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最弱だって守りたいものがある  作者: ととやん
3/16

最弱主人公の誕生

前回より短め

「きぃいいぃぃいいぃぃぃい!」


目の前にいるゴブリンみたいな生物が甲高い咆哮を挙げる。


「ぐっ・・・なんて叫び声してやがんだ。」

俺たちは四人ともあまりの甲高い咆哮に思わず耳を押さえたが、それでもキーンという耳鳴りが鳴り続けている。周りを見ると今の咆哮で教室の窓ガラスや花瓶が割れたようでガラスが散乱していた。


「あれ。ゴブリンだよね?LGの。」


春奈が恐る恐ると言った感じで尋ねてるくる。


「間違いない。あの見た目はゴブリン。」


秋が冷静に答える。


「お前よくそんな冷静でいられるな。」

「慌てても仕方ない。そんなことよりも早く立ってトウマ。」

「あ、あぁ・・・。」


いまだに続く耳鳴りと吹っ飛ばされたときの身体中の痛みをこらえながら俺は立ち上がった。


「あれが本当にLGのゴブリンなら間違いなく攻撃をしてくるはず。すぐ動けるようにして。」

「わ、わかった。」


とは言いつつチュートリアルすらしていなかった俺は身構えるといってもどうしていいかわからずにへっぴり腰でファィティングポーズをとった。第三者から見たら情けない姿かもしれない。


「あはは。とー君何そのポーズ。」


情けない姿と確定した。


「うっせーな。喧嘩もろくにしたことがないんだ仕方ないだろ。」

「でも、それはねーぞ。トウマ。がはは。」


二人して腹を抱えて笑っている。こいつらはこんな時でも全く緊張感がない。


「お前らがアホで羨ましいよ。」

「グギャギャギャッ!」


急にゴブリンが喚きだし棍棒で床を殴りだした。


「あれ?無視されたと思っておこってるのかな?」

「ゴブリンのくせに生意気だな。」


二人は平然とした態度でゴブリンを見据える。


「二人とも油断大敵。これは現実。ゲームじゃない。それにそういう判断ができるくらいには知能があるということ。」

「わかってるよ。でもなー。やっぱりこう・・・なんというか実感わかないしゴブリンだしなー。」

そういいながら夏希はボリボリと頭を掻いた。

「グギャギャ!」


今度は棍棒を振り回しながら子供のような地団駄を踏む動きをしだしたゴブリン。その姿はちょっと可愛くて可哀想だった。


「チュートリアルで倒されるようなモンスターだからね。何千とかいるなら私もおーってなるんだけど・・・一匹だもんね。」


春奈もため息を吐きながらゴブリンを見る。


「グギャー!」


今の言葉で怒りが沸点を越えたのかゴブリンが飛びかかってきた。


「はやっ!?」


油断していた訳ではないが一瞬で目の前に迫るゴブリンに驚愕した。いや、してしまった。


「ぐはっ!?」


その一瞬を見逃さず緑色の化け物が俺の脇腹に痛烈なボディブローをいれてきた。脇腹に穴が開いたんじゃないかと錯覚するほど強烈な痛みと共にそのまま横へ吹っ飛び壁に衝突した。


「とー君!?」


あまりの痛みに立ち上がれずにいる俺に春奈が不安そうな視線を向ける。


「大丈夫・・・だ。そんな、こと、よ、り敵を、見ろ・・・。」


本当は喋るのすらきついがこのままじゃ全員やられてしまう。この状況でゴブリンから目を離すのはまずい。


「くきゃきゃきゃ。」


嬉しそうにゴブリンが笑う。くそっ。全然可愛くねー。


「よくもトウマを・・・ぶっころしてやんよ。ゴブリン野郎が!」


そういいながら夏希がゴブリンへ突進!

ヤバいとめな・いと・・・!?


「ギャッ!?」


俺がそう思っている間に夏樹は人間ではあり得ない速度でゴブリンに肉薄し、そのまま右ストレートで綺麗にゴブリンの頭を撃ち抜いた。文字通りの意味でだ。


「え?」


首から上が無くなったゴブリンがそのまま倒れるのを呆けた顔で見つめる夏希。

だが、それは夏樹だけではなく俺たち三人もそうだった。


「どういうことだ?」


しばらく間抜けな空気が教室に流れたが、その空気を打ち破ったのは右ストレートを突きだしたままの夏樹だった。


「たぶんだけど・・・。」


自信が無さそうに秋が答えを続ける。


「LGのステータスになっている。」


なるほど?


