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ArteMyth ―アルテミス―  作者: 九石 藜
オーグラン編
58/67

54話:何があったか聞いてみよう

新年あけましたどうも九石です。今年もよろしくお願いします。


ということで新年一発目の投稿です! 年末年始は書き進めつつの寝正月でございました。初詣はこれから行きます。今からでも行くだけマシですよね。


2020年もArteMythをはじめとした自分の作品をどうぞよろしくお願いいたします!


「ごめんねセリア。場所借りちゃって」

「いいのよ。どうせ暇してたから」

「シマもごめんねー。騒がしくしちゃうかも」

「俺の事なら気にしなくていいっすよ」



 心当たりがある、と発言していたミヒロが皆を連れて訪れた場所は、ミヒロとヤナとイブキが世話になったセリアとシマが経営する治療院だった。追っ手を撒くために多少の遠回りを挟んだため数分ほど追加で時間がかかっていた。

 六人という大勢になっていたことに二人は驚いていたが、それも最初だけ。すぐに手慣れた様子で六人がくつろげるようにテーブルや椅子を移動させた。

 ミヒロ、イブキ、ヤナ、ライドの四人は椅子に腰かけたが、レウルとエンジュは立ったまま壁に背を預けた。セリアが席に座るように促したが、二人は首を振って断った。



「気前が良くて助かったな」

「ほんとだよー。頭が上がんないや。……さて、改めて自己紹介でもしよっか」



 ミヒロはシマが配った飲み物に口をつけつつ、話を切り出した。



「そういや、あんたの名前聞きそびれてたな」



 エンジュは思い出したようにライドへ名前を聞く。集会所でのミヒロの説明は名前を紹介するところで途切れてしまったため、ミヒロ以外は名前を知らない状況だった。



「ん? あ~、俺はライドだ。ミヒロも言ってたけどあいつとは友達。まだ合流してなかったからこっちに来たんだ。よろしく」



 ライドが名乗り終えて軽く会釈をすると、「おう、よろしく」「……ヨロ、シク」など方々から簡素な返事が返される。

 それを見たミヒロは小さく頷き、周りへ視線を向ける。



「よーし、誰から聞こうかな~」

「……帰っていいか」

「まぁまぁ、ちょっとゆっくりしようよ。外に出て集会所の人に見つかったらそれこそ面倒だよ?」

「あの場所で一緒にいた以上、私たちが無関係だって言い張ったところで無駄でしょうしね。こんな状況でなきゃ私だって別行動してるわよ」



 ミヒロたちの居場所をギルド側は発見していないが、多少の人員が回されて捜索が続けられていた。



「こういう場面って普通バラけるんじゃねェのか?」

「いやぁ、みんなの話聞きたくてね~……。私ここに来てから少しの間、毒のせいで寝ちゃってたからさー」

「毒? 何かあったのか?」

「つーか毒の治療の直後にあんな戦闘してたのか……」



 ライドとエンジュがそれぞれ疑問と関心を持つと、ミヒロは苦笑いで濁した。



「あはは……。ま、そこら辺も含めての自己紹介ってことで。じゃあまずは誰にする?」



 ミヒロが見渡すも、誰からも反応がなかった。

 んー、とミヒロが唸る中、見かねたエンジュが徐に挙手した。



「……埒が明かねェから俺からしゃべるか。ヤナ、気になった事があるなら付け足しよろしくな」

「……? ウン」



 エンジュがヤナへ補足を頼むよう求めると、ヤナは首を傾げながらも肯定する。

 だが、ヤナは頼まれた後もぽやーっとしたままだった。



「絶対わかってないわよこれ……」




   * * *




「――……て具合だな」



 エンジュはバリス訓練場と酒場での出来事と出会った〝アイシクルレイン〟のメンバーについてかいつまんで説明した。イブキのサポート込みで話を聞いていたヤナが追加で説明したことは、訓練場前に聞いた〝幻警〟についてだった。またヤナ自身についてはヤナの他にミヒロが補足する形で説明された。



