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ArteMyth ―アルテミス―  作者: 九石 藜
オーグラン編
66/67

62話:させない

9月に仕事で失敗が続いて心が沈没してました。申し訳ないです。


私の生活には圧倒的に癒しが足りない。どうしたものか……。


 時を同じくして、上層部のとある食事処。


 大会前の腹ごしらえにと大会参加者も観覧客もどっと押し寄せていた。そのため店内は酒場や集会所など普段人が集まる場所以上に熱気が籠っていた。

 その人だかりを避けるように〝海裂〟のメンバーたちは隅の席を確保し各々食事をとっていた。



「あれ、団長? 大会に参加するんでしたよね? 行かないんですか?」

「ん? あぁいや……昨日の件があったろう。……その気が失せた。二人とも大会に出場するらしいしな……」



 ラジールを含む一部のギルドメンバーたちは昨日のミヒロとレウルの集会所の一件による傷が癒えていないことや二人に植え付けられた恐怖から、予定を変更して休息を取っていた。



「あぁ~……〝夜斬り〟と……ミヒロさんでしたっけ。凄かったですからね、国中で噂になってましたし。……もしかしてあそこにいる〝山狩〟の方たちも?」



 別の区画には同様に怪我を負ったベルムを始めとした〝山狩〟のメンバーたちも食事処に訪れていた。だがお互いの傷を考えて、睨み合いこそするが喧嘩には発展せず席に収まっている。



「我々と同じだ」

「なるほど……」

「棄権した以上時間が空いた。……今日は好きに過ごせ」

「了解です。他のメンバーにも伝えておきます」

「あぁ」



 ルーシャはそう答えたものの、普段より真剣に考え込んでいるラジールの姿がどうしても気になり足を止めて様子を見ていた。

 悩み事なのかと思っていると、ルーシャの視線に気づいたラジールは思い付いたように声を掛ける。



「……ところでルーシャ。昨日集会所にいたミヒロさんにはどういうアピールが有効だと思う?」

「なぜあんな目に遭ってそんなことが言えるんですか……」



 真剣に考えた自分がバカだった、とルーシャはその問いを無視してそそくさと他のメンバーの元へ駆け寄り伝令を流す。ラジールは再び考え込み始めた。



(……今は脈なしだが、次こそは……!)

(団長がすっかりポンコツに……。ミヒロさん……こんな団長でごめんなさい……!)



 心の中で、ラジールは己の恋に燃え、ルーシャは謝罪を述べていた。




* * *




「ふぅー……何か緊張してきたぁ……。ていうか暇だー……」



 午前十時となり、控室も入室直後に比べて賑やかさが増している。ミヒロとレウルの二人は依然として並んで立っていた。これと言って準備することもないため退屈な時間を過ごしている。



「静かに待ってろ」

「えー、レウルは暇じゃないの?」

「待つくらいどうってことねーよ。これくらいの待ち時間はいつものことだしな」

「えぇー……」



 参加者が増加する以外に変わり映えのしない景色にミヒロも飽きてきたころ、見知った人物が二人に気付いて声を掛ける。



「二人とも来てたか」

「あ、エンジュおはよー!」



 昨日と装いは変わっていないが、磨かれた刃が気合の入り様を存分に表している。



「おはようさん。レウルも、今日はよろしくな」

「……あぁ」

「ねぇねぇエンジュ、レイジス見なかった?」

「レイジスか? さっき会ったからもうすぐ来ると思うぞ」



 エンジュが出入り口の方へ視線を向けると、ちょうど噂していたレイジスが入ってくる。そして三人を見つけると鬼の形相で睨みながら近づいてきた。



「おい〝夜斬り〟! 今日は絶対負けねェからな!!」

「勝手に言ってろ」

「てめェにもだ黒いの! 酒場での借りは返してやる!」

「おうよ! 全力でり合おうね!」

「ふんッ……」



 言いたいことを言い満足したのかそそくさと別の場所へ移動していく。その殺気は場を離れても漏れ出たまま。声を掛けようものなら即座に斬り伏せられるだろう。さすがのミヒロも一緒に過ごそうとは言い出せなかった。



「あいつの殺気はやばいが……俺たち三人の誰かが勝って、その賞金で薬を買う。あくまで目的はここだからな……」

「あ、レイジスも一応協力してくれるって」

「……は?」

「昨日酒場でご飯食べた時に話してね。最初は乗り気じゃなかったみたいだけど、お仲間さんの力も借りて何とか協力してくれるってことになったの。だから万が一レイジスが優勝しても問題はないよ」



