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ArteMyth ―アルテミス―  作者: 九石 藜
序章:幻想世界へ
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1話:【序章】始まり

最初数話は導入で、ゲームの世界の話ではありません。

というより、ストックを改めて見ても話進まなさすぎ……

 皆が机に向かい、ペンを取って空欄を埋めていく。


 今この空間では、定期テストが執り行われていた。


 かちっ、かちっと、時計の針が動く音と、ペンで書く音、外でセミが鳴く声がこの部屋の中に響いている。油断すれば額から流れる一筋の汗が鼻を通り口へと落ちてくる。テストの解答用紙に垂れないように汗を拭う。


「(あっ、これ習ってない範囲だ……。先生、しっかりしてよ……)」


 周りに聞こえないようにポツリとつぶやいた。


 試験範囲を間違えるなんてあっていいことではない。因みに今日行ったテストの中で、範囲を間違えていたのはこの科学だけだ。


 高校に入って最初の期末テストではあるが、最初ということもあってあまりやる気になっていない。特に男子はあまり身が入っていない様子だった。


 夏の暑さが室内を包み込んでいる。窓を開けても風が入ってこないので結局暑いことに変わりはない。


「あちぃ~」

「喋るなー」


 暑さに我慢できずに声を出す生徒を監督の先生が叱り、叱られた生徒は手で仰ぎながらまたペンを動かし始めた。


 生徒の中にはすでに書き終わっている人もいるようで、空を見ている人もいれば、問題用紙の裏に絵を描いている人もいた。習ってない範囲もなぜか含まれていたので全部終わらせるなら時間がかかるはずなのだ。


 だから大抵は諦めて問題を解こうとしていない。


「(でもここは……、予習してたけどね)」


 他の生徒たちのほとんどが手を止めている中、袰屋未尋は一人書き進めていた。


 これが終われば昼休みだから、早くお昼ご飯を食べたいから、そんなことで頭がいっぱいだった。


 未尋だけでなく、皆早く終わらせて頭を使い切りたいのだ。


 この時間が終われば一日目のテストは終わりになる。今の時間が終われば部活をしていないものは全員放課となる。早く遊びたい人が多いだろう。


 その中の一人である未尋も、そう思っていた。


 外は太陽に照らされ、教室は熱気が籠り蒸し暑い。男子も女子も暑さであまりテストに身が入っていない様子だった。煌々と教室を照り付ける日差しは生徒たちの体力や集中力を削いでいく。


 未尋自身、髪を一つにまとめていなければ、暑さで机に突っ伏していただろう。ただ、それでも項に一筋の汗が伝い、前髪が額に張り付く。


「(暑いっちゃ暑いけど、それにしたってダラけ過ぎだと思うんだけど……)」


 どこの高校もこんな感じなのだろうかと、未尋は一人暑さを気にせず黙々と書き続けていたが、意外と試験範囲が広いせいで解くのに時間がかかってしまった。


「(……ふぅ、終わったかな?)」


 未尋はテストの解答用紙を見直し、問題なく終わったのを確認すると、ペンを置いて頬杖を突きながら空を見上げる。


 雲一つない快晴の空。運動するのにもってこいな環境と言えるだろう。ここ数日雨が降っていないのでコンクリートの地面はいつも以上に熱されていた。


 暑さに我慢しながら未尋は空を見続けていた。


 やがて……。


 ――キーンコーンカーンコーン。


「そこまで。それではペンを置いて、解答用紙を後ろから回収してくださーい」


 テスト終了のチャイムが鳴ると、先生がそう指示して、各列の一番後ろの生徒が立ち上がって番号順になるように答案用紙を回収していく。もっとも、出席番号順なので必然的に番号順に回収できるようにはなっているが。


「はーっ!」

「やっと終わったー!」

「終わったねー」

「お前どうだった?」

「もう全然、余裕でだめだわ」


 テストが終わって気が抜けたのかみんな喋り始めたので静かだった教室が一瞬にして五月蠅くなった。


「はーっ、お腹空いた~」


 そう言いながら未尋はリュックサックから取り出した弁当を開けた。


 弁当は二段構成で、一段目は胡麻塩を振りかけた白米。二段目は金平牛蒡に鹿尾菜、ナポリタンと唐揚げ、それから卵焼きが入っている。


 バランスよくできたとは思うが冷凍食品に頼ってしまったな、と未尋は思った。


「次はちゃんと一から作ろ」


 弁当を食べながら、未尋は教室で騒ぐクラスメイト達の行動をひっそりと眺めていた。


「この後どうする?」

「どうせだからマックでも寄ってかね?」

「俺は練習だからパス」

「自主練くらい別にいいだろー」

「真面目だなーお前」

「いやいや大会近いし。こんぐらいしとかんと」

「お前は来んの?」

「おー、行く行く」


 男子生徒は遊びに行くようで、すぐに帰りの準備をしていた。


「ねぇねぇ、ここ如何書いた?」

「そこ? そこは、――って書いたけど」

「あぁ~。ミスったかなー……」

「なんて書いたの?」

「えっとね、確か……――って書いた気がする」

「いやそれは違うじゃん!」

「やっぱりっ? あー、もうダメだ~……」


 女子たちは帰る準備をしている人もいるが、教室に残ってお喋りを続ける人もいるようで、一人でテストの自己採点をしたり数人で答えを確かめ合ったりしている。


「どうせ後でテストが返ってくるんだからわざわざ自己採点する必要あるのかな?」


 自己採点との差で一喜一憂することの意味が分からない未尋だった。


 クラスを見渡していても、会話の内容は一見バラバラであるように思えるが、共通しているところもある。


「俺は家に帰ってアレだな」

「だよな! 今日はどこまで行く?」

「いや、今日はちょっと寄りたいところがあるからそっちが先かなー」

「んじゃ、仕方ないし付き合ってやるか」

「そだな」

「何その上から目線。偉そー」


 男子と女子が混ざって共通の話題で話をしていることなんて、今の時代となっては珍しい事でもない。


 数十年前は、男子と女子との交流が少ないことが問題視されていた。別に珍しいわけでもないとは思うのだが、他の国と比べれば日本は交流が盛んではなかったのだ。


 ただ、ある時を境に男女の交流は昔に比べ盛んになった。


 そのきっかけは、ある一つのゲームだった。


「よしっ、そうと決まれば帰ろうぜ」

「あぁ、ログインしなきゃな」

「うん」



「〝アスタルトオンライン〟に」


こんな感じで進めていきます。

見にくい等何かありましたらコメントにてお願いします。

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