「うーん、ヤナの怪我はそういうことか」

「……アッ……」



 エンジュたちの話を聞いた後にミヒロが真っ先に気にしたのはヤナの怪我だった。

 集会所での合流時、ヤナの顔や脚部に怪我を負っていることにミヒロは気づいていた。状況が状況であったためその場で聞くことは躊躇われたが、エンジュの説明で納得した。



「……大丈夫、ダカラ」

「んー、まぁ一応気をつけてね。私が言えた義理じゃないけど」

「ほんとよ。それでその、ザーラって人は今後要注意ね。特に私とミヒロとヤナは」 

「あはは、そだね……」



 イブキがさらっとミヒロも女子の中に含んでいたことにミヒロは苦笑いする。

 だが、女子のグループの中に入れられたことよりも、イブキの言葉に誰一人として疑問を持たれなかったことに対してミヒロは気まずい思いをしていた。



「でもまぁ、戦ってみたいとは思うけどねぇ。ヤナをここまで追い詰めるくらいだし……。だからお世話になったお礼でもしないと……ふふふ……」

「……あれ、絶対いい意味のお礼じゃないわね。絶対何かやらかす顔よね」

「絶対そうだろ。てかそれ以外ないだろ」



 ミヒロが怪しい笑顔からの呟きをツッコまれながらも、上半身を倒してうつ伏せになる。顔は組んでいた腕に顎を置いていた。



「でも不思議な人だねー。素面の時は男女ともに嫌いで、酔ってる時は女嫌いで男好き……すっごい特殊だ。ヤナが生きててよかったよほんと……」

「ボロボロになるだけで済んだのは奇跡だな」

「目が覚めたら仲間が消えてた! なんて洒落にならないもん」

「あ!」



 仲間、と言う単語を聞きエンジュが思い出したように声を張り上げた。



「ん?」

「そうだそうだ、ミヒロっつったっけ。あんたヤナと同じギルドなのか?」

「うん、そうだよー。私が団長でヤナが副団長。ちなみに今は二人だけ!」

「……ダケ」



 ミヒロは体を起こし自信満々にピースをエンジュに向けると、ヤナもそれに倣ってぎこちなくピースをする。表情は仄かに笑顔を浮かべていた。



「自信満々に言えたことじゃねーだろ……」

「レベルは?」

「へ? んーとね……7だって」

(……二人揃って7か……。これで体術はヤナより強ェってどんだけだよ……!? この二人だけでもあいつらに善戦出来ちまいそうだな……)



 レベルを聞いたエンジュは冷や汗を流す中、ミヒロはエンジュの様子に首を傾げていた。ミヒロもヤナと同じく、自分のレベルが低いとは思っていないからだった。

 エンジュと同じように驚くのはセリアとシマ、ライドの三人。イブキはある程度予想していたため素直に納得していた。ヤナはやっぱり、と言った様子で小さく頷き、レウルは表情にこそ出さないもののミヒロに欠片ほどの興味を抱いた。



「あと気になるのはヤナの言う〝幻警〟かなぁ。この国にはいなかったみたいだけど。集会所で騒ぎを起こしてもそれっぽい人は見かけなかったし」

「……イナイダケ、イイ」

「うんうん。これ以上怪我したら明日が心配だしね」

「あ」



 怪我という単語から、今度はイブキが声を上げた。



「今度はイブキ? どしたの?」

「ミヒロ、あんた今損傷率っていくつ?」

「え? んーと、今は44%だね。でも何で?」



 ミヒロが答えると、イブキは顎を当てて数秒ほど瞑目すると、意を決したように口を開いた。



「……じゃあそれも含めて、次は私が話すわ」




   * * *




「――……んで、今に至るってわけ」



 自分についての情報を簡潔に話したのち、主にミクモ、テイ、サタマルの三人のことを中心に、三人の境遇や状況から、一緒に行動したヨウロが、ザーラやレイジスと同じ〝アイシクルレイン〟所属であることなどを一部省略しながら話した。



