝凪くんの実力なら十分合格も狙えますよ。あとは自信を持つだけですね」
先輩方の掛ける言葉がここまで心に沁みるなんて…、私ここまで緊張してるの初めてかも知れない…。
「明日は朝七時半に三下さんが家に迎えに行くので、朝凪くんはそのまま試験会場に向かう流れになります。ここには寄れないので、忘れ物をしないように」
三人に激励を貰って私は帰路に就いた。普段より沢山ご飯を食べ、普段より長く風呂に浸かり、大好物のプリンに舌鼓を打って床に就いた。
緊張して中々寝れないのは久しぶりだった。高校受験の時ですら、ここまで緊張したことはないというのに…
合格するための準備は全てしてきたはずなのに、何か見落としたものがないかが気になってしまう。教わったことが抜けていないか不安になる…
(それでもやるしかないんだ…。どんな結果になろうと、全力を尽くすしかないんだ…。伊敷さん、縮さん、桃乃さん、先生…。私、頑張りますから…!)
目を閉じて眠気に身を任せる。高く昇った月の光が、私を優しく包んでいた。
【第10話 能力解明! 完】
遂に昇格試験が幕を開ける!果たしてどんな試験が待ち受けるのか!? 次回に続く!
[宜しければ、感想やブックマーク等をよろしくお願い致します!]




