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最弱だって守りたいものがある  作者: ととやん
4/16

無職、女の子に守られる

俺は今日ニートになった。

あくまでもシステム的なものではあるが、その言葉は俺に重くのしかかる。


「と、とりあえずここを離れよう。レーダーにも赤い丸があるし。またゴブリンが来るかもしれない。」

「夏希に賛成。」

「とー君。痛い?歩ける?」


春奈が俺の顔を心配そうに覗き込んできた。


「あぁ。まだかなり痛いかな。でも大丈夫だ。心配すんな。」


俺はそう笑って誤魔化したが春奈の顔は晴れなかった。昔からこいつは普段は鈍感なのにこんな時ばっかり勘がするどくなるんだよな。


「ちょっと自信ないけどLGと一緒ならできるはず・・・。」


そういいながら春奈が俺の胸に手を当てる。


「ハイヒール。」


その言葉を春奈がつぶやいた瞬間、春奈に触れられている胸を起点に体全体が心地よい暖かさで包まれた。


「回復魔法まで使えんのか!?」

「本当にLGのシステムのまま。」


夏希と秋の表情から驚きの色が見て取れた。


「とー君?どう?まだ痛い?」


その言葉で俺は自分の体の異変に気づいた。


「全く痛くない!?すげーな春奈!」

「あはは。私は白魔導士だからね。回復とか補助魔法が得意なんだ。」


春奈が少し嬉しそうにはにかんだ。


「そうなのか。ありがとな。」

「よーし。トウマの怪我が治ったところでとりあえず学校からでますか!」

「そうだね。お母さんたちも心配だし。」

「とりあえず家を目指すのは賛成。でも、その前に・・・。」


夏希と春奈の意見に賛成しつつ秋はスマホを操作しだした。


「装備欄には武器が装備されてる・・・。なら・・・。」


そういいながら秋は右手を前にかざす。


「紅丸。」


そうつぶやくと秋の手の中に一本の刀が現れた。


「おおおおおおおおお!?かっけえ!?」

「なになに!?それどうやったの?アキ!」


手品みたいな現象に二人の食いつきは今日で一番よかった。


「別に。装備している武器の名前を言っただけ。」

「よーし。俺もやるぞ。ルージュランス!」

「私も!私も!レッドスタッフ!」


二人の手にはそれぞれ深紅の十文字槍と真っ赤なスタッフが握られていた。


「おおおおお!これでそこらへんの雑魚モンスターには負けないぜ。」

「私もこれで回復魔法の効果があがるよ。」


二人ははしゃぎながら武器を構えたり振ったりしている。


「二人とも。静かに。出来るだけ戦闘は回避したい。」


一人だけ冷静な秋が二人をたしなめるの横目にスマホで装備欄を見てみた。


「やっぱり装備なし・・・か。」


それどころか道具もなにも持ってはいない。俺も武器をかっこよく出現させたかった。

もう一度ステータスを見るHP、MP、力、器用、素早さ、知力、防御力、精神力の8つのステータスがあるが全て横には0と書かれていて、職業欄には無色ニートの文字が輝いていた。


