31話:それはまるで、流星の如く
書いては消して、書いては消しての繰り返し……。
仕事終わりの夜中に進めてますがおかげでお仕事中眠くて眠くて……。寝落ちだけはしないように頑張ってます。
「あいつどこまで削ってる?」
「さぁ、どうだったっけ……。逃げながらだからあまり削れてないかも」
「りょーかいっ。さーてと……どう動いてくるか、なッ!!」
屈伸と伸脚を何度か行うと、早い者勝ちだと言わんばかりに特攻を仕掛ける。ミヒロに合わせてヤナも後を追った。
「あ、ちょっと!」
出遅れたイブキも負けじと駆け出す。普段は相手の動きを把握してから動くのだが、ミヒロの特攻によって本来の自分のリズムが狂ってしまっていた。
「キシャァアアア!!」
ウロはまず自分に一番近いミヒロに狙いを定め硬い鱗で覆われた尾で薙ぎ払う。
「ん!」
ミヒロは無謀にも片足を突き出してそれを止めようとするが、勢いは殺しきれず吹っ飛ばされ池に落ちてしまう。
「……ミヒロ!」
「……ぷはあぁ! 大丈夫!」
ミヒロの様子を見たヤナはウロと向き合う。ウロは姿勢を低くするとそのまま頭を突き出し迫ってきた。
「……ッ!!」
ミヒロでも止められなかったことから体術では無理と考え、腰に差している二本の刀を抜刀。クロスさせ防御の姿勢を取る。
そして、衝突。凄まじい衝撃と爆風が辺りを圧していく。
「今のうちに!」
動きが止まった隙を突いて、イブキはヤナの後ろから飛び出し跳躍。ウロの頭上まで来ると両手斧を振り上げウロの首へと刃を落とす。
だが強靱な鱗は刃を通さず弾いてしまう。
「う……しまっ――!」
空中で動きが止まったことで今度はイブキが隙を晒してしまい、ウロの尾が腹部へと突き刺さる。
「イブキッ!!」
「うぐぁあッ!」
イブキはそのまま木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされていく。やがて止まるも背中と腹部の両方から衝撃を受けたため、すぐには起き上がれなかった。
「……ンッ!!」
ヤナは渾身の力を込め何とか頭突きの軌道を逸らした。両手には衝撃からか痺れがしばらく抜けなかった。
「よい、しょっと! いてて……。力強いなー、このヘビ」
ミヒロは池から上がると水分を含んだ上着を絞りながらヤナの方へ歩いていく。
「はぁ……はぁ……あいつ……!」
吹き飛ばされ木々にぶつかった際に頭を打ったからか、頭を押さえながらイブキが戻ってきた。額や口の端からは少量の血が流れているものの足取りはふらついていない。
「鱗が厄介だなぁ……。腹部は鱗がないしそこを攻めるしかないか。顎叩いて脳を揺らすのも手かな……うーん」
ミヒロが対策を練ろうとするも、ウロがその間動かないはずもなく。
「……ミヒロ!」
「ん? ってやばっ」
ミヒロが我に返り咄嗟に腕をクロスさせ目を瞑る。ダメージを覚悟したのだがその数メートル手前に斧が付きたてられ刃の部分で尾は止められていた。
「世話の、焼ける……!」
両手斧を持っていたのはイブキだ。受けた衝撃によりダメージを受けた重い体を酷使し、全力で両者の間に接近し武器を用いて攻撃を止めていたのだ。
「ごめん、ありがと!」
「目の前で死なれるのが嫌なだけッ。その後に勝っても後味悪いからよッ」
「どんな理由でもありがとう、だよ!」
ミヒロはトゥルゼスを抜くと地面に罅が入るほど力を込めて跳躍し、ウロの眉間に突きを喰らわせる。
「グシィャァアアア!」
意外にもダメージが入り頭を振り回し後退する。それを見たヤナとイブキはその間に三人は再び合流した。