「ミクモ……テイに、サタマル……」



 聞き終えたあとに、八人の中で最初に言葉を漏らしたのはエンジュだった。三人の名前を聞いた時から自身の記憶を辿っているのか深く考え込んでいた。



「うーん……そのミクモさんって人は、今は大丈夫そうなの?」



 ミヒロは病床に伏せるミクモの容態を心配していた。ミヒロの質問にイブキは小さく首を振った。



「辛そうにしてたわ。病状に関しては医者じゃないし何とも言えないけど、少なくとも死の直前ではなかった……と思う」

「その人の病気を治すために優勝しなきゃいけねェってわけか……。テイとサタマルって二人の為にも」

「えぇ。だからミヒロに大会の参加を頼めないかって話をしようと思ってて……」



 イブキは少し躊躇いを見せながらミヒロの顔を窺うが、ミヒロはその様子を可笑しく思ったのか小さく笑った。



「それなら大会の受付はもう済ませたし大丈夫だよ。元々出る予定でも優勝する予定でもあったし、むしろやる気になったくらい」



 自信ありげに微笑むミヒロを見て、イブキはほっと安堵する。

 だがミヒロの言葉に納得していない者がいた。



「……優勝するのは俺だ」



 自分の優勝が確定していると思える物言いにレウルは不満げだった。



「何ですとー? じゃあさっきの続きはコロシアムでってことにしようか……?」

「上等だ」

「俺も出るんだが……この二人が相手なのか……」



 バチバチを睨み合う二人を見たエンジュが苦い顔をして頭を抱えた。



「あ、エンジュも出るんだ。手加減なしで行くから覚悟しときなよ~?」

「お、おう……」

「レウルとエンジュだっけ。二人にも一応頼んでもいい? 優勝した時の薬代」



 可能性を少しでも広げようと、イブキは若干賭けを交えた視線を向ける。



「……別に金に執着はしてねーからな。それくらいならいい」

「あぁ、任せといてくれ。三人もいりゃ誰かは優勝できるだろ」



 二人の返答は即答で快諾だった。



「ありがと。お願いするわ」

「……頑張ッテ」

「うんっ! じゃあそのためにも早急に損傷率を回復させないとねー。どうしよう、ありったけ回復薬飲めば何とかなるかな?」



 ミヒロは部屋の棚に置いてある薬瓶類を見ながら言う。

 回復薬はミヒロも所持していたのだが、【ハバラギ】での戦闘後に、怪我をした村民にすべての回復薬を渡しており、その後追加購入をしなかったために手元に回復薬が残っていないのだ。



「体が水風船みたいになっても知らねェぞ」

「うっさいやい!」

「それに関しては私に任せて。何とかするから」

「え、いいの!?」

「えぇ」

「やったぁ!!」



 セリアが自分の胸をトンと叩くと、ミヒロは子供が燥ぐように両手を上げて喜んだ。



「セリアさん、いいのか? 薬代とか高いんじゃねェの?」

「事情は聞いちゃったしね。元々売上的には黒字だから少しくらい問題ないわ」



 エンジュの質問にセリアが問題ないと自信ありげに答えるが、それを聞いたシマが顎に人差し指を当てる。



「あれ、でもこの前薬の材料も材料費も足りないって嘆いて――」

「わーわー! 何でもないから次の話でもしてて! ね!?」



 シマの呟きをかき消すように、セリアは両手をぶんぶんと振って必死に誤魔化した。



「お、おう……」



 気圧されるようにエンジュが頷く中、ミヒロはまたセリアの方を向く。



「あ、そうだ。セリアはミクモさんの診察はしてないの?」

「え、あぁ、さっきの話題に出た人ね。シマ、どうだったっけ?」



 セリアがシマに振ると、シマはすぐに棚から名簿の束を取り出しぱらぱらと捲る。表紙には『治療患者記録――1104.7――』と表記されていた。



「ここ一週間ほどでミクモって名前の人は診察してないっすよ。治療目的で来た人は全員名簿に記録してるんで確かっす」



 シマが名簿に目を落としながら返答する。名簿のページに写真は載っていないが、患者の容姿などが詳細にメモされているため判断できた。



「ふーん……」

(……ミヒロ?)



 シマの返答に他の者たちが軽い反応をする中、ミヒロは深く考え込むように視線を落とす。その様子に気づいたのはイブキだけだったが、疑問に思うだけで口には出さなかった。



「そもそもの話、それは医者の領分よ」

「何か違いがあるのか?」

「簡単に言えば医者は病人、治療士は怪我人が専門って感じかしら。どちらも診られる人ももちろんいるし、一応私もその一人だけど専門分野と比べると少し劣るわ。逆に片方の分野を極める人もいるわよ」

