30話:〝ダスクの森〟
20,000PV&ブクマ50突破ありがとうございます!
ワードで文章を書きためてるんですけど、一日一ページ書けば一年で約70話更新できるってことが今更判明しました。アイデアが出れば、の話ですけどね。
二人は勢いよくフィールドへ飛び出したものの次の町がどこにあるかわからず、ミヒロの先導のもと歩みを進めた結果、怪しい雰囲気が漂う広大な森が見えてきたのだ。
ミヒロは「行こう行こう!」と元気よく提案し、ヤナも反対することなくそれに同意。そうして森に入ったわけだが、たった数分で帰り道がわからなくなったのだ。
それもそのはず目印となる建物も看板もなく、道も存在しない。
ミヒロたちが迷い込んだ場所は〝ダスクの森〟と呼ばれ、多くの人々はその危険性から避けて通る場所であった。
「ん~……。入ってからはずっと真っ直ぐ来てたよね?」
「……ウン」
「だよねェ……。なら少なくとも間違った道は通ってないはずなんだよなぁ……」
「……ナラ、進ム……」
「しかないか~。ボスもいそうな雰囲気だけどね」
そのまま歩いていくこと数分経過するが、景色は一向に変わらない。
歩くだけのルートにミヒロが飽きてきたとき、左方向の茂みが揺れ、音を立てながら近づいてくる。
「……ん!! 誰!?」
近づいてくる何かの距離に合わせて、ミヒロが剣を振り上げ地面へ叩き伏せる。そこには皮膚が緑と紫色をした斑模様の入った、体長が二メートルほどある猿のモンスターがいた。
「うわっ、何このおサルさん……」
ミヒロが叩き伏せたことで力尽き消えていったが、その姿はやられる前からずっと弱っていたようだった。
「毒キノコでも食べたのかな」
「…‥違ウ、ト、思ウ……ソレニ」
「それに?」
「……腕ニ……傷、アッタ」
ヤナは倒れた猿が消えるまでの僅かな時間に観察し、腕に二つの円形の傷を視認していた。
「そっかぁ……。悪いことした気もするけどとりあえず進まないとね。一応警戒は解かないで行こ」
「……ン」
ヤナは軽く頷き、再び歩みを進める。
その後も上から木の実が落下し直撃する、木の根にこけて転倒するなどのハプニングに見舞われつつも、確実に進んでいった。
しかし……。
「……ほんと、いつまで続くのこれー!」
「……」
「こうなったら……よっと!」
「……!?」
痺れを切らしたミヒロは近くにあるなるべく高さのある木を選び、枝から枝へ飛び移るようにして登り始めた。
両目を見開いて驚くヤナを尻目にひょいひょいと素早く登って行った。
「上から見ればきっと……!」
高所から一望することで方向を探ろうとするも、横から飛び出た影がミヒロに衝突する。
「いっ!? ってうわわわ!」
何者かの衝突によってバランスを崩し落ちそうになるが、腕を振り回して何とか持ちこたえた。
「今の何!?」
衝突されても落ちないようにしゃがんで足元の枝を両手でつかみながら辺りを見回すと、通常の3倍はあろう大きさのカラスのモンスターが、ミヒロの周りに数体ほど飛んでいた。
モンスター名【ディムクロウ】
ディムクロウたちは攻撃を再開せずミヒロの様子を窺っていた。
「……ミヒロ?」
「ん、ちょっとモンスターに囲まれてるー。ヤナ、そこで待機しててくれるー?」
「……ウン」
ヤナへ指示を送ったところで、ミヒロはディムクロウたちへと向き直す。
「さーて……。私とやろうっての?」
不敵な笑みを浮かべ、腰に佩いていたトゥルゼスを抜く。戦闘態勢に入ったことでディムクロウも警戒を強める。
一体に狙いを定め、力強く踏み込み跳躍。真っ直ぐモンスターへと向かっていきトゥルゼスを縦に振り下ろす。
だが狙われたディムクロウは素早く移動してそれを躱す。ミヒロは躱されたとわかるとすぐさま体勢を立て直し、近くの枝に着地するが勢いが止まらず折れそうなほど撓る。だがミヒロはそれを利用してバネの要領で間髪入れずに跳躍。ディムクロウ目掛けてトゥルゼスを振るい、高所から地面へ叩き落とした。
そのディムクロウはそのまま力なく倒れ、光となり散っていった。
また木に着地したミヒロはそのさまを見届けると他のディムクロウと対峙する。
「次はどいつ?」
ミヒロの闘気に圧倒され、ディムクロウたちは逃げるようにして飛び去って行った。
「……逃げちゃった。まいっか」
ひと段落つくと木の上から意を決して飛び降りる。ステータスの恩恵により着地の衝撃はほとんどなかった。
待機していたヤナはヤナでトカゲ型のモンスターと対峙していたが、三体ほど倒したところでディムクロウと同じく逃げて行ってしまった。
「ありゃ、こっちも逃げるんだ。全部倒せればすっきりするんだけどね~」
「……仕方ナイ」
「割り切るしかないか。次遭遇した時倒せばいい話だし」
「……上……見レタ?」
「……あ!」
ディムクロウとの戦闘で木の上に登る本来の目的が頭から抜けてしまっていた。
「ん~……。もう一回登ってもまた邪魔されそうな気がする……どうしよっかな」
再び登ろうかと考えていた時、周りを囲む気配を察知した。
「……敵いるね」
「……」
ミヒロの言葉を聞きヤナも戦闘態勢に入る。ミヒロも構えるがトゥルゼスは抜いていなかった。
囲っていたのは先程二人が遭遇したサル型のモンスター【モンキーノック】。個体によって違うが、棍棒を装備している個体が稀におり、囲っている十体のうち二体は棍棒を持っていた。
