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ArteMyth ―アルテミス―  作者: 九石 藜
オーグラン編
57/67

53話:ミヒロvsレウル

そういえば二十歳になりました。ビール不味かったです。いつか美味しく感じる日が来るんですかねぇ。


二十歳でこの語彙力かぁ……と、学のなさに落ち込みながらも頑張ります。

「何すんの!?」

「悪い悪い、手が滑ったんだ」

「どこをどう滑らせたらチェーンの巻きつきが外れて人が飛んでくるの!?」

「元々そっちが先に飛ばしてきただろーが」

「私はただ腕からすっぽ抜けたんだっつーの!! さっきのレウルのは完全に故意だったでしょうが!!」



 依然としてミヒロは睨み付けたままだったが、レウルの態度に変化はない。



「レウルこのやろー……。お返ししないとねぇ!」

「ってェ……!!」



 ミヒロは怒りでひくひく、と頬を引きつらせていると、目の前を通り過ぎたベルムが頭を押さえながら体を起こそうとしていた。

 それを見たミヒロは、にまぁ、と獲物を見つけた野犬のように目をギラリと光らせると、そのまま静かにベルムの元へ近づいていく。



「ん?」

「えへへ~」



 ベルムは自らを覆う影に気付き顔を上げると、怪しい笑みを浮かべたミヒロが立っていた。

 ミヒロは笑顔のまま首根っことズボンを掴む。そしてラジールの時と同様に、ベルムを掴んだまま自らを軸にして回転し始めた。



「……ってまたかぁあああああ!!」



 ベルムはグルグルと回され続けたことで目が回り、若干の吐き気を催していたが、ミヒロは問答無用と言わんばかりにさらに回転速度を上げた。

 だがミヒロは先程とは違い、乱暴に振り回しつつも、レウルの位置を確認し狙いを定めていた。



「飛んでけ人間ロケットォ!!」



 十二分に速度を高めたミヒロは、大きく踏み込んで回転を止め、慣性の法則を利用し勢いがついた状態のベルムを投げ飛ばした。



「おうぇぇえええ……。よ、〝夜斬り〟……頼むから……弟子にィ……!!」

「そいつをこっちに飛ばすな!」



 顔色を悪くし、両手で口を押さえるベルムには気にも留めず、レウルは反射的にチェーンを巻きつけていた拳を振り下ろし、ベルムの顔面を殴りつけ地面に叩き伏せた。



「がはッ……!」

「そっちがその気なら……!」



 対抗心に火がついたレウルは、チェーンの音を立てながら近くに転がるラジールの服を掴んだ。



「ん、ておぉおおおおお!?」

「人間、ミサイルッ!!」



 ラジールを持ち上げたままその場で二回転して勢いをつけると、お返しと言わんばかりにミヒロの方向へ投げ飛ばした。

 回転数こそ少ないものの、レウルの元々のステータスの高さにより、放たれたラジールはミヒロと同程度のスピードを得ていた。



「うぐ……お、俺とデートをぉぉぉ……!」



 ラジールはくいっ、と眼鏡を指であげ決め顔を作り、先ほどと変わらずデートへ誘おうとする。だが空気抵抗を受けていたため顔全体が震え歪んでいた。

 その状態のままラジールはミヒロの元へ突っ込んでいった。



「ぎゃあああああ!! その人こっちに飛ばさないでぇええええ!!!」



 だがラジールの言葉がミヒロの耳に入ることはなかった。

 ミヒロは叫び声を上げ拒絶反応を見せながらも、自分の元へ来るタイミングを見計らって横に避けて躱した。

 だがミヒロはそれで終わらせなかった。



「ふがぐッ!」



 避けたと同時にラジールの腕を掴み、勢いを殺すために顔面から床に叩きつけたのだ。床には小さなクレーターが生まれ、ラジールの意識は落ちかけることとなった。

 ミヒロは二回手を払うと、怒りに満ちた眼光とレウルへと向ける。レウルもまた、チェーンを下げたままミヒロを睥睨していた。



「このやろー……!!」

「あいつッ……!」

「「……」」



 一旦二人のぶつかり合いが落ち着いたことで、身を屈めていたルーシャ、そして危険を察知して同じように低姿勢になっていたネモンは立ち上がるが、一連の戦闘を見て絶句していた。