「やっぱり協力しない? けっこうきついよこれ」
「上等よ。それだけ強くなれるじゃない」
「強情だなぁ……」
「意志が固いって言ってくれる?」
「まぁ、きつさ上等なのは私も同じだけどさ」
「でしょ?」
「……体……大丈夫……?」
ヤナは眉尻を下げ心配そうにイブキを見つめる。その言葉を受け一呼吸置くとイブキは口元から流れる血を拭った。
「ま、何とかね。まだ痛むけどこれくらいで怯んでらんないわよ。これ以上に手強いモンスターなんて山ほどいるんだから」
「だね。じゃあ競争は継続ってことで!」
ミヒロはその場で数回跳躍し、手首足首の回旋と体側を行い自らの身体の動きを確かめる。イブキも両頬を叩いて気合を入れなおす。ヤナはウロの動向から目を離さないようにしながら深呼吸で息を整える。
「こう強いと、逆に燃えるわね……!」
「何だっていいよ。今楽しいし!」
「あんたの基準楽しさなのね……」
「うんっ!」
あまりにも無邪気な笑顔にイブキは思わずため息をつく。劣勢であるにもかかわらず闘争心を燃え上がらせさらには楽しいとまで言ってのけたのだ。
イブキはちらとヤナの様子を窺う。ヤナはまだ重い一撃を受けてはいないが、目を輝かせているためミヒロと同じなのだと悟った。
三人は再びウロの方を向く。ウロはすでに体勢を立て直していたようで相手の出方を窺っていた。
そして数秒。
「シャァアアア!!」
先ほどとは違い今度はウロから攻撃を仕掛ける。ミヒロたちも出方を窺っていたことで時間だけが経過すると思ったからであった。
「おっと!」
中央にいたミヒロは前方へ飛び込んでそれを回避。ヤナとイブキはそれぞれ横に飛んで回避していた。
何度か転がりながらも立ち上がって先程まで立っていた位置を見ると地面は砕かれ紫と緑の斑模様の液体が土の塊を溶かしていた。
「さっきのおサルさんのあれってそういうことか……!」
ミヒロたちが森に入って少しした時に倒したモンキーノックの謎が解け、同時に毒の危険性をすぐに察知した。
「ふッ!」
伸びきった胴体を見て好機と捉えたイブキはその胴体の下へ滑り込み同時に両手斧で腹部を斬りつけた。
「ギシャァアア!!」
ウロは鮮血を撒き散らし悶絶する。イブキはそのまま畳み掛けようとするも、ウロはその痛みから暴れ回り迂闊に手が出せなかったため返り血を拭って後退する。
「やるね……! 負けてらんない!」
「ちょ、近づくの!?」
ミヒロは交代したイブキとは逆にウロへダッシュで近づいていく。その様子を見たヤナは顎に手を当て少し考えた後ミヒロを追った。
「あんたまで!? 何考えてんのよ……」
イブキが呆然とする中、ミヒロはトゥルゼスを横に構えて跳躍すると、ウロの横っ面めがけ力いっぱい薙ぐ。
鱗に弾かれる鈍い音が響くが、衝撃は伝わり一瞬だけ動きが止まった。それを受けウロの胴体を踏み台にし大きく空に向かって飛び上がり限界まで来ると今度は落下し始める。
それに合わせヤナは腕をクロスさせた状態で二本の刀の刃先をウロの頭へ向ける。
「……《撃技》……!」
その声と共に刀身は真紅の光を帯び、同時に空中を蹴ったかのように急激に加速しながら落下していく。落下時に空に描かれた紅き光の軌道は、あまりにも綺麗だった。
「……〝花鳴〟!!」
それはまるで、流星の如く。
閃光と共に刀身はウロの脳天を貫くように激突する。それでもウロの鱗は罅が入るのみで貫通することは叶わなかった。
しかし激突時の衝撃は凄まじく、叩きつけられた地面には大きなクレーターが形成され、巻き起こる爆風と土煙が大地と木々を揺らす。ミヒロとイブキもその場に踏ん張っていなければ吹き飛ばされていただろう。