「ふーん、どっちも同じだと思ってたわ」

「ねー」

「……」



 軽く足を組み、度々飲み物を口にしながら話を聞くイブキと、背もたれに背を預けぐーっと背を伸ばすミヒロ。ヤナは椅子の上で体育座りをし、両手で飲み物グラスをちょこんと持ってちびちびと飲んでいた。

 治療院に辿り着くまで追われていた三人は、逃げ切った解放感からか完全に力が抜けていた。



「お前ら自宅じゃねェんだぞここ……」

「疲れたもん」

「原因はあんたのせいだろ……」

「ま、まぁまぁ話を聞いてる分いいじゃねェか。それにその点は俺も初耳だったから、きっと同じ反応してたと思うぞ。治療士なんて呼び方は馴染みねェし。リアルじゃどっちも医者がやることだしな」

「保健室の先生だけど、ライドもしょっちゅう世話になってたもんねー。熱出したり怪我したりさ」

「今そんな話しなくていいだろ!? それを言うならお前だって怪我もそうだし腹痛とかも起こして結構世話になってただろ! ついでに言えば保健室に連れて行ったときに保健室の先生に『……おかあさん、足が痛いです』っつってただろ!!」

「ぎゃあああああ! 何で覚えてるし!? それこそ言わなくてよかったでしょうが!!」



 ミヒロは勢いよく立ち上がるとライドへ詰め寄り、そのまま掴みかかろうとするミヒロにライドは全力で抵抗した。

 ぎゃあぎゃあと言い争う二人を余所に、ヤナはミヒロの代わりに話を切り出す。



「……次、ハ……?」

「じゃあ次は……ライドだっけ。あんたに頼んで……いい、か?」



 エンジュは言い争ったままの二人へ声を掛ける。だがエンジュの声は二人の耳に届いていなかった。それを見たイブキが仕方ないと言った様子で仲裁に入った。それにより二人の喧嘩は一旦治まり元の位置へ戻った。



「……聞いても大丈夫、か?」



 息を整えるライドへ、エンジュが戸惑いながら話しかける。



「ん? あー、まぁ大丈夫。けど説明っつっても俺は特に何もしてねェぞ。この国に着いてから一直線で集会所に向かったし。そしたらミヒロたちがいたから合流しただけ」

「あ、そうだったんだ。少し前から来てたとかじゃないんだね」

「あぁ。つっても到着してから少し休憩してたんだけどな。……ってそれで思い出した! 気になる事があってよ。外にモンスターの集団がいたんだよ」

(普通に会話再開してるし……)

(仲が良いんだか悪いんだかわかんねェな……)



 先ほどまで取っ組み合いをしていたとは思えないほど、呑気な様子でミヒロは再び会話に参加し、それに対しライドも何事もなかったかのように返答する。そのためエンジュとイブキは二人の関係性が不思議でならず戸惑いを覚えた。



「集団? よく見かけそうなもんだけど」

「いや、それが結構な種類がいっぺんにまとまってんだよ。普通なら同じモンスター同士でまとまるはずじゃね?」

「……そういえばそんな奴ら見かけてたな」

「レウルも見たの?」

「あぁ。あまり脅威には見えなかったからスルーしたが」



 レウルは三日ほど前から【オーグラン】に滞在しており、【オーグラン】外のフィールドに赴き、モンスター討伐のクエストを熟しては国に戻って休憩を挟むことを繰り返していた。その際にライドが追いかけられたものも含め、多種で群がるモンスターの集団をいくつか見つけていた。

 ライドとレウルの話を聞いてミヒロが考え込む中、もう一人、セリアも顎に手を当て思考を巡らせていた。



「……」

「……何か思い当たる節があるのか?」



 レウルがセリアに問う。セリアは下げていた視線を上げた。



「いえ、むしろ逆よ。ライド君の言う通り、モンスターが群れるのは動物たちと同様でほとんどが同種同士のみなの。沢山の種類が群れるのは少し不思議ね。聞いたことがないわ」

