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前回の投稿からかなり間が空いてしまいました。

すみません(泣)

ふと目を開けるとそこには見慣れぬ風景が広がっていた。


天井や壁、床は全て木製。左右にのびる長い廊下には同じようなドアがいくつも並んでいる。ほのかに薬品の独特な匂いもしているため、ここは病院なのだろう。


「ここがカロル様の記憶の中…」


頬にあたる微かな風も、遠くで聞こえる小鳥の小さな声も、作り物とは思えないほど何もかもが鮮明に出来ていた。


そういえばカロル様は?そう思いキョロキョロと辺りを見回していると、不意に目の前のドアの向こうからカロルの話し声が聞こえてきた。


(なんだ、先に入っていたのね)


声のしたドアに駆け寄り、ノックをしようと手の甲をドアに向けて軽く振り下ろす。


「!!」


スカッとラフィリエーネの手は空を切った。空を切った手は反射的に中途半端な位置で止まりドアに貫通している。ドアに触れている感覚は一切ない。記憶の中の物には触れられないらしい。


ドアを通り抜けて中に入るとそこには、白衣を着た中年の医者とカロルが向かい合って座っていた。医者の顔は見えたが今の立ち位置ではカロルの表情は見えない。しかし、彼らがラフィリエーネに気づいていないのは確かだ。

医者はカロルを見つめながら鼻をスンッと鳴らして、眉間に皺を作った。


「偶然に近かったがな、ハッセンの薬は見つかったよ」

「っ!!本当に?」

「ああ。だが、その薬を作れるのはお前さんしかいない。多分、病人全員の分を作るには、それなりの君の犠牲が必要だと思う。……やってくれないか?」


言いにくそうに医者は口を開いた。しかし、カロルは臆することなく返事をした。


「やる!」

「……そうか。では、すぐに取り組んでほしい。………ハッセンの薬は、お前さんの咲かせる花だ。

以前、お前さんがあの方の見舞いに来た時、花を持ってきただろう?散った花びらを誤って子供が口に入れてしまってな、その患者はハッセンの症状はどんどん軽くなっていったんだ。だから、花びらを何枚かすり潰してその患者に飲ませた。もうすぐ完全に治るだろう」

「…………僕の花で本当にみんな治るの?」

「絶対とは言えない」

「………、」

「私も最善を尽くそう」

「分かった。約束だよ」


カロルの声は力なく、乾いた声だった。

その声と同時に視界はどんどん光に包まれて、やがて消えていった。

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