「そんな・・・そんなことってありえるの?アキ?これは現実だよ?」


春奈がそう言いながら秋に詰め寄る。その声は確かに震えている。


「や、やめろ。春奈。秋のせいじゃないし、何よりゴブリンがいる時点で既におかしいんだ。何があって

も不思議じゃない。」


夏希がそう言いながら春奈をなだめるが夏希の声も少し震えていた。


「でもそれなら説明がつく。トウマを一撃でぶっ飛ばしたゴブリンを夏希がオーバーキルしたことの。」


いつも通り淡々とした声で秋は言葉を続ける。こういう時でも態度が変わらないっていうのは、それだけで気持ちが落ち着く。本当に助かる。


「三人ともLG開ける?」

「ああ。もちろんだ。いつもこういう時に冷静に判断できるのは秋だしな。今回も頼む。」

「わかったよ。アキだって不安なのにいつも負担かけてごめんね。」

「操作方法を教えてくれるなら問題ない。だが、その前に大事な話がある・・・。」

「なに?トウマもなにか気づいた?」


あぁ。すごく大事なことだ。


「トウマもたまに凄いところに気がつくことがあるからな。こういう時だしなんでも言ってみろ!」


たまには余計だな。大体いつも良いこと言ってるだろ。


「とー君はやる時はやるからね。私は小学生の時に楽しみにしといたチーズケーキを食べられた犯人をナツだと言い当てた時の事をまだ覚えてるよ!」


それは俺が食べようとしたら夏希が先に隠れてチーズケーキを食べてるのを目撃しただけだ。


「すごく大事なことだ・・・。それは・・・。」


三人の視線が俺に集まる。


「いい加減立つのを手伝ってくれ。身体中痛くて動けないんだ。」


四人の間に変な空気が流れる。てか、なんでこいつらはモンスターになぐれられて倒れている友達をここまでスルーできるんだ?どSなのか?


「まだ身体が痛いだろうからそのままの方がいいかかと思った。」

「ガラスとかも散乱しててさっきからチクチク痛いんだ。助けてくれ。」

「とー君。床が好きなんじゃ・・・?」

「さんな性癖を持った覚えはない。」

「てっきり俺はその体制は二人のスカートを覗いてるのかと思ったわ。」


秋と春奈がバッとスカートを抑えてこっちを恨めしそうに見る。


「お前と一緒にするな。」


まぁ、さっきからチラチラと二人の白いものは見えてるが。

そんなやり取りを終えて夏希が俺を抱え起こした。


「トウマ。大丈夫?無理なら座ってる?」

「いや、座ったらいざってときに立てそうにないからこのままでいい。」

「けっ!俺は男に触れられてもなんも嬉しくないぜ。」


肩に手を回させながら俺を必死に支える夏希が悪態をつくが俺の体からは手を離そうとはしない。


「あれ?ゲーム画面にキャラがいないよ?」


一人でLGを開いていた春奈が驚きの声をあげた。


「やっぱり。私たちにキャラのステータスが反映されたからだと思う。」


俺と夏希も急いでスマホ画面を開く。


「マジだ・・・。これはいよいよ秋の話を信じるしかなさそうだな。」


横で頭を掻いている夏希を無視してスマホの画面を見る。LGは三人称視点のゲームだ。実際さっきチュートリアルでゴブリンが出てきたときは手前に自分のキャラがいた。だが、今映っているのは荒れた教室だけでキャラはいなかった。また右上に丸いレーダーのようなものがあり、その中心近くに3つの青い点が光っていた(これはきっと春奈たちだろう)そしてその点からちょっと離れたところを赤い丸がいくつか動いていた。左下にあった十字キーや右下の攻撃ボタンは消えていた。とりあえず触れそうな左上のメニューというボタンがあったので、押してみるといくつかの項目が出てきた。俺はその中のステータスという項目をなんとなく押してみた。


「それともうひとつ。トウマなんだけど・・・。」


そのが言葉が頭に入ってこないくらい俺は画面を見て固まった。


「皆覚えてる?チュートリアルのゴブリンと戦うとき必死に何度攻撃してもダメージが1しか入らなかったこと・・・。」

「あー!覚えてるよ!しかも相手の一撃をくらったら満タンのHPが1になるんだよね。」

「んで、その瞬間画面が変わってサポートキャラが職業とスキルを一つくれるんだよな。そのあとゴブリンを捻りつぶすまでがチュートリアルだったな。」


三人が何か話しているがステータス画面を信じられない俺の頭はパニック状態で何を言っているかわからない。


「そう。職業を貰って初めてステータスが加算されるシステムだった。そしてトウマはチュートリアルを始めた直後だった。」

「え・・・。それって・・・。」

「そう。トウマは恐らく・・・。」


俺の職業欄には無職(ニート)と書かれていた。


「マジかよ・・・。」


スキル欄にはなんの表示も無く、ステータスに至ってはオール0だった。


「職業どころかスキルもステータスもない。」


俺はこの日ニートになった。

遅くてすいません!

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