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ArteMyth ―アルテミス―  作者: 九石 藜
オーグラン編
52/67

48話:〝夜斬り〟登場

戦ってねー! イブキ視点の話でイブキ一度も戦ってねーーー!!!

どこかで書こうとも思ったけど無駄にキャラ増やすのもどうかと思った結果書けませんでした。


今回からついに主人公、ミヒロ視点! 


仕事は相変わらずですがそれでもがんばります。よろしくお願いします!



 再び時を遡り、時刻はイブキとヤナが治療院を出てから三十分弱が経過した頃。



「ん……ん~」



 セリアとシマの治療が施された後、ベッドの上で安静にしていたミヒロは、夢から覚めるように声を上げながらゆっくりと目を開けた。


 見知らぬき天井が真っ先に目に入り、その後に視認した窓から差しこむ光が眩しく感じた。そこからミヒロは、自分のいる場所が建物の中だとすぐに理解した。



「あら、起きた?」



 ミヒロの声に気付いたセリアが、向かい合っていた机から視線を外して立ち上がり、ミヒロの元へ歩み寄る。



「あれ、ここは……?」

「【オーグラン】っていう国の下層部で、ここは治療院よ。女の子二人が毒に侵されたあなたを連れてきたの」

「……そっか。治してくれてありがとうございます。えーっと……」

「ふふ、セリアよ。そこにいるのは助手のシマ。あと敬語ならいらないわ」

「え、あ、そうなの? それじゃあ遠慮なく……。ありがとうね。セリア、シマ」



 セリアの丁寧な説明を受け、状況を把握できたミヒロは即座に感謝を述べた。



「よいしょっと」



 それと同時に、今この場にいない二人の事が気になったミヒロは、上半身を起き上がらせると、体の向きを変えて足だけをベッドから降ろした。



「どこへ行くの?」

「その二人と合流したくて。お礼とか言いたいしさ。あ、【オーグラン】ってことは闘技大会もあるよね!? 受付とかしないと!」



 闘技大会の話を思い出したミヒロは、ベッドについていた両手をバネのように弾ませて跳ね、セリアの隣に着地する。


 また腰にトゥルゼスがなく、それがベッドの反対側の壁に立てかけられていたため駆け足でそれを取りに行った。



「ちょ、ちょっと待って!」



 だが、トゥルゼスを丁度よく手に取ったところで、慌てた様子のセリアがミヒロを呼んで動きを止めさせる。


 声のした方を振り返ると口を開けたままのセリアが目に入り、また離れた場所にいたシマも同様に、目を見開いて驚いていた。



「ん? どったの?」

「体、もうそんなに動かせるの?」

「? うん。問題ないよ?」



 驚くセリアを余所に、ミヒロは軽い調子で跳躍や屈伸、回旋など体操の動作を行った。


 動きに一切の違和感はない滑らかな動きだった。



「……」

「ちなみに損傷率って今いくつっすか?」

「えっと……。34%だって」



 ミヒロの言葉にセリアとシマは目を見合わせる。


 セリアの考えでは、ミヒロの意識が回復するまでにかかる時間は三十分から一時間ほど。だがそれはあくまでも目が覚めるタイミングだ。


 現在のミヒロのように、ある程度の行動ができるようになるには、さらにもう一時間、もしくはそれ以上の時間がかかる見込みだったのだ。


 損傷率に関しても50%を割ることは無いと考えていた。


 ミヒロの見せる想定外の数々に、二人は呆然とするしかなかった。



「……普通、あの森のボスの毒を受けたら数日は動けないんすよ。セリア先生の治療をもってしても損傷率は半分までしか回復しないはず。……どういう体してんすか、あんた」



 今まで何度も、ウロの毒を受けてここへ駆けこむ患者たちを診てきた二人だったが、ミヒロの回復具合は明らかに異常だった。


 悪夢に魘されるように呻く者、大量の汗を流し苦悶の表情を浮かべる者、……耐え切れずに死を迎える者。


 だがミヒロだけは違っていた。


 治療前こそ毒に侵され苦しそうだったが、回復を施してから三十分足らずでほぼ全快となって立っている。


 そのような人物など二人は見たことがなかった。不思議でならなかった。



「なんか疑われてる!? 私は至って普通だよ!? どこからどう見ても! ほら!」



 二人の様子を不思議に思い、ミヒロは両手を広げて普遍さをアピールする。


 ボスとの戦闘後で衣服がボロボロであること以外は、至って普通の人間であり、セリアやシマと大した差はない。


 だからこそ、目の前の存在が異質であり、同時に特別な何かを秘めているのではないか、と思わせざるを得なかった。


 それはまだ、予感の域を越えることはなかったが。



「ま、まぁいいや。とりあえずいくね。あ、お金っていくら?」

「緊急だったし別にいいわ。早く会って元気な顔を見せてあげて」

「いいの?」

「えぇ」

「じゃあ、お言葉に甘えてそうしようかな。二人ともありがとー! じゃあね!」



 笑顔で別れを告げ、元気な様子で治療院を去っていく。あまりの元気の良さに、二人はミヒロが目覚めてからは呆気に取られっぱなしだった。



「……あんなに元気になれるもんじゃないっすよね」

「えぇ。……まぁ、いいんじゃない? 元気になったのなら、それで」



 シマは未だに疑問に感じていたが、セリアは元気になった以上は問題ないと割り切り、小さく微笑んだ。






   * * *






「よーっし! 元気になったことだし、ヤナとイブキを見つけないと!」



 治療院を勢いよく飛び出したミヒロは左右を確認し、勘で左を選んで駆け出す。特に意味などなかった。



「……でもどこにいるかわかんないや」



 だが、いざ走り出してみたものの、ミヒロには二人の居場所の情報が全くなかった。そのため、どうしたものかと一旦足を止めたあと、国の全貌を一度把握することに決めた。


 心の中で謝罪をしつつ、その場で跳躍をして屋根の上に立つ。建物の高さに差はあまりないため広く見渡せた。



「ていうか何あの……蔦の木? 滅茶苦茶おっきい~! 迫力満点だぁ……! 機会があれば登ってみたいな~!!」



 見渡した景色の中でも、ミヒロの目に一番に飛び込んできたのは、三本の巨大な蔦の木だった。


 直径数メートルの三本の蔦が捻じれたまま伸びているその光景に、ミヒロは目を輝かせた。よく見ると、まるで木に直接生えるキノコのように、蔦の下部の側面にまで住居の区画が広がっている。


