11話:小さな村と白少女
今回は少し短いです
※少女の服装に関する文章を追加しました。
追記:題を変更しました。
「あれっ、と、ここは……」
ログインした直後に目の前に広がるは平原だった。モンスターが跋扈し、雲はうねる様に違う方向へと動いていく。昼時なので日が沈む時の夕焼けは見られない。
ミヒロはそんな平原に一人突っ立っていた。
「あ~……。ログアウトしたところからなんだ。町とかに送ってくれたっていいじゃん!」
ミヒロは憤慨していたが、諦めてどの方向へと向かうか決めることにした。
結果、雲が動いていく方向へと向かうことに決めた。
「~♪ ~~♪」
鼻歌交じりに散歩感覚で歩いていく。モンスターはシステム上素通りすることはできないので敵対したモンスターは倒すようにした。
誰も話し相手はいないが、ミヒロは飽きることなく、また淋しいと感じることなく歩みを進めていく。
やがて、一つの村が見えてくる。
「おっ、やーっと見つけたー!」
その村、【ハバラギ】は【フラライド】よりも発展しているとは言えないが、必要最低限の施設は整っている、といったような村で【ハバラギ】の人たちは畑で作った野菜などで生計を立てている。
この世界では現実と同じような食材もアイテムとして扱われており、生で食べることも料理することもできる。味覚は再現されているほか、空腹感や満腹感も再現されているが、感覚がリンクしているわけではないので現実で満腹になる、ということにはならない。
「こんにちはー!」
「おやおや、いらっしゃい。こんなところまで」
「お嬢ちゃんはどうしてここに?」
ミヒロがあいさつをすると畑仕事をしている農家のおじいちゃんおばあちゃんが返事をした。かなり自然と会話しているが、相手はNPCである。ただ、やはりミヒロは女の子と勘違いされていた。
「あはは……。えーっと、クエストを受けたいんだけど」
「クエスト紹介所かい。ならここから西にあるよ」
「そっか。ありがと!」
「……気を付けて、いってらっしゃい」
「……? うん!」
神妙な顔つきをしたおばあちゃんの言葉を不思議に感じながらも、ミヒロは言われた方向へと歩き始めた。途中で自分と同じようなプレイヤーを何人か見かけたが、何か忙しそうにしていた。
話しかけようとしても目の前を素通りしていくばかりだった。呆気にとられたが気を取り直してクエスト紹介所まで歩いていく。
歩いていくと一つの建物が見えてきた。看板には『クエスト紹介所』と書かれていた。
「こんにちはー!」
大声であいさつをした後中へ入っていく。すると中にいたプレイヤーたちが一斉にこちらを向く。ミヒロは不思議には思うものの特に気にすることはなかった。
「な、何かご用でしょうか?」
カウンターにいた男性が恐る恐る話しかけてくる。その態度はどこか怯えているようにも見て取れたが、ミヒロにはその理由がわからなかった。
「クエストって何かある?」
「えっ……、クエスト、ですか?」
「うん」
ミヒロは普通に話しかけたつもりだったが、カウンターにいる男性からは驚かれてしまっていた。
その表情を不思議に思って小首を傾げていると、カウンターの後ろ、数人の集団で食事をしていた男たちがミヒロに向かって怒声を飛ばす。
「おいてめェ」
「にゃ?」
後ろを振り向いてみると、大柄な男がこちらを睨んでいた。髪は黒の短髪、体格はがっしりとしていて身長は180を優に超えている。武器は戦槌で、今はテーブルに立てかけられている。戦槌の槌頭は断面がちょうどミヒロの胴に収まるくらいの大きさで、見た目から重量が相当なものであることを容易に想像させた。
「ここが誰の領地か分かって言ってんのか?」
「え? 関係あるの?」
大男はミヒロを睨みつけるが怯むことなく会話に応じていた。
「あるさ。ここは俺らのギルドの団長、ヴァロンの領地。つまりここのクエスト紹介所は俺達のギルドが管理してる」
「だから?」
「俺たちが認めた奴しかクエストを受けさせねェってことだ」
「ふーん。でもクエストは選んでくから」
そう言ってクエストが張り出されてるクエストボードの前へ行こうとする。が、それも大柄な男の部下が通り道を塞いでしまう。
「てめェ、話聞いてたのか!?」
「ちゃんと聞いてるよ。受けるんじゃなくて選ぶの。あと、あの子は選んでるけどいいの?」
ミヒロはクエスト掲示板の前に立っている一人の少女を指さす。
