27話:双刃
本編に入る前に少し書きたいことを書かせていただきます。
まず…本当に! 遅れて申し訳ありませんでした!
新年度を迎え社会人となり仕事を覚えることに精いっぱいでした…。しかしこれはみなさん同じこと。自分の要領の悪さが原因なので、これから改善できるよう精進致します。
そして二つ目、12,000PV&ユニーク3,600人ありがとうございます!
これからも誤字脱字多めの拙い作品ではありますが、最終回まで書ききれるよう頑張ります!
以上です。それでは、待たせた割には完成度の低い本編をどうぞ!
「さっきとどう変わったんだろッ」
「……ッ」
ミヒロは懐に潜らず足元で様子見をしながら立ち回り、右前脚に一閃。しかしその感触は硬い鉱石に当たったように鈍い。ヤナも流れるように直進しながらすれ違い様に切り付けていくが、マッドファングは平然としている。
「硬ッ!?」
このまま攻撃を続けても埒が明かないと考え距離を取ろうとしたその刹那、地が爆ぜマッドファングの姿が消える。
「グォオオオ!!」
ミヒロは即座に視界で追うも捉えられなかった。その直後ミヒロの背後から影が伸び、やがて全身を覆う。
「え、ちょっ、速ッ!!」
「グルァアアアッ!!」
覆う影に向かってトゥルゼスを縦に振るうが、空振り。後方にいたはずのマッドファングは、またも姿を消した。
「え、ちょ、どっちからッ!? こっちかッ!」
辛うじてトゥルゼスで防御するも、力の差で押し込まれる。
「……スピード、……違ウ、全然……」
戦闘序盤とはけた違いのスピードに、ヤナは呆然としてしまいその場に立ちすくんでしまっていた。
「なにこのパワー……いっ!?」
「……!? ミヒロッ」
一度は受け止めるも、勢いを殺しきれずに後方へ吹き飛ばされる。吹き飛ばされたミヒロは壁に激突。クレーターができ土煙が辺りを覆い尽くす。その際の爆風がヤナの体を叩き、停止していた思考と体が動き出す。しかし間を空けずヤナへ頭突きを繰り出され、反応できなかったヤナは腹部へ直撃。壁まで吹き飛び、その衝撃で吐血する。
「ヤナッ!!」
「……ゲホッ! ゲホッ…!」
頭や背を激しく打ったため、頭部から流血しその場に倒れかける。壁に手を当て立ち上がるもその足はふらふらで今にも倒れそうになっている。
「ゲホッ、ゲホッ! 何これ、ほんとに一階層のボスなのこいつ……!」
よろめきつつも何とか着地し、ヤナの隣まで移動する。しかし頭や腕からの流血が止まらず、損傷率が加算され体の動作を制限する。
「……ドウ、スレバ……」
「うーん、根本的に話が変わってきそうだねこれ……」
先ほどまでの戦闘法では攻略は難しいと感じていた。視界に姿を入れる事すら現状では困難。強化された肉体には、生半可な攻撃では怯みもしない。
「グァアアア!!!」
対策を練ろうとしても、向こうが黙っているわけがない。声に気付いたマッドファングが容赦なく爪を叩きつけてくる。
「ちょ、だぁあ!」
ヤナは後方へ跳躍、ミヒロは横にヘッドダイビングをして躱す。何度か転がることにはなるが直撃は避けることに成功し、再び二人は合流し対策を考える。
「隙、あるかなぁ……」
「グルルル……!」
「……ン?」
ミヒロが攻撃手段に悩む中、ヤナはマッドファングのある異変に気付く。
「ん、どったのヤナ?」
(……攻撃……。手前、二……?)
