50話:山と海、相対す
50話突破! PV40,000回突破! ユニーク9,000人突破! いろいろありがとうございます!
今回は少し長めですね。説明も結構出てます。その代わり次回は……。
あ、改行の仕方をまた変えてみました。見やすくなりましたかね?
店を出た〝夜斬り〟を追うため、ミヒロは「釣りいらないからッ!」と言い残し、一万D紙幣をカウンターに叩きつけた。ミヒロたちを案内した男が苦笑いを浮かべ、その背中を見送った。
「どこだぁ……!!」
外に出たミヒロはすぐに血眼で左右を確認した。すると見覚えのある大刀を背負う男性がコロシアムに向かっていくのを見つけた。
「こらぁああああ!」
ミヒロは見つけた途端全力で駆け出した。周りの視線など気にすることなく走り続けた。
やがて追いつくと後ろから後頭部へチョップを見舞った。
「ってぇ……!」
後頭部に痛みを感じ、恨めしそうに後ろの存在を睨み付けた。
だがミヒロはそれに怯むことは無く、真っ向から睨み返した。
「何しやがる」
「そっちが出てくのが悪いんでしょうが!」
「コロシアムに行くって言ったのはお前だ。早く行くに越したことは無いだろ」
「そうじゃなくてぇ! 奢りって話だったじゃん! そっちが出ていっちゃったから結局私が払ったんだけど!?」
ミヒロはぐいぐいと〝夜斬り〟へ詰め寄った。身長差はあれど、互いの距離は十数センチと近かった。
〝夜斬り〟は鬱陶しそうに顔を逸らし、止めた足を再び動かし始めた。ミヒロは慌てて隣に並んだ。
「……そういえばそうだったな」
「忘れるの普通!? 自分から言っといて!?」
「うるせェよ」
「あたっ」
本日四度目のチョップだった。
「そんなに金が大事なのか」
「そうじゃない! 約束を守らなかったことに怒ってんの! ……嘘つかれんのは、あんまり好きじゃないし」
〝夜斬り〟はミヒロの横顔をちらと窺った。その表情はどこか寂しそうな表情だったが、瞬時に初対面時と変わらない、溌剌とした表情に切り替わっていた。
「(……気のせいか)……いくらだ?」
「細かい金額は知らなかったから一万置いて出てきたよ」
「そうか」
そこで言葉を途切らせた〝夜斬り〟は、メニューを開き素早い手つきで操作し始めた。やがてそれが終わると、〝夜斬り〟の手には紙幣が握られていた。
「悪かったな」
並んで歩きながら、〝夜斬り〟は紙幣を握る手だけをミヒロへ差し出した。
ミヒロはそれを受け取るが、金額を見て困惑した。
その紙幣が一万Dと五千Dの二枚だったのだ。
「多いよ?」
「詫び料とでも思えばいい」
「……」
これ以上やり取りはしないという意思表示のためか、〝夜斬り〟は両手ともズボンのポケットに手を突っ込んでしまっていた。
ミヒロは逡巡の後、五千D紙幣を〝夜斬り〟へ差し出した。
「ん」
「……受け取らねーよ」
「私は私が払った分だけで十分だもん。今こうして謝ってくれたしお金も払ってくれた。私が怒る理由はもうないよ。だからこれはいらない」
〝夜斬り〟に受け取る意思がないように、ミヒロにもすべては受け取れないという意思を〝夜斬り〟へ示す。
互いに譲らぬまま無言を保っていると、諦めたように〝夜斬り〟はため息をつき、ミヒロが差し出した紙幣を受け取った。
「……この話はこれで終わりだ」
「うん!」
〝夜斬り〟の言葉に、ミヒロは嬉しそうに頷いた。
その後は会話をしながらただ歩いていった。話しかけるのはミヒロからだけで、〝夜斬り〟は気怠そうに相槌を打つばかりだった。
そのまま数分ほど歩くとコロシアムのある中央部へと辿り着いた。まるで要塞のように外壁は高く築かれている。
コロシアムの正面は広場のようになっており、中央部には台座とそれに突き刺さる巨大な剣のモニュメントが設置されていた。入場場所は柵でルートを敷かれ、両脇には女性たちが中へ入る者たちの応対を行っていた。
「おー、やっぱり大きい! あそこが受付かな」
「他に何に見える」
「よし、行くよ!」
「いちいち引っ張るな……!」
ミヒロが掴んだ腕は結局振り払われた。
二人は並んで受付に向かっていった。入り口近くでいったん止まると、受付の女性が二人に気付き声を掛けた。二人もそれに気づいて女性の元へ向かった。
「ようこそいらっしゃいました。お二人は明日の闘技大会の参加者でございましょうか?」
「そーです!」
「……あぁ」
「ではこの紙に名前の記入をお願いします」
差し出された紙に記入を終えると、すでに受付を行っていた参加者の名前が書かれた紙束と一緒にまとめられた。
「ミヒロ様にレウル様ですね。今大会への参加、誠にありがとうございます。ですがミヒロ様の損傷率が現在28%ですので、当日の受付の際に0%まで回復していただかなければ参加不能となってしまいます。なのできちんと回復して明日の大会に備えてください」