 予想外の事態にエンジュは声を漏らした。間抜けな表情のエンジュにくすりと笑みを漏らしつつ説得までの簡単な流れを説明する。平然とした様子で話すため、〝アイシクルレイン〟と関わった事のあるエンジュは口をあんぐりと開けたままだった。



「さらっととんでもないこと言ってるぞ……」

「話をつけていたのか」

「会ったのは偶然だけどね。幸運だったよー」

「あっちもよく受けてくれたな……でも、これで薬の件は大丈夫そうだな。あと一時間あるけどどうする?」

「暇だよねぇ。早く来すぎたかなぁ」



 メニュー欄に表示される時間は十時過ぎ。気合を入れて入り時間を早めすぎたこと、そして控室での準備もないことから退屈な時間ができてしまっていた。

 そんな待ちぼうけのミヒロたちとは対照的に、汗を流し肉体の調整をする者、武器を磨く者、同じギルド同士で作戦を立てる者たちなど、他の参加者たちは各々待機時間を有効活用していた。



「なら肩慣らしに戦うか?」

「さすがにそれは無理だよ~」

「大会前に怪我したら終わりだぞ……」

「外に出られるならご飯食べたいけど……出ていいのかなぁ?」



 栄養補給のため携帯食料を口にする参加者を目にし、食欲が刺激されたのかお腹を擦りながらそう零す。

 ミヒロは出入り口へ視線を向けると、係員が扉の前に待機している。その場から微動だにせず、さんかしゃたち怪しい動きがないか参加者たちの監視を行っていた。



「昨日もそうだがお前食いすぎだろ」

「ご飯が美味しいと止まんないんだもん。それにリアルとゲームは別腹よ」

「限度ってもんがあるだろ」

「つーかミヒロ、昨日から服ボロボロだよな」

「あーこれ? 森のボス倒してから着替えてなかったし、これ以外に替えとかないし……だからそのまま着てるけど」



 ボスに加え集会所の一件とザーラとの戦闘も重なったことで裾は破れ、穴も何箇所と開いてしまっており、無駄に風通しが良い状態になっていた。



「せっかくだから、食事ついでに何か買って着替えてきたらどうだ?」

「そーだね、そうするよ」

「じゃあ外に出られるか聞いてくる」



 たたっと軽快な足取りで係員の元へ駆けていった。その後ろ姿をレウルはじっと見つめていたが、ミヒロが理由を聞く前にエンジュは戻ってきた。



「時間内に戻れば大丈夫だとよ」

「ほーい。んじゃ行ってくるかなー。二人はどうする?」

「俺はここで待ってるよ」

「俺も行かねェ」

「りょーかーい」



 エンジュと交代するようにミヒロは人波をすり抜けるように出入り口へ向かう。



「おい黒いの」

「にゃ?」



 途中で声を掛けられそちらへ向くと、不機嫌な様子のレイジスが立っていた。喧嘩かと一瞬身構えたが、レイジスは納刀したままで突き刺すような殺気も消えている。



「外行くんだろ。俺も出る」

「……? うん、わかった」



 何の用事だろう、と首を傾げつつも断る理由がないため了承し、二人で係員へ話を通して外へ出る。



「てっきり絡んでこないかと思ってたよ。何か用事があったの?」



 周りの売店に目を配りつつそう問うた。実際、今もミヒロは着いてきたレイジスの意図が理解できないままだった。

 幾秒かの沈黙の後、不意に言葉を零す。



「……大会に優勝したら、だ」

「うん?」





「俺がお前を叩きのめせたら……お前んとこのヤナを貰う」





 立ち止まることなく、視線を合わせることもなく。ただ歩きながらさらっと宣言したため一瞬聞き逃しそうになった。



「……はぁ!? 絶対嫌なんだけど!?」

「この条件が呑めねェなら、優勝しても賞金は渡さねェ」

「う……えぇー……」



 突きつけられた条件に、顎に手を当て思案する。


 条件を呑んだ時のメリットとデメリットを考える。メリットは賞金の当てが増えること。デメリットはその逆で賞金獲得の当てにできないことと、最悪の事態として自分が負けた時にヤナを奪われることだ。