 ルーシャとネモン、その他大勢のメンバーたちが慕う二人の団長は、怒りに満ちたミヒロとレウルに良いように使い潰され倒れ伏している。

 だが、周りの者たちは仇を取る気など毛頭起きなかった。



(絶対返り討ちになる……)

(団長……来世で会いましょう)



 諦めたルーシャは目を逸らし、ネモンは合掌した。



 ミヒロとレウルはしばらく睨みつけていたが、十秒と経たぬうちに同時に行動を開始する。先程と同じように、ミヒロは両脇にラジールの足を挟み込んでジャイアントスイングで、レウルはチェーンでベルムをぐるぐる巻きに拘束させた状態で、それぞれ振り回し始めた。



「おららららららららぁああ!!!」

「何十倍で返してやるッ……!!!」



 回転数は上がり続ける。振り回される対象により壁は抉れ、ギルドメンバーは倒れ伏している。テーブルや椅子は宙を舞い、テーブル上に置いてあった料理や飲み物類は床に散乱してしまっていた。

 だが、当の本人たちは辺りが惨状になっていることにすら気づいていなかった。



「らァ!!」

「行けェ!!」



 大きく踏み込んだ二人は、ほぼ同時に振り回していたそれぞれのギルドの団長をぶん投げた。

 ベルムとラジールは一直線かつ凄まじいスピードで飛んでいく。制止しようにも本人たちにはどうすることもできなかった。



 やがて、二人は真正面から衝突した。



 ベルムとラジールの額からは出血が見られた。ベルムが限界まで振り回されたことで我慢できずにラジールの顔面へ吐瀉物をぶちまけた。

 ぶつかり合ったまま気絶した二人は、徐々に地面に向かって垂直に落ちて行く。どさっ、と倒れ込む二人はあまりのダメージから痙攣を起こしていた。



「め、めちゃくちゃだよ……」

「う、嘘だろ……」

「……」



 〝山狩〟と〝海裂〟、そして集会所に集まっていた職員や他の人間たちは、ただただ建物内の惨状と騒ぎの中心にいる二人の暴走に絶句するしかなかった。

 今までに発生した二つのギルドの抗争後でさえ、今のような惨状になることはなかった。たとえ怪我人が出たとしても、その人数や建物への被害自体はそこまで大きくなかったのだ。


 二人に喧嘩の仲裁を頼んだ者たちは、ただただ後悔していた。





「もう頭にきたぁ……!!!」

「大会前に消してやろうか……!!!」





 騒ぎの発端であったベルムとラジールがダウンしたにもかかわらず、中央に立つミヒロとレウルは依然として睨み合い続けている。それどころかさらに二人の戦いがヒートアップしかねない状況だった。

