1.転生する前のお話
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記憶力がいい。
それは、この世界の学校生活において、重要なことだと思う。テストだって、所詮記憶力を試すようなもの。同じような問題ばかり出るし、国語、数学以外は全て暗記で点を取れると言っても過言ではないだろう。実際そうだったのだから。そう、記憶力が良すぎて、どのテストも満点を取ってしまった、私と言う例があるのだから。
「あー、また花咲姉が1位かー。今回も変わらず満点とか、どんだけ頭いいんだよ」
「学校の授業とか、簡単すぎて暇ですー、何て言い出すんじゃないか?」
そんなことはない。だって、授業が無いと公式とか分からないから。
「ははっ!言い出しそう。逆に、花咲妹はそんなに頭良く無いらしいぜ」
「姉妹なのに?とんだ災難だな、花咲妹」
そんなことない。マナちゃんは私には思いつかないようなことを思いついたりする。本当に凄いのはマナちゃんの方で、私は単に記憶力が良いだけ。何も知らないのにマナちゃんの事を悪く言わないで。
記憶力のいい、花咲姉はいつも心の中で周りの自分達の評価を批判している。面と向かって言えないのは、妹に止められているから。だからいつも読んでいる本の奥底に、その気持ちを閉じ込めていた。
花咲 舞。
それが姉の名前だ。
舞は両親の勧めで日本で一番頭のいい高校と言われる東京胡桃ヶ丘高等学校第一分校の一番上、スーパー特進コースに進んだ。
この学校の特進コースは偏差値73、スーパー特進コースの偏差値は80近く、と、入れる人数が少なかった。そのため、スーパー特進コースの人数は36人だけ。これでも今年は多い方だった。
過去の先輩や後輩達の首席は、合計20点くらいは毎回テストで落としている。いや、それが普通なのだが、舞の場合、ミスをしても1点か2点だった。だからか、舞は学校中の生徒から恐れられていた。
本人曰く、ただ記憶力のいい高校3年生らしいが。
一方、舞の妹、彩は、姉ほど暗記が得意なわけでは無かった。
それでも姉と同じ学校に行けるように、と、東京胡桃ヶ丘高等学校第一分校の普通科を受験し、合格して見せた。彩は勉強が嫌いでは無かった。姉ほど暗記が出来ないだけで。
しかし、姉より優れているものがあった。それは、何か新しいものを生み出す力だった。だから、どれだけ姉と比べられても、別に苦しくは無かった。
姉と違う能力をもった、可愛い年子の妹、と家族は分かってくれていたから。
姉、舞の趣味は読書だった。
特にジャンルに拘ってはいないから、ミステリー、サスペンス、ファンタジー、恋愛、などの物語から、評論、論文、医学書や古文など、兎に角色々読んでいた。だからだろう。舞には余計な知識が沢山あった。
妹、彩の趣味は生活用品の開発だった。
何せ、想像力に溢れているのだから、これがあったらな、ここをこうしたらこうなるのでは、と言った疑問が絶えない。それを自ら改良すべく、始めたのが生活用品の開発だった。面倒な計算や既に発表されている問題の論文などは姉が全て答えを教えてくれる。
妹、彩にとっては便利な姉であった。
舞にとって、彩の開発の手助けをするのが一番楽しい時間だったし、彩にとって、舞と開発するのが、どんな時よりも幸せだと感じていた。学校のない日曜日、それが2人にとっての安心する一日だった。
2人はそれがずっと続くものだと思っていた。
それが崩れる日が来るとは思ってもいなかった。
1人男によって、幸せな時間が壊されるとは。
ある日、学校帰りに並んで歩いて帰っていた2人。姉の課外が終わってからであった為、日が沈んだ、街明かりに照らされていた歩道を歩いていた。
「危ない、花咲姉妹!」
どこからか、クラスメイトの声が聞こえた。
何処だろう、何が危ないのだろう。
そう思った姉は、危ないと言うクラスメイトの忠告を聞いて妹を庇うように抱きながら、クラスメイト探した。だが、姉はクラスメイトを見つける事は無かった。最後に見たのは、妹、彩の泣き顔と血まみれになった自分の手だった。
「開発、続け、て、お願い、だから、ね………」
それが、花咲姉の遺言だった。