ヤナ自身も叩きつけた際の爆風で空中へ放り出された。一瞬慌てるもすぐに落ち着きを取り戻し両足で着地する。ウロは白目を剥いて動きを止めた。
一連の流れを見ていた二人はその場に立ち尽くしていた。
「……すごっ」
「仲間なのに見たことなかったの?」
「あの子日本語苦手なのよ。だから撃技使えるようになったのも最近でさ。他のは見たことあったけど今のは初めて。……ていうか私より強くない……?」
「形だけの団長ね」
「ちょ、ひどい!?」
ヤナの一撃を見たミヒロは団長であることに一抹の不安を覚えた。その様子を見てイブキが面白そうにからかう。言い返そうとイブキの方を向くと先程まで見せなかった楽しそうな表情をしていた。それを見てせいかミヒロの怒りは自然と収まった。
撃技を叩き込んだ本人は刀を収めるとミヒロの元へ駆け寄る。
「凄いよヤナ! 私ビックリだ!」
「……エヘヘ……」
「油断しないの」
ミヒロが頭をくしゃくしゃっと乱暴に撫でるとヤナは嬉しそうに破顔する。しかしイブキの表情は二人とは違い曇っていた。
それを見た二人もすぐにウロの方へ向き直る。
「わかってる。ボスの体が消えてないってことは……」
「まだ倒してないってことよ。大分削れたと思うけど」
「……マダ……足リナイ……」
「ヤナの撃技の前にダメージあんま与えられてなかったしね。でももう半分以上は削ったでしょ、さすがに」
もし半分以上体力を削ることができていれば先程の一撃で倒せていた可能性は十分にあった。だがウロの強靭な鱗が想像以上にダメージを遮断していた。
暫く動きがなかったウロだが、やがて回復し起き上がると同時に素早く尾を横に薙いだ。足元を狙った攻撃のため全員空中へ回避せざるを得なかった。
その隙を見逃さなかったウロは尾を引き戻すと、イブキへ狙いを定め尾を伸ばし両腕ごと上から巻きついた。
「うぐっ……ぅぁあああ!!」
巻きつく力が強まるが、武器だけは落とすまいと懸命に握る力を緩めなかった。
「やばっ! ヤナ、あいつの腹狙って!!」
「……ウンッ」
ヤナは着地すると猛ダッシュでウロへ向かっていくが、ウロはヤナの進行方向とは反対側に向かっていく。
標的はイブキだ。ヤナには一瞥もせず大口を開き猛毒を携えた牙をイブキに向ける。
イブキも脱出を試みるが締め付ける力は強まるばかりで抜け出せる気配はない。脚は自由であるため一生懸命尾を攻撃するも硬い鱗により痛がる素振りも見せない。
「このッ……イブキを、離せッ!」
ミヒロもトゥルゼスで拘束する尾や首を狙って攻撃し続けるもウロは動じない。
「こいつッ……!!」
イブキは無力な自分を恨みながら歯を食いしばり、噛み砕こうと迫るウロを最後の抵抗で睨み付けた。
そしてイブキの体を牙が貫こうとした時……。目の前に飛び込んできた影がイブキを覆う。
「……え……?」
ウロの頭はイブキの手前で止まっていた。ミヒロが直前で体を張って止めたのだ。
「う……げほっ……!」
顎を閉じさせないように自らの体を割り込ませ、両足とトゥルゼスを使ってイブキへの攻撃を喰いとめていた。ウロの顎の力は時間経過とともに増していくが、イブキには届かせまいと必死に踏ん張っていた。
「……! ミヒロッ!」
だが無事では済んでおらず、その姿を見てヤナは涙目で叫ぶ。
上顎の片方の牙が、ミヒロの右肩に突き刺さっていた。
撃技の名前は毎回悩みに悩んで決めてます。響きとか字面とか、いろんなこと考えます。
オシャレな技名って難しいですね。