「うーん……今考えてても何も出てこなさそうだね。えーっとじゃあ、あとは私とレウルか。でもあんまり変わったこともなかったけど……」




   * * *




「――……と、こんな感じかな」



 ミヒロは目が覚めてから四人と合流するまでの経緯を説明した。エンジュとイブキ、ライドの紹介の後のため、主な内容は集会所での出来事だった。

 説明の間レウルが一言も発することがなかったため、ミヒロはじっとした視線を向け無言で催促する。

 それを受けレウルは一度大きくため息を吐くと、ミヒロの目が覚めるまでの行動を端的に説明した。


 二人の説明を聞いたイブキは額に手を当てる。



「あんたたち、そんな派手に喧嘩してたのね……」

「いやー、つい熱くなっちゃって。レウルのせいで」

「何度も言うがお前から仕掛けただろ、あれは」

「わざとじゃないっつってんでしょ!」



 再び言い争いになりかけるが、イブキがその前に仲裁に入った。



「はいはい。そこまでにしておきなさい。……さて、とりあえずこれで一通り話は出来たし、一度解散にしましょう。別段外も騒がしくないし。ミヒロは治療に専念しないとでしょ? …………私もグミ成分補給しないと」



 イブキは会話の間も外に気を配っており、集会所を出た直後の騒動は起きていないと判断したため今後の行動について方針を示した。最後に付け足した呟きは誰も聞き取ることができなかった。



「だね。でもまだ見て回り足りないから、一度ぐるっと一周してからにしようかなー――あだッ!?」



 ミヒロは椅子を鳴らして立ち上がるとぐーっと背伸びをすると、そのまま出口に向かって歩き出したが、イブキが足を引っ掻けて転ばせて止めた。



「何すんの!?」

「まーたトラブル起こすんだからやめなさい」

「うんうん」

「……ウンウン」



 イブキに続いてライドとヤナが順に動き出そうとするミヒロを言葉で制止した。



「ひどい!? ていうかヤナも同意見なの!?」

(あれ、絶対ライドの真似をしただけだろうな……。わかっててやってるかまでは知らねェけど)



 ヤナまで同じ意見だったことにミヒロはショックを受けるが、逆にムキになっていた。



「絶対外に行くから! セリア! 治療はその後でお願いね!」

「ふふ。えぇ」

「……んじゃ、俺はもう出てるな。紹介所でクエスト見てくる。ミヒロはわかったとして、他のみんなはどうすんだ?」



 座り直したミヒロが頬を膨らませ不機嫌になっていたため、代わりにライドが合流した四人に聞く。最初に答えたのはイブキだった。



「私は一旦落ちるわ。ヤナ、あんたも治療してもらいなさい。またいつザーラに襲われるかわかんないし」

「……ウン」

「セリア、お願いしていいかしら?」

「大丈夫よ」



 了解を得てイブキは一息つくと、そこにエンジュが近づいた。



「俺はミクモとテイとサタマルの三人に会ってみてェんだ。イブキ、その三人の家の場所教えてくんねェか?」

「え? あぁ、それならマッピングされてるから、地図化させて渡しておくわ」



 メニューのマップ画面には『地図化』の項目があり、指定した範囲の地図をアイテム化させることができる。

 イブキは手慣れた動作で地図を出現させ、セリアから借りた羽ペンでぐるっと丸を描く。



「……案内するの面倒なだけなんじゃないの?」



 あまりの慣れっぷりに普段からよくしているのではないか、と睨んだミヒロがじとっとした視線を向けると、イブキは視線だけそっぽを向かせた。



「さ、さぁ何の事かしら。ていうかさっき落ちるって言ったじゃない」

「……とりあえず、ありがたく受け取っとくわ」



 エンジュが手を差し出すと、イブキは地図をくるっと丸めて掌に落とす。



「俺は戦える場所でも探すか」

「あ、ちょうどいいや。レウル、それならバリス訓練場ってとこ行って来いよ。良い相手がいるから」



 ぼそっと零したレウルの言葉にエンジュが提案する。



「……? そういうなら、行くだけ行ってみる」

「よし、〝夜斬り〟ならあいつも歓迎するだろ。あの野郎にどやされんのは面倒だしな。近いからここで教えるけどそれでもいいか?」

「覚えられる。問題ねーよ」



 面倒事を避けられた、とエンジュは心の中でガッツポーズを決める。



 全員の方針が決まり、ミヒロは先程の不機嫌さはどこへやら、笑顔で立ち上がった。




「よーし、じゃあ一旦かいさーん!」



一区切りつくところまで詰め込んだので普段の一話より字数が二倍近くになりました。


ただ展開的にあまり進んでいないので明日もう一話投稿します。

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