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この小説はフィクションです。実在する人物・団体名等は一切関係ありません。
「ねぇねぇ! 昨日のドラマ見た⁉︎」
「『恋は続くよどこまでも、どこまでも、ずーっと先まで』のこと?」
「そうそう!」
「うん! 見た見た!」
ある朝。騒がしい声が教室に響いていた。
「よかったよね……コージーに惚れなおしちゃったよ……」
「本当にかっこよかった……さすが国宝級イケメンって感じ」
俺は読んでいた本から顔を上げ、声の出どころである女子たちの方を見る。会話をしているのはこのクラスのカースト最上位グループだった。
中心となっているのは、櫻井 琴葉。化粧をばっちりとした、顔だけは少し可愛い女子だ。パチリとした目は少しキツイイメージを抱かせるが綺麗な二重だし、鼻筋も整っている。そして、その下にはちょこんとした口が控えめについている。極め付けに、茶色く染められた髪は誰もが羨むほどさらさらだ。しかし、性格の方は……
「うえ、キモオタ陰キャがこっち見てる……まじ嫌なんだけど!」
「ほんとだ……マジでキモいよね」
櫻井はこっちを見てわざとらしく顔をしかめ、大声で悪口を言ってきた。
「なんで生きていけるんだろうね? あんなに気持ち悪いのに」
「うんうん。目の毒って感じ」
そこで、櫻井はふと思い出したように言う。
「ていうか、よく考えたら名前も覚えてないし?」
「確か……白鳥とか言わなかったっけ?」
「……て、最悪! コージーと同じ苗字じゃん! それなのにどうしてあんなにキモいんだろうね?」
確かに俺は猫背だし、目が見えないくらい髪が伸びきっている。イケメンというイメージは全く無く、気持ち悪いと思う人も多いだろう。いつも、本ばかり読んでいて陽キャとも決して言えない。
(……それでも、そこまで言う必要はないだろ?)
俺の内心などおかまい無しに、櫻井たちは悪口を言い続ける。
「まず、あのキモい髪の毛を切れって話よね?」
「うんうん。いつもオタクみたいな本ばっかり読んでキモすぎ」
……俺が今読んでいるのは『そして誰もいなくなったんだよ。そう、誰も。』っていうアガサ・クリスティーヌの名作小説なんだがな? それをオタクみたいな本とは? まぁ、ラノベも読まないことはないのだが。
「ま、髪切ったり、オタクみたいな本読んでなくてもキモいことには変わらないけどね?」
「それ。キモい奴はいくら頑張ってもキモいからね」
櫻井たちはいつまでも話を続けている。人の悪口だけでよくそれだけ会話が続くものだ。
(それにしても、キモいキモい言い過ぎだろ……)
少し苛立ちを覚えたが、細かいことを気にしても仕方ないと割り切って再び本に目を落とす。すると、あっという間に小説の世界に引き込まれ、櫻井たちの会話など思考の外に追い出された。
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