「んー、ちょっと試してみよう」
「……?」
「とりあえず一体は残して全部たおそっか」
「……ン」
作戦を話し終えると同時にモンキーノックたちは飛び掛かってくる。ミヒロはそのうちの一体の腹部目掛けて掌底を放ち、動きが止まった隙に足を掴んで振り回しモンキーノックたちを吹っ飛ばしていく。
ヤナは目の前のモンキーノックの喉に鋭い蹴りを放ち、その後体を縦に回転させ踵落としを喰らわせた。
ヤナはミヒロの戦闘を参考にし、剣以外の体術を戦闘に組み込むようにした。剣ばかり頼っていると剣を失った時に何もできなくなる、とハバラギ滞在時にミヒロに教えられていたからだ。
「キキィ!」
「んッ!」
ヤナに迫るモンキーノックに反応し、ミヒロは振り下ろされた棍棒を片手で止めた。
「この!」
掴んだ棍棒を手前に引きモンキーノックごと引っ張り、反対側の手で拳を作りモンキーノックの顔面に叩き込んだ。
「……アリガトッ」
「んーん! 気にしないで!」
その後息の合った連携でモンキーノックを倒していき、残り一体になったところでミヒロは攻撃の手を止めゆっくり近づいていく。
「ねぇ……。出口はどっちにあるのかな~……?」
にっこりと、怪しい笑顔でそう問いかけるミヒロ。
実力の高さを見せつけられ完全に敵意を失ったモンキーノックは冷や汗をだらだらと流しながら出口の方を指さす。
二人が進んできた進行方向の九十度左を差していた。
「そっか。ありがとね」
「……アリガト」
二人がお礼を言うと、モンキーノックは全力で首を横に振ると脱兎の勢いで逃げ去っていった。その目には若干涙が浮かんでいるようだった。
「なんか面白いおサルさんだったなぁ……。さて、こっちだね」
「……ウン」
教えてもらった方向へ真っ直ぐ進むこと十五分少々。ついに二人の歩く方向の先から出口と思われる光が見えた。
「あ、あれ出口じゃない!?」
「……ソウ、カモ……!」
看板も何も立ってはいないが、光の差さないこの森での唯一の光源であるため二人は期待を膨らませた。
「長かったー! ようやく外に出られるよー!」
早く外に出ようと思い二人は駆け足で光に向かう。
だがしかし、突如地鳴りと衝撃が二人の身を震わせた。
「うわっ!!」
「……!」
二人は思わず足を止め、何事かと辺りを見回すも何もない。しかし薙ぎ倒しながら豪快に突き進んでくる音が徐々に近づいてきた。
そのままこちらに来ると思いきや方向転換し、音は遠ざかっていく。
「何が起こってるんだろ……」
「……! アッチ」
ヤナが指を差した方向に轟音が留まっていた。気になって向かってみると、そこには木々のない広場のような空間ができており、近くには池もあった。
その空間の中央には、体長が何十メートルもある黒い鱗で覆われた大蛇と、両手斧を装備し大蛇のモンスターと対峙する黒に近い藍色をした髪を二つ結びにした女性プレイヤーがいた。
「とりあえず加勢しよう!」
「……ウン!」
二人は瞬時に決断。女性と大蛇へ向かっていき、女性に迫る大蛇の横っ面に跳び蹴りを喰らわせる。
想定せぬ方向からの攻撃に油断した大蛇は、数メートルほど飛ばされ地面へ伏せる。
「っと、大丈夫?」
着地して女性の元に向かう。
アシンメトリーで片目が隠れそうなほど長い前髪のせいか凛とした瞳はさらに鋭い印象を持たせる。スタイルもよくブーツを履いているせいか百七十あるように見える。
武器は両手斧だが片手で持っている。肘までの外套を身に付け手甲と手袋を装着しており、下はスカートに黒のニーハイソックスと、脱げないよう固定するためのベルト付ロングブーツだ。
「えぇ。あんたたちもこの森に?」
発せられた透き通る声はすんなりと耳に届く。その声の綺麗さに感心しつつ会話を続ける。
「うん。さっきまで迷っててさー。出口が見えたと思ったらすごい音するんだもん。思わずこっちに来ちゃったよ」
「スルーできたのに来るって……」
「気になっちゃうじゃんそういうの」
「まぁ、否定しないけど」
「……気になったけど年上?」
「何で今歳の話になんのよ。……今年で十六」
呆れつつも答える女性に少し頬を緩めた。
「おぉ、同い年だ! てっきり大人びてるから年上かと。名前は? あ、私はミヒロで、こっちの子はヤナっていうの」
「イブキよ。ってそんなのんきな話してる場合じゃないわよ」
会話を続けているうちに大蛇が起き上がり三人を上から見下ろしていた。
「だね。……倒すつもりだった?」
「愚問ね」
「そっか。なら一緒に倒そうよ」
「……別に、私一人でもできるわよ」
普通に提案したのだがイブキと名乗る女性の反応は冷たく、ミヒロたちを見ずに大蛇をじっと見つめていた。
「……ふーん。でも私たちは倒す気でいるから」
「ちょっと、人の獲物とんないでくれる?」
「じゃあ……競争だね」
挑発的な笑みを見せる。その表情は自信に満ちていた。
「……望むところよ」
イブキの返答を聞いてミヒロは柔らかい笑みを浮かべた。
三人は各自戦闘態勢に入り、ダスクの森のボスモンスター、【ヤミオロチ】の強化個体〝ウロ〟との戦いに突入した。
さっそく新キャラです。少女に斧を振り回させたかったんです。
この編で出る新キャラは何人になることか…。