 だがそもそも条件を呑まなくとも他に協力者がいるミヒロにとって、この条件を呑むメリットは大きくない。だが条件を呑んで戦闘しレイジスに実力を認めさせることができたなら、今後も協力を要請できる可能性が増えると考えた。



「この俺を煽ったんだ。それぐらい呑め」



 承諾の方向でミヒロは答えようと思ったが、踏みとどまった。

 思い浮かぶのはヤナの顔。ヤナのいない状況で、自分勝手な約束にヤナを巻き込んでしまうのはどうなのか。


 ミヒロは両頬を叩いた。突然の行動に引いた様子でレイジスは見ていたが、ミヒロは改めて答えを出す。



「その約束にはヤナの意思がないから、軽く「わかった」とは言えないよ。……けど、その条件は絶対果たせないから無理だね」

「あァ?」





「一方的な勝負にはさせないもの。もちろん勝つつもりで行くけど、最悪善戦にはして見せるさ」





 屈託のない笑顔と、揺るがぬ自信。


 それは酒場で一度制した故ではない。例えその一件があろうとなかろうと、ミヒロは同じ発言をしていた。

 その堂々とした振る舞いが、レイジスは不思議でならなかった。

 ゆえに自分やザーラにすら臆さないミヒロの強さの理由を探るため、そしてヤナの引き抜きという賞金譲渡の条件を呑ませるためにミヒロの外出に付き合ったのである。



「……ちッ、そーかよ」



 気に入らないとそっぽを向き、それ以上口を開くことは無かった。


 二人は人一人分のスペースを空けつつ、並んで通りを抜けて行った。




   * * *




「……」

「……」



 同時刻、バリス訓練場。


 大会当日やその数日前はコンディション調整をする者も多いため、訓練場の利用時間を早めることにしていた。大会一時間前という事もあり多くの者がコロシアムに向かい、場内に残ったのは数名ほどになっていた。


 その訓練場の前に転がっていた、生々しい傷を負い白目を剥いて気絶しているトリバを見て、リムとバリスは言葉を失っていた。

 休憩に行くと抜け出してから一晩経っても一向に帰ってこないため、トリバの様子を見に行こうとした二人が訓練場を出て最初に見たものがこれである。


 ミヒロは怒り故にそこらの道端に捨てようと考えていたが、付き添いのスノウから説得されたこともあり、訓練場に近い場所に横たわらせた。そこからトリバは腕の力だけで体を引きずって訓練場まで着いたが限界を迎え気絶した、というのが経緯だった。



「……どうしたんでしょうねぇ?」

「さ、さぁね……。ロクでもない目に遭ったのは間違いないだろうけど……」

「お酒に酔ってぐでんぐでんになっていろんなところにぶつかったとか?」

「いや、いつでも治療できるようにって酔い潰れるまでは飲まないらしいんだ。それに普通に転ぶだけなら切り傷は少し不自然な気もするし。……まぁ、変な薬を飲ませて恨みでも買ったんだと思うよ」

「あぁ~……。なら自業自得ですねぇ」



 二人はため息をつきつつ両手両足をそれぞれ持ち上げ、治療室へ運んでいった。

 ベッドに寝かせたが、玉のような汗をかいて魘されている。それもそのはず、夢の中でもトリバはザーラとミヒロに追いかけられていた。昨日の一件で精神的なトラウマを植え付けられていたのだった。



「とりあえず、早く起きてもらわないとね」

「今日は大会ですから訓練場に来る人は少ないですよ? 朝こそ多かったですけど私達で間に合うくらいでしたし」

「それでも、だよ」

「?」



 リムは首を傾げたままだが、バリスの表情はどこか確信を持っており、窓越しに【オーグラン】を囲む壁に視線を向けた。





「今日は……忙しくなる気がするんだ。……勘だけど」





 依然として理解はできないままだが、信頼するバリスの言葉だ。無下も無視もできない。リムは優しく微笑んでそれに答えた。



「わかりました~。きちんと起こしておきますねぇ」

「お願いね」



 バリスは治療室を離れ、リムは額に乗せていた濡れタオルを取り換える。



 大会開始の時間まで、刻一刻と迫ってきていた。


何かあまり話が進んでいないような気がするので近いうちにもう一話投稿したい……したい……(願望)


語彙力なんてあってないようなもんです。それでも頑張ります。

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