29話:うきうきとザワザワ
というわけで第2章の始まりでございます! 長いですね申し訳ないです。
PCを変えたせいで思うように進んでおりません。いつものことか。それじゃダメなんだって。
そういうわけで改善するため仕事に埋もれながら頑張ります。
こんな作者ですが付き合ってあげてください。そしてそっと卵焼きでも差し入れてあげてください。
夏休み初日。朝方だが照りつける日光は容赦なく肌を焼く。額から流れる汗も頬を伝って地面へと落ちる。靴を履いていても地面の熱が伝わり自然と走る速度が上がる。
体を動かすことで熱が籠るが、走る足は止まらず颯爽と駆けていく。
習慣化した朝のランニングだが、今日は一人ではなく未尋と並走する人物がいた。
「わざわざ電話してまでランニングに付き合う気だったんだ?」
未尋の隣を走るのは同級生の廉也だ。機能性Tシャツにハーフパンツ、ランニングタイツにランニングシューズとかなり本格的な服装だ。
「いやまぁ、夏休みになれば話す機会減るしな。少しでも機会増やそうかと思ってさ。AOのこととか」
「とか言って、ほんとは淋しかったんじゃないの~このこの~」
「ぶっ飛ばすぞお前……!」
脇腹を肘でつつく未尋を、廉也は乱暴に振り払う。
「とまぁ、冗談は置いといて。そっちは何か忙しかったの? 私のいる村教えたけど来なかったじゃん」
リアルでAOの事を話した際に行けたら手伝う、とこっそり約束していたのだが復興が終わるまで廉也が手伝いに来たことは一度も無かったのだ。
未尋がじとっとした目線を向けると、廉也は気まずそうに顔を逸らす。
「悪かったよ……。ちょいと情報を仕入れてて、それ聞いた団長がやる気になっちゃったんだよ。それでしばらくギルドの方に行ってたんだわ」
「情報って?」
「俺が所属するギルドの拠点近くの国で闘技大会が開かれるんだと」
闘技大会は人が集中する国や都市で開かれるプレイヤーもNPCも参加できるお祭りの一種だ。定期的に開催するものと不定期で開催するものがあり、またそのレベルも制限されたものもあれば無制限のものもある。
廉也の話した場所での闘技大会は不定期なもので、レベル制限は毎回会議で決められるため情報収集は必須だった。
「ふーん……。それだけ集中するってことは何かあるの? 賞品とか」
「それもあるけど、ギルドに加入できる人材を見つけるって部分も大きいと思うぞ。あとは自分たちの戦力の誇示とかな。たとえ優勝できなくても名がある奴を倒した人間がいるギルドっていう風に捉えてもらえれば一目置かれる存在になれる」
戦力の補強としてメンバーの増加を目的とするギルドも多く、また魅力的なギルドに見えるよう普段の活動や闘技大会の結果など目に見えた活躍を残すことに注力することもある。
賞品か、戦力増強か、実力誇示か。
多様な思惑の中で行われるのが闘技大会である。
「ほえぇ~……。忙しそうだねぇ。そりゃ来れないわけだ」
「合間を縫えたとしてもマップからすりゃ【スクラム】を挟んだ反対側にあるんだよ、未尋の言ってた村ってさ」
「あぁ~。じゃあ行けなくてもしょうがないか。忘れてるかサボってたら拳骨でもしようかと思ったけど」
「怖ェなおい……。行けなかったのはほんとに悪かったって」
廉也は走りながら頭を下げた。
「いやまぁ、怒ってるわけじゃないけどさ。でも、いいなぁそういう大会……。私も参加してみたいよー」
「あれ、確かそっち側でも闘技大会が行われる都市があったはずだぞ? 仲間が言ってたはず……」
廉也の発言に未尋の目が輝き廉也に詰め寄る。
「えっ、それ本当!?」
ぐいぐい迫る未尋に若干押され気味になりつつも、廉也は冷静に押しのけ話を続ける。
「あ、あぁ……。確か【オーグラン】って国で行われるはず……ってか詰め寄りすぎだっつーの! 走りにくいわ!」
「あ、ごめんごめん」
指摘され未尋は少し距離を取る。一方の廉也は運動のせいか熱くなった頬を叩いて頭を振る。
「そ、それで、参加すんのか?」
乗り気な未尋の様子を見て半ば確信を得たうえでの発言だったが、未尋は難しそうな表情をしていた。
「んー……。昨日村を出たんだけど、その……オーグラン? って場所がそこから近いかわかんないから後回しになるのかなぁ……。もし近かったら参加するよもちろん! 楽しそう!」
マップデータは基本的にプレイヤー自身の手で作るものだ。もし知らない土地を通るルートの場合は商人や他のプレイヤー等からマップデータを買い取るプレイヤーが多い。
「楽しそうって……。ま、何にせよこっちが終わったらそっちに向かってみるわ」
「ほーい。私が無事に辿り着けたら会えるね」
「そこは辿り着いてくれよっ!?」
