63話:違和感
新年明けてしまいました。本当は年明け前に投稿できればよかったのですが……。
今年は果たして何話投稿できるのか……。少なくとも2020年よりは多く更新したいところです。
こんな私ですが今後もよろしくお願いします。
あと物語に大きく関わらないのですが、変更点があります。一部の撃技の名前です。
アザミカゲロウ → 欺ミ陽炎
ハザクラレイカ → 揺ラ葉桜
バンシュウカリン → 無月差シ
紅華の穿 → 花鳴
まぁ、あまり気にしなくて大丈夫です。長くなりましたが本編をどうぞ。
※内容を一部修正しました。ほんと内容を見返さない自分が嫌だ。ザーラたちは鍛冶屋に向かいます。
場所は移り、再びミヒロサイド。
物色しつつ歩いているうちに、昨日発見した服屋とは違う服屋を発見した。外観は地味だが店内を覗くとそれなりに人が入っているようだった。
「ここでいいかな」
「あぁ? 何で服屋だ。飯屋じゃねェのか」
「今の服がボロボロだから。穴とか開いちゃってるし」
「……なら修繕屋の方がいい」
初めて聞く単語にミヒロは首を傾げる。
「修繕屋? 何それ?」
「価格は割に合わねェほど高ェが、壊れたり罅入ったり破れたりしたもんを修復する店があんだよ。武器でも服でも何でもな」
「そんな便利なお店が……。高額ってのが気になるけど相場って?」
「お前の上下と上着だけで4万くれェだろ」
「たっか!? ぼったくりってレベルじゃないんだけど!?」
「その代わりに日数がかからねェんだよ。長くても一分で終わる。別の服が欲しいとかなら別だが、今のやつでいいってんならこっちの方がいい」
実際に利用する人も多く、その多くは値切り交渉に全力を注いでいる。レイジスの言うように元の鍛冶屋や服屋で修繕を依頼した場合、金銭以外に日数もかかる。さらに修繕対象のアイテムの損傷が酷い場合、追加で素材も要求されるのだ。
金銭だけで解決するとなれば選ばない理由はない。よって修繕屋には挙って客が集まるが、それによって金欠となる者が後を絶たない。今回の闘技大会の参加者も、金欠解決が目的の者が多く含まれている。
「ふえぇ……んー、お金はあるからそっちの方がいいかなぁ……」
メニューを見ながら考え込む。現在のミヒロの所持金は約六万Dで、レイジスの提示した金額が本当であれば十分足りる金額だった。
「つーか俺を服選びに付きあわせんな」
「えー、ついてきたのそっちじゃん。用事が済んだならコロシアムに戻ってもいいよ?」
ミヒロはレイジスが着いてきた理由を未だに理解しておらず、また自身を気に食わないと思っているはずのレイジスの行動が不思議で仕方がなかった。
「……」
立ち止まった二人はお互いに視線をぶつけ合う。
そのまま、数秒。
「……何~、一緒に行きたいの~?」
無言で向き合っていることが可笑しくなり、一歩詰め寄ってレイジスの顔を下から覗きこみからかい交じりの冗談を口にする。
「そんなんじゃねェよッ! とっととどっちにするか選べ! つーか俺がいなかったらてめェは修繕屋に行けねェだろうが!!」
「あ、それもそっか。じゃあ案内お願いします!」
顔を赤くして怒るレイジスに笑いつつ、頼りにしてる、と真っ直ぐ向き合って深く頭を下げた。
「ちッ……」
必然的に案内せざるを得なくなったことに苛立ちつつ、これ以上目立つのも面倒だとそのまま歩き出した。
後ろを確認すれば、ちょこちょことミヒロがついてくる。辺りを見回し、料理や武器を見るたびに目を輝かせている。
(こいつの強さの秘密、近くで見てて分かるもんじゃねェか……)
頭をガシガシと掻き、苛立ちをかき消す。観察したところで意味はなさそうだと若干諦めていた。
時に無言、時に会話を挟みつつ二人は修繕屋に向かっていった。
だが、その二人の動向を追う影が一つ。
「……ここにおったか」
その影はダスクの森でミヒロを見つけた女性だった。そのまま屋根の上から観察していたが、ミヒロたちは気づくことができなかった……。
* * *
再び場面は変わり、上層部の大通り。
「えとえと、ザーラさん、どこに向かってるんです?」
「刃毀れしたから鍛冶屋だ。修繕屋に頼るほど酷くねェからなぁ」
「ま、今日はフリーだし、素材を要求されても渡せるから大丈夫だよ」