「あれ、分かるの?」
「インクに特殊な墨を使用しているんですよ。名前が書かれた際、その人物の損傷率を含む簡易的な情報を同時に記録してくれるんです」
ペンを掲げながら興味津々のミヒロへ説明をした。
ミヒロが記入した紙を見ると、書かれた文字が仄かに光を放っていた。
「おぉ~……!」
「簡易的、とはいえ個人情報ではあるので、漏れることのないようにこちらできちんと管理させていただきますので、そこはご安心ください」
「そうしてくれないと困るよ……」
「受付は以上になります。大会のルールは当日に係員の者が説明することになっていますが、一応こちらを渡しておきます」
そう言って受付の女性が渡したのは一枚のビラで、大会の概要が簡単にまとめてあった。
「うん、じゃあこれ読んでおくよ。受付はこれで終わり?」
「はい。大会当日までゆっくりしてくださいね」
「はーいっ!」
「あぁ」
受付から離れた二人は、広場のシンボルである巨大な剣のモニュメントに背を預けた。
「バトルロイヤルかぁ……。ふーん……あ、これ読む?」
「同じような大会に何度も参加してるから大体知ってる。俺には不要だ」
両手で持ちながら視線を滑らせ、一度目を通した後に〝夜斬り〟――レウルへとチラシを向けるが、レウルは首を振って断った。
「そっか。じゃあこれを仕舞って、と……。次はどこに行こうかな~?」
「案内も終わったんだ。これ以上付き合うつもりはねーよ」
「冷たい事言うなぁ……。あ、そういえば集会所に行ってないや。だからそこまでもう少し付き合ってよ」
思い出したように掌を拳で叩いてミヒロは発言した。
「絶対に今思い付いただろ……」
「そ、そんなことないし。……ていうか私、案内はここまででいいよーって言った覚えはないけど?」
「こいつ……!」
「これで終わりにするからさ。お願いっ!」
ミヒロはレウルの方を向き、合掌しながら頭を下げた。レウルの発言通り、思いついたことは本当だったが、集会所の案内で終わりにしようと思っていることも本当だった。
頭を上げないミヒロを見て、レウルはポケットに突っ込んでいた片方の手で頭を掻きながら、ミヒロの横を通り過ぎてそのまま歩き出した。
「……行くんだろ」
「……うん! ありがとう!」
すれ違い様に掛けられた言葉を聞いてミヒロは頭を上げると、スタスタと歩いていくレウルの隣に並び、集会所へ向けて歩いていった。
* * *
「ここが集会所だ」
「おぉ~……私がいた村のよりめっちゃデカい……」
数分ほど歩くと、大きな看板が目印の一件の建物に到着した。建物内から喧噪が漏れ、クエストを手に相談する者たちが多数存在した。
「うおぉぉ」
「……人が多いな」
中に入ると、むせ返るほどの熱気に包まれていた。
クエストが張り出された掲示板と集会所勤めの職員によって管理されたダンジョンゲートを始めとした、基本的な設備が整っている。
闘技大会の準備のため人は少ない方だとレウルは踏んでいたが、その予想を簡単に上回るほどの人で埋め尽くされていた。
メンバー募集のためスカウトをする者や、外部から持ち込んだ食料で打ち上げを行う者たちもいた。中にはダンジョンとは関係なしに商人と話し込む男性や、剣を使用したジャグリングなどのパフォーマンスを行う者等々、ダンジョンに挑戦しなさそうな者まで様々だった。
「……あそこ、何やってるんだろうね?」
ミヒロは足りない身長をカバーするように、爪先立ちになりながら集会所内を見渡していると、受付近くで揉めている二つの集団を見つけた。
「これは俺達に来たクエストだ! 横取りしてんじゃねェぞ!」
「貴様らがクエストに手を付けないからこちらにも書類が届いて、それをこちらで受注したからそちらの依頼が取り下げられた。それだけのことだ。文句を言われる筋合いはない」
集団を後ろに下げ、二人の男が口論となっている。片方は刈り上げた深緑の短髪で、怒りの形相で声を荒げ、今にも殴りかかりそうになっている。その男に相対するのは、青い髪に眼鏡をかけた男で、目の前の男性を相手に腕を組みながら冷静に反論していた。
「喧嘩かな?」
ミヒロは興味津々だったが、レウルは見慣れた光景なのか呆れた様子でため息をついた。
「何でウキウキしてるんだ……。内容を聞くに、指名クエスト関係の揉め事だろうな」
「指名クエスト? クエストって種類あるの?」
「それぐらい知っとけよ……。そこら辺の受付にでも聞けばいいだろ」
「だね」
「だから何で引っ張る……!」
ミヒロは強引にレウルの腕を引っ張って受付に近寄った。ミヒロたちの応対を行ったのは、入り口に一番近い窓口にいた二十代の金髪の女性だった。