その女の子は思わず目を瞠るほどの銀髪を揺らし、足りない身長で上の方にあるクエストまでじっくり眺めていた。
「……あいつは何言っても意味がねェから特別に許可してんだよ」
「意味がないって?」
「日本語が通じねェんだよ。外国人か何かなんだろ。でも無駄なこった。毎度見に来てもクエストに行く気配はねェ。クエストの文字が読めねェンだろうよ」
このゲームは日本語以外には対応していない。これは日本でのみ販売しているから、という事情も含まれている。
すべて日本語で書かれているので、日本に来て日が浅く日本語を理解できない他の国の人などにはプレイは難しい。
「いやぁ、読めないことはないんじゃないの?」
「読めるにしろ読めないにしろ、勝手に行かねェなら同じことだ」
日本に住んでいる以上は日本語を知っておかないと後々苦労する。だからある程度は日本語を知っていてもおかしくはないはずなのだ。
「それに、妙に白すぎて気味が悪ィ」
「白い……?」
そう言われて、ミヒロは少女を観察してみる。
流れる銀髪は横に広がることなく垂直に伸び腰の辺りまであった。少女の背を守るような銀の髪は光を反射してさらに煌く。
後姿であるため顔などはよく見ることは適わなかったが、装備から覗かれる腕や足の肌の白さは、まるで雪のように白かった。
「そっか。でも可哀そうだね」
「知った事かよ。とにかく、何日か様子を見たがあいつは俺達にとって害はねェ。だからクエストの許可を出してもいいんだ」
「……私は?」
「だからダメっつってんだろ!!」
「えー!」
ミヒロはひどく怒られてしまった。
どうしたものかと少し悩んだのち、ある提案をする。
「じゃ、私あの子と一緒にクエストに行くよ!」
「あぁ?」
「クエストの同行者なら別にいいでしょ? 私が受注してるわけじゃないし。あの子がいいならそれも通るよね?」
「っ……」
虚を突かれたようで男は少し困惑していた。その隙にミヒロは銀髪の少女に声をかけることにした。
「こんにちは!」
「……?」
挨拶をしたつもりだったが、少女は反応がない。少しして少女は声をかけられたのが自分だと理解し、ミヒロの方を振り返る。その時、周りが一瞬にして静かになった。
その瞳は透き通るパープルの瞳。また髪だけでなく睫毛までもが白く染まっていたのだ。雪化粧により白く染められた雪国の姫の如く、押してしまえば倒れそうなくらい華奢で可憐な少女がそこにいた。
幼くも綺麗に整えられた容姿と雪白の肌とストレートの髪が相まって、より現実離れした容姿を際立たせていた。
灰色のワンピースをベースに淡い桃色の上着を羽織っており革製のブーツを履いていた。腰にはベルトが巻いてあり一本の刀を携えていた。両腕に銀色に光る腕甲を身につけているが、それ以外の鎧は見当たらず、必要最低限の装備で攻略をしているようだった。
「日本語通じねェって言ったばかりだろうが」
男は数秒して、呆れたように口を挿む。だがミヒロは気にせず声をかけ続ける。
「クエスト行くの? なら連れてってよ! クエスト行くの初めてなんだー」
気楽に話しかける。少女はというと、自分に話しかけていることは理解しているだろうが、発している言葉は理解できていない。
ただその顔は、どこか怒りを含む表情で――。
「……Не остаться в стороне(近寄らないで)」
少女は発音の難しい、日本人には聞き慣れない言葉をポツリとつぶやくと、そのまま管理所を出て行ってしまった。
ミヒロは少女の態度にポカーンとしてしまっていた。
「……ありゃ?」
「はっ、交渉失敗してんじゃねェか。それじゃだめだな。とっとと帰れ」
管理所には大男とその部下と思われるプレイヤーたちの笑い声が響く。人を馬鹿にする嘲笑。ただ、ミヒロには通じず、出て行った扉の方を見つめていた。
「……あっ、追いかけないと!」
そう言ってダッシュで後を追う。たとえ拒絶されても、その意図はミヒロに伝わっていない。そもそも、その後を追わず話しかけないという選択肢はミヒロにはなかった。
「あっ、おい!」
男の言葉など、ミヒロの耳には届いていなかった。
お読みいただきありがとうございます!
本編に出てきた言葉はロシア語になります。google translate様より翻訳したものなので、間違い等がありましたら指摘のほど宜しくお願いします