ザーラを先頭に、カオンとヨウロはその後ろに並ぶ形で鍛冶屋へ向かっていた。早々にレイジスが闘技場へ、スノウは断りを入れヤナを探しに行ったため、ザーラを抑えるために二人は行動を共にする判断をしたのだ。
だが、今までと違い酒場へ向かう様子が見られなかった。不思議に思う一方で、指摘するのも躊躇われた。飲酒しないに越したことは無いからだ。
「あのあの、今日はどうするんです?」
「闘技大会はあるけど……、見に行く感じ?」
「……お前らはどうすんだぁ?」
「え、え? うーん……、自分は昨日の疲れが残ってるのでここでゆっくりしたいなと。カオンさんはどうです?」
「俺はどこでも。暇だからねぇ。基本はザーラさんのお目付け役だけど」
「……そうか」
二人の答えを受けて、何か考えているのか否か。その表情から読み取ることはできない。だが二人にとって重要なのは、そこではない。
「(ちょっとちょっと、ザーラさんどうしたんです? いつもなら酒場直行とかでしたよね!? 何でこんなに大人しいんですか!?)」
「(よくわかんないけどこのままの方が一番いいから! 絶対連想させないように注意!)」
「(は、はいはい!)」
普段から被害を受ける身として大人しくあることは非常にありがたかった。ザーラの変化は酒場から若干感じ取っていたが、理由は不明なままだ。
「……何こそこそ話してんだぁ?」
二人の様子に気づいたザーラが後ろを向く。それを誤魔化すように、
「い、いえいえいえいえ! 何でもないですよ!」
「そ、そうそう!」
首も両手もぶんぶん振って否定する。が、ザーラは特別睨んだわけでもドスの効いた声を発したわけでもなく、単純に会話が聞こえなかっただけだったため、焦る二人の態度に首を傾げる。
「……? まぁいい」
二人に違和感を覚える一方で、自分自身にも違和感を抱いていた。
(今日は、イライラしねェなぁ……。逆に気分が良いくらいだぁ)
鍛冶屋に向かう途中で、酒場は何件も通過した。「酒」の文字も酒瓶も酒樽も、カオンとヨウロが必死に気を逸らそうとしてもザーラの目には入ってしまう。
だがこの日は違った。
飲酒の衝動に駆られることも、頭痛や苛立ちなどの禁断症状もなかったのだ。
泥酔状態で暴れ回ったことに変わりはない。度数の高い酒を飲まされることもなかった。違いがあるとすれば、その状態のザーラと付き合い切れた人物が一人いたこと。
(……黒いの……ミヒロ、っつったかぁ……)
「ざ、ザーラさんは結局どうすんの?」
言われて再び考える。
今興味があるのはミヒロで、前日大会に参加する旨の話をしていたことを思い出す。
「……そのあとは大会でも見に行ってみるかぁ」
「いいんじゃない? ヨウロは?」
「はいはい、それでいいと思います!」
「お前らも来んのか?」
「たまにはいいと思って。……や、嫌なら別にいいけどね?」
「……好きにしろ」
二人を置いてザーラは少しだけ足を速める。カオン達二人は顔を見合わせた後、駆け足で追いかけた。
「(ザーラさん、あのままでいないかなぁ)」
「(はいはい、そうであってほしいです……! 何事もないのが一番です!)」
二人の願いは届くのか否か。
淡い期待を抱きつつ、ザーラ達三人は目的地へ足を進めていった。
* * *
場所は三度ミヒロサイド。
修繕屋へ到着したミヒロはすぐに服の修繕を依頼した。レイジスの予想額とほぼ同額の値段に目玉を飛び出させつつ、料金を払って店を出る。
「よーし、服も直してもらったし! あとはご飯屋さん!」
「いちいち宣言すんなうるせェ」
「言いたくなっちゃうの。レイジスも食べにくる?」
「奢りなら付き合ってやる」
「ついさっき大金を払った私に言う? まぁいいけどさ」
お互いの距離感を掴んだのか自然な態度で振る舞う。
食事店へ向かう途中で、ミヒロが何かを見つける。
「……う、うぅ……」
「ん~……? え、大丈夫ですか!?」
路肩で男性が呻き声を上げながら蹲っていた。顔色も真っ青で息も途切れ途切れ。明らかに異常だった。
「……き、君は……?」
「私はミヒロで、こっちはレイジスです」
ミヒロはしゃがんで目線を合わせ、レイジスは一通り男性の状態を目で確認する。
「……外傷はねェ。病気か何かだろ、ほっとけ」