 住居間の往来ができるように、下部に広がる住居のほとんどから吊り橋が広がっている。また降りやすいように、幾つかの箇所に階段や梯子が作られていた。



「お、あれが闘技場かな?」



 ひとしきり観察した後、視線を中央へと移す。


 中央に大きく構えているのはコロシアムだ。道行く人々の全体的な流れを観察しても、装備をした多くの人々がコロシアムの方へ流れていた。


 その点から中央の建物が闘技大会を行うコロシアムだと予想したミヒロは、すぐに屋根から降りて駆け出した。


 そのまま一直線に向かっていくが、とあるお店とすれ違った際に両足で急ブレーキをかけた。そして体の方向は変えずに数歩ほど下がりお店の前に立つ。



「……」



 ミヒロの目に留まったのは……





 ショーウィンドウの目立つ、少し大きな服屋だった。






   * * *






 寄り道を済ませたミヒロは再び中央のコロシアムに向けて走り出す。



「……ん?」



 その途中、ミヒロはとある人物が目に留まった。


 自身の知り合いではなかった。だがミヒロはその人物が気になって仕方がなかった。道行く人々の中にも、ミヒロと同じように男性へ目を向ける者が少数ながら存在していた。


 その人物は男性で、建物の壁やドアに取り付けられた窓越しに、頭を上半身ごと動かしながら様子をうかがっている。


 目に留まった理由はただ一つ……怪しかったからだ。



「何してんだろ」



 気持ちを抑えきれなかったミヒロは、その人物に尋ねるためたたたっと駆け寄る。



「あのー」

「っ!」



 その人物の背後から声を掛けると、肩を跳ねさせぎょっとした様子で振り返る。


 170半ばの体躯は、細身だが程よく筋肉があり引き締まった体をしている。


 目つきこそ鋭いものの容姿自体は整っている。漆黒色の髪はさらさらとしているが、前髪を軽く横に流すのに対し、後ろ髪はツンツンと逆立っていた。一見クールな印象を抱かせるが、ぴょこんと跳ねる一房のアホ毛がそれを和ませる。


 服装は黒系統の色でまとめており、上はファスナー付きシャツに七分丈ボリュームネックマント、下はカーゴパンツにブーツを履いている。手には指貫グローブをはめ、腰にはチェーンをつけている。


 全体的に大人びた雰囲気だが、顔つきに若干幼さが残っていることから、ミヒロは自分と歳は近いと予想した。


 また背には日本刀に似た形状をした身の丈ほどの大刀を差している。柄から刃まで真っ黒な見た目にミヒロは目を引かれた。


 背中の武器も気になったが、先に目の前の男性の行動について問うことにした。



「何してるの?」

「あぁ、いや……。席空いてるか確認したくてな」

「傍から見れば怪しい人だったよ。周りの人すっごい見てたし……。で、このお店って何のお店なの?」

「中を見ればわかるだろ。普通の料理店だ」



 男性の言葉に目を輝かせたミヒロはすんすんと匂いを嗅ぐ。料理の香ばしい香りが鼻腔を駆け抜けた瞬間に決意が固まった。



「おぉ~! ちょうどお腹すいてたんだ~! 入ろ入ろ~!」

「おい、だから席空いてるかわかんねーって――」

「まどろっこしいの面倒だもん。さぁさぁレッツラゴー!」



 そう言って強引に男性の腕を取り、ぐいぐいと引き摺って店内に入ろうとする。



「おい、待て!」



 男性は慌てて足でブレーキを掛けるも、ミヒロのあまりの強引さにバランスを崩したことで止まることができなかった。



 ミヒロが扉を開いたことで、からん、とドア近くのベルが鳴らされる。



 あまりの強引さに、男性は溜め息をつくしかなかった。






   * * *






「なぁ、あれって……」

「間違い、ないよな……?」



 ミヒロと黒い服装の男性のやり取りの一部始終を見ていた男性二人が、思わずそう呟きあう。


 この二人は、ミヒロが男性と遭遇する前から、料理店の前にいる男性の様子をうかがっていた。二人の他にも足を止めて見ていた者が複数いたが、彼らがこぞって向けていた視線は、ミヒロとは違って恐れを含んだものだった。


 先ほど言葉を漏らした二人は闘技大会への参加へ意欲を示すくらいの実力があった。酒場でへべれけとなったチンピラ程度なら軽くあしらうことができた。


 だが目の前にいた挙動不審な黒い男性に声をかけることができなかった。無理に絡めばやり返されると簡単に想像できたからだ。


 他の者たちも同様に、ただ遠目から見ることしかできなかった。近づこうとしても体が震えて動かなかった。



 それもそのはず、ミヒロが腕を引っ張って一緒に入店した黒い男性は……





 今回の闘技大会優勝の筆頭候補……〝夜斬り〟と呼ばれる男だった。


ついに〝夜斬り〟登場です。この二人がどう絡んでいくのか、自分でも楽しみだったりします。

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