「ここも何度みても変わらないか・・・。」


思わず溜息がでた。


「トウマ。」

「わぁ!」


耳元で急に声がしてびっくりして振り向くと呼吸が聞こえるくらい近くに秋の顔があった。


「な、なんだよ。びっくりさせるなよ。」

「あとでそのステータス見せて。」


秋は淡々としていた。しかし、俺の心臓はばくばくしている。


「あ、あぁ。わかった。今じゃなくていいのか?」

「今はこの状況を突破することが先決。」


相変わらず淡々と話す秋。しかし俺は未だに心臓がバクバクしていることが気づかれていないか気が気でない。


「わかった。死なないように頑張るよ。」


俺はそう冗談交じりに笑った。


「大丈夫。」


秋はそういってドアの前まで歩いて行ってこちらを振り返り微笑みながら言葉を続けた。


「トウマは私が守るから。」


言い終わるが早いか秋は持っていた刀を抜刀しながらドアを逆袈裟斬りにした。実際は斬っているモーションが見えなかった。それほど高速の抜刀術だった。

斬られたドアが半分あたりからスライドしていき上半分が教室の床に転がる。だが俺が目を奪われたのはドアの向こうの光景だった。


「え・・・ご、ごぶりん?」


そこには驚きの表情を浮かべているゴブリンが立っていた。そしてそのままゴブリンの体も斜めにずれていき二つに分かれた体が廊下に転がった。


「驚きの表情を浮かべさせる余裕を与えた。精進あるのみ・・・。」


秋が少し悔しそうな表情を浮かべながら刀を一度軽く刀を振ってゴブリンの血を落としてから帯刀した。血振りという動作だ。


「さすが剣術道場の娘。いつもながら見事な剣筋。」

「アキ。かっこいい!」

「ゲームの中より強いんじゃないか?」

「私はゲーム苦手・・・。」


少し罰が悪そうにしているところを見ると秋の操作ミスで負けたことがあったのかもしれない。

「さぁ、この調子で進むぞ。トウマしっかり秋に守られるんだぞ。」


夏希はそういいながらも嫌らしい笑顔を浮かべている。


「アキ強いからね。私たちは邪魔にならないようにしようか?ナツ。」


春奈も夏希に続いて嫌な笑顔を浮かべている。


「先行する。」


二人を無視して秋が教室を出ていく。俺はいまだにニヤニヤしている二人を無視してアキの後ろに続いた。

廊下は荒れに荒れていた。あちこちボロボロだったが棍棒で叩いたようなあとだけでなく、焦げていたり壁に穴が空いてたりと様々だった。更に不思議なことにゴブリンの死体はあるが他の生徒の死体は一切見当たらなかった。


「ハッ!」


前を歩く秋が急に抜刀しながら逆袈裟斬り。ちょうどそのタイミングで階段の踊り場から飛び出してきたゴブリンを切り裂いた。続いてドサッという音が二回続く。


「さっきからゴブリンを認識する前に斬ってるけど一流の剣士って皆そうなのか?」

「本当に一流ならそう。けど、私は侍のスキルを使っている。エセ一流。」


秋は残念そうに血振りをしてから帯刀した。


「侍には間合いの中なら敵の位置が認識できる第六感というスキルがあるんだよ。」


答えたのは先程まではニヤニヤしていた片割れの夏希だった。


「今のアキにはある意味最強のスキルだよね。」


もう片割れの春奈だ。


「出来れば自らの力で会得したかった・・・。」


悔しそうに唇を噛む秋。剣術道場で幼い頃より父親に剣術を仕込まれたとはいえ怖いくらいに剣術には妥協が一切ない。


『キーンコーンカーンコーン』


唐突に校内アナウンスが流れた。忘れてたがここは学校だった。


『先程の大地震のあとゴブリンが校内に大量出現している。いくら弱いといっても油断はするな。油断すれば命取りになる。気をつけて下校するように。以上。』


体育教師のゴリラの声だった。


『キーンコーンカーンコーン』


「え?それだけ?もっと避難誘導とかするべきだろ。」


俺は思わず校内放送に文句を垂れた。


「きっと、弱すぎて驚異じゃないと思われたのかもね。」

「俺には驚異なんだけど!?」

「そうカッカするなよトウマ。俺らがいるだろ?」

「そうだけどさ・・・。」

「ナツ。とー君についてるのはアキだよ。」

「あー。そうだったなぁ。」


二人がニヤニヤしだした。いつまで引っ張るんだよ。

そんな二人を無視して階段を下る秋に俺は続いた。たまにあちこちからゴブリンの断末魔が響いている。


「あー。さっきからゴブリンの死体はあんのに生徒の死体なんもねぇもんなー。教師の認識からしたら野良猫くらいの危険度なのかもな。」


そういいながら夏希は頭をボリボリと掻く。


「でも、高レベルモンスターが迷い混んでる可能性だってあるよね?」

「ゴブリンより強いとか、俺は即死だぞ。」

「あれより弱いのはいないんだけどな。」


夏希が苦笑いを浮かべる。


「あ、ゴリラ。」


階段を下りきったところで秋が足を止める。


「なんだと。さっきの放送の文句をいってやる。」

「あ、トウマ。違う。」


秋が止めるのを無視して俺は階段から廊下へ飛び出した。


「おい!ゴリラ!さっきの・・校内・ほ・うそ・・う・・・?」


そこにいたのはゴリラみたいな顔、ゴリラみたいな体格、ゴリラみたいな顔の体育教師ではなかった。


「グオオオオオオ!」


そこにいたのはゴリラそのものの顔、ゴリラそのものの体格、そしてゴリラそのものの咆哮をあげている完璧なゴリラだった。ただ一つだけ違うのは毛並みが金色ということだけだった。


「あ、これ死んだ・・・。」


つぎでやっとゴブリン以外との戦闘です

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