ミヒロが立っていた場所より少し手前にマッドファングが攻撃しているのを足元の跡から読み取った。普通であれば立っていた場所に跡があるはずなのだ。
子分を統率し、ボスとして存在するモンスターの知能が、そこまで低いとは考えにくい。となれば何か理由が存在する。
ヤナは一つ思い付いた案をミヒロに提案してみる。
「……ミヒロ……。上着……、ココ、置イテ……、離レル」
「へ? 上着?」
ヤナは小さく頷く。
マッドファングは犬型のモンスター。とすれば犬と同じ神経を持つとすれば嗅覚が発達していると考えた。嗅覚に頼り自分たちの居場所を捉えているのであれば、臭いの発生個所を分散させることによって混乱させるのがヤナの狙いだった。
「……んまぁ、ヤナがそういうならそうしてみよっか」
ミヒロは腰に巻いていたものを、ヤナは羽織っていたものをそれぞれ床に投げ捨て、マッドファングを視認しながら上着を置いた場所から離れていく。
マッドファングはヤナの作戦通り、臭いが分散したことによって混乱しその場にとどまっていた。
「ふぅ……。ヤナの考えは何となくわかった。臭いが移動することで気づかれると思ったけど大丈夫っぽい?」
「……多分」
「そこまで考えてなかったわけだ……」
作戦の穴に冷や冷やしつつ、しばらく様子見をしていたが、マッドファングの様子がまた変化していく。
「グルァァアアアアアアアアアアアアア!!!!」
部屋の壁にひびが入るほどの衝撃が走る。これが咆哮であることに二人は驚きを隠せなかった。振動は長く続くが咆哮を止めると同時に収まる。マッドファングの目は血走り、筋肉はさらに隆起し肥大化している。しかしその反面、隆起した腕から血が噴き出していた。
「うわっ、何あれ……」
その後、マッドファングは狂ったように見境なく床や壁に前足の叩きつけや激突を繰り返す。己で自らの体を傷つけていく異様な光景を、二人は遠目から見ていた。
「……暴走……?」
「……うん、あれ絶対暴走してるね。ついに臭いすらも感知しなくなっちゃったわけか……。力を得て力以外を失っちゃったんだ……」
「……」
自分たちプレイヤーを倒すために力を得る手段は有している。しかし、それはボロボロの諸刃の剣であった。それを知ったミヒロもヤナも、相手が敵だということを忘れ、憐れむ視線を向けていた。
「……ドウ、スル……?」
「……そう、だね……。あぁやって壁への激突を繰り返して自滅を狙ってもいいけど……。自分の手で倒さないと、攻略した気がしない。というより弔ってあげよう。そうしないで倒れちゃったら、可哀そうすぎるし」
「……ウン」
もう向こうはこちらを認識する手段がない。攻撃方法はいくらでも実践できるが、強化された肉体はそのままだ。確実に通る攻撃でなければいけない。
「うーん……、動きを固定して大きいの叩き込むのが一番かな……。自傷ダメージをかなり稼いでるはずだし。ヤナ、あの犬ちゃんの前足の甲をさ、刀で固定できない? 地面に突き刺して。こう、ぐさっと」
「……ヤッテ、ミル」
「よしっ、じゃあ私が怯ませるッ」
ミヒロが駆け出し、後ろから動きを把握するようにヤナは立ち回る。マッドファングは暴走を繰り返したせいか体力を消耗し、壁に頭を向けた状態で立っていた。
「こっち向けッ!」
右後ろ脚を力いっぱい横薙ぎし、意識を向かせる。前足の甲を固定するのであれば壁側を向いていては難しい。わざわざ後ろを向かせるのはリスクの大きい行動だが、マッドファングは後ろを向く。
が、同時に左前足を振り上げミヒロへ叩きつけようとする。しかし狙いは定まっておらずミヒロの頭上を掠めていった。
「大振りっ、ここッ!」
攻撃を掻い潜り体の下に潜ったミヒロは、真上にあるマッドファングの下顎目掛けトゥルゼスを突き出す。
「グルァゥッ……!」
下顎に強い衝撃を受けたマッドファングは脳が揺れると同時に体も揺れ、動きが鈍くなる。その隙をみたミヒロはヤナに叫ぶ。
「ヤナッ!! 今ッ!!」
「……ッ!」
ミヒロの声に反応したヤナが駆け出し、両手に持った二本の刀をそれぞれの前足の甲に抜けないよう強く突き刺す。
「よしっ、後はッ……!」
完全な隙ができたことで、ミヒロは最後の一撃を叩き込むため跳躍。さらにマッドファングの頭を踏みつけにしさらに跳躍。数メートル跳び空中へ跳び出す。
ミヒロは腕を真っ直ぐに伸ばし、トゥルゼスもそれに合わせて前方に突き出す。その後トゥルゼスの重さを使った遠心力を利用して腕を伸ばしたまま回転し勢いを増していく。
「《撃技》ッ!!」
その掛け声とともにトゥルゼスの刃が青い光に包まれ、青いサークルが空中で作られ、マッドファングの頭へと落下していく。
「〝揺ラ葉桜〟!!」
マッドファングの顔の真横まで落下してきた青い刃が、その横っ面を捉え叩き込まれる。顔の筋肉は硬くないため肉質は柔らかい。一撃で落とすのであれば顔面が一番有効だと考えた。
「らぁああああああ!!!」
「……ッ!!」
ミヒロの一撃に合わせ、ヤナは一瞬躊躇ったが片方の足を貫いていた刀を抜いて、トゥルゼスの勢いを後押しするように押し当て、力いっぱい押し込む。
「あああああああッ!!」
「アアアアアアアッ!!」
二人が同時に剣を振り抜くと、マッドファングは体を宙に浮かんで吹き飛び、壁に激突。顔や四本の脚など、体中から血液が噴き出したその体は、壁から崩れ落ちた後動くことなくポリゴン化し、宙に溶けて消えていった。
ボスが消えると同時に、部屋の中央に宝箱が出現した。二人の目の前には電子パネルが出現し、経験値とレベルアップについて表記されていた。
先ほどまで戦場だったとは思えないほど、今この場は静まり返っていた。
こうして、長い一階層のボス攻略は、終わりを迎えた。
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