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「では、主演の白鳥 幸司さんからもコメントをいただけますか?」
「はい」
俺は、司会の女性からマイクを受け取った。
「えー、公開初日から映画館に足を運んでいただきまして本当にありがとうございます。この映画は僕にとっても代表作となる作品だと思っています。撮影中は……」
俺はつらつらと撮影の思い出などを語っていく。
……え? 何をしているのかって? 映画の公開初日の舞台挨拶だが?
なんでそんなものをしているのかって? ……そういえば、ちゃんと自己紹介をしていなかった気がするな。
……では、改めて自己紹介しておこう。
俺の名前は白鳥 幸司。コージーといえば、誰でも聞いたことがあるはずだ。それが俺のもう一つの顔だ。芸名を使っているわけでもないのだが、学校の誰も気づかない。まあ、バレたくないのでそれで良いが……
ちなみに、自分で言うのもなんだが、コージーは今をときめく人気若手俳優である。この前の国宝級イケメンランキングでも、一位を獲得したほどの人気ぶりだ。
ん? そんな訳がないって? 学校ではあんなキモいのにって?
余計なお世話だ。
今はちゃんとヘアセットもしているため前髪もスッキリしているし、姿勢にも気を配っている。学校とは違い、愛想よく振舞ってすらいるのだ。
じゃあ、学校でもそうしていれば良いのに……という声が聞こえてきそうなので先に反論しておこう。
人気俳優が学校に普通に通える訳がない。俺が今の姿で学校に行ったなら、学校中、いや、噂を聞きつけた日本中の人たちが俺の元に駆けつけ、授業どころではなくなってしまうことだろう。おそらく自分の教室にすらたどり着けまい。それどころか、警察すら出てくる事態になりかねない。
それに、個人的には学校での姿の方が過ごしやすくて良いのだ。
そうは言っても、この学校も嫌いではないし、俳優という仕事は好きだ。俳優であることにより生じる色々な不便さを補ってもあまりあるくらいの充足感を得ることができるのだ。それに、俺には演技の才能があるようだし、楽しんで仕事をすることもできている。
とにかく、今の生活には不満はないのだ。櫻井みたいな奴がいるのは悩み物だが……
「……本当に今日はわざわざ足をお運びいただきありがとうございました」
俺は爽やかな笑みを浮かべて挨拶を締めくくる。俺の微笑みで「キャーッ!!」とあちこちから黄色い悲鳴が上がる。いつものことではあるが、嬉しいものではある。人から向けられる好意はいくらあっても良いものだ。ファンは大切にするというのが俺の信条だ。
ファンとの交流も多めにとっているので、『神対応イケメン俳優コージー』と呼ばれることもあるくらいだ。実は、そう呼ばれるのは少し恥ずかしかったりするのだが……
俺はファンに向かって手を振っておく。爽やかな笑みは標準装備だ。「かっこよすぎて……もうだめ……」と席から崩れ落ちる人が多発したので少しやりすぎたかもしれない。
しかし、その後も俺は懲りることなくファンたちを再起不能に追い込んでいったのだった。
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次話、今話の2倍の長さです。