 じりじりと立ち位置を変えながら、互いの間合いの外から牽制し合う。ミヒロは腰からトゥルゼスを、レウルは背から大刀を抜いており、ぎりぎりと武器を握る力を強めていた。



 膠着状態が続く中、それを破ったのは周りの人垣を割って飛び出した二人の人影だった。





「あ、いた!! やっぱりあんただったのね!」

「……ミヒロ……!」





 一人は真っ白な髪と肌を持つ少女。もう一人は眼つきが鋭く、髪を二つ結びにした少女だった。

 騒ぎを聞きつけたイブキとヤナがミヒロを見つけて声を掛けたのだ。ミヒロが驚いてそちらに視線を向ける中、他の場所からも別の人物たちが二名ほど飛び出してきた。





「お、ヤナいたか! とりあえず騒ぎの当事者じゃなかっただけマシだな……」

「よい、しょっと……! やっと見つけたぞミヒロ!」





 先に声を上げたのはエンジュで、人垣から見えたヤナを見つけて安堵する。

 その後に姿を現したのはライドだった。こちらはミヒロの姿を見つけたことで、ほっと胸を撫で下ろしていた。



「おろろ?」



 ミヒロは素っ頓狂な声をあげ飛び出してきた人物を一人一人見渡す。トゥルゼスを握る手からは力が完全に抜けていた。

 ミヒロから敵意が消え去ったことで警戒を解いたレウルは大刀とチェーンをもとの位置に装備し直した。



「知り合いか?」

「じゃない人もいるね。ていうか私達、知らない間にいろいろ壊しちゃったみたい……」



 ミヒロはトゥルゼスを腰に差し直しながら改めて建物内を見渡した。ここでようやく周りの惨状に気が付いた。



「お前が振り回したり投げたりしたからな」

「人の事言えないよねそれ。私だけのせいじゃないよねぇ」

「やり始めたのはそっちだ」

「だからわざとじゃないし! それを誤認したのはそっちでしょ!」

「あ?」

「むー」



 二人は接近すると互いの鼻先が触れそうなほどに顔を近づけ睨み合う。ミヒロがいーっ、と口角を横に伸ばすと、レウルはミヒロの顔面を掴んだ。抵抗するミヒロはレウルの頬を両手で引っ張る。



「何喧嘩してんだか……」



 わちゃわちゃと喧嘩を続ける二人の元に、イブキとヤナが近づいてくる。イブキは呆れた様子で額に手を当てていた。



「……ミヒロ……怪我、ハ?」



 ヤナは眉を八の字にして心配そうに下からミヒロの顔を覗き込む。

 それを見たミヒロは安心させるように両腕で力こぶを作って見せた。



「ん? もう大丈夫よ! 元気モリモリ!」

「みたいね……」



 四人の元へ、エンジュとライドも駆け寄った。二人とも集会所へ急行したせいか、玉の汗を流し息が乱れていた。



「ヤナ。えっと……、そいつらは、知り合いなのか?」

「……ン」

「あれ、ヤナ知り合いいたの?」

「……サッキ」

「……???」

「ミヒロや私がいない間に知り合ってたみたいね。私も別行動してたから詳しくは知らないけど」



 ヤナの度が過ぎた言葉足らずの説明で全く理解できなかったミヒロの様子を見て、イブキが簡単に捕捉を入れた。

 ミヒロもそれで理解したのか、ぽんと拳で手の平を打つ。



「あ~なるほど、そゆことね。……んで、れ――」

「ばっ!」



 ミヒロがライドの事を名前で呼ぼうとしたところ、ライドが慌ててミヒロの口を塞いだ。



「んー!」

「「「「?」」」」



 急に口を塞がれたことで動揺するミヒロと、ライドの行動を謎に思う他の四人は首を傾げていた。



「(ここで俺の本名だすなっつの! ライドって名前だからそれで通せ!)」

「(りょ、りょーかい……!)」



 ライドと名乗っている廉也は、クレアシオンにおける自分の名前をミヒロに紹介していなかったのだ。よってミヒロはライドを廉也と本名で呼びそうになり、それに瞬時に察したライドが止めたのだ。

 必死の形相のライドに気圧され、ミヒロは汗を流しながら無言で二回頷いた。



「その人はミヒロの知り合い?」

「う、うん。リアルのね。こっちで会うのは初めてかな。名前は――」



「誰だ! この騒ぎを起こしたのは!!」



 ミヒロがライドの紹介しようとしたところで、人垣の奥から低い怒声が響く。ミヒロは人垣の隙間から声の下方向を覗き見ると、髭を蓄えた壮年の男性がいた。その男性は職員の説明を受けると、額に青筋を立ててミヒロたちの元へ向かって歩いてきていた。

 身に纏っている服には装飾が多い。ギルドの職員が慌てながら話をする様子を見たミヒロは、少なくとも職員より役職が上の人物であり、下手をすればこの建物で一番偉い責任者なのでは、と予想した。



 そして顔を青くした。



「うわわ!? 捕まったら面倒なことになりそうな予感……。みんな! 逃げるついでに集まって話せる場所に避難しよっ!」

「ミヒロ、心当たりは?」

「一応ある! 話してる暇ないから急ぐよ!」

「騒ぎにした張本人のセリフじゃねーな」

「レウルも張本人でしょうが!」



 口喧嘩するミヒロとレウルを先頭に、他のメンバーはその様子を見て苦笑いしながらも、後ろから誰か追ってこないか様子を探りつつ二人の後を追う。



 一行はゆっくりと時間を過ごせる場所を目指して走っていった。



さ ぁ 楽 し く な っ て ま い り ま し た 。


……とまぁ冗談は置いておいて、ついに合流となりました。大人数の会話は非常に書いてて楽しいです。ただ勢い任せに書きまくった後に見直すと、誰かの出番が急に減ったりしていて……なかなか苦労してます。


次回は会話多めですかね。


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