「あはは~……。ま、ふらふら~っと歩いていけばどこかには着くでしょ」
「行き当たりばったり過ぎるだろ……」
「それが旅ってもんでしょ。多分」
「お前の計画性は長期休暇の宿題にしか発揮されないのか」
廉也は呆れて額に手を当てる。
「いや方向は教えてもらったんだよ? ただマップは作ってないって言ってたんだもん。でもどうせ夏休み始まったし、のんびり歩いていけば着くって。大丈夫大丈夫!」
あっけらかんとした表情で言い切るが、普段の未尋を見ている廉也はどうにも不安を拭えない。
未尋の身体能力とハバラギの件を聞いているため戦闘に関しては問題ないと思っているが、その他の面となるとどうにも放っておけないのだ。
「ゆっくりすぎると大会の日を過ぎるの忘れんなよ……。近くには森もあるし」
「ん~、でもさすがに数日あれば行けると思うんだけどなぁ。そこまで遠くないでしょ?」
「そうだけどよ……」
「着いたら一番にご飯食べて~、闘技場見つけて参加して~……。あぁもう、やることいっぱい! 八月中は退屈しなさそう!」
「一番にやることがご飯なのか……。あ、でも八月二日にアップデート来るからやることさらにたくさん増えんぞ? その日は何もできんし」
満面の笑みで今後の想像を膨らませる未尋の思考を断ち切るように廉也が口を挿んだ。
「え、アップデートってそんなに時間かかるの?」
「サイト見てないのか……。運営が発表してたろ。アップデートに一日かかるって」
「嘘ぉ!?」
「今回のアップデートでいよいよ本格的になるっぽいぞ。結構いろんなプレイヤーが言ってたんだよ。今やってんのは実質ベータ版みたいな感覚だってさ」
AOのアップデート及びメンテナンス時間は基本的に半日かかる。さらに今回行われるデータ更新では大幅な追加要素が含まれるため一日かけてアップデートが行われることになっていた。
それを聞いた未尋はがっくりと肩を落とす。
「うえぇぇぇ……。じゃあ八月二日はゲームできないのかぁ……」
「もうすっかりハマったな」
「うんっ! アップデートも今後が楽しくなるってことだし我慢するよ~。その代わり体を温めておかないとね……!」
未尋の表情にやる気が満ちる。その闘気は隣にいた廉也も思わず怯んでしまったほどだ。
「凄いやる気だな……。なら公園とかで組み手に付き合ってくんねェか?」
「いーよー。でも手加減してあげないからね?」
「望むところだっつーの!」
「とかいいつつ一度も私に勝てたことないくせに……」
「うるせっ! 今回は負けねェわ!」
「楽しみにしてるよーあはは」
未尋の笑い方に悪意を感じ取った廉也は未尋の頭を叩く。
「あたっ!」
「絶対からかってんだろお前……! 覚えとけよ……」
頭をさすりながら未尋は手首に巻いていた腕時計を確認する。ランニングを始めてから大分時間が経過したが、自宅まではまだ遠い。
時計から視線を上げ廉也の方を向く。
「ところで……」
「何だ?」
「このランニング毎朝付き合うの?」
「そのつもりだけど。……何かまずいか?」
「んーん。話しながらだからいつもよりペース遅くしてたんよ。てことでスピード上げるからついてきてね!」
その言葉を皮切りにスピードを上げて廉也を置き去りにしていく。
「あ、おい!」
廉也も慌ててついていくが、ランニングが終わる頃には手と膝を地面に付き肩で息をする廉也と、涼しい顔をして汗を拭きながらその姿を見て笑う未尋の姿があった。
× × ×
一歩進むごとに、足元の生い茂る草が揺れる。
生き物の呼吸も、鳥の囀りも、モンスターの足音も。森を吹き抜ける風の音で掻き消されてしまう。
自らの背の何倍もあろう大きな木々が周りを囲むように伸びている。道と言う道はなく、歩ける場所を見つけながら進むしかない。
光すら差さない鬱蒼とした森の中を、ミヒロとヤナは草を掻き分けながら歩いていた。
「うわぁ……。なんかもう、すっごい森って感じ」
「……ウン」
「慎重に進もっか」
「……ン」
全方向から動物やモンスターの気配は感じ取っていた。音をたてないようにしたい気持ちとは裏腹に、足元の草や葉が砂利の上を歩くように音を鳴らす。
警戒しつつ進んでいくも、前方に見えるは高々と生える木々のみ。空からもたらされる自然の光も完全にシャットアウトされていた。
「こんな森怖すぎでしょ……。お化けとか出ないよね……?」
「……オバケ……」
二人は身を震わせた。
「出口ってどっちだろ? 早く出たいよもー」
「……ワカ……ンナイ」
ハバラギを出発した二人は現在……
暗い森の中で彷徨っていた。
始まりはいつも迷子♪
後書きで書くことが同じだとつまらないってことに気付いたので何かしらは書いていこうと思います。
期待はしないでね!