「できるかっつーの! 病気って仮定しておいてよくそんなこと言えんね!? でも、病気ならどうして外出を……?」
「あ、あのっ!」
男性は無理やり体を起こし、もたれ込むようにミヒロの両肩を強く掴む。
「おぉっとと!」
「鞄を……鞄をっ、見てませんか……!? 茶色で、肩から……下げるタイプの……! げほっ!」
ミヒロは落ち着かせるように男性の背を擦る。必死になる理由は知れないが、深刻な事態だとすぐに察し協力することにした。
「か、鞄? レイジスは心当たりある?」
「あるわけねェだろ。つーか失くした場所も言わねェで分かるか」
「大事な物なんですか?」
「……はぁ、はぁ……。あれ、が……誰かの……手に、渡れば……!」
「……? とりあえず病院に運ばないと」
鞄探しも優先するべきだが、鞄を必要とするこの男性が死んでは元も子もない。
「言っとくがこの国は医者少ねェぞ。ほぼ治療士しかいねェ」
【オーグラン】は戦いの国。コロシアムでの闘技大会に加え、酒場や集会所での乱闘騒ぎなど日頃から怪我人が絶えないため治療士が多い。これは【オーグラン】に限った話ではなく、コロシアムがある国の大半がその傾向にあるのだ。
そんな国の中で、男性の治療に適した医者と場所を早急に探すことになる。
だがミヒロは一人だけ頼りがあった。実際にはもう一人だけ思い浮かんでいたが、絶対嫌だ、と忘却の彼方へ消し去った。
「そこは大丈夫。セリアって人が診れると思うから。専門には劣るって言ってたけどね。レイジス! 案内するからこの人連れてきて!」
「はァ? てめェが運べばいいだろうが!」
「お願い! 大会まで時間もないし!」
「……ちィ!」
断るより先にミヒロが移動を始めたため、レイジスは頭を掻き毟りながらも男性を肩に担いでその後を追った。
* * *
場面はコロシアムの控室へ。
「……」
レウルは変わらずじっと待機中だったが、隣にはミヒロに変わってエンジュがいた。自身の武器である槍を背に差し、他の参加者の様子を窺いつつ、時折出入り口を見ている。
「レイジスも一緒に出て行ったけど何か話でもあったのか?」
「さぁな」
「早く戻らねェと参加できなくなるってわかってんのか……?」
焦るエンジュを余所に、レウルはとある箇所をじっと見つめている。
そこには何か違和感があり、レウルもようやくそれに気づいた。
「……エンジュ」
「ん、何だ?」
そのレウルの視線は……エンジュの腰へと向けられていた。
「お前、そんな鞄持ってたか? 昨日は身に付けてなかったと思うんだが」
レウルの抱いていた違和感は見慣れない茶色の鞄だった。肩から下げるタイプの小さ目の鞄で、持ち手を腰に巻く形で装備していた。
「鞄……あぁ、これか? 昨日の夜拾ってな。持ち主もわかんねェしとりあえず持っとこうと思って。それがどうかしたか?」
「……いや、少し気になっただけだ」
「そっか。……つーかあいつら二人にして無事に帰ってくる気がしねェんだが……」
「どうだろうな」
会話はそこで途切れ、二人は再び待ちの姿勢になる。
(……)
レウルはまだ鞄の事が気にかかっていた。
通常であれば、集会所なり紹介所なり人の集まるところへ届けるのが無難だろう。エンジュのような人柄や性格であれば周辺人物に聞いて回っても良かったはずだ。
何より、鞄に膨らみがない。
鞄の役割を考えれば何か道具が入っていてもおかしくはない。鞄には小さな傷が幾つも見られ、革も古めだ。そこから新品である線は切り捨て、元々は誰かの持ち物であると考えた。
(こいつが奪った……とは考えにくいか)
鞄の中身は盗られるなどして本当になくなっているのか、はたまた気づかないほど小さな何かが入っているのか。
そもそも鞄の扱いについても、その方法しか思いつかなかったのか。それともこの方法で見つけてもらいたいのか。
何か裏に意図があるのかすらわからない。
(……まぁいい。いつか分かる)
レウルは頭の片隅に置くだけにし、今の段階では気にしない事にした。
睡眠時間が足りてない。休日とか夕方まで寝てますからね。いっそのこと冬眠したい。
生活リズムが崩れてから体が壊れてきた感。せめて完結できるように鞭打って頑張ります。
けど今回も含めじわじわとしか話が進んでない気もする。こんな調子で大丈夫かね……。