「あのー」
「あら、どうしたの?」
「クエストの種類っていっぱいあるらしいけど、具体的に何種類なの? あんまり知らなくて……」
あはは、とミヒロは照れ笑いをすると、受付の女性は小さく笑った。
「ふふ、じゃあ説明してあげる。クエストは大まかに分けて三種類。通常クエスト、指名クエスト、そして緊急クエスト。通常クエストは分かると思うから他二つの説明ね。まず指名クエスト。これは解決してほしい人が依頼主によって固定されたものよ。基本的には集会所や紹介所で承るのだけど、拠点を持っていたり信頼の高いギルドには、ギルドに直接届けられることもあるの。クエストを受注する際はこちらを介さなければならないけどね」
実際にクエストの書類を提示しながら細かく説明する受付の女性に、ミヒロはうなずきながら聞き入っていた。
「次に緊急クエスト。これはクエストの達成期限が短いものや、今後近いうちに危険性の高い事案が発生すると予想されたときに発生するものね。これもこちらだけでなくギルドに届けられることもあるわね。ちなみに突発性緊急クエスト、というものもあって、これは予期せぬ事態に遭遇した際に自動的にクエスト化する、一種の現象ともいえるのかしらね。例に挙げるなら、滞在していた村や町に、モンスターや山賊が突如襲ってくる、とかかしら。その場合、メニューにクエストとして勝手に記録されるわ」
「ふーん……」
そう言った女性の言葉を受け、ミヒロはメニューを開き、『クエスト』と書かれたメニューをタップすると、受注中と達成済みの二つの表が現れた。その内の達成済みの欄に一つ、『村を解放せよ!』という題名のクエストが入っていた。タップすると詳細が表示された。
上からクエスト名、達成条件、失敗条件、依頼主の名前、依頼主によるクエストの概要、報酬内容。そして一番下の欄には☆マークが二つ並んでいた。
「……この☆マークって何? 難易度?」
「そうよ。☆は一個から最大で十個まで。星が多ければ多いほど難易度が高いことを意味してるの」
「あれで☆二つなんだ……。うん、とりあえずわかったよ。ありがと」
「これがお仕事だもの。いつでも来てちょうだい」
「うんっ!」
会話を終えた直後、集会所内の騒ぎが一段と大きくなった。
ミヒロとレウルが視線を向けると、先ほど言い合っていた二人が互いの獲物を抜いて睨み合っていた。二人の後ろにはそれぞれのギルドメンバーが待機し、その集団を集会所にいた者たちが壁のように周りを囲っていた。
「やろうってのか? 俺達〝山狩〟とよぉ……!!」
「貴様こそ、我ら〝海裂〟に喧嘩を売った事を後悔するんだな……!」
両者共に火花を散らすほど険悪なムードになっていた。周りの者たちは騒ぎを疎ましく思う者と野次を飛ばして盛り上げる者が半々だった。
それを見たミヒロは集団に向けて一歩踏み出した。
「止めに行こうよ」
ミヒロはレウルにそう言うが、レウルは達観した様子でポケットに手を突っ込んだまま微動だにしなかった。
「騒ぎにわざわざ首を突っ込む必要はねーだろ。勝手にやらせておけばいい」
「んー、でもスルーするの難しそうだよ?」
「は?」
ミヒロはレウルの後方を指差した。レウルが振り返ると、そこには不安そうな表情をしたプレイヤーやギルド職員など、騒ぎを迷惑に思う者たちが挙って並んでいた。
そして彼らは、口々にこの騒ぎを止めてほしいといった旨の内容を、ミヒロ達に向かって懇願した。
「ね?」
「ちっ」
ミヒロが駆け出したのを見て、レウルはがしがしと頭を掻きながらその後を追った。
「行くぞオラァ!」
「来い……!」
それぞれのギルドの団長が武器を振りかぶった瞬間に、ミヒロとレウルは二人を囲んでいた人垣から飛び出し、ミヒロはトゥルゼスで青髪の男性のハルバードを、レウルは背中の大刀で緑髪の男性の両手剣を、それぞれ武器の軌道をずらして地面へ叩きつけた。
「誰だァ!?」
「誰だ……!」
二人の団長は、目の前に飛び出した二人を睨み付けたが、ミヒロとレウルは一切怯まず……
「通りすがりだよ」
「……同じく、だ」
ミヒロは楽しそうに笑みを浮かべ、レウルは冷徹な眼で睨み返した。
更新安定しなくて申し訳ないです。仕事が失敗続きで気分が上がらないのです……。
読み返すと自分でも覚えてないゲームのシステムとか書いててびっくりした。今のバージョンだと移動手段が徒歩しかないとか……。普通に馬車とかあってもいいだろ! 原始人か! なんて一人で怒ってました。
思えば高校時代から始まった、プロットもなしに勢いで駆け抜けたハバラギ編。さて、この穴をいかに塞いでいけるか……。
長々と話しましたが、とりあえず今後も頑張りますってことです。




